争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい   作:大気圏突破

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グレイフィアは左手に嵌められたリングを見つめる

 シトリー家の協力者である赤龍帝の石動がサイラオーグに勝利した。あの若手悪魔最強格の彼が手も足も出なかったのだ、大地を揺るがすパンチを受けてもダメージを与えることは出来なかった。これを対戦と呼べるのだろうか?勇猛果敢に攻撃を繰り出した者が傷つくだけの蹂躙である

 

 

 

「あれが今代の赤龍帝」

 

 観客席に座るシーグヴァイラは感嘆の声をもらしていた。隣に座ってロボットトークをしていた彼の強さに魅入ってしまっていると同時に今後について思案していた

 

 伸元はシトリー家と友好的であって悪魔側の味方ではない、敵対すれば容赦なく潰されてしまうだろう。別に彼の力を利用してのし上がるつもりは無いが手を取り合える関係でありたいと思っている

 

 

「(こればかりはソーナに感謝しないと)」

 

 もし彼女がリアス・グレモリーのように傲慢で自己中な悪魔だったら赤龍帝の彼は悪魔そのものを敵として認識してたはずだ、ソーナのおかげで自分たちは平和を享受することが出来る

 

 あの絶大な力を見て色めき立つ貴族や上級悪魔たちもいるだろう、風の噂ではフェニックス家がシトリー家と手を結ぼうとしている。他の面々も同じように接触するだろう

 

「(安易に動くのは愚策ね)」

 

 少なくとも今ではない、過剰な売り込みは印象を悪くさせてしまう。数少ない共通の趣味の話しができる存在を失いたくないのだ、とりあえず人間界へ帰るまでに連絡先の交換をしようと考えるのであった

 

 

 

 

「宣言通りに勝ってきましたよ」

 

 元の姿に戻り伸元は応援席にいたソーナたちの所へ戻った。上半身裸では流石に気まずいので匙が物販コーナーで購入してきた『レヴィアたんTシャツ』を手渡した

 

「凄いじゃないかノブチカ!」

 

 鼻息の荒いゼノヴィアが抱きつくように飛びつき、アーシアも怪我が無いかTシャツを捲って脇腹周辺をプニプニ触っているのでくすぐったい、他の眷属たちも近付いて彼に称賛の声を浴びせている。そして…

 

「大丈夫なんですよね?」

「勝ってこいと言った勝利の女神のおかげです」

「もう…バカ」

「じゃあ馬鹿なので夏休みの宿題手伝ってください」

 

 中学の証明で躓いてから数学に対して苦手意識を持っている。先生役になるソーナは根気強く教えてくれたおかげで赤点は回避しているが微分・積分だけはどうしても理解することが出来なかった

 

 

「おい!赤龍帝…あれは何だ?」

 

 祝勝会ムードの雰囲気をぶち壊す勢いでアザゼルが輪の中に乱入してきた。さっきの試合で見せた戦闘形態について問いただしている

 

「空気ぐらい読めよ」

「そんなことはどうでもいい、教えてくれ…あれは『覇龍』なのか?」

「何でアンタに教えなきゃいけないんだ」

「減るもんじゃあるまいし構わないだろ!」

 

 似非チョイ悪っぽいオッサンの空気を読まない発言に、伸元を含めシトリー眷属は侮蔑を込めた視線を向ける。しかしこの堕天使総督はお構いなしに尋ねてくるのだ

 

 

「交換条件にしてくれるなら少しだけ教えるが」

「また人工神器が欲しいのか?いいぜ俺の研究室から好きなものを持っていきな」

「今は欲しいものが無い…あとで請求する」

「分かった!早く教えてくれ」

 

 玩具をねだるような目で見つめて気持ち悪いと全員から思われていることも知らずに『紅赤朱の兆覇龍』の簡単な概要だけを伝えた

 

 

「その歳で散っていった歴代たちの全てを受け入れたのか」

「登校中や学校の授業だったり、時間はたくさんあったから」

 

 云うても転生者なので小学校の授業は体育以外が苦痛なのだ、なお試しに歴史のテスト中に籠手に宿る者たちへ問題の答えを求めたら何も口にすることなく無言を貫いていた。赤龍帝の宿主って自分も含め勉強嫌いが選ばれる傾向があるのかもしれない

 

 

「ヴァーリが歴代最強と思っていたが上にはバケモノがいるのか」

「できるんだな…『覇龍』を、アイツも」

「発動してもカップ麺すら作れずに解除されちまう未熟な『覇龍』だ」

 

 

 答えを聞いたアザゼルは邪魔したことに対して頭を下げると、グレモリー家側の方へ戻っていくと入れ替わりでセラフォルーが突撃しソーナに抱きついて今日の健闘を称えた。既にシトリー家では祝勝パーティーの準備が整えられている

 

「だってソーナちゃんがアレに負けることなんて千兆パーセントあり得ないんだもん☆」

「姉さん…くるしぃ」

「もっと抱きしめてキスもしてほしいって☆」

 

 とりあえず百合百合する姉妹の愛を放置することを決定し、椿姫の号令で眷属と伸元は本宅に戻る魔法陣に乗って帰宅するのであった

 

 読者の方々へ「あれっ?サーゼクスから褒賞を貰うのでは?」と思っているかもしれません。2日後に4人の魔王が主催するパーティーが行われ、今回のゲームで活躍した者たちへの褒美を贈呈する流れになっているので伸元はそこでサーゼクスに要求をします。そして件の魔王は…

 

 

 

 

 

「嘘じゃないのか?こんなにもするなんて」

「いいえ、アジュカ様に何度も検算をしていただきました」

 

 グレイフィアから渡された紙を見て魔王は顔を真っ青にさせてしまった。頭髪が赤なので横断歩道の信号機のように見えている

 

「いくら何でも高すぎる…これじゃあ」

「あの場にいた方々はサーゼクス様が全ての責任を負うと耳にしています。カメラにも記録されていますが見ますか?」

 

 震えているのか顔を横に振っているのか分からないので彼女は再生ボタンを押して彼が堂々と「責任を負う」旨の発言をしているシーンを大音量で何度もリプレイさせる

 

 

「サーゼクス様たちを模した巨大なステンドグラスを修復には材料と職人を呼び寄せて膨大な時間と金額が掛かります。それに地下のワインセラーに蓄えられていた年代物の稀少酒も全て破損しています。それに石動様に与える褒賞もあります」

 

 人間界と同じように冥界でも資材の物価上昇が顕著になっている。今回のことで彼が支払う金額はグレモリー家が1年間で得る総収入を上回る額で、とても一括で支払うことが出来ないのだ

 

「すぐにセラたちを集めて予算会議を」

「何をおっしゃっているのですか?これは全てサーゼクス様個人で支払うものでございます。領民からの税金で賄おうなんて考えていませんよね?」

 

 

 ギャンブルで負けたカイジのように全てのモノがグニャグニャになっていく、彼は赤龍帝のことを見くびっていたのだ!望んでいたのはサイラオーグに負けて雑巾のようにボロボロになる姿を優越感に浸りながら見下すつもりだったはずなのに、ボロボロになってしまったのは己の懐であった

 

 子供のように泣き叫ぶ夫のことを見て妻は左手薬指に輝くリングを抜き取ってポケットの中へ乱暴に詰め込んだ

 

 

 

 

 祝勝パーティーが終わり入浴を終えたソーナの眷属たちは、戦闘による疲労も相まって割り当てられた部屋で就寝していた。明日は疲労を抜きながら魔王主催パーティーで着用するタキシードやドレスのサイズ合わせを行いながらマナー講座になる

 

「私の必殺技は凄かっただろ?」

「そうだなカッコ良かった」

「あれ以外にもあるからな」

 

 ゼノヴィアは今日の自慢がしたくて彼の部屋に訪れていた。まるで子供が運動会で1等賞をとったように興奮し文脈もハチャメチャになっている。しかし伸元はおざなりになることなく話を最後まで聞いて相槌をうちながら頑張った彼女のことを褒める

 

 

「もっと強くなって…主のある……最強の戦車は強く」

 

 段々と舟を漕ぐようになったのを見てゼノヴィアをベッド上に寝かせて掛け布団を被せると次第に瞼が段々と重くなっていく、優しく柔らかく手を握り安心させると寝息を立てるようになって意識が落ちてしまった

 

 

『朝まで付き合うぞ相棒』

「ありがとうドライグ」

 

 今日は寝ることの出来ない赤龍帝は人間界から持ってきた分厚い本を取り出すと、部屋を暗くして小さい豆電灯の光を頼りに読み進め夜が明けるのを待つのであった

 

 

 

 

 

 

 

「…人混みで酔うってこんな感じなんですね…」

「言うな、俺まで気持ち悪くなる」

 

 魔王主催のパーティー会場の端に設けられている休憩スペースに座る野郎2人は辟易としていた。会場内は着飾った悪魔で占拠され大賑わいの有り様である

 

 

「案の定ノブさんにアタックしてくるお偉いさんが沢山いましたね」

「セラフォルーさんがガードしてくれなかったら今も揉みくちゃにされてた」

 

 やはりと言うべきか彼と懇意になろうと考える悪魔はいたがセラフォルーが上手く捌いてくれたが彼女も魔王なので場を離れる時もある。そこを狙ってくる輩を押しのけて座ることが出来たのだ

 

 ソーナは椿姫を伴って関係各所へ挨拶回りを行い、他の面々はアスタロト家とアガレス家の眷属たちと合流し女子会を開催している

 

 

「やぁ」

「なんだ木場…お前も休みにきたのか?」

 

 タキシードを少し着崩した金髪のイケメンが現れ挨拶を交わす。しかし伸元の質問に首を横に振って否定をした

 

 

「すまないが小猫ちゃんを見なかった?」

「俺は見てないな、匙は?」

 

 同じように彼女のことを見てはいなかった。すると木場はいきなり頭を下げて捜索を手伝ってほしいと懇願してきた

 

「いいぜ木場」

「ノブさんっ!」

 

 こんな所にいても悪魔からのラブコールの嵐を貰うだけなので抜け出す口実が欲しかった。もしソーナに問い詰められたら全ての罪を木場に擦り付けよう

 

 そのことを匙に耳打ちすると彼も同じように立ち上がってタキシードの上着を脱いだ、サイズを合わせていても着慣れない服は肩が凝るのだ

 

「ありがとう2人共」

 

 感謝の言葉を貰った2人はゼノヴィアたちに外の空気を吸ってくると伝え会場の外へ出ていくのであった

 

 

 

 

 ホテルから少し離れた森の中を走る小猫は自身の目の前に現れた黒猫のことを追いかけていた。どこにでもいる普通の黒猫だが懐かしい気持ちに心が支配される

 

 その猫が大きくジャンプすると着物を大胆に着崩した女性の胸元にダイブしている

 

 

 

「久しぶりじゃない、白音…元気にしてた?」

 

 忘れることのない大切で大好きな家族の声だった。しかし目の前にいるのは自分を捨てて逃げてしまった大罪人でもある

 

「黒歌姉さま……!」

 

 姉の名前を口にした彼女はある決断を迫られることになるのだ!

 

 




アザゼルにも何かを要求するつもりです
サーゼクスは次章で報いを受ける予定です

そういえば黒歌の悪魔の駒って入ったままでしたっけ?

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