争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい 作:大気圏突破
恐れ入りました
そのアナウンスが流れるとリアス・グレモリーは険しい顔をして奥歯を強く噛んだ、メインアタッカーの彼に神器を持たない雑兵たちを片付けてもらおうと考えていたが計画が狂ってしまった。聖魔剣を扱える彼ならギャスパーの神器発動中に動くことも出来る
この場合だと失格扱いになるのはギャスパーだけなので、シトリー眷属の神器持ちをリタイアさせることも出来たのだが浅はかな目論見はおじゃんになってしまった。こんな状況下で時を止めたとしても誰も動けない状態で時間だけが経過するというシュールな絵面が生まれるだけだ
『リアス・グレモリー様の『女王』一名リタイア』
「嘘でしょ朱乃もやられるなんて」
小猫と一緒に本陣の場所を探っていた女王がデパートから除外されてしまった。今回のゲームが始まる前にオカルト研究部の顧問になったアザゼルが彼女に対して"自身の血を受け入れろ"と発破を掛けた
本来なら父親であるバラキエルを連れてくるはずだったがシトリー家にシェムハザが指導者として招かれたことで堕天使たちを纏める幹部たちが3人不在はマズい状況だったので朱乃は父親と顔を合わせることが出来なかった
「でりゃぁぁぁぁあああ!」
彼女が退場する15分前まで時計の針を戻そう、今回のルールは雷で範囲攻撃を得意とする朱乃にとって不利に働いた。室内を破壊して退場してしまう恐れがあるからだ
現状のままだと虎柄のビキニを着た鬼娘や、世界で有名な電気ネズミのように接近して攻撃を繰り出すしかなかった。制限されず自身の能力を十全に振う場所を求めた朱乃はデパートの屋上に向かった。ここなら存分に戦えると思ったが扉を開けた瞬間に戦車のゼノヴィアが襲ってきた
「会長の読みは正しかったみたいだな」
「読まれていても負けなければ問題ありませんわ」
ソーナは今回のルールを見てリアスか朱乃が屋上を陣取ると踏んでいた。そしてゼノヴィアをそこに配置したのは彼女も戦闘で室内を破壊して退場する可能性があったのでゲーム開始直後に向かわせた。警備室を占拠したアーシアと花戒桃の僧侶コンビから監視カメラの映像を送ってもらい向こうが想定通りの動きをしているのを見てソーナの脳内では次の手段を構築する準備を整えていた
「落ちなさい!」
ちょこまかと動くゼノヴィアに雷を放っているが全く当たらない、遮蔽物の存在しない屋上で攻撃を防ぐものがなければ朱乃の優位になるはずなのに無駄に魔力を消費している
「雷の巫女と呼ばれているみたいだが名前負けだな」
「なにを」
挑発をするように伸元がやっていたアリシャッフルを披露し更にムーンウォークまで見せつける。モニターを見ている観客たちは拍手喝采で笑っていた
「ちゃんと狙ってみろ!それとも怖くて恐れているのか?」
「…っくぅ」
リプレイを流しているように仕掛けるがダンスのステップを踏むように華麗に避ける。彼女は無手なので攻撃をするには接近しなければならない、段々と距離を詰められもう少しで互いの拳が当たる位置まで近づかれたが
「私だって」
詰められるのではなく朱乃は自ら詰めた。当たらないのであれば抱きついてしまえば良いという発想で腕に力を籠めてゼノヴィアと抱擁する。捨て身の戦法だが最大出力の雷撃でダメージを与えてリタイアさせようとする
「これで終―――」
「………こんなものか」
「っえ?そんな」
全く効いていない、電気マッサージを受けているようなリラックスをした涼しい表情を浮かべている。状況を理解出来なかった朱乃は『戦車』の力で増したボディブローを受けてしまい腹を抱え膝から崩れ落ちてしまった
「まだ1回が限度か」
「な……にを」
ゲーム開始前に食べたお菓子を胃液と共に吐き出して床を汚している。咳き込みながらゼノヴィアを睨み付けていると彼女は駒王学園の制服を脱ぎ捨てエクソシストだった頃のタイツを纏っていた
「(絶縁体?でもそれなら)」
必死で答えを導きだそうとしているが断言できる要素が見つからない
「よーいドン!と鳴らされるゲームなら事前準備をするのが当たり前だ、それにそっちはフェニックスとの試合で手の内がバレている。なら対策を講じるのは至極真っ当なことだ」
「まさか…その、制服は」
ソーナを含めシトリー眷属が着用している駒王学園の制服は、シトリー領のみで生息する蚕の生糸を編み込んで作られた代物で物理・魔力攻撃によるダメージを軽減する。生徒会室で感想戦をしていたときに伸元が言っていたことが実現した
「グレイフィア!あれはルール違反ではないのか?」
VIP席で観戦していたサーゼクスが物言いで声を荒げる
「問題ありませんサーゼクス様、事前にソーナ様から問い合わせられ私の方でアジュカ様にも確認をしましたが、鎧扱いでありレーティングゲームのルールに抵触するものではありません」
「…っちッ」
小さい舌打ちをしたサーゼクスは苦虫を嚙み潰したような顔をして煌びやかに装飾された椅子に座った。公式戦でも鎧を着込んで参戦する悪魔は一定数存在するので強く咎めることができない
「ギブアップでもするか?」
ヤンキー座りになって覗き込むように問いかけてきた。しかし朱乃の目にはまだ抗う火が灯っている。初めての勝負でリアス共々に敗北を喫しライザーからの苦言で枕を濡らしたこともあった。まだ何も出し尽くしていないのだから
「雷光よ!」
これまで封じてきた力が彼女の指先から放たれる。それは堕天使が持つ光の力で悪魔に大ダメージを与える
「おっっと」
直撃を躱したが咄嗟の攻撃でバランスを崩してしまいゼノヴィアは尻餅を搗いてしまった。絶好のチャンスを得た朱乃は追撃の手を緩めることなく雷光の力で攻め立てる。床の上を転がりながら回避していくが態勢を立て直すことができない
「形勢逆転ですわ」
「それはどうかな?」
彼女は何も無い空間に手を伸ばすと今まで扱っていたデュランダルを取り出すような感覚で1本の剣を亜空間から呼び出した
「それは…聖剣?」
「違うな、私はもう二度と聖剣を扱うことは出来ない」
「ということは、まさか」
コカビエルの起こした騒動でシトリー家が得た慰謝料として堕天使に請求した人工神器であり、ゼノヴィアの為に調整された代物だ、普通の西洋剣だが刀身には数秘学を元にした幾何学模様が描かれている
「
雷光を刀身で受けると全てを吸収してしまった。何度も攻撃をするが同じ光景を目にしてしまう。そうしていると彼女の持つ剣が真紅に輝き放っていた
「実戦で使うのは初めてなのでな、手加減出来ない未熟さを先に詫びさせてもらう」
「その余裕が命取りになりますわっ!」
持てる力を全て振り絞って彼女を仕留めようとするが当たることなく屋上の給水タンクを破壊するだけだった。ゼノヴィアは脚部に力を籠めて駆け出すと朱乃の腕を掴んで上空に放り投げた…そして
「貫け!アァァカシック・バスタアァァァァ‼」
刀身から放たれた魔力は鳳凰の形を模して朱乃に直撃した
『リアス・グレモリー様の『女王』一名リタイア』
ダメージ超過もあり朱乃はゲームから除外された。ほぼワンサイドゲームだったが彼女は過去を受け入れて堕天使の力を使ったのは心境の変化であり大きな前進である。まだまだ越えなければならない壁は存在するが今日は大いなる一歩を踏んだ大切な日になったはずだ
「あと3人か」
シトリー家は短時間で『騎士』と『女王』をリタイアに追い込んだ、まだ制限時間に余裕はあるが広いデパートでかくれんぼになったら人数の有利があっても敗北をしてしまう。とりあえず警備室にいる2人を守るためにゼノヴィアは階段を駆け下りていく
「小猫、私たちと合流しなさい」
『でも…時間まで逃げた方が』
「いいから!3人でソーナを仕留めるわよ」
フロア全体にリアスの大声が響き渡る。そもそも少ない戦力を分散させたのが失敗で指示をした彼女の失態であり心の奥底でソーナたちを見下していたのが原因でもある。当然この姿も監視カメラで視られていて報告されている。地の利は完全にシトリー家が支配したのだ
「ぶっ…部長」
「行くわよギャスパー」
「ふぁ…はぁい」
今の状態だと時を止めても無意味であり壁役にしかならない、しかし1回でも攻撃を防ぐことが出来れば自分の攻撃を当てることが出来るはずだ、朱乃と祐斗を退けたということは向こうも相応の戦力を投じている可能性がある。今ならソーナの守りは薄くなっている
しかしリアス・グレモリーがソーナ・シトリーの目の前に現れることは決して訪れることはなかったのを今ここで宣言させてもらう
ゼノヴィアの人工神器はもちろん禁手?鬼手?しますので
人工神器の説明は需要があれば次話以降の後書きでやろうと思います
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