検診に来ていた親子の前で『
奥さんは、
「なんだか体の疲れが取れたような気がします……さっきの呪文はいったい……?」
と首を傾げて。
「あー、おまじないだよ。ね、リリィさん?」
ゼレーナさんはなんだか誤魔化すようにぼくに問いかけて。
「あうー」
赤ちゃんはさっきより少し元気そうな声を上げた。
そして当のぼくはというと、
「??」
疑問符を頭の上に何個も浮かべていた。
『
なんでぼくは今それを口にしたんだろう? 知らない単語。そのはずなのに……知っていることみたいに流暢に。なんだか本能がぼくの口を勝手に動かしたような?
あの指輪みたいなものはなに? ガラスの指輪だった……内側に光があって、外側のガラスが砕けて光を広げた。
なにもわからない……けど、どこか満たされたような感覚がするのも事実。
『
今さっき、確かにぼくの口から出てきた言葉。
知らないはずなのに、知っている。わからないはずなのに、理解している。
まるで、誰にも教わっていないのに泳げる魚のよう。誰にも教わっていないのに空を飛べる鳥のよう。
それが当然であるかのように、ぼくの口は滑らかに音を発していた。
そして同時に理解する。この
ひどく本能的な直感なのに、なぜか否定できない確信を含んでいた。
そして『
〜〜〜〜〜〜
「彼女は先日、
翌日。ぼくの横でミム大隊長が説明をしている。並んで座るぼくとミム大隊長、ゼレーナさんに第一発見者の隊長さん。あとぼくを駐屯地に連れてきたルード隊員。
その目の前にはずらりと並んだ報道陣。
ゼレーナさん曰く、昨日病院でぼくが出した『
ぼくの能力はきっと、あの光が当たる範囲内の人を癒すものなんだろうという予測もできた。
そして攻撃魔法を妨害するための結界内部で使用できたことから、『
問題はここから。
ぼくの戸籍登録は、役場で噂になったらしい。
成人済みに見える女性が戸籍登録をしたら、そりゃみんな不思議に思うだろう。
それでもそこで終わるくらいだ。町の中で噂になる程度。
だが加えて、病院の中で
昔と比べれば人口が増えたこともあってか
その上で、ぼくの
伝説の勇者が持っていたとされる『
他にもたくさんある。それこそ
でも『
少なくとも
ゼレーナさんが誤魔化すように話していたのはこれが理由だった。
ぼくが
だから興味深そうに聞いてきたけど、それが歴史上に存在しない能力だとは微塵も思っていなかった。
ここまでの流れを整理すると。
まず、身元不明の成人女性が役場で戸籍登録をした。魔力形認証には該当者なし……つまりデータベースに存在しない人物だったことも付け加えておこう。
そしてそんな謎の女性が、病院内で人目につく場で
(……うん、これは確かに特大の話題性を持った人物だね)
そして今、ミム大隊長の発言によって、過去から来た人物だというトッピングまで乗ってしまった。
報道に関わる人間にとって、ぼくほど美味しそうに見える人物はいないだろう。
例えるなら、子どもにとってのお子様ランチ。学生にとっての大盛り定食おかわり無料。
飢えた狼の群れに見せびらかされた、最高級ステーキ肉。
それが報道陣、記者さんから見た時のぼく。
(……なんかお腹空いてきちゃった)
たとえが良くなかったかな。なんて思いつつも、ミムさんとゼレーナさんが報道陣に説明をしている。
すごく助かる。本当に。
もしぼく一人だったらまともに話せる自信がない。
感謝を抱きつつ、報道陣への説明を終えて解放されるまで、かなりの時間を要した。
……疲れた。