争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい 作:大気圏突破
「俺は手助けなんかしないから」
伸元から発せられた言葉を耳にしてリアスの眷属2人は固まってしまった。てっきりグレイフィアが自分たちよりも前に交渉して頼んでいたと思い込んでいたからだ
「君はグレイフィア様に頼まれて断るのか?」
「2人共なんか勘違いしてないか?俺はその人からリアス・グレモリーの手助けをするなって言われたんだ」
「えっ…そんな…」
義妹の愚行の謝罪と一緒にグレイフィアが口にしたのは彼女の結婚式についてだった。悪魔の世界でも少子化の波が押し寄せ悪化の一途を辿っている。悪魔の寿命は長いが繁殖能力が低い、跡継ぎ争いや内部対立などで滅亡し、存在した72種のうち残ったのは39種まで落ち込んでいった
結婚はリアスが大学を卒業後に行われる予定だったが上記のことで前倒しとなり、結婚相手のフェニックス家の三男であるライザー・フェニックスがオカ研に顔を出していた
「グレモリー家の次期当主としてリアスが相応しいのか疑問視する声が上がってまして」
「俺だったらアレの下で働きたくないですね」
領内ではぐれ悪魔や堕天使たちに好き勝手された管理者を支持するのは盲目的なバカしかいないだろう。一部ではリアスではなくグレイフィアの息子であるミリキャスをグレモリー家の次期当主に据える案もあるそうだ
「リアスは今回の婚約に憤慨してまして、平行線だった話を納得をする為に親同士の取り決めでレーティングゲームで雌雄を決することになりました」
「それでお願いとは…まさかリアス・グレモリーに手を貸せというのか?」
神滅具である赤龍帝の籠手の力は強大である。それを味方に引き入れることが出来ればレーティングゲームで相手を負かすことができるだろう。しかし魔王の妻で義姉からの頼みであっても受け入れるつもりはなかったが、グレイフィアは首を横に振った
「その逆です。今回のことを傍観していただきたいのです」
「?」
想定外の言葉に肩透かし食らう、てっきり身内の為に力を貸してほしいという文言が飛び出してくると思ったが真逆であった
「多分ですがリアスは、配下の眷属や親交のあるシトリー家に懇願して赤龍帝の石動様にレーティングゲームへの出場を要請すると思います」
「あの性格なら十中八九そうしてきますね」
「しかしいつまでも彼女のワガママを容認するつもりはありません、悪魔として上に立つ者としての責務を果たしてもらうつもりです」
「俺は眷属でもなければオカルト研究部の部員でもありません、遠くから2人の婚姻を祝福させていただきます」
その言葉を聞きたかったグレイフィアは少しだけ表情を崩し柔和な顔になる。惚れてしまいそうだが彼女は魔王の人妻なのだ
「もしリアスが強引な手段で迫ってきた時は私の方へ連絡をお願いします」
「承知しました」
数日前の出来事を木場たちに伝えると2人は顔を真っ青にして小刻みに震えていた。彼女の親族が彼に釘を刺したことについて理解することが出来なかった
「そういう事だ、まぁグレイフィアさんが来なかったとしても俺は首を縦に振るつもりは微塵もない、塔城さんたちはアイツの眷属なんだろ?それなら主の結婚を祝福しないと」
「だけど…部長の気持ちを蔑ろにしていいのですか」
「僕や小猫ちゃんを救ってくれた部長を助けたい、でもライザーの力が強大で君の力が必要なんだ!だから頼む、部長を救ってほしい」
必死の表情で頭を下げる転生悪魔たちだが今から耳鼻科に行くべきだ、手は貸さないと口にしているのに懇願すれば折れてくれると思い込んでいる。そもそもリアス・グレモリーを救うメリットが無い、彼女のワガママを受け入れる器なんて持ち合わせていないのだ
「いや…俺の話を聞いていたよね?」
「石動先輩が部長のことを嫌っているのは理解しています」
「君は会長の夢を応援しているんだろ?部長にも叶えたい夢があるんだ!だから手を貸してほしいんだ」
全くもって話にならない、仮に交渉するのであれば条件を提示しなければならないのに終始『お願い』でしかない、参加して勝ったとしても得るものが1つもないのだ、もしかしたら今回のことで赤龍帝をグレモリー家に取り込む算段も考えられる
「さっきも言ったが俺の返事は『NO』だ」
空になった弁当箱を袋の中に入れて伸元は2人の前から去っていった。しかし転生しても悪魔は欲深い生き物である。こんなことで引き下がることはなかった
「くたばれ!」
ヤンキー染みた男が吠えながら殴り掛かってくる。ソーナの兵士である匙元士郎の攻撃を片手で防御すると彼はニヤリと笑って神器を発動させた。黒い龍脈という『ライン』を伸元と繋げ勝ち誇った顔をしているが悪手であった
この神器はどんな物体にも接続し「ライン」で自分と相手をつなぎ力を吸いとる。考えてみてほしい御猪口の中に樽の蓋を取り外したワインを注ぎ込んだらどうなるか?
「ぐげぇぇおぼぼぼろろおぼろぼろここがぼぼぼおぼ~~~~~」
中身が溢れ出すに決まっている。オーバーフローした魔力のダメージは口・鼻・耳から噴水のように出血していたがラインは繋がっていた。伸元は匙を振り回して残りの眷属たちに攻撃を与えていく、女王である椿姫のカウンター神器『追憶の鏡』による反撃も意識を失った匙をガードベント扱いにして凌いだ
「伸元さんやりすぎです」
「すいませんでした」
フィールドの外では怪我人を治療するアーシアが彼のことを窘めていた。転生悪魔でも神滅具を持つ者との実力差が如実に表れている。アタッカーを担う存在がいないので子供騙しや小手先の戦法に頼らなければならない
「やっぱシトリー会長のところにも来ましたか?」
「強く念押しされました。あんなグレイフィア様の顔を見たことがありません」
椿姫とアーシア以外の怪我人を帰らせて後片付けをしていた4人はリアス・グレモリーの結婚式について話していた。ソーナのところにも伸元と同じようにグレイフィアが現れグレモリー家とフェニックス家のレーティングゲームに介入しないことを頼まれた
「昼休みにグレモリーの眷属たちが来て『レーティングゲームに出てほしい』って懇願されたけど、対戦相手のライザーだっけ?そんなに強いの?」
問い掛けられた質問にソーナはライザー・フェニックスの眷属や戦績について語り出した。一族が持つ不死の力や炎の翼を駆使し公式戦では高い勝率を誇り、全員女性で構築された眷属たちも相応の実力を持つ
「16対4って普通に不利じゃない?」
「その前にリアスはゲームの経験がなくて…」
「負け戦が確定してますね」
事実を突きつけた椿姫の言葉に全員苦笑いを浮かべる。抜きん出た実力があれば数字の不利を覆すことは可能だが今のオカルト研究部の面々には当てはまる人物はいない
「ちょっといいかしら?」
扉を開けて入室してきた声に顔を向けると、話題になっていたリアス・グレモリーたちが意気揚々と乗り込んできた
「何の用ですかリアス?」
「時間が無いから早急に伝えるわ、ソーナ…貴女の僧侶と私の僧侶を交換しなさい!」
「……はっ?」
幼馴染の友人の口から発せられた言葉にソーナの時間は数秒だけ止まった。同じように伸元・椿姫・アーシアも口を開けて呆けいてる
「冗談はよしてください、それにトレードに応じるとでも?」
「つべこべ言わずに彼女を渡しなさい」
横暴な物言いに全員の顔が険しくなる。王たちが納得すれば互いの眷属を交換することは可能だが、これは完全に命令だ
「お断りします。アーシアさんは私の大切な仲間です」
「ライザーとのゲームが終ったら必ず返すわ」
まるでゲームボーイの通信ケーブルでポケモン交換するような口振りだが、彼女にアーシアを渡したら借りパクしたまま知らぬ存ぜぬを突き通すだろう。リアスの性格を熟知しているソーナは頑として首を縦に振らなかった
「往生際が悪いなリアス・グレモリー」
「貴方のせいで、お母様からどれだけ…」
他責思考も甚だしい、本人の実力不足を棚にあげて人のせいにするとは結婚相手のライザーに同情してしまう。
「悪魔の駒は余っているわ、神滅具ならライザーも」
「誰がお前の眷属なんかになるかよ、お断りだ!」
例え山ほどの札束を積まれても彼女の下にはなりたくない、世間知らずの愚かなお嬢様には少し厳しさを教えよう。伸元は赤龍帝の籠手を顕現させるのであった
グレイフィアさんは「関わるな」と言いましたが、リアス・グレモリーの言い方にキレてしまったのでお灸を据えることになります
NHKマイルって荒れるはずなのに(負けたよ)
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