争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい 作:大気圏突破
まさか目の前にいる少女がミリキャスの文通相手だとは思わなかった。九重と書いて『くのう』ってなかなか読まないじゃん、帰宅の勢いが削がれてしまったので話だけは聞くことにした
「ここに描かれておりますのが八坂姫でございます」
側近の鴉天狗が1枚の絵画を持って全員に見せつけた。巫女装束を着た金髪美女で頭部には九重と同じように狐の耳が存在感を主張している。そして何より胸がデカいので匙は生唾を飲み込んでしまい女性陣から白い目で見られるのであった
「母上は帝釈天からの使者と会談するために、数日前に屋敷を出たのだ」
しかし彼女は会談の時間になっても姿を見せることはなく、不審に思った妖怪サイドが調査を行ったところ八坂の護衛を務めていた鴉天狗を発見した
「その者が母上が襲撃を受け…攫われたことを伝えてくれたのじゃ」
『主君を守れない護衛など案山子と同じだ』
アルビオンの言葉に茶を啜っていたアザゼルは湯呑みを置いた
「各勢力が手を取り合おうとすると厄介なことが起こりやすい。クソ爺の時はロキで今回はテロリストってことだ!どいつもこいつも面倒な奴らばかりだ。平和を受け入れることが何故できないのかね?」
お前が言うな案件だと思う。レイナーレとコカビエルの引き起こした騒動はアザゼルが舐められていたのも原因であり、そのシワ寄せが伸元の方にやってきたのだ
「総督殿、どうか八坂姫を助けるため…力をお貸しいただけないじゃろうか?我らに出来ることならば何でもいたす」
側近の妖怪が頭を下げると部屋にいた女中や護衛を含めた妖怪たちが、同じように頭を垂れて懇願してきた
「任せろ!こっ」
「正式な依頼をセラフォルーさんに出してから頼んでください!俺や生徒会の面々はコイツの指揮下にいる訳じゃないからな」
アザゼルの言葉を遮り、伸元は今回のことに関しての条件を述べた。何も言わずに黙っていたら戦力として取り込まれるのが目に見えていたからだ
「おい!話を聞いてなかったのか?今後同盟を組む相手から頼まれているんだぞ」
「だから何だ?それこそ全うな手順を踏むのがマナーじゃないのか?」
断るとは言ってない、ここには眷属の長であるソーナや生徒会顧問のグレイフィアは居ないのでシトリー眷属の現場責任者はセラフォルーになる。少なくともオカ研のアザゼルが勝手に決めることは出来ない
「赤龍帝殿…、やはり昨日のことを」
「綺麗さっぱり水に流すつもりはないが、全員を目の前にして謝ったことは偉いよ」
現時点では神器マニアの堕天使総督より九重のことを高く評価している
「俺とイリナを除けばここにいるのは転生悪魔だ!そして悪魔は契約を重んじる。それに俺はシトリー家の庇護下に身を置いてミリキャスの友達だ」
云わば筋を通せば力になると暗に言っている。直営業ではなくオーナーに打診しなさいということだが、今から学園にいるソーナに連絡しても意見が反映されない状況に陥っている
今回の件に関して既に彼女が介入しているので、仮にソーナがOKを出したとしてもセラフォルーが首を横に振ったら参戦することは出来ない、魔王の意見に反旗を翻ることになるからだ
「京都にいるセラフォルーさんがここに居ないってことは、今の状況を知られたくないってことだろ?俺たちを1秒でも早く戦力の駒として取り込みたいと」
伸元はスマホを操作しシスコン魔王と回線を繋ぎスピーカーモードにした
『アザゼルちゃん!どういうことなの…何でそこにノブちゃんたちがいるの!』
「それは…その、大切な…同盟が、必要不可欠な」
しどろもどろになるアザゼルを見ながら、イリナと生徒会メンバーを引き連れて裏京都から出て行くのであった。………なお木場はオカ研所属なので居残るので、彼等のことを恨めしそうに見つめていた
「(疲れた!)」
ホテルに戻り夕食を済ませた伸元は座布団を枕にして畳の上に突っ伏した。裏京都を脱出した面々は観光を再開させたが1人だけ班から離れて別行動をしていた
『(相棒)』
「(分かってる屋上だろ?)」
『(やれやれ迷える邪龍に知恵でも貸すか)』
「ハァ…ハァァ……ハッ」
ホテルの屋上では匙が神器を発動させているが、龍脈から伸びたラインが自身の意に反して動き彼の体を傷つけている。痛々しい痣が数多く作られ呻き声をあげたくなるほど苦しいが涙を零さない
「俺は何も出来なかったんだ!会長たちが頑張っていたのに」
気にするなと言われたのにオーディンの護衛に間に合わなかったことを未だに悔やんでいる。自分が伸元のように神器を意のままに従えることが出来ていればソーナたちが傷つくことは無かったと思い込んでいる
「どうしてだ!なぜ俺の言うことを―――」
「そんなことじゃ聞いてくれないな」
声のする方へ視線を向けると『白龍皇の光翼』を広げた彼が上空から現れた。出入口の鍵を閉めていたから飛ばなければならなかった
「学生が修学旅行でやることじゃないな」
「ノブさん…すいませんが会長には」
神妙な顔つきをする匙だが、それを見て伸元は人差し指を口の前に構えて喋らないことをアピールした。旅行前にソーナから自主トレを止めるようにと言われていたが、今の匙が素直に頷くとは思えないから黙ることにする
彼はここに来る前に買っておいたスポーツドリンクを投げ渡すと、匙はキャップを開けて中身を全部空にした。足元の床は水溜りのような汗が複数点在し努力の跡を物語っているが本人の顔は険しく余裕なんて無かった
「飯も食わずに何をやってんだか」
「でも…俺が」
裏京都を出てから今に至るまで勤勉に励んでいたが納得のいく答えは見つからなかった。刺激されたことで腹の虫も怒っているので売店で購入した『ヴリトラ飯バーガー』を袋から取り出した
「すいません本当に…いろいろと」
「自己管理も眷属にとって大切なはずだが、違うか?」
「でも俺、次のレーティングゲームまでに使いこなさないと…ダメなんです!」
修学旅行前にサイラオーグの戦闘を映像で確認した匙は、今の自分たちでは束になっても彼に敵わないと断言していた。しかしヴリトラの神器を十全に使いこなすことが出来れば0%の勝率を引き上げることが出来ると思っている
「ノブさんは籠手に宿る歴代赤龍帝と対話したんですよね?」
「全員と話し終えるのに結構掛かったな」
「俺もこいつと対話すれば、必ず強くなれますよね?」
なりふり構っていられない状態だ!今の匙が癌の患者だったら高額で眉唾な怪しい民間療法に手を出すレベルまで追い込まれている
「対話はあくまで理解をすることだ」
「理解って…そんな、だって」
「話し合いをするのに、拳を握って力任せなことをするのはマナー違反だろ」
匙は抑え込んで一方的な力でヴリトラを従えようとしていたが、神器に宿る存在に歩み寄らなければ相手は心を開いてくれないのだ
『ガムシャラは若い奴の特権だが、偶には後ろを振り返ってみろ!教師を目指すのなら歩んできた道を誇れるようにしないと誰もついて来ないだろう』
『言うようになったな白いの』
二天龍や頼れる彼の言葉を聞いて思うところがあったのか考えこんでしまったが、そう遠くない未来に答えは見つかるだろう
しばらくすると眉間に皺を寄せたセラフォルーがやってきて、伸元の部屋に裏京都へ訪れた面々が集まっていた
「こんな時間に皆ごめんね☆」
「それで何が決まりました?」
「そうだね…その前に謝らないといけないね」
彼女は膝をついて全員の前で土下座をした!現役の魔王が転生悪魔に向けて額を畳に擦りつけているのだ!あのコスプレをするシスコン魔王が首を垂れている
「ごめんなさい…せっかく修学旅行なのに、楽しい思い出を作らないといけないのに、許してなんて言えない…恨んでくれても構わない、だけどノブちゃんたちの力を貸して!」
「…セラフォルーさん」
押し切られたという訳ではない、しかし現在の戦力では禍の団に対抗することが出来ないのが実情である。もしシャルバのような実力者が複数人襲ってきたら太刀打ちできないのだ
「絶対に埋め合わせはする!レヴィアタンの名において約束するわ」
こうなってしまったら仕方がない、とりあえず生徒会メンバー全員に『倍加』した赤龍帝の力を『譲渡』し、白龍皇の『半減』で堕天使総督を弱体化させてアザゼルを殴ってから明日の行動を決めるのであった
結局は八坂救出に手を貸すことになりました。
先の展開のネタバレではありませんが堕天使側との仲が険悪になる可能性も考えています
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
石動君の技にキン肉マンから抜粋してもよろしいでしょうか
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マイナーな技も出してくれよ OK
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ハイDにキン肉マンは合わないから NG