争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい 作:大気圏突破
石動家のソファーに座ったソーナはテーブルの上に置かれたホットコーヒーをイッキ飲みしてお代わりを要求した。街に蔓延る堕天使について姉のセラフォルー・レヴィアタンと協議して近日中に討伐する予定だったが彼が片付けてしまった
「詳しく話して頂戴!」
鼻息を荒くする彼女は普段の知的なイメージと違い現在進行系で血圧が上昇している。何せ目と鼻の先には涙と鼻水を流している3体の堕天使と顔面をボコボコに腫らし手で頬を押さえ泣き叫ぶ主犯格が転がっている
「…虫歯か」
倒れているレイナーレの近くでダイスを転がした伸元は止まった面の文字をつぶやいてペンとメモ帳を取り出した。財布の中から3000円を取り出すと破ったメモ紙と一緒にアーシアに渡す
「アーシアさんそこのスーパーで買ってきてくれる?」
「ふぇっ?えっと…あの?いったい」
「お願い」
懇願されて断ることが出来なかった彼女は駆け足でスーパーに向かい紙に書かれている商品を購入してきた
「あの~伸元さん…レイナーレさんに何を?」
「合法的で穏便な話し合い」
『絶対に嘘だ!』
ドライグのツッコミを無視して未だに頭の上で星を回している堕天使の口の中に氷でキンキンに冷やしたペットボトルの水を口内に注ぎ込む、普通なら気付け感覚だが虫歯で露出してしまった神経へダイレクトダメージを与える行為なのでレイナーレは叫び声をあげながら目を覚ます
「アーシア…それにアンタは!」
「お久しぶり~天野さん…いや堕天使のレイナーレさん」
邪悪な笑顔100%で彼女を見つめる彼を見て逃げ出そうとしたが右手と右足・左手と左足をビニール紐で結ばれていたので動くことが出来なかった。しかも歯が痛くて頬が赤く腫れあがっている
「質問その1.なぜ俺のことを襲った?」
「素直に答えるとでも?」
反抗的な態度だったので、スーパーの袋の中からアルミホイルを取り出すと口の中へ強引に押し込み上下の歯を嚙合わせる。するとレイナーレは激痛に悶え苦しみ顔面を鼻水で汚す
「もう1度聞く…なぜ襲った?」
「神器が…アンタの持つ神器が危険だから」
「質問その2.アーシアさんを引き入れた理由は?」
口を閉ざせば更に被害を受けると思った彼女は、頭痛と歯痛の苦しみを味わったまま目的を語った。アーシアの持つ聖母の微笑を抜き取ってアザゼル・シェムハザという堕天使の上層部から寵愛を授かるのだと
「神器を抜き取ったら所有者は死ぬんだぞ!」
「追放された半端者が持つくらいなら、私が十全に扱ってやる!どうせ悲しむ家族なんていやしない、死んでしまっても構わない!」
その言葉にアーシアは絶望に満ちた表情で泣きだしてしまった。流れ着いた果てに自分を受け入れてくれた存在から突き付けられたことを受け入れることができない
「最後の質問だ!ラストは2択になる…今ここでくたばるか?後でくたばるか?どっちだ!3秒以内に答えろ」
目の前に突き出された3本の指が段々と折れ曲がっていく、3本から2本…2本から1本となり最後の人差し指が曲がり赤龍帝の籠手を顕現させた拳がレイナーレの眼前に迫ったところで彼女は口を割った
「禁手化して堕天使の本拠地に乗り込んで捕まえてきたのね」
「乗り込んだときには3人しかいなくてフリード・セルゼンというエクソシストはトンズラしてた。こいつらも行き先も分からないって」
後でくたばるを選んだレイナーレは拠点に案内し、仲間たちと数の利で伸元たちを亡き者にするつもりだったが無力化させられたのは自分たちであった。なにせビニール紐で結ばれた彼女をハンマーの鉄球のように振り回しドーナシーク・カラワーナ・ミッテルトの3体は沈黙してしまい教会内にあった鎖で捕縛された
なお憂さ晴らしと称して堕天使たちの目にアーシアに買ってもらった濃縮還元のレモン汁を眼球にプレゼントした。当人たちは思った手を出す相手を間違えてしまったことに
「あの…伸元さんの使ってるサイコロは何ですか?」
「これのことかい?」
アーシアの質問に彼は手のひらに乗せて見せつけた。二十面ダイスにはそれぞれ違った文字が書かれているが要領を得ないことに彼女の頭にはクエスチョンマークが浮かんでいる
「使ってみた方が分かりやすいな」
ダイスを転がすと出た面には『こむら返り』と記されていた。その瞬間にミッテルトがふくらはぎを痙攣させながら泣き叫び始める
「俺のもう1つの神器の『
これは彼が先天的に所持をしていた神器である。転生前の人生は不健康で不規則な生活のせいで死んでしまったことで発現したものだ!1回目のレイナーレには『群発頭痛』フリードに『痛風』の目が出た。そして子供の頃にセラフォルーへ出したのは『下痢』だった。しかも複数回倍加させて投げたので常人には耐えられないレベルの痛みが襲い掛かりトイレへ駆けこませた
「出血や骨折を治すアーシアさんの聖母の微笑じゃ治らない」
「1番敵対したくない能力です」
興奮してアドレナリンが全開なら試合中に血が流れて骨が折れても痛みを我慢することが出来る。しかし『下痢』や『痛風』を我慢しながら戦うことは不可能に近い、相手にデバフを与え万全ではなくなる
「こいつ等は
「分かりました!家の者を呼んで連れていきます」
「私はどうしたら?」
不安そうな顔をするアーシアだが、ソーナの姉であるセラフォルー・レヴィアタンにも話は通してある。しばらくは会長の家で住み込みながら自分たちと同じ駒王学園に編入される…そして
「アーシア・アルジェントさん私には夢があります!その夢の手助けをしていただけませんか?」
「それって悪魔になるってことですか?」
その質問にソーナはゆっくりと頷いた。家族・教会・堕天使に裏切られた彼女が首を縦に振ってくれると思わない、しかし僅かな可能性にも賭けてみたい欲求に駆られていた
「伸元さん!私が悪魔になっても友達でいてくれますか?」
「俺の友達も紹介してやるよ!」
「ソーナさん!貴女の夢に私も混ぜてください」
こうしてアーシアはシトリー眷属の僧侶として転生した。聖母の微笑という怪我を完治させる神器はソーナの夢に向けて必要なピースとなるのであった
「結局のところ石動君にはおんぶにだっこでしたね」
「俺が勝手にやったことなので、後始末を任せてしまいましたけど」
生徒会室で弁当を広げる2人は騒動の顛末を口にしていた。堕天使たちはシトリー家で引き受け冥界で外交を担う彼女の姉が向こう側へカチコミをして相応の賠償金をせしめてきた。その一部は伸元にも贈与される予定だ
「アーシアさんは?」
「桐生たちと仲良く女子会をしてるよ!封鎖的な場所で暮らしていたから毎日が新発見の連続だって、変態コンビが突撃してくるけど全員で返り討ちにしてる」
今回の件はリアス・グレモリーとソーナ・シトリーの管轄する土地で、ソーナ・シトリーと関係者のみが問題を片付けたことが悪魔の社会に周知された。つまり本来この件に関わっていなければならない人物は…
「ソーナ!あなたはいったい…なんてことを」
「今はお食事中ですよリアス」
自慢の頭髪と同じように顔を真っ赤にさせたオカルト研究部の部長がドアを蹴破るように突撃してきた。堕天使たちが起こした騒動に対処できなかったことが露呈し家族から嫌味っぽいことを言われ鼻の毛穴が開ききっている
「貴方も勝手なことをして…私に恥をかかせるなんて!」
「見ているだけなら田んぼの案山子でも出来ますよ!何もしなかった魔王の妹さん」
この空間は彼にとって素の状態でいられる大切な場所である。平穏を邪魔にくる輩に慈悲の言葉など与えず口調も攻撃的になる
「これ以上私の敷地で貴方を好き勝手にしたら」
「なんなら今から悪魔に対して宣戦布告でもしましょうか?」
部屋の気温が一気に下がり鳥肌が立つ。心臓を素手で握られたような感覚に陥り呼吸をしても酸素が脳や体に行き渡らない
「貴女が領主になってから治安が悪くて、はぐれ悪魔が湯水のように出現してますが」
「私が無能だって言いたいの」
「その結果が今回のことですよ」
売り言葉に買い言葉…否、伸元の言葉の方が値段が高くてリアスの財力では買い取ることができない、実家からもはぐれ悪魔について言及されたからだ
何も言い返すことが出来なかった彼女は踵を返して生徒会室から出ていったが乱暴に開け閉めをしたせいでドアの金具が変形してしまい交換を余儀なくされた
「すいませんリアスが」
「いずれ身を滅ぼすぞ」
「ひょっとしてそれはギャグで言ってませんか?」
滅びの力を持つ彼女が自身の言動やプライドで身を滅ぼすシーンを想像したソーナは少し含み笑いを浮かべるのであった
不健康の極み(クレイジーダイス)
・生前ブラック企業に勤めていた彼が発現した本来の神器、二十面ダイスには病状が記されている。もちろん赤龍帝の倍加と組み合わせることが可能だがダイスを投げた後に倍加させることは出来ないうえに出目も操作出来ない
またレイナーレに与えた『群発頭痛』を解除しない限り他者に同様の疾病を与えることが出来ない能力
アーシアがソーナの僧侶になったので原作キャラの『草下 憐耶』はフェードアウトしています
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます