争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい   作:大気圏突破

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グレモリー家の将来は暗い

 新年度を迎えた頃までは両親から譲り受けた優れた才能で、最上級悪魔まで登り詰められるとまで評価され『紅髪の滅殺姫』とまで呼ばれていたのだが、領地に侵入してきた堕天使に好き勝手に暴れられ、ライザー・フェニックスとのゲームでは見せ場など存在せずに醜態を晒すだけに終わった

 

 そして駒王学園で行われた三大勢力の和平会議では兄で魔王のサーゼクス・ルシファーの権力で封印を解いた眷属の能力をテロリストに悪用され、悪魔・堕天使・天使は大きな痛みを受けることになった。いつしか世間では才能はあっても王としての資質を持ち合わせていない『無能姫』だとアングラ誌で揶揄されている

 

 

「お父様…もう一度おっしゃってください!」

 

 ソーナと同じ時期に冥界に帰還したリアスは本宅で当主ジオティクス・グレモリーから発せられた言葉の意味を理解出来ずにいた。そして後ろに控えている眷属たちも同じように動揺している

 

 

「そう何度も言わせないでほしいなリアス…今のままならグレモリー家の歴史を私の代で畳もうと考えている」

「それはどういう意味ですか?」

 

 勢いよく立ち上がり座っていた椅子が後方に倒れてしまい、目の周囲を呪術の五条悟のように包帯でグルグル巻きにされ自身の血で『封』と記されたギャスパーが音に反応してビクッと震え朱乃のスカートの端をギュっと握っている

 

 

 

「言葉のままだ、民衆から笑われ蔑まれる領主に栄光など訪れない」

 

 それは列車から降りた時に空気や肌で感じ取っていた。例年なら足の踏み場も無いぐらいにごった返しているのに今年に限っては隙間が多く、出迎えの拍手もまばらだった

 

「私が次期当主に相応しくないとおっしゃるのですか?」

「胸に手を当て…これまでのことを思い返してみたまえ」

 

 癇に障ったのかジオティクスを睨み付けるが、歩んできた歴史の威厳に気圧されてしまい唇の端を強く噛んでしまう

 

「それならミリキャスは?」

「強要するつもりはない!ミリキャスが自身の意志でグレモリーの歴史を継ぐのであれば私とヴェネラナは全力でサポートをする」

 

 最後通告そのものである。リアスに残されたチャンスは限りなく少ない結果を出さなければ見限られ今までの暮らしが維持できなくなるのだ

 

「子育てとは難しいものだ、その責任は私にある」

 

 その言葉を残しジオティクス・グレモリーは席を離れ部屋から出ていった。リアスは滅びの魔力を手に纏わせてテーブルを叩きつけるが乾いた音がするだけで傷1つすら付かなかった

 

 

「そんなに結果がほしいのなら見せてあげるわよ!」

 

 ドス黒い感情で心を満たした彼女は低い笑い声をあげる。その様子を見ていた小猫は一抹の不安とモヤモヤが精神を支配する感覚に苦しむ

 

 

 

 

 

 

 豪華な食事に煌びやか部屋で寝泊まりしたシトリー眷属たちは、ソーナの案内で領内を観光していた。娯楽に溢れたグレモリー領とは違い自然保護に特化しているのでスゲー広い上野動物園みたいなものだ

 

 小動物のふれあいパークではアーシアの周囲に沢山の冥界動物が集まり女王として奉られて、匙と椿姫は併設されているゲームセンターで音ゲー対決3本勝負を行い最終勝負となったダンスダンスレボリューションで揺れる胸に視線を奪われてしまい敗北してしまった

 

 

「10%ってところか」

『あまり無理をするな相棒』

 

 伸元は観光に参加せずシトリー領中心から外れた荒野で鍛錬を積んでいた。エクスカリバー騒動のときにコカビエル相手に使う予定だったモノで制御するための修行である

 

「アイツは使いこなしていると思うか?」

『分からんな…アザゼルの言ったことが本当であれば可能だと思うが』

「暴走覚悟なら100%でいけるんだが」

『それはよせ、行き着く先は破滅だ!そんな結末を望んではいない』

「ありがとうドライグ」

 

 

 未だにヴァーリに与えた『アレルギー』は解除していない、苦しみ続けてくれれば禍の団の戦力を削ぐことが出来る。しかしテロリストの全容が掴めない白龍皇よりも上の実力者がいるのかもしれない

 

 

「赤龍帝様そろそろお時間になります」

 

 シトリー家のメイドがタオルと飲み物を持って近づいてきた。今日は若手悪魔の会合が行われるので本宅に戻って身支度する必要がある。彼女を伴って魔法陣を展開すると観光を終えたソーナたちも準備をしていた

 

 列車に乗って魔王領へと移動した。そこはシトリー領とは違い近代的な都市部だった

 

「魔王領の都市ルシファード、冥界の旧首都です」

 

 椿姫が眼鏡を光らせて解説をしてくれた。伸元もここに訪れるのは初めてである

 

 

 

「ソーナ様ぁぁぁぁ‼」

「手を振ってください!」

 

 列車から降りると冥界に到着したときと同じように歓声が出迎えてくれた。黄色い歓声を辞書で引けば今の状況を表すだろう

 

「凄ぇ」

「お前がカテレア相手に奮戦したことでシトリー会長の評価が上がったんだよ」

 

 眷属の働きは王の評価に直結する。襲撃してきた彼女に勇気を振り絞ってソーナの身を守ろうとした忠義を貴族や上級悪魔たちは兵士の匙を称えた。無論この連中は数ヶ月前までリアスのことを褒めていた奴等なので失態を犯せば手のひらはドリルのように回転する

 

 

「確かソーナ様には赤龍帝と懇意な関係って」

「それ知ってるわ、堕天使やテロリストを撃退したってセラフォルー様が」

「誰だろう?男の人だったよね」

 

 進級して早々に堕天使のレイナーレが起こした騒動で今まで秘匿にされていた伸元の存在も表舞台に引き上げられた。駅長らしき人がソーナに近寄り耳打ちをすると急いで地下鉄まで向かうのであった

 

 

「これから会うのは将来の私達のライバルになります。ですが気圧されないでください!」

 

 地下鉄を降りて一番大きい建物の地下に到着した。彼女は後ろにいる眷属たちを見渡して檄を飛ばし全員が気合を入れる。ゼノヴィアと椿姫は大丈夫そうだが匙やアーシアを含めた他の眷属は顔を青くしていた

 

 

「ようこそソーナ・シトリー様、赤龍帝様こちらへ」

 

 使用人らしき悪魔が近づき扉に手を掛けて入るように促してくる。扉の先は通路であり遠くの方に見える豪華絢爛で煌びやかな扉がホールへの入口である

 

「なんか騒がしくないか?」

「この建物に入った瞬間から戦いは始まっているってやつか」

 

 室内からはヤバい音が連続で響いている。明らかにドンパチをやっているような感じで入る場所を間違えたのではないかと思ってしまうが使用人の悪魔は額から汗を流しているだけだった。少し躊躇っていると中から黒髪の短髪でプロレスラーのような体格をした若い悪魔が出てくる

 

「サイラオーグ・バアル」

「ソーナ・シトリーか久しぶりだな」

 

 2人は握手をしているが体格差を比べるとレスラーのサイン会にきた女性ファンのように見えてしまう

 

「そっちは眷属たちか」

「1人を除いてね」

 

 野性的な視線で匙たちを見つめる彼は伸元のことをじっと凝視すると前に立って手を差し出した

 

「そのオーラは赤龍帝だな俺の名前はサイラオーグ・バアルだ、バアル家の次期当主だ!お前の武勇は耳にしている。そしてすまないリアスの無礼を代わりに謝らせてほしい」

「どうも…えっと」

 

 なんでこのワイルドなイケメンはリアス・グレモリーの為に頭を下げるのだろう?とりあえず握手を求められているので彼も同じように手を出した

 

「彼はリアスのいとこなの」

「そういうことですか」

 

 ソーナの説明で合点した伸元はライザーとの会談で彼が口にしていた『バアル家』という単語を思い出した。握った手は分厚くて硬く積み重ねてきた努力を物語っている

 

「(バアル家が滅びの魔力を求めているって…いとこ婚になるのか)」

 

 別に彼にとってアレが誰と結婚しようが関係無いことであるので疑問はスルーした

 

 

 

「ところで中で何が?」

「あぁ…アガレスとゼファードルたちの、とってもくだらないことだ」

「確かにくだらないことですね」

 

 2人の会話に眷属と伸元は頭に疑問符を浮かべていると更に爆音が響いてくる。なんとなく察した面々はため息をつく、全員で部屋の中に入ると室内はボロボロでテーブルも椅子も全てが破壊され無事なモノが1つも存在しない

 

 部屋の中央には会場内を紛争地域に変貌させたと思われる悪魔が2人いて睨み合っていた

 

 

「ゼファードルあなたは馬鹿なのかしら?馬鹿は死んでも治らないか試させてもらいます」

「言ってろよ、クソアマッ!こっちが気を利かして女にしてやろうとしてんのによ、世間を知らない箱入り娘様に俺が開通式をしてやろうって言ってんのによ!」

 

 ここってプロレスの会場だっけ?どっちも悪役に見えるのは何故だろう?そっか悪魔だもん両者悪役に見えてもしょうがない、メガネをかけた美少女と顔に意味不明なタトゥーを入れたヤンキーは視線で殺すようにメンチをきっている

 

 部屋の端には雰囲気に気圧された眷属を宥める女性悪魔がいてサイラオーグたちが入ってきたのを見て近寄ってくる

 

 

「サイラオーグ…あの2人をどうにかしてください」

「本音を言えば関わりたくないな、ラティア」

「そんなこと言わないでくだ…あっソーナ久しぶり!」

 

 ラティアと呼ばれた悪魔はソーナに挨拶をして頭を下げるが困惑したままである。その様子を見て伸元は理解した。向こうは知っているが自分は覚えていないパターンでありサラリーマンをしていた時に経験したことだ

 

「…えっと」

「そうでしたね最後に会ったのは7年前でしたっけ?アスタロト家の次期当主ラティア・アスタロトです」

 

 脳内でスパークが発生し点と点が線となって繋がり記憶が蘇った。思い出したソーナは無礼を詫びたが1つの疑問が浮かんだ

 

「アスタロト家の次期当主は確かディオドラ・アスタロトでは?」

 

 目の前にいる彼女は分家のはず、アスタロトを継ぐはずだった彼はどうしたのだろうか?ソーナは2人に問いただす

 

「ディオドラは亡くなりました」

「…えっ、どうして?まさか―――」

「不摂生が祟ったと言えばいいのか、俺も亡くなる少し前に目にしたのだが豚のように肥えているのにも関わらず飲食の手を緩めることはなかった」

「医者からも散々警告されたのですが聞く耳持たずでして、手足は小さな傷が原因で次第に腐ってしまい爛れ落ちて最後は目も見えなくなりました」

 

 ディオドラ・アスタロトが亡くなったことで分家のラティアが繰り上がりでアスタロト家の次期当主になった

 

 そしてソーナたちの会話を遮るように2人の悪魔は再び乱闘を始め眷属たちも血気盛んになっている

 

「赤龍帝すまないが手を貸してくれ、俺はゼファードル…男の方を取り押さえる。お前はアガレスを頼む」

 

 懇願されたので仕方ない、こんな状況だと落ち着くこともできない武力に必要なのは対話ではなく武力である。サイラオーグは警告をしたが2人は拳を下げることをしなかったのでゼファードルは壁に叩き付けられヤムチャ状態になり、伸元も彼女を後ろから羽交い締めにて遠ざけた

 

♪ピロリ~ん♪

 

 胸元に仕舞っていたスマホからメールが届いた。通販で頼んでいた商品が届くのは今日だったことを思い出すのであった




ディオドラ・アスタロトは既に亡くなっています。

この先は修行とゲームとエクストラゲームが1つあります


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