ぼくはヒロインになった   作:タンクトップ桶狭間

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第6話 伝説の勇者

「本屋ですか?」

「うん。みんなが言う伝説の勇者っていうのが、どういうものか知りたくて」

 

「難しい話っすね……」

 ぼくが要求を伝えると、コクトくんが唸り声を上げつつ呟いた。

 

 聞くとどうやら、有名な話すぎて色んな媒体で見れるからなんだとか。

 アニメ、漫画、ゲーム、小説、舞台演劇、果ては実写ドラマに至るまで。どれでも見れる上に、史実が劇的だから変に脚色もされていないんだとか。

 

 どれでも見れるということは、極論どれでもいいってことになる。だからこそどれを勧めるべきか難しいってことらしい。

 

(というかやっぱりこの時代は娯楽もたくさんあるんだね。魔法で発展した世界でゲームとかアニメとかってどうやって作るんだろう?)

 

 スマホのような道具がある時点で予測してはいたけど、娯楽が多そうで助かる。

 まあ、本が一番手っ取り早いかなということで、本屋に行くと……

 

 

「おおー……」

 ある……というか集まってる。伝説の勇者関連の書物がかなりたくさん。

 

「こっちが今連載中の漫画作品で、これが三十年前に描かれた漫画です。古き良き作品で、けっこうこれもおすすめできますよ。それでこっちが小説版で、こっちが外伝小説です」

 

「ルードくん詳しいね……好きなの?」

 なんだかちょっとウキウキしてるような……友だちに好きな物を紹介できるからかな?

 

「はい。というか……そうそう嫌いな人はいないですよ。なあコクト?」

「そっすね……俺は特に、外伝の方が好きっす……」

 

「うちはこっち! 後日談っていうか、伝説の勇者とはちょっと関わりがあるだけなんですけど……『真珠を盗んだ怪盗騎士』! すごくいいお話なんですよ!」

 

 まさに三者三様。それぞれ好みの作品をぼくに見せてくる。

 

 ルードくんが手に持っているのは、本筋を描いた漫画版。伝説の勇者の旅立ちから勇者と聖女の結婚までが描かれた三十年前の名作。

 表紙には大きく緑髪のイケメンが描かれている。彼が勇者なんだろう。

 

「今連載中のも良い作品なんですけど、やっぱり完結してる方が読みやすいと思うので」

 

 

 

 次にコクトくんが持ってるのが、現在連載中の漫画、その外伝パート。旅の途中に魔族の罠に嵌められ、分断された勇者パーティの戦士二人が、苦戦しつつも四天王の一人を討伐して、勇者に合流するまでを描いた部分。

 表紙には水色の髪の女性と、獣人族の男性が描かれている。虎の因子が発現してるタイプだ。

 

「この二人の関係が良いのと、こっちの体でけえ男が格好いいんで……オススメっす……」

 

 

 

 最後にハクアさんが持ってるのは……少女漫画かな?

「ハクアさん、これは……?」

 

「よくぞ聞いてくれました! これはですね、勇者パーティが魔王を討伐した後、国王様が勇者様と自分の娘である第三王女のパールマリア様を結婚させようとするんですけど、勇者様が聖女様と結婚したいからって言って断るんですよ!」

 

 ぼくの疑問にハクアさんは機関銃もかくやと言わんばかりの言葉を放つ。

「は、はあ……」

 

 勢いに押されて、ぼくの返事は小さなものになった。

 

「それで国王様は『これを引き裂いたらワシは暴君になってしまうな。よし、勇者と聖女の結婚をワシの名の下に許す!』って言うんですけど、ここからが話の始まりで! 喝采に沸く謁見の間でパールマリア様とお付きの騎士様がこっそり話すんですよ!」

 

「どんな話を……?」

 

「騎士様が『勇者様と聖女様の結婚パレードの最中は、国中が浮き足だって興奮に呑まれるでしょう。その間であれば、末の真珠が盗み出されても気付くまでには時間がかかるはずです』って! あ、末の真珠ってパールマリア様のことで、このお姫様は末っ子なんですよ! この遠回しな言い方がすごくオシャレで!」

 

「なるほど」

 

「それでパールマリア様が『その時のみ騎士ではなく怪盗として、私(わたくし)を盗みにきてくださいますか?』って! きゃー、もうここのシーン本当に大好きで! あ、そうそう、ちなみにこのあとはコクトくんの勧めた戦士二人の屋敷で雇われて、メイドと執事として暮らしてくので、ここもセットで読めますよ!」

 

「じゃあ完全に独立した話じゃないんですね?」

 

「はい! それとこの帯にも書いてるんですけど、これお姫様本人の残した手記を元に描かれてる漫画なんですよ! 演劇にもなってるし、身分違いの恋だし、駆け落ちでハッピーエンドなのが本当の話だしで、もう……! とにかく、女の子ならこれ一択って感じです!」

 

 ハクアさんの熱意のこもった演説を聞き終え、そのあまりの熱量にぼくは無意識のうちに拍手してしまった。

 

「素晴らしい熱量……あの子は資質があるわね……」

「ええ、恋愛偏差値140オーバー……次の試験は荒れるわよ……」

 

 いや誰だよ。と思いつつ声のした方を見るけど、そこには人はいなかった。

 ……もしかすると、資格を取った恋愛狩人(ロマンスハンターズ)は意外と色んなところにいるのかもしれない。

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