争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい   作:大気圏突破

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地震大丈夫でしたか?


アホの子

「(今回ばかりは………)」

 

 眷属たちがトレーニングに励んでる傍らでソーナは冥界から送られてきた書類を見て頭を悩ませていた。手元には『近日中にオーディンが駒王町へ来訪するため三大勢力から護衛を派遣する』といった内容であり、悪魔側からは駒王町に住む魔王の妹たちと全ての眷属、堕天使陣営はアザゼルとバラキエルが選出される

 

「(天界からも前乗りして来るみたいですが)」

 

 

 個人的にはゼノヴィアを指導しているデュランダルの前所持者であるヴァスコ・ストラーダに来てほしかったが書類に彼の名前は記されていない、しかし1番の悩みは

 

 

『赤龍帝の石動伸元を警護に参加させる』

 

 という文言であった。確かに伸元が加わってくれれば不安なくオーディンのことを守ることが出来るがシャルバに言われた内容が脳裏によぎる。このままではいつものように赤龍帝へ荒事を押し付けているだけだ

 

「(そもそも何でここで?)」

 

 

 冥界なら自分たちより上位の実力者が沢山いる。それこそ北欧神話の主神を警護したという実績は生涯の箔になり知名度や家名の向上にも繋がるので手をあげる者は山のようにいるはずだ、特にサーゼクス・ルシファー陣営は王・女王が不在なので自分たちより暇なはずなのに

 

「(石動君が人間だから雑に扱っても構わないってこと?死んだとしても悪魔の駒で復活させて赤龍帝を戦力として手駒にできるから…)」

 

 これはソーナの妄想でしかないが実際に悪魔の中には二天龍を恐れている者も一定数存在する。くたばってくれたら万歳で悪魔の戦力になれば万々歳と考えている不届き者もいる

 

 

「(今回は私たちだけで成功させましょう!)」

 

 素振りをしていたゼノヴィアを呼んで警護の話をしないように釘を刺した。彼は前回の襲撃でアガレス家への訪問が頓挫しているのでオーディンが駒王町に来訪している間は冥界に居てもらおうとも考えるのであったが、既に伸元の耳に今回の件は美候を通じて知られていた。そして件の彼は…

 

 

 

 

 

 

「ありがとぉぉぉうぅぅございますぅぅぅ…本当にぃぃ」

『(今からお祓いに行くぞ相棒!)』

 

 鼻水と涙を散らし泣き叫ぶエクソシストに辟易しながら特大の溜息を吐いていた。ドライグの言うように今から神社に行って女難を祓ってほしいと切実に願う

 

 

 紫藤イリナは再び駒王の地に足を踏み入れていた。もちろん物見遊山や観光ではなく任務として訪れたのだ、天界はオーディンの護衛役として生まれ故郷で地の利を知る彼女に指令を出したが、イリナが生粋の馬鹿であることを見落としていた。前回と同じように両手を骨折した漫画家が鼻の穴に筆を挿した状態で描いた落書きを『聖なるお方』だと思い込んでしまい全財産を使い果たしていた

 

 空腹のサイレンで現実に引き戻されたイリナは町に住むゼノヴィアに助けを求めようとしたが、道中でポケGOをプレイしながら歩いていたのでスマホの残量は2%を切っていた。かつての相方が着信に気付かなかったら全ての手段を失ってしまうので安易に使うことが出来なかった。しかし神は信心深いイリナのことを見捨てることをしなかったのだ

 

 

「伸元君…伸元君でしょ!」

「んっ?お前は…確か、あの時の……」

 

 かつて自分たちをブタ箱に送った赤龍帝を見つけ逃さないようにズボンにしがみついている。もうイリナにとって頼れる人物は彼しかいない

 

 

「オーディンの護衛役にアンタが派遣されるなんて、天界は余程の人材難か?」

「そんなことないわよ実力で選ばれたの」

 

 武力という名の穏便な方法で落書きを返却し財産を取り戻した2人は、公園のベンチに座りイリナが駒王町に訪れた理由を聞き出していたが気になることが1つあった

 

「人間じゃないだろ、お前」

「分かるの伸元君?」

「気の流れが微妙に人間と違うし…会議にいたミカエルに似たようなオーラを感じる」

 

 その言葉を聞いた彼女は立ち上がって祈りのポーズをとると、体が輝き背中からバッと白い翼が生えて少しだけ浮遊しドヤ顔を披露したので拳骨を叩き込んだ

 

 

「屋外でそんなことするな!一般人に見られたらどうする」

「ごべんなざい」

 

 コブができて赤くなった所を押さえていたのでキンキンに冷えた三ツ矢サイダーの缶で冷やすことにした

 

「転生天使?」

「うん…悪魔や堕天使の用いていた技術をセラフの方々が転用したの」

『転生悪魔と似たシステムだな!』

 

 

 神が死んで純粋な天使は二度と増やすことが出来なくなった天界の面々は、10名のセラフメンバーでトランプに倣った配置を用いて『御使い』と称した12名の配下を作った。A~Qが配下でKが主となる天使という訳だ、ドライグの発言に頷いたイリナは転生天使について詳細を語ってくれた

 

「それでイリナは何だ?」

「私はAよ!しかもミカエル様のエース天使として生まれ変わったの、もう死んでもいい!主はいないけれど」

 

 どうやら神が死んでいることはご存知のようだ、目を爛々と輝かせて左手の甲に『A』の文字が浮かび上がっている。見た目はまるでGガンダムに出てくるシャッフル同盟の紋章のように存在感を主張していた

 

 

「それエースの『A』じゃなくて、アホの『A』じゃないのか?」

「…ぇえぇええ?」

 

 その指摘に固まってしまい左手に輝いていた文字は光を失ってしまい、黒の油性ペンで雑に書いた歪な『A』に見えてしまうのであった

 

 

 

 

「伸元君もオーディン様の護衛をするんでしょ?もしかしてゼノヴィアも選ばれて―――」

 

 言葉の暴力から復活し『A』の文字も輝きを取り戻したイリナは身を乗り出して尋ねるが、彼は少しだけ思案すると黙ったまま首を横に振った

 

「どうして?だってあのサイラオーグって悪魔をやっつけた姿なら、どんな敵だってイチコロでしょ?お爺さんを悪の手から守らないと」

「ここで会談を開くことに疑問を持たないのか?」

「だってここは、その…和平が結ばれた場所だし」

 

 投げかけられた質問にイリナはしどろもどろになりながら答えるが、彼女の中でも納得していないのか歯切れが悪い

 

 

「でも悪魔の味方なんでしょ?」

「正確にはセラフォルーさんたちの味方だ!全ての悪魔じゃない」

 

 

 ラーメン屋での会話以降だが今回のことについて深く長く考えていた。駒王町を起点にしてしまえば赤龍帝が尽力して騒動を解決してくれる。良好な関係を続けるために適正な報酬を渡していけばこれからも彼は手を貸してくれるだろう

 

 別にソーナの夢を見捨てた訳じゃない、シーグヴァイラとロボットアニメを語りミリキャスと遊んでグレイフィア色気に振り回される日々は伸元の中で大事な生き甲斐でもある。アザゼルを虐めるのだって楽しい、だけど尻馬に乗る奴が増えてきたのも事実だ

 

 

 

「こんな所で何をしておるんじゃ、赤龍帝の小僧」

 

 声がする方に視線を向けると帽子を被ったラフな格好の爺さんに堕天使のオーラが漏れ出ているオッサンとスーツを着こなしたキャリアウーマンの女性が立っていた

 

 

「オーディンさん」

「えっ…このお爺さんがオーディンなの?」

 

 失礼極まりない態度で人差し指を向けるイリナに再びゲンコツを与えると彼女は砂を上をのたうち回りスカートから白いパンツが"こんにちは"と挨拶をしている。オーディンはスケベ爺のような笑みを浮かべるとスマホのカメラで撮影を始めた

 

 

「オーディン様…嫁入り前の女の子の痴態を撮るのは」

「かたいのう~、そんなんだから婚期が遅れてしまうんじゃよ」

「私の婚期とコレは関係ありません!早く消してください」

 

 

 スーツ姿の戦乙女に窘められた主神は頬を膨らませてしまい渋々動画を削除した。老人が拗ねたところで何も可愛いとは思わず気持ち悪い

 

 

「もう会談に訪れたんですか?」

「今日は観光じゃ、それにしても日本は良いところだコンビニでエロ本が買えるとは流石変態国家と言わしめることはあるのう」

 

 確かに日本は変態国家だが、それは技術力に関することで性的に変態という訳ではない……いや否定が出来ない!海外からだと干されている女性下着に興奮するのは変だと思われているし、どっかの校長は色んな意味でヤバイとしか言えない

 

 

「アザゼルから聞いたんだけど、どんなことでも知っているんだよな?」

「なんじゃ藪から棒に…ハーレムの作り方なら特別に無料で教えてやるぞ」

 

 オーディンは知識を求めるあまり、全ての知を司るユグドラシルの根から湧き出る泉を飲用するために片目を差し出した。その恩恵で全知に等しき知恵を持つとされるようになった

 

 

「行きたい場所があるんだ」

「ユートピアでも目指すのか?」

 

 少し茶化しながら問いかけてくるオーディンを見つめながら彼は

 

「次元の狭間ってどうやって行くんだ?」

 

 

 

 その言葉に対して絶句するのに10秒もいらなかった




石動君も表舞台に立つようになってから解決した事件のおこぼれをもらう者について考えるようになりました。とは言ってもソーナやセラフォルーたちを見限ることは決してありません(2人の前ではヒーローでいたいので)

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