争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい 作:大気圏突破
サーゼクスは今日が来るのを待ち望んでいた。妻のグレイフィアが息子のミリキャスを伴ってグレモリー家から出て行ったことで彼の生活は激変してしまった。予定の管理や他の眷属たちへの指示は彼女が行っていたので毎日がてんやわんや大騒ぎの連続である
妻子を連れ戻すために人間界へ向かおうにも今の状況が許してくれなかった。積み重ねてきた不祥事のせいで在籍する魔王の中で1番低い支持率を叩き出してしまい、今回のことがゴシップ誌に掲載されれば民衆から突き上げをくらってしまう
「グレイフィア!」
ソーナたちと会場内を歩く彼女を呼び止めるが、妻は振り向いて冷徹な瞳で一瞥すると再び背を向けて歩き出してしまった
「待ってくれ……話を!」
「生憎ですが貴方と話す口は持ち合わせていません。言いたいことがありましたらシトリー家の顧問弁護士を通じて書面でお願いします。サーゼクス・ルシファー」
「ミリキャスは……ミリキャスは元気な―――」
叫んでも彼の言葉はグレイフィアに届くことはなかった。今回のことでセラフォルーやシトリー家に抗議をするつもりだったが両親に止められてしまいサーゼクスは虚無に陥るのであった
大恋愛の末に結婚して幸せな家庭を築いていたはずなのに崩壊するときはあっという間に倒壊してしまう。母から受け継いだ『滅びの力』で自身の家庭を滅ぼしてしまうのは皮肉としか言えなかった
「変ですね」
魔法陣のまばゆい輝きから視力が回復し目を開けると広い空間に佇んでいた。眷属たちも違和感を抱いているのか周囲をキョロキョロと見渡している
「ゲーム開始のアナウンスって―――」
「無かったですね。それに血の匂いがこんなに充満しているなんて」
匙の疑問にアーシアが答えるとゼノヴィアは警戒しながら『機神切魔の虚空斬破』を亜空間から取り出して臨戦態勢となり、他の面々も神器や植物の種を取り出してソーナを守るように陣形を組んだ
「とりあえず奥まで行ってみましょう」
レーティングゲーム中は不正防止為に個人所有の端末は預けられてしまう。現状を確認することが出来ないのは不安でありソーナは気持ちを伝播させないように気丈に振舞う
「ラインよ!」
龍脈から伸ばしたラインを地面に付着させた匙は目を閉じて自分たち以外に動いている者はいないか確認をする。特訓のおかげで足音1つでも振動が伝われば感知出来るようになった
「匙……」
「小さいですが遠くの方で複数人います。すいません正確な数までは」
「それだけでも十分な情報だ」
行き先が決まった彼女たちはゼノヴィアと翼紗の2人が先頭に立って歩み出した。段々と血の匂いが濃くなり鼻で呼吸をするのも嫌悪感を抱くようになってしまう。外部からの連絡が無いのはトラブルが発生していると思われるが原因が何なのか分からない
「待て!」
ゼノヴィアの声で全員の足が止まる。状況を察した匙は再び神器と地面を繋ぐと微かに呼吸音と心音が聞こえるが段々とリズムが遅くなるのを感じてしまう。武器を持つ手に力が入り全員に緊張が奔る
植物の種に自身の魔力を注ぎ込んで発芽させた留流子は根や茎を何重にも絡み合わせて腕に即席の剣を作った。黒い龍脈のように伸ばしたり鞭のようにしならせることも可能で生半可な刃物では斬ることはできない
「…いくぞ」
小さな声を聴いて頷いたのを確認し角を曲がると
「うっ………あぁぁ………あ、がぁぁぁ」
「ゼファードル!」
自分たちの対戦相手であるゼファードル・グラシャラボラスが眷属たちと倒れていた。床一面には真っ赤な血で埋め尽くされ靴の裏が変色してしまう
誰が見ても異常な光景で匙たちも地に伏している面々に声を掛けて体を揺するが反応が無い、味わったことのない凄惨な状況で胃の中身が逆流しそうになるが気力だけで押し返した
「回復を…アーシア」
彼女を呼び寄せて微かに意識のあるゼファードルの怪我を治したが失った血液の量が多く顔色が悪いままだった。アーシアの神器では怪我を治すことは出来ても体力まで回復させることは出来ない
「何があったの?」
「気、を……つけろ、ヤツは、俺達の…」
「グラシャラボラスの名も落ちたものだ!児戯にも満たない矮小な者が後継者とは…悪魔の面汚しとでも呼ぶべきかな」
声が聞こえる方向に顔をあげると軽鎧にマントを着用している茶髪の男が石柱の上に座って足を組んでいた。その瞳は自分たちを害虫のように見下すような視線である
「……あなたは?」
「歴史の勉強を疎かにしているな、お初にお目にかかる忌々しき偽りの魔王の妹よ。私は偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正当なる後継者…シャルバ・ベルゼブブ」
威圧するようなオーラを放ちソーナ以外で神器を持たない3人が膝をついてガクガクと震え泣き出している。心が折れなかった面々も冷や汗が噴き出し背中が一気に濡れてしまう
「あなたがゼファードルを!」
「その愚図のことか?私に対して舐めた口を叩いていたのでな、人生の先輩として若輩者に礼儀を教えたにすぎない…しかし見た目に反して蟻すら殺せぬ者がグラシャラボラス家の当主を担うとは、虚しくて言葉が出ない」
手を顔にあてて"やれやれ"というジェスチャーをしながら深く息を吐いている。その様子を見ていたゼファードルは雄叫びをあげながら立ち上がりシャルバに向けて中指を突き立てる
「この…クソ野郎がぁぁ!」
「なんだそれは?」
「テメェを殺す挨拶だよコラァァ」
瞬間移動したように近付くとシャルバは彼の中指を逆方向に折り曲げた。汚い声で泣き叫び折れてしまった指を見つめ涙を流す
「挨拶ならこうするものだ」
腹部にパンチを振り抜くと彼は『く』の字に折れ曲がり顔が前に出てしまって膝蹴りが顎に直撃する。悲鳴と共に骨が砕ける音が耳に伝わるがゼファードルの瞳は死んでいなかった。渾身の一撃を叩き込もうと折れていない方でシャルバの顔面を殴ろうとしたが
「散れ!」
「あがぁぁぁぁ!」
以前カテレアがアザゼルに向けて放った小さい魔力の弾によって彼は壁面まで叩きつけられてしまい意識を失ってしまった
「さて、セラフォルーの妹君。突然のことですまないが貴公には死んでもらう。理由は言わずとも分かるであろう?」
「私の他にもリアスたちを狙っているでしょ…禍の団」
ソーナの問いにシャルバは目を細めた
「我ら真の血統が貴公ら現魔王の血族に『旧』などと言われるのは耐えがたいことなのだよ、そこで寝ている愚図と同じく名前を穢す実力不足の魔王など不必要な存在だ」
再び放たれたオーラは強大で心臓を鷲掴みされ呼吸器が塞がれたような感覚に陥ってしまう。恐怖を捨て去ろうにも心が怯えてしまっている。こんな時に彼が傍にいてくれたらどんなに心強いか
「援軍など期待するな、ここに赤龍帝は現れることは不可能だ」
「なんだと!」
剣が震えるゼノヴィアの言葉にシャルバは指を鳴らすと観客席の様子が空中に投映された。そこには結界のようなものに閉じ込められた観戦者と共に伸元が映っている
「ノブさんなら…あんな結界なんて」
「では何故出ようとしていない?」
「………っえ!」
普段の彼なら拳1つで結界を破壊して突撃してくるはずなのに動いていなかった。結界の中にいる他の悪魔も右往左往しているが意味のある行動には見えない
「どうして?いったい何が」
「知らなくていい、君はここで死ぬのだから」
観客席にいる伸元とシーグヴァイラは結界の中に閉じ込められていた。2人の他に試合を観戦していた面々もいるので人口密度は割と多い
「禍の団が攻めてきたということでしょうか?」
「十中八九そうですね。閉じ込めたということは人質扱いかな」
『やるぞ!相棒』
ドライグの掛け声と共に籠手を右腕に出して内側から結界を殴りつけた
「きゃっ!」
殴っても結界が破壊されることはなかった。しかも攻撃した瞬間に衝撃を吸収されカウンターで魔力弾が放たれてしまいシーグヴァイラを襲ったが彼女の『女王』が身を挺して守ったことで無事だった
「これはいったい?」
「副会長の
「そんな―――」
今回襲撃してきた面々は赤龍帝の存在を恐れた。対抗出来るのはカテレアやシャルバなどの実力者ぐらいで下っ端たちでは手も足も出ない、だから彼等は考えて伸元を結界の中に閉じ込めることにした
普通の結界なら簡単に破られてしまうが、吸収・反射を組み込み数百人の術者の生命を賭して完成させた。彼が破壊するために攻撃すれば結界の中にランダムで魔力弾が放たれる。強ければ強いほど致命傷になってしまう
「俺に向けての人質という訳か」
これを破壊出来るのは伸元だけで彼の強さを逆手にとった作戦は上手くいくのであった。そして別の場所では
「カテレアちゃん」
「ごきげんよう偽りの魔王殿」
レヴィアタンの名を持つ2人が対峙し戦いの火蓋が切って落とされる
赤龍帝が強いのなら、その強大な力を枷にして閉じ込めれば問題ないということです
なおこの結界は作るのにコストがヤバイくらい高く、発動させるだけでも亡くなる術者もいますし維持も大変でドンドン倒れていきます
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
石動君の技にキン肉マンから抜粋してもよろしいでしょうか
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マイナーな技も出してくれよ OK
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ハイDにキン肉マンは合わないから NG