生まれは血霧の里のかぐや一族 !   作:かろんたバンズ

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第二話 とても強い僕

「おっさん、これで買えるぶんだけ全部ちょうだい」

 

ここは霧隠れの里の中心部で大変賑わった大通りです。水影邸の鼻の先ですね。

僕が知る限りでは1番綺麗な街です。まあ僕が知っているのはこことかぐや一族の集落と盗賊に占拠された村だけですが。

 

さっき受け取った報酬で肉の串焼きをたくさん買います。8割を肉で後の2割は牛乳です。タンパク質とカルシウムは大事ですからね。肉と牛乳は強い体を作るのです。

 

おっさんから串焼きを受け取ると脇目も振らずにむしゃぶりつきます。この時間のためにわざわざ面倒臭い忍者の任務をこなす事になったのですよ。一働きした後の肉は最高です。

 

1つ、また1つと串焼きを食べ進めていきます。

 

そういえばこれはなんの肉なのでしょうか?

 

そんなどうでもいいことを考えながら最後の一串を食べようと口の前に運ぼうとしたその時です。

 

「あら?」

 

なんと口の前から突然串焼きが姿を消してしまったのです。

 

いえ、本当に串焼きが独りでに消える訳がないじゃありませんか。串焼きが突然無くなった原因は視界の隅に見える子供のせいでしょう、おそらく。

 

やれやれ、非常に困ります。僕の最後のとっておきの肉を奪い取ったあの子供には制裁を加えなければなりませんね。

走って逃げて行く子供に標準を合わせます。僕よりも小さく見えますね。

 

彼の目の前に移動します。子供の目には僕が突然目の前に現れたように見えたでしょうね。忍者とそれ以外の者では身体能力の差が凄いですから。

 

「ねえ君の持ってるその串焼き、とても美味しそうだね」

「なっ!」

「どこで手に入れたのか教えて貰ってもいいかな?」

 

僕の高速移動への驚きの余り子供は声を出せないようですね。

 

「返してくれないかな? 左手にあるその串焼き」

「うるせえ! どこでも良いだろうがお前には関係ねーだろ!」

「僕が返してって言ってるんだよ? 君は何も言わずに早くそれを返してくれればいいんだよ」

 

僕の親切さに満ち溢れた提案に対して彼は強い語気で答えました。

おそらく僕が彼と変わらない只の子供だからでしょう。彼の瞳には恐怖の色は全く見えませんね。舐められています。困ったものです。

 

「この串焼きはお前から盗ったんじゃねーからどっか行けよ! 殴るぞ?!」

 

なんと彼は僕に暴力を振るってでもその串焼きが欲しいそうです。全く野蛮な人だ。

構わずに彼から串焼きを取り返すために足を進めると彼は絶叫を上げ右腕を振り上げると僕に殴り掛かってきました。

 

しかしながら僕から見るとその攻撃は非常に遅くゆっくりとした弱々しい一撃でしかありません。

 

頬に迫る握り拳を僕は避けません。そのまま顔で攻撃を受けました。

 

「ぐああ!!」

 

痛みに悲痛な声を上げたのは勿論僕ではありません。

彼です。

 

ぼくは彼のパンチが当たるのに備えて顔面の骨を通常よりもカルシウム濃度を濃くし密度を上げたので頑強に硬くしました。

 

彼には鉄の塊を思いっきり殴り付けたときの痛みが拳に走っているでしょう。おそらく骨折はしていないでしょうが、これは僕の優しさですかね。

 

地面に蹲るようにしている彼の視線に合わせるためにしゃがみ込みます。

 

その時に気付いてしまいました。彼が持っていたはずの串焼きが土まみれになって地面に落とされていたことに。

許せません。

 

「このっ!」

 

痛みになれたのか顔を上げてこちらを見る少年の頭を蹴り飛ばします。彼は無様に吹っ飛んで行きました。その姿を見ると少しだけ怒りが収まりましたがまだ足りませんね。

 

しかし遠くで起き上がった彼が血塗れになっているのを確認するともう良いでしょうという気もしてきました。

 

土が付いてしまった串焼きを拾って彼の元に投げつけます。盗むまでして食べたかった串焼きを僕は寛大な心で恵んであげることにしたのです。

 

さて、余計なことに時間を潰してしまいましたね。これから僕は牛乳を買いに行かなければなりません。それも飛び切り美味しい物を。そうでなければこのイライラは収められませんからね。

 

この変に牛乳の専門店なんてものはないでしょうか?

ひとまず探してみましょうか。

 

□□□

 

『ミルク屋も〜も〜』

 

大きな看板にそう書かれています。傍らには御守りでしょうか? 御札が貼ってありますね。

少し汚いですが、いかにも牛乳専門店という感じがしていいですね。早速入ってみましょう。

 

「はいいらっしゃーい」

 

カウンターに肩肘付いたお姉さんが迎えてくれます。やる気がなさそうですがまあいいです。

 

店内をざっと見渡します。品揃えは素晴らしいですね。沢山の種類の牛乳が置いてあります。中には羊や山羊などのミルクもあるようですね。

 

取り敢えず今手元にあるお金で買える1番高い物にしましょう。大した金額はないですね悲しいことに。

 

「じゃあこれくださいお姉さん」

 

シルバーミルクという牛乳を買うことにしました。

 

「はいどうぞー」

 

やはりやる気が無さそうなんですねこのお姉さんは。

 

では早速頂きましょうか。

 

うん美味い! やはり一働きした後の牛乳は別格ですね! 味がしっかりしているのにしつこくは感じない。この豊かな味わいはやはり癖になってしまいますね!

 

「お姉さんここの牛乳は美味しいですね! これからは毎日来たいと思います! それではさようなら! また明日会いましょう!」

 

すっかり力を回復した僕はこれからかぐや一族の集落に戻らなければなりません。族長に任務の報告をした方が良いでしょうからね。

 

ミルク屋も〜も〜から飛び出し集落方面に駆けて行きます。

西側へ走れば走る程に少しだけ賑やかだった大通りが少しずつ閑静になっていきますね。

 

それと同時にどんどん汚くなっていきます。これだから嫌なのです。

 

かぐや一族の集落まではかぐや一族の身体を持ってしても3時間もかかってしまいます。ちょっと遠すぎますね。任務に行くために毎度ここを通るのも面倒ですし水影邸街に住むことも考えましょうか。

 

考え事をしながらもぐんぐんと進んでいきます。

途中に何人かの街へと向かう旅人かと思われる人達を横切って行きます。何やら大きな滑車を引っ張っている見るからに貧乏そうな男もいましたね。重そうで大変そうですね。

 

「まあそれもかぐや一族に生まれなかった自分が悪いので」

 

この身体ならあの程度の荷物に四苦八苦なんてしませんし。

 

森を抜け村を抜けた先に漸くかぐや一族の集落が見えます。漸くです。

 

集落には結界の忍術が張られているので正面の出入り口からしか侵入することは出来ません。原理はよく分からないんですが。恐らくかぐや一族の面々も理解できていないでしょう。

 

「任務終わりましたよ族長」

「終わったか照麿」

「ええ」

「全員を皆殺しにしたのだろうな勿論」

 

勿論任務は完遂のために皆殺しにしましたよ。

無言で頷きます。しかし1つだけ気に入らないことがあるのです。

 

「しかし報酬が少なすぎると思うのです。族長はどう思いますか」

「報酬など気にする必要がないだろう照麿、もし足りないと感じたのなら殺して奪え、それでいいのだ」

「しかし族長、もし相手が僕よりも強かったら」

 

そこまで言うと族長は嗤うし僕も笑います。

 

「我らかぐや一族よりも強いものなど居るわけがなかろう照麿」

 

そうです。あの水影の傍にいた大男の事が一瞬頭をよぎったのですが心配は杞憂でしたね。

それから僕は自分の洞窟に向かいました。後ろでは族長がそんなに面白かったのかまだ嗤う声が集落中に響いています。




取り敢えず2話目です
暫くはこんな感じで主人公のキャラ付けになるかな
次で初のオリキャラも出るかもしれません
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