争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい   作:大気圏突破

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ちょっと短めです


特訓開始

「対戦まで約二十日間か……」

 

 大盛況と爆笑に包まれた若手悪魔の会合が終わり彼女たちはシトリー家の屋敷に戻った。今回の対戦はセラフォルーも聞かされていなかったことで完全にサーゼクス発案の思いつきであった

 

 

「これって不公平ですよね?」

 

 匙の言葉に他の眷属は無言のまま頷いた。冥界における評価はシトリー家の方が上回っているが、改めて個々の戦力を見比べてみるとタイマンに持ち込まれた場合は不利になる

 

 ここで底辺を彷徨っているグレモリー家に負けてしまったら今まで頑張ってきたことが無駄になってしまう。しかも勝ったところで得るものが殆ど無いというのもモチベーションの低下に繋がっている

 

 

「今更嘆いても仕方ありません!敗北の文字はリアスに背負ってもらいます」

 

 

 ソーナの号令で心に火を付けようとするが燃料は乏しくガス欠に近い状態であり、奮起を促すニンジンが必要だと感じるのであった

 

 

 

 

「(ちょっとのぼせたかな?)」

 

 シトリー家に備え付けられた天然温泉をサウナを満喫し終えた伸元は自身の部屋に戻っていた。夕食後に仕事を終えたセラフォルーが帰宅すると、ソーナは彼女を連れて自室に引きこもって今も話し合いをしている

 

 今回のレーティングゲームで彼がやれることは本番までに眷属たちを鍛えることで今までのように矢面に立って活動することはない、向こうには焼き土下座で精神的ショックを受けたが堕天使総督のアザゼルが顧問として木場たちに訓練のプランを組むはずだ

 

 

「(シスコン魔王は手心を加えると思うか?)」

『(サーゼクスならやりかねないな)』

 

 冥界最強とされるサーゼクス・ルシファーの眷属たちによる指導・教育もあるだろう

 

『(騎士はさておいてボンクラ共が3週間で劇的に成長するとは思えんな、指導者が優秀であっても受ける側が未熟なら時間の浪費に過ぎない)』

「(それは同意だ!)」

 

 分からないところが分からない、学校の授業で黒板に書かれた文字や記号をノートに写すだけで内容が頭に入らない、授業を終えた瞬間は"勉強をした"という感覚に陥るが、実際は1ミリも成長なんてしていない

 

 

 

"コンコン"

 

 時計の針が21時を過ぎる頃だった。ドアをノックする音が聞こえたので返事をすると外にいたのは女王の椿姫で珍しい来客に少し驚いた。セラフォルーやソーナの次に付き合いの長い悪魔だが必要以上の会話をすることはない

 

「何の用ですか?」

「少し…話相手になってくれませんか」

 

 神妙な顔付きだったので彼女を招き入れて座らせると紅茶を提供した

 

 

「ありがとうございます」

「それで話って?」

「えっと…その、リアスさんとのレーティングゲームですが……勝てますよね?」

 

 数分前に話相手になってほしいと口にしていたのに、今ここで考えたような文言に違和感を抱いてしまう。本当に言いたいことは別の話題だろうと思う

 

 

『世間話をしに来たつもりなら今すぐ帰って寝ろ!こっちも疲れている』

 

 この空気を嫌ったドライグが椿姫を威圧するように荒ぶった言葉を口にしている。彼女は数秒間だけ沈黙すると頭を下げた

 

「すいません」

『言いたいことはハッキリ言え、"察してくれるだろう・理解してくれるだろう"は互いの齟齬をうんで悲劇に繋がる』

「はい…あの私は会長の女王として相応しいですか?」

 

 それはソーナ・シトリーの女王を務める真羅椿姫の悩みであった。コカビエルの起こした騒動やテロリストの襲撃で彼女は目立った活躍が出来ていなかった。匙は無鉄砲だったがカテレア相手に王を守ろうとして勝てない相手に立ち向かった。アーシアもゼノヴィアを身を挺して庇ったことを評価されている

 

 

「グレイフィア様や顔を合わせた方々も自信に満ちあふれていて、自分の存在が矮小に感じてしまって」

 

 確かにサイラオーグやシーグヴァイラの女王は溢れてくる魔力と共に自信に包まれ、グレモリーも魔王の右腕として上級者のオーラを放ちテロリストたちを撃退していた

 

 

「比べる相手を間違ってない?」

「いいえ…それに会長は貴方のことを1番信頼しています。それって私のことを―――」

『弱いからだ!』

 

 このドラゴンは言いやがった!思っていたことだけど口にはしなかったよ、デリカシーというべきかオブラートに包んで伝えてほしいものだが、下手な言葉で本質を隠してゴテゴテに装飾をするよりマシだと思うけど…

 

 

「そうですよね私が弱いから会長は」

『そうやってウジウジと悲観するのが最適なのか?赤髪との勝負で成長した姿を見せるべきではないのか?あやつがお前に『女王』の駒を与えたことを後悔させるな』

「ですが今のままでは!」

 

 匙だったらドライグの言葉で奮起して今からフルマラソンをする勢いで走り出すだろう。しかし椿姫の心の根底はネガティブに支配されている

 

『相棒…コイツも連れていくぞ!』

「そうした方が良いかもな」

「えっと…いったい何を」

 

 状況を飲み込むことができない彼女は困惑した表情を浮かべているが、それを尻目に会場内で『悪魔よりも悪魔らしい』という称賛の声を受けた伸元は笑うのみだった

 

 

 

 

 朝食を食べ終えたソーナたちは動きやすい服装に着替えて屋外に出た。そこにはセラフォルーがいたが魔法少女のコスプレではなくジャージ姿であった

 

「リアスちゃんとのゲームまで私たちが君たちのことを鍛えるからね☆」

 

 今回の指導者は彼女が関係各所に声を掛けた集まった面々であり、堕天使副総督のシェムハザにユーベルーナ・カーラマイン・美南風・ニィ、リィのライザーフェニックスの眷属が集まってくれた

 

 シトリー家とフェニックス家に繋がりはないが、向こうは支持率の低迷するサーゼクスを見限りセラフォルーへのごますりと赤龍帝である伸元と独自の交友関係を持ちたいと思っていた。今回のことは渡りに船であり手の抜いたことをするつもりはない

 

 

「会長…ノブチカと匙に椿姫が見当たらないのだが」

 

 ゼノヴィアが手を上げて質問するとソーナではなくシスコン魔王が遮ってきた

 

「ノブちゃんたちは別の場所で特訓中だから、多分生きてると思うから」

「生きてるって、そんなに危険な特訓なのか?」

「大丈夫だって☆これを乗り越えたら絶対に強くなっているはずだから、ゼノヴィアちゃんも他人を心配する余裕なんて持たない方がイイよ☆」

 

 

 

 

 そして彼女たちがレーティングゲームに向けてトレーニングを始める頃だった。匙と椿姫は既にトレーニングではなく…特訓の真っ最中だった。伸元は彼等を見ながら自己鍛錬を積んでいる

 

 

「うおぉぉぉぉ助けてぇぇぇぇ!」

 

 匙は鼻水を垂らしながら号泣し全力疾走し

 

「待ってくださぁぁい!」

 

 薙刀を担いだ椿姫も同じように全速力で逃げている

 

 

「ヴリトラの魂を宿しているのなら抗ってみせろ!逃げてばかりでは何も出来ぬぞ!」

 

 2人の後方には巨大なドラゴンが咆哮を放ちながら攻撃を仕掛けてくる。拳が空ぶって地面に衝突する度に地震のような揺れが起きてしまい岩石が宙を浮く

 

「フン!」

 

 それを尻尾で弾き飛ばすと、直径5メートルの大岩は音速の壁を突破し匙たちに向けて一直線に飛来する。椿姫は自身の神器を展開して大岩を防ごうとしたが恐怖心が勝ってしまい不発に終わってしまう

 

「こんちきしょぉぉぉぉぉ!」

 

 ラインを大岩に繋げた匙は『進撃の巨人』に登場する立体機動装置のように岩の上に連続で飛び乗って襲ってくる攻撃を躱し状況を打破しようとしている

 

「なかなかやるではないか、だが―――」

 

 拳を振り上げて叩きつける。しかし彼は伸びた腕の上に着地しダッシュで駆け上がると巨体に向けて渾身の一撃をおみまいしたがドラゴンの肌に傷をつけるのは不可能で皮膚の硬さに涙を零すのであった

 

『どうだタンニーン』

「ヴリトラの方は鍛え甲斐がある。だがあっちはティアマットの方が向いてないか?」

『そっちは顔を合わせたくない、すまないが配下のドラゴンで対応を頼む!』

 

 タンニーンと呼ばれたのは『聖魔龍タンニーン』であり元龍王の一角だ、ドラゴンの主食である『ドラゴンアップル』を研究するために悪魔へ転生した

 

 元々は匙だけを鍛える予定だったが、自信を失ってマイナス思考に陥っていた椿姫も一緒に連れてきた。特訓といえば山か洞窟が定番なのでシトリー領の外れにある大山に降り立ったのだ

 

 着ているジャージはボロボロで匙はターザンで椿姫はアマゾネスのような格好になっている。呼吸を整える間もなくタンニーンのブートキャンプは再開され、2人の悲鳴は遠くに住む領民の耳にも届いたのかもしれない




椿姫は周囲を比較したことでマイナス思考に陥っていましたので、性根を叩き直す特訓に駆り出しました。2人の強化イベントになります

ライザーの方もサーゼクスの威光がハリボテと思うようになっているので、セラフォルーへの鞍替えをしています

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