争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい   作:大気圏突破

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ゼファードルの処分は甘いですかね?


淀の坂の鉄則を知らんのか?

 修学旅行先の京都は寺が多く、しかも殆どが神聖な場所なので悪魔がそこへ行けばダメージを受けてしまう。そこで彼等が京都旅行を楽しむときに発行されるのが『フリーパス券』である

 

 とはいえ全ての悪魔に対して発行される訳ではなく厳正な審査を通過しなければならない、シトリー眷属の場合はこれまでの人間界・冥界での活躍が評価され問題無く審査が通り、全員に生き渡り二天龍を宿す伸元にも手渡されたが

 

 

「石動君?」

「………どうしましたシトリー会長」

「ごめんなさい」

「いったい何回頭を下げるつもりですか?それに会長が謝ることじゃないですって、アレはもう終わったことですし」

 

 

 ゼファードル・グラシャラボラスが引き起こした騒動は関係各所に飛び火して悪魔の経済までストップした。なにせ2代目魔王を輩出したグラシャラボラス家の次期当主が身勝手な理由で伸元に喧嘩を売ったのだ

 

 人間界と同じように悪魔の社会にも終末時計が存在したら1週間前に12時を迎えていたと思われる。今日まで無事なのはソーナやセラフォルーが小さい頃から彼と深い絆で信頼関係を結んでいたことが功を奏した

 

 

 

「もうケジメをつけたじゃないですか」

「それは…そうですが」

 

 

 大公家から連絡を受けたセラフォルーたちは心臓が飛び出るような感覚に陥り謝罪に赴いた。以前サイラオーグが彼に対して挑戦状を叩きつけたことはあったが今回は全く状況が違う。どちらも同じ自己満足だがゼファードルは伸元の名声を利用して落ちてしまった評価を取り戻す打算があった

 

 本来なら金銭で解決したかったが彼は一切の要求をしなかった。尿管結石で入院中のサーゼクスがいたら万歳三唱をしていたと思うが、残っていた魔王たちはこれを自分たちに課せられた覚悟だと受け取った

 

 

・グラシャラボラス家は魔王選出権の剥奪と爵位の返納

・魔王ファルビウム・アスモデウスの無期限無報酬

・首謀者はコキュートスへの永久投獄

・今後人間界で暴れる悪魔に対しての厳罰化

・各勢力に今回の件を記者会見にて報告

 

 

 当初はゼファードルを極刑に処す提案がされたが死んでしまっては反省を促すことが出来ないということで堕天使のコカビエルと同様にコキュートスで恩赦が施されるまで待ち続けることになった。また眷属たちも連座制で咎を受けることになり禍の団と一戦を交えるときは最前線に配属される

 

 なおセラフォルーは自身の純潔を彼に捧げるつもりで滝に打たれて身を清めていたが、ソーナとグレイフィアによって縄でグルグル巻きにされてシトリー家の館に放り投げられた

 

 

「美候からスカウトされましたよ"みんなで一緒に大暴れしようぜ!"って」

「…まさか?」

 

 悲痛な顔を浮かべるソーナを見て彼は近付いて彼女の頬を両手でムニムニと優しく引っ張る

 

「い…ふる、きぃ…ふぅん」

「そんな哀しいことは言わないでください、会長やセラフォルーさんの前から消えることはありませんよ、約束したじゃないですか」

 

 

 白龍皇を宿してから彼は少し変わったというべきか壁を破壊するようになった。今まではこんなスキンシップをしなかったのに

 

 

「留守番たのみましたよ、学園…いえ駒王町の平和は会長たちの肩にかかってますので」

「大丈夫です。既に準備(・・・・)は終わらせていますので、石動君は匙のことを頼みます」

 

 

 ゼノヴィアたちに呼ばれた彼はフリーパスを受け取ってバスに乗り込んでいった。この半年間で様々なトラブルが起きて気が休まる日は少なかった。せめて旅行中だけでも普通の学生らしい思い出を作ってきてほしいと願うソーナであった

 

 

 

 

 

「なんで俺達は教室に集合なんだ?」

「おい、バスが出発したぞ」

 

 女子更衣室を隠し撮りをしていた変態コンビは久々に登校していた。スーツケースの中には今日の為に購入したカメラや覗き見グッズが詰め込まれ、生徒会の面々に追われた時に使用する自作のテーザー銃も入っていた

 

 彼等は紫藤イリナの姿を舐めるような目つきで鑑賞しバスに乗り込もうとしたが、学年主任から教室に行くようにと指示を受けていた

 

 

「まさかタクシーで駅までいくのか?」

「行き先は同じ京都なんだし、向こうで合流すれば問題無い」

「そうだな…そういえば転校生のお尻見たか?プリっとしてて…」

 

 

 エロトークで時間を潰していたが誰も教室にやって来ない、不審に思った松田は外に出ようとしてドアを開けようとしたが全く動かない

 

 

「どうなっていやがる!誰かに連絡しろ」

「ダメだ電波が切れてやがる。こんなこと今までなかったぞ!」

「なん…だと」

 

 ここは最上階の教室なので窓から外に出ることも不可能だ、所持品で脱出に使えそうなモノは存在せず母親が作ってくれた弁当も空でセロハンテープに500円玉が貼りつけられていた

 

 大声を出して助けを求めようとしてもフロアにいる生徒は全員修学旅行生なので誰もいない、背中に汚くて臭い汗が溜まりシャツに付着し不快な気分になっていると、突然教室内のテレビが点いた

 

 

 

『まもなく3番線に―――乗車する方々は黄色い線の内側に―――』

 

 駅のホームに新幹線が到着しスーツ姿のサラリーマンや旅行客の老夫婦が荷物を持って乗り込んでいる。半袖短パンでザンボット3を持った子供がはしゃいで窓を叩く

 

 映像が切り替わると今度は食堂車が映し出されカップルたちが互いに『あ~ん』をしている描写が映し出された

 

 

「なんだよこれは?何で…」

「早くここから出せ!」

 

 困惑と怒りが部屋を支配する。俺達はこれから京都に行くはずなのに何でこんな映像を見せられているのか分からない

 

 新幹線が京都駅に到着するとバスガイドの恰好をした女性がマイクを持って生徒たちに観光案内をしているが男子生徒は全員坊主で女子たちも知らない顔ばかりだ

 

 

 

『今年の宝塚記念は京都で行われフジノパーシアが―――』

 

 とにかく映像が古く変色しているように見える。その後も金閣寺・銀閣寺が映されたが生徒たちはスマホどころか携帯電話を持っている雰囲気ではなかった。カメラも『写ルンです』ではなくアンティークと呼べる代物で現代でお目にかかることはない

 

 

「なぁこれって…オンライン修学旅行ってやつじゃ?」

「これのどこがオンラインなんだ!ただの旅行映像じゃないか」

 

 その後も映像は続き帰りの新幹線に生徒たちが乗り込んだところで映像が終わった。スマホの画面を見ると11時を過ぎていた。既に伸元たちは京都に向けて出発している

 

 

『これにて両名の修学旅行は終わりになります。お疲れ様でした(・・・・・・・)!』

 

 

 閉じられていたドアが開くと制服姿の警察官がぞろぞろと侵入していた。変態コンビは"自分たちは監禁されていた被害者"と口にしていたが、問答無用でシルバーアクセサリーをプレゼントされ連行された

 

 彼等が京都の映像を視聴している間に自宅へ踏み込んで証拠を押収し、かつて在籍していた兵藤一誠と同じように警察のお世話になることが決まった。またカバンの中から違法改造されたテーザー銃が発見されたことで悪質性が証明され言い逃れが出来ない状況に陥った

 

 学園側も当日中に放校処分にすることを採択し、かつて女子生徒たちを不安にさせていた変態たちは今日を持って駆逐されたのである。1年・3年は歓喜の声をあげて涙を流し、旅行中の2年生も吉報に喜んだ

 

 

「(これで平和になるな)」

『(あんな変態は霊魂になっても迷惑を掛けるぞ!)』

『(同感だな…赤いの、ハーデスすら嫌うな)』

 

 

 

 彼はイヤホンで耳を塞ぎ目を閉じていた。京都に着くまで時間はたっぷりあるので『光翼』に宿る歴代白龍皇との対話を試みている

 

 歴代赤龍帝と同じように彼等も力を持ったことで利用・迫害され最期は現世に恨みを抱いて散っていった。どうやらヴァーリもチャレンジしていたみたいだが上手くいかなかったようで、ヘソを曲げている奴もいる

 

 

『(難儀な者だ…無視すればよかろうに)』

『(これが俺の…いや俺達の相棒なんだ、分かってやってくれ白いの)』

 

 

 

 その様子を近くに座るゼノヴィアは無言で見つめていた。彼は未来のために人柱となって人間を辞める決断をした。顔の知らない大多数の他人のために自身の矜持を捨て去った

 

 だからこそ冥界で起きたゼファードルの犯した凶行に胸を痛めている。神滅具を宿す彼のことを自分を輝かせるためのアクセサリーだと思って拳を向けた

 

 

 

「(ストラーダ猊下……私はどうしたら)」

 

 昨日も夜遅くにタブレットを繋いでヴァチカンにいる師匠に相談してみた。魔王たちの記者会見で今回のことを知ったヴァスコ・ストラーダも苦慮していた

 

「戦士ゼノヴィアよ、彼のことを守ってあげなさい」

「守る?ですが…ノブチカの方が私よりも、ずっと…」

 

 

 画面に収まらない巨体を横に揺らす

 

「確かに彼は誰よりも強い存在となった。それは孤独に至る道を踏み出してしまった」

「孤独?」

「肩を並べる者が居ないのは寂しい、ゼノヴィアよ…君にも分かる日が訪れるだろう」

 

 ストラーダは子羊を諭すように微笑む

 

「守るとは力…パワー以外にも沢山存在する。良き理解者になることも大切だ!これは宿題としよう」

 

 そう言って向こうは通話ボタンを消した。果たしてゼノヴィアは答えを見つけることができるのだろうか?

 

 そして京都で何が待ち受けているのか?

 




変態コンビの修学旅行は午前中で終わりました。京都に行くどころかコロナの頃にあった学校で映像を観るだけ旅行で最後は豚箱行きになりました

もしかしたら悪霊のイッセーと再開するかも

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