ぼくはヒロインになった   作:タンクトップ桶狭間

21 / 25
第4話 狩人

 その後、ルードくんにぶつかった男の子とお母さんが謝ってきた。

「私たちも通行の邪魔になってしまったかもしれないし、気にしないでください」という旨を伝えると感謝しつつ去っていく。

 

 ぼくにもあんな時代があったなと思いつつ見送り、ふとさっきの老夫婦のことを考えてしまった。

 

「なんだったんだろうねあの二人……というかおばあちゃんの方……」

 と、みんなに話しかけるとハクアさんが神妙な顔になって、

 

「いえ、聞いたことがあります……!」

 と名探偵じみた語りを始めた。

 

「知ってんのかハクア姉……!?」

 

「はい。彼女はおそらく持っているんです。あの資格を……!」

「まじか……!?」

 

「恋愛テクニックを知り尽くしたハンターたち……数年おきに、秘密裏に開催されるハンター試験を通過した人だけに与えられる『恋愛狩人(ロマンスハンターズ)』の資格……!」

 

 なんのための資格なんだそれ。

 

「彼女があの……!?」

「はい、恋愛偏差値140を超えた者でなければ参加すらできない……過酷な試験……!」

 

 偏差値140て。

 

「特定の飲食店で、合言葉を店主に伝える必要があるっていうのも聞いたことがある……」

 ルードくんも知ってるんだ……てかそれハンター○ハンターすぎない?

 

「そしてこれも聞いた話ですが……およそ五十年前に、ハンター試験に初めて挑戦するルーキーながら、総合成績一位で突破し、『恋愛狩人(ロマンスハンターズ)』の資格を手に入れた女性がいたと……!」

 

「あの人と、年齢は一致するな……」

「彼女は敬意と畏怖を込めて『高嶺の花子さん(アンタッチャブル)』と呼ばれているそうです……!」

 

「秘密な割に結構知られてるね?」

「ふふふ、リリィさん? これが現代の乙女の嗜みですよ?」

 

「どんな嗜みだよ……」

「あいたっ!? なんで叩くんですかコクトくん!?」

 

 流れるようにハクアさんにチョップをかましたコクトくん。「ぽこっ」という軽い音と共に抗議の声が上がる。

 

「わーん、キズモノにされちゃいましたー! コクトくんの不良ウサギ! DV男子! 慰めてくださいリリィさーん!」

「なんで家庭内(ドメスティック)なんだよ。嫁気取りか……!」

 

 とてもじゃないけど痛そうに見えないハクアさんが、ぼくに抱きついて助けを求めてくる。

「わひゃっ!? えーと……よしよし……?」

 

 とりあえず二人の漫才に水を差さずに受け入れておこうかな。そう思いつつ、ぼくは胸元にあるハクアさんの頭を撫でてみた。

 

 それにしても、ぼくって意外と触覚が鋭いんだな。さっきからなぜか女子っぽいリアクションばかり出ちゃう。そういえば昔からくすぐったがりではあったかな。

 

「ぐへへ……おっぱいでかくて最高です……」

 なんか言ってんなこの子。

 

「リリィさん、早くそのセクハラくそカラスから離れた方がいいっすよ……」

「なんでですか! さっきはルードさんも堪能してたから、うちが触ってもいいじゃないですかー!」

 

「不可抗力と故意だと話変わってくるだろ……?」

「こ、恋!? こここ、コクトくんってば、うちのこと好きだったんですか……?」

 

「ハクア姉……」

「コクトくん……」

 

「はい逮捕……セクハラで現行犯だな……」

「うわー!? 乙女の純情を弄ぶなんてサイテーですよコクトくーん!?」

 

「乙女の肉体を弄んだ奴がよく言うよ……」

「離してください! うちにはまだ、リリィさんの柔らかさんを堪能する責務がー!」

 

「「「そんな責務あってたまるか!」」」

 

 おっと三人の心が一つに。

 なんてことを考えていると、罪人(ハクアさん)が警官(コクトくん)に連行されていった。正義は必ず勝つんだね。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。