【完結】争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい   作:大気圏突破

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今日は導入も兼ねているので短めです


悪辣な手段

 正直なところ今回のバアル家VSグレモリー家の対決は盛り上がりに欠けていた。冥界の住人たちは急成長を遂げるシトリー家を渇望していたのにも関わらず大王家の物言いによって対戦カードが変更されたことにブーイングをしている

 

 若手悪魔の会合で用いた会場も改修工事中でキャパシティの小さい箱で行われているが空席が目立つ、爵位を持つ貴族たちは顔見せ程度で参列しているが代役を立てているところもある

 

 

「同席しても?」

「どうぞ」

 

 伸元の隣にアガレス家の次期当主であるシーグヴァイラが座り、以前のことを謝ったが頭を下げる前に指先を彼女の額に当てて顔を下げさせるのを封じた

 

 

「貴女が謝る必要はありません」

「そうでしたね」

 

 彼女は彼の周囲に視線を向けるが会場内にシトリー家の面々が居ないことについて尋ねた

 

 

「今回は自由参加になりました。来るも来ないも当人たちの自由ってことで、会長はセラフォルーさんと一緒に挨拶回りをしてます」

「夢さんはどうしてここに?」

「サイラオーグから直接チケットを贈られたので」

 

 彼が言うように会場内にソーナの眷属たちは存在しない、匙のように個別のトレーニングに励む者や、疲労が抜けず今まで酷使していた肉体を休めるなど個人の裁量に任せることになった

 

 なお彼が『夢双龍』と名乗るようになってから、シーグヴァイラはフランクに『夢さん』と口にするようになり距離が近づいている

 

 

 

「私もよろしくて?」

 

 声に反応して2人は視線を後ろに向けるとドレスを着た金髪ツイン縦ロールの少女が立っていた。その出で立ちから名家のお嬢様だと見て取れる

 

「あらフェニックス家の」

「レイヴェル・フェニックスですわ!シーグヴァイラ・アガレスさん」

「フェニックス…ってことは、ライザーさんの?」

「ライザーは私の兄です」

 

 ドレスの裾を持って礼儀正しく頭を下げる彼女の姿は堂々としていた。女性に年齢を尋ねるのはタブーだが自分よりも年下だと思われるレイヴェル所作は教科書に載せる水準で完成されている

 

 どうやら彼女もフェニックス家の当主代行として会場に顔を出した。レイヴェルは2人の間に座り護衛と思われる黒服たちも有事の際にすぐ動ける位置に佇んでいた

 

 

「いつぞやは兄へのご助言ありがとうございました」

「結果は言うまでもないですよね?」

 

 春先の婚姻騒動が遠くに感じてしまうほど濃密な日々を過ごしてきた。あの頃はまだリアス・グレモリーの評価がここまで落ちるとは予想することが出来なかった。彼女に対して支持する者は雀の涙程度しかおらず、今日の客入りを見れば一目瞭然だろう

 

 

「賭けには参加されましたか?」

「オッズが低すぎて財布を開く意欲すら湧かない」

「生粋のギャンブラーでもリアスが勝つ方に賭けることなんてしないわ」

 

 酷い言われようだが仕方がない、アリが巨象に挑む構図でありサイラオーグの勝利は元返しオッズで賭ける意味が無いのだ、唯一まともな項目は試合時間に関するもので『30分以内に終わる』に対して札束が集中している

 

 

「ラウンジの方へ行きませんか?この勝負は火を見るよりも明らかですし」

「どうします夢さん?」

 

 喉を潤したいしラウンジからでも試合を観戦することが出来る。ここはレイヴェルの意見を尊重することにした。立ち上がって両手に花で真ん中に龍という構図は周囲から注目の的であり、今から始まる試合よりも視線を釘付けにしてしまう。なお道中で彼は運試しと称して『サイラオーグがダウンする』に対して1万円分購入した

 

 

 

 

 ドラゴンボールZのセルゲームで使用されたリングよりも広い場所でサイラオーグは向かい側に立つリアスのことを見つめていた。記憶の中に存在する彼女は"貴族として優雅たれ"を表すような女性だったが、真紅の髪はボサボサで目の下には濃厚な隈が主張している

 

 向こうのタッグパートナーは最初のゲームでライザーから一定の評価を受けエクスカリバーを破壊したことで有名な『騎士』の木場であり、自身は万全を期す為に『兵士』のレグルスが隣に立っている

 

 

只今より、サイラオーグ・バアルとリアス・グレモリーレーティングゲームを開始致します!

 

 スーツを着こなしマイクを握る進行役が場を盛り上げようとするが、歓声はまばらで拍手の音も小さかった。彼もリアスではなくソーナたちの登場を待ち望んでいたファンであり今回の仕事に対して熱意が湧いてこないのだ

 

 試合開始のゴングが鳴らされるとサイラオーグは反対側から接近してくる木場に対して防御の姿勢を取りつつカウンターを仕掛ける準備をしていたが

 

 

「祐斗!」

 

 自身の王である彼女に呼び掛けられて振り向いた彼が目にしたのは…

 

ズガァァァァァンンンンンン

 

 

 滅びの魔力だった。咄嗟のことで呆けてしまった木場は棒立ちのまま腹部に直撃を受けてしまいリングの端まで吹き飛ばされてしまった

 

 会場にいる観客たちやラウンジのモニターで中継を見ていた3人は言葉を失っている。フレンドリーファイアではなく明確な殺意を持った攻撃を味方に対して行ったのだ!

 

 

「うっ…がぁっつああぁぁ、あっははぁぁ」

「大丈夫か?」

 

 本来なら絶命してもおかしくない攻撃ではあるが、彼はサラシのように腹部を薄い聖魔剣で巻き付けていたことで致命傷を避けることができたが出血が酷い

 

 

「どういうつもりだリアス!」

「私にとっての邪魔者を消しただけ、あんな奴等と一緒につるむ下僕なんて必要ないもの」

 

 なおも無秩序に攻撃を放ってくる彼女を見ながらサイラオーグは、木場を抱えるとリング外で待機している医療スタッフに対して投げつけた

 

 

「グレモリー家は私とお兄様が居ればいいの!弱くて役に立たない下僕なんてケルベロスの餌にでもなればいい」

「どうしたんだ?いったい」

 

 

 明らかに常軌を逸している。少なくともサイラオーグの記憶の中にいる彼女はこんなことを口にすることはない、しかも眷属のことを下僕と発言していることも気になる

 

 

「ねぇサイラオーグ…私ようやく貴方の気持ちが分かったの」

「俺の気持ちだと」

 

 ケラケラ笑いながらフィギュアスケート選手のように回転しながら近づいてきた

 

 

「底辺から這い上がるのに必要なのは『力』だというのを理解したわ、弱くてクズな悪魔なんて冥界のゴミなの!」

「俺はそんなつもりで拳を振るってはいない!」

 

 闘気を放出し威圧するが、リアスは何食わぬ顔で見つめながら連続して滅びの魔法を放ってくる

 

 

「さぁ本気で挑んできなさい!全部滅ぼしてあげるわ」

 

 最も醜い争いの終着点は誰を勝者に選ぶ?

 

 




木場君退場です
サイラオーグはリアスに勝つことが出来るかな?

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