争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい 作:大気圏突破
このまま冥界にいたところでソーナの気持ちが晴れることは無いと思った伸元は彼女を連れて魔法陣で人間界に戻った。このまま1人にするのはマズイと考えた彼はシトリー家ではなく自身の住む家の前に降り立った
「お待ちしてました」
「ノブチカ、会長は?」
「詳細は後だ!」
玄関を開けるとゼノヴィアに頼んでおいたグレイフィアが待ち構えていてくれた。今回のことは自分でも手に余ることなので経験豊富な彼女の助けを借りるしかない
「ゼノ……ヴィア、ここは?」
「安心してくれ私たちの家だ!まずは風呂に入ってスッキリしよう」
「え…ちょっと!」
手を繋いで小さい子供が母親に引っ張られるように彼女を浴室まで促す。扉を閉める時にゼノヴィアが振り向いてアイコンタクトで彼のことを見つめ強く頷いた
「とうとう分水嶺を越えてしまったのですね?」
「王の駒については知ってましたか?」
「存じ上げております」
2人が入浴している間に冥界で起きたことを説明するとグレイフィアは表情を曇らせてしまいソファで横になっているミリキャスのことを見つめていた
「兄妹揃って何て愚かなことを…ヴェネラナ様たちは?」
「今はマスコミの対応に追われています。『オーフィスの蛇』を使ったことでサーゼクスたちが禍の団と繋がっていたのでは?と疑われています」
右も左も知らない子供だったら親の責任が問われるが善悪の分別が分かる年齢に達している奴等の責任を親が負う必要は無いと思う。その前にどうやって『オーフィスの蛇』を手に入れたのか不明である
「セラフォルーさんが事態の鎮静化に向けて動いていますが、アイツのせいで大勢の方々が亡くなりました。そして今回のゲームを主導したバアル家にもヘイトの矢が向けられています」
「見栄とプライドの行き着く果ては破滅なのでしょうか?」
いつもなら冗談で『滅びの魔力で自ら滅んだ!』と口にしているが、そんな空気ではなかった
湯上りの2人を出迎えソーナにペットボトルを渡してもキャップを開ける力は無かった。長年の友人だったリアスが目先の勝利に欲が眩み外法の道に堕ちてしまったこと、そしてゲームの根幹を揺るがす『駒』の存在を知って大きなショックを受けてしまった
彼はグラスを持ってきて注いだが彼女は飲むことすらしなかった。ひとまず席を立って屋外に出た伸元はソーナを預かることを冥界にいるセラフォルーへ伝え了承してもらった。また今の状態では学園に登校することも難しいので椿姫に会長業を代行してもらうことを頼んだ
「すいません…ごめんなさい、ごめんなさい」
「何で謝るんだ!王は孤高ではなく困難のときには臣下に頼るものだ」
「…ですが」
「ソーナ様、今は甘えてください休むことも必要なことです」
マイナス思考の海に漂っている彼女を優しく包み込むように手を握り安心させることに努める。今まで気丈に振舞っていたことで誰かに甘えるということが出来なかったソーナにとってグレイフィアの存在は姉であり母に近い存在だった
「生徒会の顧問になって短いですが、ソーナ様が夢のために誰よりも頑張っていることを見てきました。ですが走り続ければ息切れをしてしまいます」
「グレイフィア様」
「私を含め眷属の方々や石動様に頼ってください!」
その言葉でようやくグラスに触れることが出来たソーナはようやく表情を崩すことが出来た。しばらくするとミリキャスも目を覚まし全員で食卓を囲んで夕食となった
「私たちはこれで」
「今日はありがとうございます」
「構いませんよ私は顧問ですから、ソーナ様も大事な生徒です」
満腹になって再び寝てしまった息子を背負ってグレイフィアは魔法陣を展開して自宅に帰っていった。ようやく慌ただしい1日が終わると感じた彼は両手を天に向けて伸びをすると大きな欠伸をしてしまう
『(今日はもう休め)』
『(しかし悪魔はこれからどうなる?)』
『(我らが憂うことではなかろう。滅ぶのなら勝手に滅んでしまえばよい)』
「(なるようにしかならないか)」
バアル家の横やりが無ければ誰もが待ち望むソーナ対サイラオーグの勝負だったが、欲をかいてしまったことが原因で最悪な事態に陥ってしまった。罪の擦り付けあいと責任逃れの行く着く果てはどうなることやら
テロ活動をする禍の団に対抗するために三大勢力は結束を強めたのに内輪のゴタゴタで足並みが揃わない、天界は言わずの地蔵で何もせず堕天使はトラブルを引き起こす。正直なところラーメン屋で美猴の誘いに乗っていたらと妄想してしまうが頭を振って霧散させた
自身の入浴を済ませ部屋に戻るとベッドの上でパジャマ姿のソーナが座っていた。その脇には彼女が彼にプレゼントした『2001年宇宙の旅』が置かれている
「読まなかったのですね」
「ごめん…忙しくて」
軽いため息を吐いたソーナは隣の空いているスペースを手で叩き、座るように強要してくるので伸元は指示に従った
「未知なる可能性を信じて人間は宇宙を目指して努力して進化を続けてきました。飛行士も狭き門をくぐる為に過酷なトレーニングや勉学に励んでいるのに」
「ロシアが有人飛行を成功させアメリカが月に降り立った。ライバルがいたからこそ切磋琢磨して技術が進歩していきました」
「私はリアスのことを生涯のライバルだと思っていました。なのに―――」
同い年で魔王の妹という境遇は意識し合える関係であった。自分たちが若手悪魔を牽引するつもりだったのに彼女は禁忌に手を染めてしまった。半年前のリアス・グレモリーなら『王の駒』を否定しサイラオーグに挑んだと思うが失態と敗北が続いたことで善悪の分別ができなくなった
「今はセラフォルーさんに任せよう」
「そうですね。石動君…あの、そのワガママを聞いてもらってもいいですか?」
「世界を滅ぼせ以外ならなんでも」
その言葉を聞いた彼女は体当たりをするように伸元のことを押し倒して自身の顔を胸元に埋めた。今までなかった大胆な行動に驚くが彼は背中に手を回して優しくポンポンと叩く
「しばらく甘えさせてください」
「構いませんよ、いつまでも…そしてこれからも」
「そうさせてもらいます」
聞こえてくる心臓の鼓動は昂った気持ちを落ち着かせてくれる。幼い頃に自分を助けてくれた手て包んでくれる安心感は決して失いたくない大切な友人なのだ
少しだけ、ちょっとだけワガママになろう。そうだ私は悪魔なのだから別にこれは悪いことではない、誰だって手放したくない大切な人やモノは存在する
「(ず~っと私の傍にいてください)」
そう思いながら彼女は微睡ながら夢の中へ没入するのであった
暑いですね。浜松市は40度になるし
この先の展開ですが物語の終わり方も考えながら執筆します
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