争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい 作:大気圏突破
「体の具合はどうだリーア?」
「問題ありません…お兄様」
向かい合わせのテーブルで紅茶の入ったカップに口をつける。リアス・グレモリーはサイラオーグとの戦闘で四肢を失ったがシトリー領の医療施設で製造された最新式の義足を装着していた。負傷していた左手も元通りになったが右腕が無いままだった
「しばらく不自由が続くが我慢してくれ」
「このままならお兄様が構ってくれますし、こうやって2人っきりになるのは久しぶりですわ」
「リーアの為ならどんなことだって」
目が覚めたら知らない館の中にいた。テーブルの上にはアジュカからの手紙が置かれ『しばらく世間が騒がしいから雲隠れしていてほしい』と記されていた。使用人やメイドが存在しないので初めて自身の手でお湯を沸かして紅茶を淹れてみた。慣れない左手でカップを握る妹の姿にヒヤヒヤしながら介助をしていたが笑顔を見せてくれた
「今日はアールグレイにしてみたんだ」
「お兄様…昨日もアールグレイでは?」
「そんなことは無いさ、リーアの気のせいじゃないのか?」
「…………そうですわね」
昨日も同じように向かい合わせで同じモノを飲んでいた気がする。前日のことを思い出そうとしても靄が掛かってしまい何も出てこないのだ!サーゼクスが言うように気のせいだろう
「今日は左手のリハビリをしようかリーア」
「えぇ…お兄様」
初めてのはずなのに心がモヤモヤとする。昨日も同じことを…
「(昨日は何をしていましたっけ?私はいつここに?)」
「さぁ…行こう」
さて今回の顛末を話そう。グレモリー家との勝負を主導したバアル家には被害者の遺族から多額の慰謝料を請求された。またそれ以外にも破壊された会場の修繕費も支払うことになり所持していた財産や土地を手放すことになった
また責任を追及されバアル家当主はマグダラン・バアルと共に僻地へ追いやられてしまいバアルの名前を取り上げられてしまった。初代当主のゼクラム・バアルもサイラオーグのことを正式に当主と認めると隠居することを発表した。本来なら自身の影響を残す為に院政を敷くつもりだったが自身を含めグレモリー家の引き起こした愚かな行為に辟易としてしまい、俗世と関わることを止めることにした
これに伴いサイラオーグは正式に家督を受け継ぎリアス・グレモリーを鎮静化させたことを評価され褒賞を受け取ったが、彼は全てを現金化させて今回の出来事で苦しんでいる被害者や医療機関に寄付をした。結局のところこれで貧乏貴族状態となってしまい慣れない領地の運営に頭を悩ませるのは別の話である
グレモリー家についてだがジオティクスとヴェネラナ夫婦に対して責任が及ぶことはなかったが、ケジメとしてサーゼクスが人間界で所有する土地を日本神話の勢力に返納し資産価値のあるホテルなどの家屋を売り払い被害者への救済に当てた。そして2人はグレモリー家を畳むことを宣言し処理に奔走している
「封印刑?」
「多少強引だがサーゼクスは
「コキュートスに送るのね」
「表向きはね」
セラフォルーの言葉にアジュカは含みのある返しをした
「実は試合後にオーディンの方から打診があって『夢双龍と北欧神話で強固な関係を結びたい』と言ってきたんだ」
「どういうこと?まさかノブちゃんを―――」
「そんな外道に染まるほど落ちぶれてはいない、目の届く範囲に戦乙女を置くことで決着した」
北欧側としても彼とは良好な関係でありたいと願っている。かと言って戦乙女を献上品にすれば心象は悪くなってしまうのを危惧したオーディンはアジュカたちを緩衝材にした。駒王町には北欧神話の拠点が無いので彼等は日本神話に返納されたサーゼクスの土地を買い取って事務所を作ることにした
「でもそれが封印刑に繋がるの?」
「オーディンが彼にプレゼントした収納式家屋の設計図を渡されたんだ、そして…もう2人はその中にいる」
牢屋に閉じ込めたとしても誰かが鍵を開けてしまうかもしれない、それなら目の届く範囲に置いてしまえば問題無いということだ
オーディンが伸元に渡したテントの中は経年劣化を防ぐために時間停止が施されている。云わば起きたままコールドスリープをしている状態に陥るので空腹や老いることもなく永遠を生き続けることになる。そして堕天使側から提供された『幻映影写』の神器とアガレス家の当主と共に考案した『巻き戻り』の秘術によってベッドから目覚めれば同じ1日が始まる
箱庭に住む2人は気付くことなく昨日のリプレイを再現して過ごしていく、いつか恩赦が下されシャバの空気が吸えたとしても浦島太郎になったグレモリー兄妹を世間は受け入れてくれるか分からない、残念ながら玉手箱を作る予定はアジュカのスケジュール帳には書かれていないのだ
「ところで妹の様子はどうなんだ?最後に見た時は塞ぎ込んでいたはずだが」
「今もノブちゃんのところで暮らしているけど、ちょっと…」
「何か問題でも?」
今回のことで1番ショックを受けたソーナだが3日間ほど休んで学園に復帰した。周囲の面々としては、もう少し休んでも良かったが当人曰く"問題無い"と言い切った
溜まっていた業務は椿姫が陣頭指揮に立って、残っていた生徒会メンバーと木場・朱乃が駆り出されギャスパーが会計役として頑張ってくれたことで予算会議も不備なくスムーズに終わった
王を失った木場たちだがアジュカの預かりとなり立場上はフリーランスになった。他のプレイヤーが個々に交渉し契約がまとまればトレードという形で移籍することが出来る。なお朱乃は学園卒業後に父親のバラキエルと暮らすことが決まった
「あれって会長だよね?」
「隣にいるのは2年の石動君じゃ」
「腕を組んでいるけど、あの2人ってそんな関係なの?」
「だって生徒会じゃないのに、いつも会長と一緒に部屋で食べているじゃん」
言ってしまえば今までより距離が近くなった。同じ屋根の下で暮らし寝食を共にする日々が続いている。ゼノヴィアは2人の空間を邪魔しない為にイリナのところへ身を寄せようとしたがソーナが止めてしまった。そして若干ハイライトが消えた瞳で
「ゼノヴィアも私の大切な家族ですよ、
と口にしていた。そうなるとアーシアがシトリー家の屋敷で1人ぼっちになってしまうので彼女はしばらくイリナと同棲することを選んだ
元々2人の関係は水面下で噂されていた。春先の頃は伸元のことを自身の後を継ぐ次期生徒会長として育てていると思われていたが、彼がソーナに京都土産の簪をプレゼントしたことで風向きが若干変わった
「シトリー会長?」
「石動君…2人だけの時は"ソーナ"って呼ぶようにって言いましたよね」
いつもと同じ昼食の時間だが出入口のドアには鍵が掛かってしまい外からの侵入を拒んでいる。ソーナは甘えるようになったがベッタリという訳ではない、本人としては自分の作ったお弁当で『あ~ん』をしたい欲求に駆られているが理性が頑張ってくれている
「授業中に姉さんから連絡がありまして学園祭の翌日にアジュカ様が『王の駒』について説明してくれると言ってきました」
「大丈夫ですよね?」
「心配してくれてありがとうございます。色々悩みましたが全てを受け入れるつもりです」
その言葉を聞いて彼は箸で掴んでいたミートボールを白米の上に落としてしまった
「私の夢は誰もが身分に関係無く分け隔てなく通える学校を作ることです。確かに『王の駒』は許せない存在ですが切り離して考えます」
『受け入れるとはどういうつもりだ?ソーナ・シトリー』
「これはアジュカ様に提案するつもりですが、『王の駒』を使用している陣営を集めて総当たり戦の別リーグを作ってもらいます」
人間界でも世界大会やオリンピックのドーピング問題で頭を悩ませた。ハンマー投げの選手は他人の排泄物を自身の膀胱に入れて提出したこともある。ソーナが言おうとしているのは『王の駒』を使用した面々は限られた場所で戦えということだ
「世間の情勢によって困難な道のりになるのは承知のうえです。石動君にも頑張ってもらいますので覚悟してください」
「お手柔らかにお願いします」
「大丈夫です。疲れたら私と姉さんが癒しますので」
今まで見せたことのない妖艶な笑みを浮かべソーナな今後のことについて妄想を膨らませるのであった
サーゼクスたちがいる箱庭ですがドラクエ7の時計塔の街をイメージしています。朝起きれば記憶がリセットされ同じ1日が始まるという感じです
子供の頃に読んだポケモン4コマ漫画に押入れの中から古びたモンスターボールが出てきて、子供が「お母さん開けてみていい?」と尋ねるけど、母親が記憶を呼び戻してキャタピーを入れっぱなしということを思い出す内容を踏襲しています
木場君たちですが、前提条件として使用していない同じ駒を返納することになります
例)「木場君、私のところに来てくれ!」
「分かりました」
使用していない騎士の駒をアジュカに返納し木場君を引き入れることが出来ます
ソーナの案ですがドーピング有りで世界記録を出したら賞金を出す。という大会のことを思い出し『王の駒』を使用したランカーたちを隔離させます
感想ありがとうございます(おまちしてます)
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