【完結】争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい   作:大気圏突破

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とりあえず修学旅行編はこれまで


落とし前

「あの曹操をやっちまうなんて、やっぱお前は凄ぇな!」

 

 ラーメンを啜る美猴は隣に座る伸元を見ながら感想を述べた。修学旅行先の京都から帰還し平穏な日々を過ごしていた彼は下校中にラーメン屋に立ち寄り美猴と出くわしてしまった。相手はテロリストだが分別をつけてくれるので邪険にはしていない

 

 

「とどのつまり凄いのは『黄昏の聖槍』だろ、アイツ自身は俺の知らない歴史上の人物を語るモノマネ芸人だ」

「いやいや、三国志の曹操を知らない方がどうかと思うぜ」

 

 替え玉を注文し使い古されたコップに注がれた冷水を一気に飲んだ美猴は、彼の腰にぶら下がっている如意棒に視線を向けている

 

 

「気になるか?」

「ならないと言ったら嘘になるねぇ…初代のクソ爺から貰ったんだろ!」

 

 

 これを含めて修学旅行最終日に起きたことを思い出しながら、京都の妖怪との会談について口を開くのであった

 

 

 

 

 魔獣との戦闘で重症を負った転生悪魔の面々は、治療を受けたが疲労が抜けず歩くことも困難で最終日はベッドの上から動くことが出来なかった。結界維持に参加していた翼紗、巴柄、桃の3人は戦力になれなかったので全員からリクエストを聞いてお土産を購入している

 

 

 

「此度は慌ただしい中、参列していただき京都の妖怪を代表し誠にお礼申し上げます」

 

 荘厳な和室にて八坂が集まってくれた面々に頭を下げていた。室内にはスーツを着こなして外交モードのセラフォルーに天帝の使者して遣わされた闘戦勝仏の孫悟空、英雄派のリーダーを倒し八坂を鎮静化させた伸元と戦闘に全く参加しなかったアザゼルが座り、何故か九重も端で着席していた

 

 

「堅苦しい挨拶なんざ抜きにして本題へ入ろうぜ」

 

 

 足を崩したアザゼルの言葉に八坂以外の冷たい視線が突き刺さり、失言したことを理解した堕天使だが意に介さずイニチアチブを主張しようとしたが孫悟空が咳払いをする

 

 

「九尾の狐が怖くてションベンをチビっていた鴉風情が何を言う、今回の席でお前に発言権など有り得ない、臭い息を撒き散らすのなら毛糸で縫い付けてやろうか?」

「二日酔いで遅れてきたジジイ猿が何を言いやがる。俺のおかげで赤龍帝を現場に引っ張って騒動を解決出来たんだ感謝してほしいものだ!」

 

 

 とりあえずお前等は黙っていてくれ、孫悟空は干からびた曹操の引受人となり師匠の三蔵法師に頼んで強固な封印を施すことを懇願し、閻魔の配下に厳重な警備をするように通達したのでアザゼルよりマシである

 

 

「2人共しばらく黙ってて、ここは無駄話をする場所じゃないでしょ!」

 

 おふざけ無しの言い方に気圧されてしまった猿と鴉は黙り足を組み直した。それを見て彼女は八坂の方へ視線を向けて会談を進めることを指示をする

 

 

「まずは娘の犯した無礼について謝罪させてください」

 

 八坂は伸元の方に体を向けると部屋の端にいる九重に対して自身の隣に座るように促すが、立ち上がった少女は牛歩のように足取りは遅く全身から汗が噴き出している

 

 

「早くしなさい‼」

「はいっ!」

 

 モタモタする様子を見て堪忍袋の緒が切れそうになるのを抑えながら娘を呼びつける。この様子だと修学旅行初日に自分たちを襲っていたことを黙っていたみたいだ

 

 

「レヴィアタン殿の関係者であり、修学旅行中の石動殿たちを襲撃したことに対して親子共々謝罪申し上げます」

「生憎ですが子供だから言って、なあなあで済ませることはしません…それに邪魔をしないと言いつつ戦闘に割って入り甚大な被害を被りました」

 

 子供がやったことなら大目に見なさいという奴はいるが、敵意を持って自分たちを襲ってきた時点で水に流すつもりは毛頭にない、フィクションなら『ミリキャスの友達なら俺の友達だ!』という展開になるが、友達の友達という薄い関係でしかない

 

 

「配下の者共から聞き取りましたが誠に申し訳ございません」

「それで落とし前はどうするつもりですか?」

 

 頭を下げる狐の妖怪たちに冷徹な瞳で問いかける

 

 

「会談前にレヴィアタン殿と協議致しまして、娘の九重を悪魔側へ献上する運びとなりました」

 

 云わば人質として無期限に放出するということで、少女の生殺与奪の権利をセラフォルーを含める魔王たちに委ねるということになった。今回の会談で同盟を結べたとしても悪魔が上で妖怪が下になる構図で、無理難題を吹っ掛けることが可能になる

 

 

「謝って許されることではございません。どんな要求でも呑む所存であります」

「俺の求めるモノは何でも差し出すってことでいいんだな?」

「もちろんでございます」

 

 この流れになることはある程度想定していた。金銭を貰ったところで今は困っていないので不要であり二天龍と事前に相談した結果

 

 

「俺が欲しいのは京都で保管されている『避来矢(ひらいし)』と『鬼切丸』の2つだ!」

 

 伸元の口から発せられた言葉を聞いてアザゼルと八坂は驚きの表情を見せていた。2つとも逸話を持つ武具であり『避来矢』は飛んでくる矢が全く当たらない加護が施された鎧で『鬼切丸』は源頼光四天王の一人が北野天満宮上空で鬼の腕を切ったことに由来する国宝である

 

 

「石動殿それは…考え―――」

「どんな要求でも呑むんだろ?まさか今更"嘘でした!"なんて言わないよな?」

 

 

 考え直してくださいと言えなかった。どちらも大切な代物であり『鬼切丸』に至っては博物館で展示されている代物で、おいそれと持ち出すことが出来ないのだ

 

 

「期限は来週の日曜日まで、言っておくがパチモンや贋作を持ってくるなよ」

 

 これは彼ではなくソーナの眷属に与える為の京都土産に過ぎない、木刀・生八つ橋と迷ったが僅差で武具の方が上回ったのである

 

 

 そして会談の方はあっさりと終わった。京都の妖怪たちは三大勢力と対等ではなく悪魔の下部組織として組み込まれることになる。明日から劇的に変わるという訳ではなく妖怪たちは普段と変わらない日常を過ごす。余談だがセラフォルーは妖怪の中で選りすぐりの美人・美女を指名し『ヴリトラホテル』の従業員になることを伝え、給与や福利厚生について八坂と話し合う

 

 

「おい赤龍帝、ちょっと相談だけどよう『鬼切丸』を俺の方に譲ってくれないか?エテ公のジジイが曹操を持って行くせいで消化不良なんだよ」

「なんの冗談だアザゼル」

「巻き込んだことは謝るからよぉ…俺とお前の仲だろ、なんなら新しい人工ぅぅ―――」

 

 馴れ馴れしい態度で接してきたので彼は籠手を顕現させて鳩尾を殴って黙らせた。そして100秒ごとにチャージしダイスを振る

 

『ED』『高血圧』『便秘』『拒食症』の面が出るが求めてる症状ではなかったが5回目にして『クライン・レヴィン症候群』が登場してくれた

 

 

「何をしたんだ坊や?」

「アザゼルを眠らせる必要があってね」

 

 クライン・レヴィン症候群は反復性過眠症とも呼ばれ1日の大半を寝てしまう病気であり、記憶力低下や判断力障害などの日常生活や学業に支障をきたすことがある。もちろん『倍加』で効果を上乗せしているので心臓に杭が刺さっても目を覚ますことはない

 

 

 

「悪戯も程々にするんじゃな、それはそうと手を出しんしゃい」

 

 そう言われて手のひらを孫悟空の前に差し出すと、彼は懐から1本の棒を取り出して伸元の手に置いた。大きさはリレー種目で使うバトンをちょっと小さくしたモノだが見た目に反して重量感がある

 

「如意金箍棒…まぁ如意棒と言えば分かりやすいのぅ」

 

 孫悟空は自身の持つ如意棒を背丈と同じ長さにしてドヤ顔でハンドリングを見せつける

 

 

「ワシたちは坊やと敵対するつもりは無いという意思表明じゃな、しかも師匠様が直々に加護を施した特注品じゃからな大切に扱えよ!そうだな…月から地球にぶん投げても無傷なのはワシが保証するけどな」

 

 やったことあんのかよ!今まで徒手空拳が主な攻撃手段だったし伸縮自在な武器を貰えたのは僥倖である。孫悟空はヒラヒラと手を振って美猴と同じように床を別空間と繋げて消えていった

 

 

 

 

「おいおい旃檀功徳仏の加護ってヤベー代物だぞ!」

「そんなもんか」

 

 ラーメンを食べ終えた伸元はティッシュで拭いてゴミ箱に投げ捨てる。美猴は如意棒を拝むように見ながら手を合わせていた

 

 

「しかし京都の妖怪が悪魔の下になるとはねぇ…気に食わない連中もいるんじゃないのか?悪魔以上にプライドの権化だぞ奴等は」

「その辺は八坂さん次第だな、もし妖怪が中指を立ててくるなら相応の報いを受けるだけだよ」

 

 こっから先は自分が関わる領分ではなく、魔王たちやミカエルに対応してもらう

 

 

「それで英雄派の残党はどうなる?」

「散り散りってところだな、旧魔王派に取り込まれた奴もいるが組織から逃げた奴もチラホラだ!ただ神滅具を持っている幹部たちの動向までは分からないねぇ」

 

 リーダーの曹操がいなくても人は残り様々な道を歩むので今後の注意は必要になる。いっそのこと投降してくれたら楽だが問屋は卸してくれない

 

 

「なんか他に面白い話はないのかい?」

「他言無用だが、堕天使との関係を解消する可能性の目が出てきた。今回のアザゼルの態度に鉄槌を下すみたいだな」

「そいつは大スクープだねぇ」

 

 

 丼をカウンターの奥に返しテーブルを布巾で拭いた

 

「なぁ前にも言ったけど、俺っちたちと一緒に好き勝手しようぜぇ!自由を愛し自由に生きる」

「綺麗な姉ちゃんはべらせて、今日は東で明日は南ってか」

「分かってるねぇ…まぁ、答えは聞くまでもないか」

 

 断られることは分かっていた。だが彼も伸元と馬鹿話をするのが楽しくてしょうがない、もしかしたら頷いてくれるかもと思うが現実は優しくなかった

 

 

「また何か動きがあったらLINEで頼む、今度は椅子を並べて食べようぜヴァーリ」

「バレてたか」

 

 そう言って調理場で隠れている元白龍皇に声を掛けると、釣り銭を受け取らずに店の外に出るのであった

 




アザゼルの骨摘出は次章にするつもりです
曹操はフェードアウトするので、サマエル関連が無くなる可能性もあります(次の次の展開は全くの白紙)

新しい呼び名について意見をくださりありがとうございます

感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
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