争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい   作:大気圏突破

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大王家は赤髪兄妹が大嫌い

「お願いします!」

 

 高温多湿の室内で白作務衣を纏った3人が互いに頭を下げて礼を述べた。シトリー領で工房を構える武器職人の前には『夢双龍』を名乗っている伸元とシトリー眷属の翼紗が真剣な表情で佇んでいた

 

 これから翼紗専用の武器を作る為の素材を製作する。各地域から取り寄せた稀少な金属にアザゼルの体内から抜き取った骨と血を混ぜ合わせて新たな素材を形成し、徒手空拳の戦闘を得意とする彼女に似合うモノをオーダーメイドで1から作り上げるつもりだ

 

 

「あっつ~いぃぃ」

「無駄口を挟むな魔力を均一に注ぎ込め!」

 

 怒号を飛ばす職人の言葉を受けて気合いを入れ直した彼女は、再び集中し自身の魔力を注ぎながら素材作りに励む、せっかく用意をしてくれたんだ生半可なモノにするつもりは無い

 

 なお伸元がここにいるのは興味本位と暇潰しを兼ねているだけで別段必要ではないが、職人が『夢双龍』の力を混ぜ合わせてみたら面白そうという理由だけで着替えさせられた。本来なら今日はソーナたちの記者会見が行われる日だったが、サイラオーグとのゲームが中止になった理由を語ろう

 

 

 

 

 

「いったいどういうことですか?」

「………ソーナちゃん、実は」

 

 今回の一報を聞いたソーナは魔法陣で冥界に飛びセラフォルーを問い詰めた。彼との戦いの為に準備を整えていたのにも関わらず直前での試合中止に納得することは不可能で鼻息荒く顔を紅潮させている

 

 端的に言ってしまえばサイラオーグの実家である大王家側が高圧的な態度で口を挟んできたのだ!ソーナたちは夏休みの会合以降にロキや英雄派などの猛者たちと戦闘を連続して重ねてきたことで『満身創痍で万全な状態ではない』と言い放ち、延期することを求めてきた

 

 

「負けた時の言い訳をさせないつもりですって!」

 

 バアル家の当主は上記のことを口にすると"サイラオーグの勝利は揺るがない"と高笑いしながら言い放った。世間にもソーナたちの活躍は報道されているが、学生の身でありながら戦場に立つ姿勢に良い顔をしない上級悪魔や貴族も一定数存在する

 

 かつてサーゼクスが若手悪魔の前で『君たちを戦に巻き込みたくはない』『今は私たちに任せてほしい』と豪語していたが、当の本人が安全な場所で尿管結石の治療を受けているので批判の的になっている

 

 

「では日程が延びるだけで私たちの勝負は行われるんですね?」

「そうなんだけど…ちょっと」

 

 ゲームが延期になれば放送に穴が空く、ファンたちが望む勝負で高い視聴率も期待できる番組が頓挫してしまう。セラフォルー含む魔王たちはバアル家当主に指摘したが彼は代案を用意していた

 

 

「リアスが私の代わりに?」

「向こうは勝手に決めて…会場も抑えられちゃって、抗議したんだけど」

 

 

 サイラオーグの対戦相手は蚊帳の外にいたグレモリー家が選ばれた。グラシャラボラス家は不祥事で取り潰しとなりアガレス家とアスタロト家の対戦カードが決まっていたので、余っていた彼女に白羽の矢が立つことになった

 

 表向きはグレモリー家たちにチャンスを与える大王の慈悲のように見えるが、実情を知る冥界の住人からすると憂さ晴らしが込められている。バアル家にとって腹違いの姉が嫁いだグレモリー家が「滅びの力」を受け継いだことが気に食わない、しかしサーゼクスとリアスの人気は半年間で急落している今を好機と捉えたのだ

 

 

「今まで私がふざけていたツケなんだと思う」

「違います!…魔王の中で誰よりも頑張ってきたことを私や石動君が1番理解してます」

「ありがとう。ソーナちゃん」

 

 別にここで伸元の名前を出さなくても良かったが簪を貰ってから、今までとは違う意識をしてしまい心臓の鼓動が早くなる時がある。今日も隣に座っていたら冷静に振る舞う自信が無かったと思うだろう

 

 

「ここは大王様の言葉に甘えて休養にしましょう」

「そうですね。与えられたのなら目くじらを立てるのではなく活かしていきます」

 

 2人の中でリアスの敗北は確定し応援するつもりも無い、時間の許す限り自己研鑽を積んでレベルアップに努めることが出来る。余裕ぶっこいている大王の鼻を明かしてやろうと思うソーナであった

 

 

 

 

 

「咲け、聖魔剣!」

 

 伸元を囲むように無数の聖魔剣が地面から生えた!全ての聖魔剣の切っ先が彼に向けられ高速で飛来してくる。バックステップで避けると今度は空中で待機していた聖魔剣がジグザグ軌道で迫きた

 

「板野サーカスの真似事か」

「偶々YouTubeで見つけてね」

 

 一貫性の無い動きを目で追うと集中力が散漫になってしまう。動きが緩慢になったところを『騎士』のスピードで加速し距離を詰めて斬りかかり如意棒と鍔迫り合いになる

 

 

「もっと筋肉をつけたらどうだ?パワー負けしてるぜ!」

「力が無くても勝つ方法はあるんだよ」

 

 均衡した状態が続くと、木場は顔を横に振って自身の背後に隠して浮遊させていた聖魔剣を突撃させてきた。誰もが伸元の顔面に刺さると思ったが歯で受け止めて咬力だけで噛み砕いた

 

「ちょっと、それは嘘でしょ!」

「真剣白歯取りぐらい出来て当然だ」

「普通は出来ないって」

 

 その後は動揺した木場が押されてしまい、如意棒の伸縮自在な攻撃に対応することが出来ずに負けてしまった

 

 試合が終わると彼の下にはギャスパーとアーシアが飲み物とタオルを持って駆け寄り、伸元の方にはゼノヴィアが人工神器を肩に担いで近づいてくる

 

 

「どう…かな、君の見立てだと…」

「いやいや、どう転んでも勝つのは無理だろ」

 

 急遽ゲームが決まった木場からLINEが届き"鍛錬に付き合ってほしい"と記載されていた。伸元としても如意棒を用いた戦闘を試す意味合いがあったので二つ返事で了承し、訓練フィールドで対峙することになった

 

 また彼以外にも匙・ゼノヴィア・椿姫がスタンバイし、今回のことで溜まったフラストレーションを発散する名目で伸元に対して模擬戦を申し込んでいる

 

 

「しかしタッグ戦って、確実に塩を送られたな」

「やっぱりそう思うよね?」

 

 バアル家とグレモリー家の試合形式は2対2で時間無制限のタッグ戦となった。眷属総出になると観客や視聴者に蹂躙劇を見せることなるので今回のルールが取り決められた

 

 

「しかし何で木場がパートナーに選ばれたんだ?」

「僕も尋ねたんだけど部長は答えてくれなくて、しかも変な笑みを浮かべながら自室に籠ってしまって」

 

 相性を考えれば『女王』の姫島朱乃をパートナーに指名して弱点を突くのが定石なのに、選ばれたのは『騎士』の木場だった。彼も京都で魔獣と戦ったことで着実に強くなっているが勝率を優先するのであれば雷光を操る朱乃じゃなければおかしい

 

 

「今のうちに『はぐれ』になる準備をしたらどうだ?美猴のところを紹介するぞ」

「路頭に迷うようになったらお願いするよ」

 

 乾いた声で笑いながらアーシアの治療を受けた彼はフィールドから姿を消した。その後はストレスを抱えたゼノヴィアたちの捌け口となり、匙がアニメ版のワンピを視聴して見よう見まねで覚えた『蛍火』を黒炎で披露したがコントロールを誤ってしまい椿姫の制服をこんがりと燃やしてしまった

 

 

 

 

「(うふふ……あはは、これさえあれば私は)」

 

 薄暗い部屋で駒を握る赤髪の女性は気持ち悪い笑みを浮かべ持っていた駒に自身の唇を近づけた。軽いキスだが口元から離すと唾液が橋のように繋がっていた

 

 もう自分を蔑む奴等は目の前から居なくなる。輝かしい新しい時代が扉を開けて待ち構えている様子が見える

 

 

「さぁ…私の本気を見せてあげる!」

 




競馬を見ながら執筆で本命のエヒトが段々と下がった時に心臓が一気に冷えたよ(土日はプラス収支です)

中止ではなく延期で大王家の憂さ晴らしが込められています。それがこの章のタイトルにも繋がりますが…

感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます

石動君の技にキン肉マンから抜粋してもよろしいでしょうか

  • マイナーな技も出してくれよ OK
  • ハイDにキン肉マンは合わないから NG
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