争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい   作:大気圏突破

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シトリー家の特性を理解しよう

 小猫はリアスとの合流地点に向かったがそこには誰もいなかった。5分待っても10分経っても2人は現れることなく時間だけが淡々と過ぎていく、インカムを使って呼び出してもフロアに足を踏み入れてからノイズが酷くなって彼女の声を受信することが出来なくなっている

 

「(もしかして先に行ったのかな?)」

 

 彼女の辞書に『我慢』という文字は墨で塗りつぶされてしまっている。なかなか到着しなかった自分に痺れを切らして置いていったのかもしれない

 

 このまま合流しないで逃げ続けるべきだろうか?しかしリアスが落とされてしまったら敗北者の烙印を押されてしまう。そうなったら癇癪を起こして部屋を荒らしてしまうだろう。部室にある高そうなティーカップが壁に叩きつけられるのを何度も見てきた

 

「(とりあえず行ってみよう)」

 

 

 情報収集の名目として動けばいい、本陣に誰がいるのかを確認するのも重要な仕事であり戦力差を見極めることが必要なのだ、シトリー眷属たちが集まっていたらリアスに逃げて隠れることを進言しよう。デパートの中には隠れる場所は沢山あるんだ

 

 音を殺して階段を駆け上った小猫は身を潜めながら虱潰しでシトリー側の本陣を探し続けた。そして迷子センターのドアノブに手を掛けて捻ると部屋の中にソーナ・シトリーが椅子に座って彼女がやってくるのを待つような雰囲気で待ち構えていた

 

 

「いらっしゃい塔城さん」

「部長は?」

「まだ来てないわ…どうする逃げても私は追わないわよ」

 

 余裕の表情を浮かべ選択肢を与えてくる。小猫は視線を動かして周囲の状況を確認した。この空間に隠れる場所なんて存在しないのは明白でソーナだけである

 

「(私は追わないわよ(・・・・・・・・)…ということは会長以外のメンバーが追ってくるはずです)」

 

 この場所にシトリーの眷属がいなくても部屋の外で見張っているかもしれない、会長たちと合流したところを狙われる可能性が一気に高まってしまう

 

 彼女は自分の手で今回のゲームを終わらせる選択肢にカーソルを当てて決定ボタンを押した。セーブ画面なんて存在しないのだ、今ここで彼女を仕留めることが最高で最善なんだ

 

 

 

「あら勇敢ね」

「一気に終わらせます!」

 

 接近戦なら自分の方に分がある。ソーナは水を操る遠距離型で攻撃に移るまでにタイムラグが生じるのなら拳の方が先に届くはずだ

 

 攻撃力・機動力どちらも自分の方が勝っている。それに殴り合いになったとしても最後まで立ち続ける自信があるのだ、負ける要素なんてどこにも無い、小猫は床を強く蹴り上げて駆け出す

 

 

「(鳩尾を!)」

 

 強く握りしめた拳で人体の急所を狙って撃ち抜く、『戦車』の駒で加算されたパワーなら小柄な体でもコンクリートを砕くことも可能だ、防御に成功したところでダメージは残る

 

「(足を踏みつけて畳み掛ければ)」

 

 相手の足の甲に体重を乗せてしまえば身動が出来ないはずなので、ラッシュを叩き込んでソーナをリタイアに追い込むシミュレーションを脳内で繰り返して接近した瞬間だった

 

 

"バシャァァァン!"

 

 天上に設置してあったスプリンクラーから大量の水が散布されて室内にいる2人に向かって降り注いだ。小猫は水溜りで足を滑らせてしまいスライディングしたまま壁にぶつかる

 

「前方…いえ足元が不注意でして」

 

 振り向くとソーナは傘をさして優雅に見つめていた。まるでこの展開になるのを予想していたような振る舞いに小猫は違和感を抱いてしまう

 

 

「時間を掛けるつもりはありませんので」

 

 ソーナはポケットからナイフを取り出すと自身の指先を切って水溜りに血液を数滴垂らした。シトリー家は水を扱い魔法に長けているのは事前に調べていた。カテレアが攻めてきた時に彼女の戦闘を見ている小猫は顔の前に腕を立ててボクサーが防御をする姿勢になる

 

 水で濡れている床の上では自慢のフットワークは武器ではなく枷になるからだ、ソーナの一挙手一投足を見逃さないように目を皿のようにして集中して見ているが

 

 

「ゴフッ!」

 

 それは突然のことだった!後頭部を殴られてしまい小猫は突っ伏して濡れた床とキスをしてしまう。脳が揺れて視界がグニャグニャになって歪んでいるのを無理やり治して立ち上がると今度は足を刈り取られ後頭部を打ち付けた

 

 

「言ったはずです。時間を掛けるつもりはないと」

「いったい…なにをして?」

 

 ジンジンと痛む頭を押さえながらソーナに視線を向けると彼女の周りに水の塊が複数浮いていた。そのうちの1つが形を変えて人型になってシャドーボクシングを披露すると別の塊がケルベロスの姿になってソーナの周りをクルクル回っている

 

 

水兵(シーマン)…とでも言いましょうか」

「しーま…ん?」

「ざっくばらんに説明すれば私の意のままに操れる水の兵隊といったところかしら?レベルアップすればもっと精密なことが可能になるけど…今はこれが精一杯」

 

 ソーナは大きな水の塊を小猫の顔に投げつける

 

「これくらい」

「言ったでしょ足元が不注意って」

 

 避けようとするが足元の水溜りから腕が伸びて拘束されてしまった。そして彼女の攻撃を顔面で受けると水は飛び散ることなく小猫の顔の周りを覆った

 

「フゴゴゴゴゴゴゴブ…ごごご!」

 

 呼吸が出来ないどころか鼻や耳の穴に水が流れ込んでいく、それなら水を一気に飲み込んでしまおうと咀嚼するが減ることはなかった。体内の酸素が段々と少なくなり意識が遠のく

 

「(ねぇ…さま)」

 

 薄れゆく感覚に思い出すのは自分の目の前から消えてしまった大切な家族の姿に手を伸ばすが、姉の背中に届くことはなかった

 

 

『リアス・グレモリー様の『戦車』一名リタイア』

 

 

 

「匙…タイミングはバッチリでした」

『しかし肝が冷えましたよ会長』

「リアスが私たちのことを見くびっているからこそ、出来る策なので仕方ありません」

 

 彼女はインカムで彼に向けて礼の言葉を述べる。スプリンクラーを作動させたのは匙が行ったことで警備室で監視カメラの映像を見ているアーシアたちから連絡で散布するタイミングを見計らっていたのだ

 

 

『あと2人ですね』

「もう少しで終わりです」

『それフラグですって』

 

 残りは部長のリアス・グレモリーと時を止めることが可能なギャスパーだけだ、既に木場が聖魔剣を使用しているので彼は神器を発動させることは出来ない、傲慢な彼女なら退場覚悟で使わせるはずだが2人は既に身動きすら出来ない状態に陥っている

 

 

「レーティングゲームのフィールドが私たちの良く知るデパートで助かりました。ここには何でも揃っていますから」

 

 眼鏡を輝かせたソーナは水浸しになった迷子センターで不敵な笑みを浮かべるのであった

 

 

 

 

 

 

 

「んぐぅぅぅぐうぅぅん」

「ぶぅぅん……ちょ………うん」

 

 小猫と合流するはずだったリアスたちだったが別のフロアで捕まっていた。このデパートのキャッチコピーは『この世の全てを取り揃えた!』であり多種多様な商品が並んでいる。そして彼女たちがいるのは園芸用品売り場で、腐葉土や肥料に畑を耕す鍬やスコップもサイズ別に陳列されていた

 

 

「凄い恰好だこと、写真に撮って元士郎に見せちゃおう」

 

 翼紗はスマホを取り出してカメラを起動し連続でシャッターボタンを押した。巴柄も同じように撮影したがスコップを持った留流子に注意を受けてしまった

 

「遊んでないで手伝ってよ!」

「ごめんごめん…でも留流子だってノリノリじゃん」

「だって叩かれるよりも叩く方が気持ちいいでしょ?」

 

 スコップを床に叩きつけると大きな音がフロア全体に響き渡る

 

 

「ぶぅぅぅん……ぐぅぅうんnぶぶぶんぅぅんん」

「うるさい!」

 

"ブアッァァシィィィィン"

 

「んぐぅぅぅ!」

 

 フルスイングしたスコップは両手両足を拘束され漢字の『大』に似たポーズで逆さ吊りにされたリアス・グレモリーの尻に直撃し破裂音を鳴らした。叫ぼうにも口の中に植物の根っこが蠢いているので声を出すことが不可能なのだ

 

 彼女の尻は髪の毛と同じように真紅に腫れあがり純白の下着を染めてしまっている。意識が遠のくと根っこが食道で回転し無理やり覚醒させられた。もちろんギャスパーも同じように拘束と同時に脱がされ下着姿を観客たちに見せている

 

 

「しかしシトリー家の植物っておっかないね」

「え~可愛いじゃん」

 

 リアスたちを拘束しているのはシトリー領で育つ植物で園芸フロアにある腐葉土に持ち込んでいた種を植えて発芽させたものである。この植物は剛と柔を併せ持つ代物で木場の聖魔剣でも一撃で断つのは不可能だ

 

 アーシアたちから連絡を受けた3人はこのフロアに身を潜めてリアスたちが来るのを待ち伏せていた。腐葉土の入った袋を破って種を蒔いて水と自分たちの魔力を注ぎこんで急速成長させると、ノコノコとやってきた敵を見つけて『騎士』の巴柄が姿を晒して囮役になった

 

 

「まさか簡単に引っ掛かるなんて」

 

 彼女では『騎士』スピードには追い付くことは不可能なのに頭に血が上っていたのか、魚を咥えた猫を追いかける主婦のように駆け出した。あとはもう説明することもなくリアスは育った植物に捕まってしまい屈辱のポーズを披露することになった

 

「もぅぅぅぅんぅうんぅん」

「もっとやって欲しいって!」

 

 涙目で強引に顔を横に振ろうとするが首も拘束されているのでミリ単位でしか動かすことが出来ないのだ、必死に声を出そうとしても気道が塞がれ呼吸も苦しくなる

 

 

「4番 サード 由良翼紗」

 

 スコップを渡された彼女は念入りに素振りをしてリアスの尻に向かって軽く叩いてスイングの軌道を確認する。どっしりとした構え深呼吸をすると西武ライオンズで55本のホームランを打った助っ人外国人のように後方に反ると渾身の力を籠めてフルスイングを叩き込んだ!

 

 

"グワァラゴワァァァガッキィィィィン"

 

 

 独特な炸裂音と共に彼女のヒップに対して特大のダメージを与えた。痛みに耐えることの出来なかったリアスは涙を零すが逆さまなので誰も目にすることはなかった

 

 3発、5発、10発…もう何度も聞こえてくる音を数えることを諦めてしまった。そしてその目から光を失い動かなくなったことを確認したグレイフィアは声高々に宣言する

 

 

『リアス・グレモリー様リタイア!よってソーナ・シトリー様の勝利です!!』

 

 ゲームはこれにて幕を閉じた




ソーナVSリアスのレーティングゲームは終了です
小猫に比べてリアスのは淡白になってしまいましたが、技量の限界です


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