「さあ着きましたよ。ここが現代の市場とも言える、大型ショッピングモールです!」
「おー……」
翌日、ぼくとハクアさん、ルードくんとコクトくんの四人は大きな建物の前で集合していた。
大型ショッピングモール、日本ではイオンなんかが主流だったけど、大きな看板に書かれた文字は流石に違っていた。
「スノーブ……?」
「はい! 伝説の勇者に助けられた商人がルーツなんですって」
ぼくが読んだ看板の文字に、ハクアさんの説明が添えられた。
「ほらほら入りましょう! 早くしないと品物が逃げていっちゃいますよ?」
「変なこと言うな……リリィさんが真に受けたらどうすんだよ……」
「お硬いですねコクトくん、ちょっとしたジョークじゃないですか?」
「ハクア姉の冗談にしちゃぬるいな……まさか偽物か?」
「うちのことなんだと思ってるんですか!? この不良ウサギくんは!?」
「……お笑い要因?」
「えへへー、評価高いですねー? さてはツンデレですか?」
「感情の落差すごいな……」
ハクアさんはその小さな体に不釣り合いなほど、大きな翼で身振り手振り、動きで感情表現する。すごく可愛い。それにしても、この身長差でハクアさんの方が年上なの頭バグりそう。
ちなみに年齢はコクトくんが一番下で20歳、ハクアさんとルードくんが同級生で21歳。そしてぼくが一番上で22歳だ。年齢は忘れてなかったってことにして、みんなには伝えてある。
あとこの場にゼレーナさんがいないのは、「買い物? あー、私はいいかな。特に用事もないし……町の結界内ならそれほど警戒する必要もないだろうしね」とのこと。
そして楽しそうに笑うハクアさんとツッコミに専念するコクトさんの声に反応してか、周囲の人たちがぼくらに視線を向けてきた。
そしてすぐに理解する。視線の中に含まれた感情を。
興味津々といった感じかな? ただこれは仕方ない部分もあるだろうなとも思う。
ぼくの『
(こんなイケメンがいたら、そりゃ目立つよね……)
ぼくの隣に立つルードくんが、とにかく目立っているように思う。
それはきっと彼を取り巻く個人的な事情も、一つの要因になっているんだろう。
彼はその特殊な事情によって、なんならぼくよりも知名度が高い。きっと周囲の人にも、彼の名前はバレているだろう。
とはいえ彼は芸能人でもなければ、政治家でもない。こちらを興味深そうに見ている全ての人にいちいち相手をしてあげなきゃいけない……ということもないわけで。
今のぼくらはプライベートだ。それほど気にすることもないだろう。
「ここで騒いでも邪魔になるので、早く入りましょうか」
その証拠にルードくんもぼくたちに促してくる。
「そうですね! いきましょうリリィさん!」
「声量落とせよハクア姉……あとテンション上げっぱなしだとケガするからな……」
「はーい! って誰が子どもですか!?」
「自覚あるんだな……?」
もうそろそろ見慣れてきた二人の漫才を尻目に、ぼくたちはお店の中に入っていった。
〜〜〜〜〜〜
「まずは数が少ない下着から買いにいきましょう!」
元気なハクアさんに連れられて、やってきたのは下着売り場。
女性の体になってからもう一ヶ月半が経つ。もはや自分の体にも慣れた。というか元から自分の体にも特段思い入れが無かったってだけかも。
そんなことを考えつつ、それほど恥ずかしがることもなく服を脱ぐと、ハクアさんが声を上げた。
「なんですかその可愛げのかけらもない下着は!? 以前買った時に付いていったのはゼレーナさんでしたっけ? くっ、これほどの素材にこんな……! 許せません! まるで最高級ステーキ肉に塩胡椒をぶち撒けるような悪行!」
「それ下処理では……?」
「お、良いツッコミですね。まあでかい地味ブラなんてドスケベもいいとこですから、気をつけてください? うちはリリィさんの無防備なとこが心配です」
「今まさにセクハラを受けてるんだけど、警察呼んでもいいかな?」
「なっ、どこですか!? うちの友だちにセクハラするなんて許せません! リリィさんはうちが守りますからね!」
「もしもし警察ですか?」
「いやー、通報しちゃダメです! ごめんなさい調子に乗りすぎました! 許してください左大臣様!」
「良いでしょう。今後も励みなさい、ハクア事務次官?」
「ははぁー!」
一通りハクアさんの冗談に付き合ってから下着屋さんを物色していると、女性特有のショッピング熱が上がってきた。
「リリィさんのサイズは……あっ、これと……これも買っておきましょう!」
「……こんなにヒラヒラしたのって必要ですか?」
「は? 可愛い人に可愛い下着は必須なんですけど? それ古代人ジョークですか?」
ぼくは女性用下着を手に入れた。
〜〜〜〜〜〜
「今度は普段使いができる服を買いますよ! えーとサイズは……あ、これいいですね! こっちも! リリィさんはスタイルがいいので、かっこいい系も試してみませんか!?」
「なんでこんなに胸元がガバッと開いた服があるんですか?」
「胸元じゃなくて今の時代はデコルテって言うんです! せっかくお肌が綺麗なんですから、隠しちゃ損ですよ!」
ぼくは女性服を手に入れた。