「さっき話した
簡単に言えば、いろんな種族の混ざり合った人種ってことだよ。人族、獣人族、鬼人族、竜人、エルフやドワーフ、その他諸々。はるか昔は……君が以前いた時代では、それら種族はそれぞれ独立した国や集落を形成していた。
だけど時代を経るにつれて、それらの国は広く交流して、人々は行き交い、様々な人たちが自由に繋がりを持っていくようになった。
結果、その子孫たちは、あらゆる種族の遺伝子を持つ混血種になっていったというわけさ。それが集的混合人種。
だけど外見的特徴は、遺伝子中の最大割合を占める種族のものになることがわかっている。
まあ考えてみれば当然だよね。
もし全ての人種の特徴が外見に現れるとしたら……エルフの耳、ドワーフの髭、竜人の角と鱗、鳥人種の翼、鬼人の角、獣人の耳。どれだけ煩雑な見た目になるか、見当もつかないからね。
とんでもない見た目になるのは間違いないと思う。
だからそうならなかった。私を例にするなら、遺伝子中の約14%がエルフだから、エルフっぽい外見になってるだけの集的混合人種。ってわけさ。わかったかな?」
ゼレーナさんの話で、ある程度は混合人種というものについては分かった。
けどそれがどうして、ぼくと二人きりになっても良い理由になるんだろうか。
「でもなんでそれが、私を警戒しなくていい理由に……?」
「良い質問だね。じゃあここで問題を出そうかな」
ゼレーナさんはぼくの問いかけに上機嫌になりつつ、話し始めた。
「ここに、魔法は得意だけど肉体的脆弱性を持つエルフの女性がいたとします。そして魔法は苦手だけど身体能力に秀でた獣人族の男性がいて、二人は結婚して子どもを産んだとしよう。さて、生まれてきたエルフと獣人のハーフは、魔法が得意な子でしょうか? それとも身体能力が高い子でしょうか?」
ぼくはゼレーナさんの問題に、少し悩みながらも答えを捻り出した。
「えっと、お父さんに似るか、お母さんに似るかで答えが変わる……とか?」
「まあこれは君の時代には無かった事例だから無理もないけど……正解は、魔法が得意で身体能力も高い子になる。でした」
二択じゃないんかい。審判がいたらレッドカードだよこれ。
「ふふ、良い表情だねリリィさん。ただこれは生物学としては基礎の話だ。繁殖可能な種族同士なら混血が進めば進むほどに、欠点を補い合い、それらの特徴を併せ持つ優秀な個体が誕生する」
ゼレーナさんは引っ掛け問題が成功した時の小学生のような笑みを浮かべながら、発言を続ける。
「要するに私は……鬼人族の膂力、ドワーフの頑強性、獣人族の身体能力……その他身体的アドバンテージを有する遺伝子を持っている。というわけだから、単一の人族であるリリィさんがパニックを起こして暴力を振るうことになっても、私一人で鎮圧可能なんだ」
なるほど。つまりぼくが思っているほど、彼女は弱くない。むしろぼくの人族っていうのはゼレーナさんから見て弱い生き物って認識なのか。
見た目にはぼくよりも少し身長が低く華奢に見える彼女は、その実とんでもない力を秘めている……らしい。
なんか良いなそれ。ぼくもそっちのが良かった。
「つまりゼレーナさんにとって、私はすごく弱いから警戒する必要がない……ってことですか?」
「ま、有り体に言えばそうなるかな。ただ……私にとって君は一つ気になる要素を持ってる」
会話の中で、ゼレーナさんはまた科学者のような目付きに変わる。
「私の
「はい……」
何が言いたいのかまだわからないぼくは、首を傾げながら頷く。
「そして詳しく見ようと思えば、さらにもう一つ情報を受け取ることができるんだ。私の目に映った
それは彼女の持つ特殊な目の能力によるものだという。
……でもホープ持ちってなに?