ぼくはヒロインになった   作:タンクトップ桶狭間

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第2話 夢オチは?

 確かにぼくは、中学に上がる時に「リリィ」というニックネームをクラスメイトに提案した。

 ぼくの名前「沢渡(さわたり) 良一郎(りょういちろう)」の苗字と名前を繋げた部分を切り取って「リリィ」と。

 

 とある漫画の主人公に倣って自分で考えたあだ名だけど、みんなそれを気に入って呼んでくれた。

 というかぼくの名前に普通の略称を付けたら「りょう」にしかならないし、ひどい時はクラスに三人も「りょう」がいるくらいありふれたあだ名になる。

 

 だからちょっと捻ったニックネームを自分で考えたんだよな。

 それにみんなが乗っかってきた感じで、クラスに広まったんだ。ちょっと女子っぽいあだ名だけど、そういう事情があって、結構気に入ってる。

 

 

 ……でもなんで初対面の人がそれを知ってるんだろう?

「……あの、どこかで会ったことありますか?」

 

 素朴な疑問を声に出してみると、ぼくの声は随分と可愛らしいものになったように聞こえた。自画自賛ならぬ自声自賛だ。

 突きつけられていた槍がなくなったことで、自分の声に意識を向けられるほど、ある程度の落ち着きを取り戻したみたい。

 

 けれど目の前のルードと呼ばれた青年は、ぼくの問いかけに目を見開き、

「……い、いえ。俺の勘違いでした……」

 

 と悲しげに答えた。

 ……なんだか罪悪感が。

 

 とはいえ、槍を退けてくれたことには感謝しておこう。

「……えーと、ありがとうございます。槍を弾いてくれて」

「いえ、大したことはしていませんから……」

 

 項垂れた彼の口から出てくる言葉には、重苦しいほどの悲しみが染み込んでいた。

 まるでぼくが悪いことをしたような……などと考えていると、兵士さんが声をかけてくる。

 

「ルード・アルファニウス隊員。先ほどの司令室からの情報は聞いていたはずだ。なぜここにいるのか、なぜ彼女のことを助けるような真似をしたのか……答えてもらいたい」

 

「小隊長殿。彼女は突如戦場の渦中に転移してきた人物です。謎は多く、彼女の情報をあとで聞き出すにしろ、この戦場にあって一人の非戦闘員を守りつつ戦いを終えるには、B小隊の負担が大きすぎます」

 

 ルード……隊員の言葉には、咄嗟に捻り出したにしてはあまりにも流暢な印象を抱いた。

 まるでこの時のために用意した言葉のような……考えすぎだろうか?

 

「ふむ、続けてくれ」

 

「はい。しかしB小隊に俺の加勢があれば、充分な余力を残しつつ、安全に魔晶獣の掃討を終えられると判断し、D小隊長の許可を得てこちらに駆けつけました」

 

 ルード隊員の発言は、槍を持った…‥隊長さんにとって納得のいくものだったらしく、頷いた。

 

「なるほど、では彼女に向けた槍を弾いた理由はなんだ? 彼女が魔晶獣側の人物でない保証は……」

 

「いえ、彼女の体をご覧ください。真っ白なローブに、華奢な身体……纏う魔力は新人戦闘員を下回ります。加えてストック分のものを含めるならそれよりもはるかに低い。彼女の脅威度はそれほど高くないでしょう。俺が敵の立場なら、こんな人を戦場に一人送り込むことはしません」

 

 彼の言葉に一つ、気になるところを見つけてしまった。

 魔力。それはファンタジー作品でしか聞いたことのないような単語だ。

 

 でも彼らの服装を見る限り、ファンタジーというよりかはSF風味のもののように思える。このチグハグさもインフルのせいだろうか?

 

「つまり、刃を向けられたことでパニックを起こし、魔晶獣に殺されることの方が損失だと……そういうことだな?」

「はい。彼女からどれほどの情報を得られるかは定かではありませんが、ここで殺すよりかは格段に良いはずです。これより加勢しますので、魔晶獣の掃討を再開しましょう」

 

 殺す。平然と言い放つルード隊員の発言。

 しかしそこには全く実感がこもっていないように感じた。恐ろしいとさえ感じない。

 

 さっき彼が助けてくれたからだろうか?

 

「ふむ……ルード隊員の主張には、否定すべきところがない。疑ってしまい申し訳ない。対象のパニックを考える余裕がなかったことを謝罪しよう。なにせ戦場にいきなり転移魔法など……」

 

「無理もありません。自分も隊長という重責があれば、これだけ早く判断することはできませんから。小隊長各位には、敬意が尽きません」

 

 隊長さんの言葉に、今度は魔法というものが飛び込んできた。

 さっきはインカムのような物を使っていたから、てっきり近未来SFかと思っていたけど、ジャンルがめちゃくちゃだ。

 

 ぼくの脳みその処理能力は、インフルのせいで壊れたんだろうか?

 

「……つくづく素晴らしいな。その判断力と行動力、同じ大隊に所属する者として、敬意を払おう」

「こちらこそ。まずは周辺の魔晶獣を片付けましょう」

 

 ルード隊員はそう言い終わると、ぼくの方へ振り向いて優しい笑顔を見せてきた。

「……すぐに終わりますから」

 

 その後、彼はぼくの周囲を半球体のバリアのような物で覆ってから、周囲の魔晶獣へと駆け出していった。

 

 さっきは気付かなかったけど、ルード隊員の体には、他の人とは違って黄金の気……みたいなものを纏っていた。

 

 ……なにあれ格好いい! 超サ○ヤ人みたい!

 

 

 ……ところでいつ夢オチになるのかな?

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