争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい   作:大気圏突破

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先週まで重賞はカチカチ決着が多かったのに何で今週からいきなり荒れるの?


二天龍は常に何かを引き寄せる

「2人とも私たちと攻撃のタイミングを合わせてください!」

 

 シーグヴァイラは結界の外にいるサイラオーグとグレイフィアに脱出するための手順を伝えた。女王のアリヴィアンと伸元は攻撃をして無駄に酸素を消費している面々を黙らせて自分たちの邪魔にならないようにさせた

 

 結界を同時に攻撃した際にカウンターの魔力弾が放たれなかったことに気付いた彼女は1つの仮設を立てた。【カウンターは面ではなく点として機能している】同等の攻撃力で同時に衝撃を与えればカウンターの術式がバグを起こしてしまい自分たちに向けて魔力弾が発射されない

 

 

「1発で仕留めないとマズいな」

「下手をすれば被害が拡大します」

 

 作戦に参加するのはサイラオーグ・グレイフィア・伸元・シーグヴァイラの4人で1番攻撃力の低い彼女に対して赤龍帝の力を『譲渡』してバラつきを合わせることにした

 

 最大のネックはサイラオーグだった。戦闘では常に全力で拳を振うので他者に合わせて手加減をするのが苦手である。鍛練を積んで肉体を追い込んでイジメれば成長し魔力とは違い繊細なコントロールを必要としない、愚直に頑張ってきたことが足枷になっている

 

 

「サイラオーグ様はもう少し落としてください!グレイフィア様と合わせます」

「3倍でいいんだな?」

 

 誤差を調整するようにアリヴィアンが指示を出し、赤龍帝の『譲渡』を済ませ全員と同調するために精神を集中させている

 

「(匙がいたら楽なんだが)」

『(ないものねだりをしても無意味だ!)』

 

 

 黒い龍脈を繋げば均一に分けることが出来る。生死が掛かっている場面で誰もが緊張してしまうが匙の胆力には期待していた。まだまだ成長途上だが経験を積めばシトリー眷属の中でキーマンになるとドライグ共々に思ってる

 

 外ではサイラオーグの眷属たちが作戦を成功させるために身を挺して攻撃を防ぎ敵を近づけさせないようにしている。背中に降り注ぐプレッシャーを跳ね除け4人の攻撃は同時に炸裂した

 

 

"ズッッガァァァァッッアァァァン"

 

 

 伸元たちを閉じ込めていた結界は崩れ落ち新鮮な酸素が供給される。苦しんでいた者たちは呼吸出来る喜びに感謝し作戦を立案したシーグヴァイラに称賛の声を送り続けていた

 

 

 

「ドライグ!」

『応!』

『Welsh Dragon Balance Breaker!!』

 

 

 脱出したと同時に彼は禁手を発動しグレイフィアの手を取ってソーナたちがいる場所へ飛び立った。そして残された面々は骨を鳴らし意気揚々と乱戦に馳せ参じる。自分たちにより若い悪魔が知恵を絞って頑張ってくれたんだ、後は我々に任せてほしいと胸を張っている

 

 

 

 

 

 

「予想より早かったな…赤龍帝」

 

 不意打ちのテキサス・コンドルキックを受けたシャルバは立ち上がり懐から小瓶を取り出して顔に振りかけた。『フェニックスの涙』で匙から受けた傷を治すと鎧に付着した埃を払うが下半身がおぼつかず顔が苦痛で歪みたたらを踏んでしまう

 

 

「道中にはカテレアがいたはずだが葬ったのか?」

「いや…セラフォルーさんが倒れているだけだった」

「そうか」

 

 シャルバの周囲に魔力が集中し臨戦態勢になる。伸元は後ろに手を回してハンドサインで倒れている匙を回収することを伝えゼノヴィアが反応してくれた。重症を負ってまでソーナたちを守った彼に対して心の中で称えた

 

 

「赤龍帝…そこの転生悪魔と共に私のところに来ないか?」

「何をほざく」

 

 突然のスカウトに驚くが平静を装い雑音を断ち切る。しかし動揺したのが伝わったのかシャルバは不敵な笑みを浮かべ優位に振舞おうとしていた

 

 

「禍の団には口だけの有象無象が多くて正直なところ耳障りだ!貴様は白龍皇に『100人いれば100通りの願いがある』と口にしていたな」

 

 その言葉に頷いた反応を見てシャルバは続ける

 

「願うのは自由だが出来ぬことを勝手に託すな、強大で敵わぬ相手に剣を突き付け蠟燭の火にも満たない魔力で最期の一撃を放つ者に私は敬意を表する。不安なら徒党を組んで仲間の骨と共に決死の覚悟で散る者を笑う奴がいたら存在そのものを抹消する」

「グレイフィアさんに逃げられたアレより魔王らしいよ」

「そこに倒れるヴリトラの魂を宿した男は輝く魂を持つ、塵芥なら恐怖に慄き逃げ出すが奴は立ち向かってきた。爪の垢を煎じて雑兵たちに飲ませたいものだ」

 

 

 シャルバは匙のことを高く評価している。久しく見なかった心の強き悪魔に最大の賛辞を送る様子に気になるところがあった

 

『時間稼ぎか!』

「馬鹿正直に耳を傾けてくれて助かった。だが私の発した言葉に嘘や偽りなど無い…返答を聞こうか?」

 

 分かりきったことだ!無言のまま伸元は拳に魔力を溜めて最短距離でシャルバを撃ち抜こうとしている。防御無視の突進を見て彼は軽くため息を吐くと

 

 

「………っ!」

「チッ………グレートレッドか?」

 

 押しつぶされそうな空気と心臓を鷲掴みにされた感覚に陥り攻撃が止まってしまう。呼吸をしても酸素が全身に行き渡らない現状を打破する為に気合を入れる

 

「潮時だな…赤龍帝よヴリトラの神器を持つ者の名前はなんだ?」

「本人から直接聞きな!」

「それもそうだな、悪魔にとって時間など有り余るものだ」

 

 

 背後に魔方陣が浮かびシャルバ・ベルゼブブは消えるように去っていった。伸元も禁手化を解いてソーナたちのところに近付こうとしたが

 

 

 

「見つけた赤龍帝」

 

 黒髪黒ワンピースの少女が彼の手を取って全員の目の前から消えてしまった

 

 

 

 

「グレイ…フィアちゃん」

「まだ喋らないで」

 

 地面に伏していたセラフォルーの応急処置を施したグレイフィアは深呼吸をして額の汗を拭った。出血が酷く危機的な状態だったが心拍が安定し目を開けてくれた

 

「カテレ―――」

 

 言うことを聞かない彼女の首筋に手刀を当てて気絶させると通信端末を取り出して応援と医療チームの要請を通達する。自分の彼と同じようにソーナたちの所へ向かいたいが今は信じるしかない

 

「(早く安心させてください石動様)」

 

 しかし見上げた空に巨大な穴が開くのを目撃したグレイフィアは端末を何度も鳴らすが伸元の声は聞こえず焦燥感にかられてしまうのであった

 

 

 

 

 

 シャルバが撤退をしたことで攻め込んでいた禍の団の面々も頃合いを見計らって帰還したが、首謀者のひとりであるクルゼレイ・アスモデウスは殿として残り、戦闘で亡くなった者を転送し続けた。おびただしいほどの傷を受け全身から出血しても歩みを止めることなく奮闘すると最後は自身の魔力を暴走させて自爆した

 

 敵に捕まって生き恥を曝すぐらいなら骨の1つすら残さず散ることを選択し実行した。例え肉体が滅んだとしても誰かの記憶の中で名前が残ることを誉れと思い、大笑いをしながら跡形もなく消えてしまった

 

 

 

 

「…ょう、いちょう……会長!」

 

 親しんだ声で呼びかけられたソーナは周囲を見渡して自分が室内にいることに気付いた。目の前には椿姫とゼノヴィアが至近距離で顔を覗き込んでいる

 

「ここは?………匙は!それに石動君も、探さないと!」

 

 ベッドから起き上がろうとするが2人に押し返されてしまい再び病室の白い天井を直視する。既に日付を跨いでいるが夜中なのに周りは玩具箱をひっくり返したように怪我を負った悪魔や親族たちで溢れ、白衣を纏う医療従事者が唾を飛ばしているが静かになる気配は感じられない

 

 

「大丈夫だから、ノブチカたちも(・・・・・・・)無事だ!」

「それは本当ですか!」

 

 さっきと同じシーンのように起き上がろうとするが今度は背中はベッドと密着したままで動かすことは出来なかった。落ち着いたソーナは伸元が消えてしまってからの経緯を2人から聞き出すことにした

 

 

 

 

「まさか禍の団のトップを連れてくるとは、嬢ちゃんの所から鞍替えして明日からテロリストになるつもりか赤龍帝」

「そうなったら真っ先に堕天使領を潰しにいくが構わないよな?」

 

 ソーナたちのいる病室から遠く離れた場所ではアザゼルが伸元たちと対面し詳細を尋ねているが何度も話が脱線してしまい核心まで辿り着かない、なおサーゼクスは事後処理をほったらかしてグレイフィアのところへ向かっている

 

 

「アザゼル。久しい」

「以前は老人の姿だったのに、今度は美少女さまの姿とは…いったい何のつもりだオーフィス」

 

 彼女は『無限の龍神』という異名でテロリスト集団のトップに君臨する。アザゼルの言うように姿を変えることが可能で、この美少女の出で立ちも仮初めにすぎない

 

 あの現場で伸元を連れ去ったオーフィスはグレートレッドの前に降り立ったが、巨大なドラゴンは2人の姿を一瞥すると飛び立ってしまい彼等は荒野にポツンと残されてしまった。とりあえず現状を確認するためにグレイフィアに通信して現在に至ることになった

 

 

「世界に興味を示さなかったお前が何故テロリストの親玉になった?暇潰しなんてほざくなよ…おまえの行為はすでに世界各地で被害を出している」

「―――静寂な世界―――故郷である次元の狭間に帰り静寂を得たい」

 

 淡々と答えを口にした彼女は伸元の手を握って立ち上がった

 

「我の仲間になってほしい赤龍帝」

「…はい?」

「その返事は了承と受け取る」

 

 部屋から出ようとする彼女をアザゼルが服を引っ張って止めてくれたことで難を逃れたが、オーフィスは首を傾げ不思議そうな顔をしている

 

 

「なぜ赤龍帝に固執する?そっちにはヴァーリがいるはずだが」

「白龍皇は弱者になった。だからグレートレッドを倒すのに赤龍帝が欲しい」

 

 あのイケメンバトルマニアに与えた『アレルギー』を解除することなく今日まで迎えてしまった。水アレルギーも発症しているので飲食も制限されてしまえば歴代最強という呼び名も廃れてしまっている

 

 

「熱烈なプロポーズだがどうする?」

「シャルバっていう奴にもスカウトされたんだけど答えはNOだ!」

 

 その言葉を聞いたオーフィスは「なぜ?」と問い掛けるが、答えることはしないで握っていた手を離したことで理解してくれたようだ、彼女は少しだけ寂しそうな眼で見つめると背中を向けて

 

「我は帰る」

 

 

 魔方陣を使わずに悟空の瞬間移動ようにオーフィスは姿を消した。アザゼルは義手の方で頭を掻くと今回の調書を纏めながらこれから起きる騒動に頭を悩ませ彼に1つ提案を持ちかけるのであった




とりあえず原作におけるホーリー編は7対3で旧魔王派の判定勝ちみたいなものです。ドンドン原作とは違う展開になると思いますが引き続きよろしくお願いいたします。

なおアザゼルの提案は匙に関することです

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