9 不憫な少女の奪還作戦
翌日、対策委員会の部室は物々しい雰囲気に包まれていた。
「アヤネ、ノノミ。セリカの部屋はどうだった?」
「いえ……部屋の中にも入ってみたんですがセリカちゃんはいませんでした。」
「どうしちゃったんでしょう……こんな事今までなかったのに。」
「そうか……俺もアビドス周辺を上から探してみたが、やはりどこにもいなかった。」
今朝方、セリカが登校してこず、事前に連絡もなかったことで不審に思った対策委員会メンバーはセリカのいそうな場所を片っ端から探しているもののどこにも見つからず、現状行方不明状態である。
「先生とホシノ先輩も調査してくれてるみたいだから、今はそれを待とう。」
「そうですね、一体何があったのでしょう……。」
数分後、別で動いていたホシノと先生が戻ってきた。
「みんな、戻ったよ。」
「ただいま。」
「あ、ホシノ先輩、先生!どうでしたか?」
「昨日セリカちゃんユメ先輩と途中まで一緒に帰ったらしくて、先輩と別れた地点からセリカちゃんの家のほうまで歩いてみたら途中、かなりの破壊痕が見つかったよ。
それもだいぶ新しかった……現状を考えるに誰か、おそらくヘルメット団あたりにさらわれたのかもしれないね。」
ホシノは昨日セリカに最後に会っていたであろう大将とユメに話を聞きに行っていた。
「そんな、先輩!セリカちゃんは大丈夫なんですか!」
「落ち着いてよ、アヤネちゃん。セリカちゃんの場所は先生が突き止めてくれたから。」
「うん。連邦生徒会のセントラルネットワークを使って携帯の位置情報を特定したんだ。場所は間違いないはずだよ。」
そう言って先生は懐からタブレットを取り出す。画面には移動を続けるセリカの位置情報を示す点が映し出されていた。
「連邦生徒会のセントラルネットワーク……先生はそんな権限までお持ちだったんですね。」
「いや、もちろんこっそりだよ、これはばれたら始末書ものだねぇ。」
「ま、まあばれなきゃ大丈夫だから……。」
先生が冷や汗を流しながらそう言う。まあ、個人の位置情報に勝手にアクセスするのは確かに問題だろう。
「まあ、その辺はいい。先生、その点の場所にセリカがいて、セリカをさらったやつらもそこにいるんだろ?なら、さっさと叩きに行くぞ。」
コーストが怒りを全身から滲ませてそう言う。
コーストは今、この星に来てから一、二を争うほどにキレていた。
「そうです!早くセリカちゃんを助けに行かないと!」
「ん、当然。」
「よっしゃー!そんじゃ行ってみよー!」
ただ、それはほかの対策委員会も同様であり、これ以上ないやる気を滲ませていた。
「あ、先生ちょっとそのタブレット貸してもらえるか?」
「え、かまわないけど……。」
コーストは先生からシッテムの箱を借りると画面を眺めながらバイザーで分析を始めた。
//ナビデータを受信しました//
「よし、これで追いやすくなった。」
「え、今なにしたの?」
「ん?位置情報を読み取っただけだ。まあ、詳しくは後でな。」
彼がやったのは分析バイザーのマッピングシステムにシッテムの箱が読み込んでいた位置情報を埋め込んだだけである。
追跡をしやすくするために行った行動だが、先生への説明はめんどくさいので後回しになった。
ちなみに、スキャンで一部とは言え情報を勝手に読み取られたアロナは中で焦っていた。
「今から車で行くと時間がかかりすぎる。俺のコルベットを呼ぶから全員ついてきてくれ。」
「わかりました!いつものやつですか?」
「いや、いつも使ってるのとは別の奴で行く……しっかり灸をすえなきゃならんからな。」
そう言ってコーストが呼び出したのは普段彼が探索に用いているコルベットより数段デカい戦艦のような形をしたコルベット。
どう見ても戦闘用である。
「お前たちは甲板に乗ってくれ。先生とアヤネはサポートとしてコックピットのほうについてきてもらえるか?」
「「「「了解!」」」」
そして、アビドスによるセリカ救出作戦が開始された。
「ぐ……こ、ここは?」
セリカが目覚めたのは薄暗いトラックの荷台の中、離れたところに銃は置いてあるものの、手足を縛られ身動きが取れない状態である。
「これは……私、攫われたの?」
ガタン、ガタンとトラックの移動音が荷台に響く
「トラックに載せて、私をどこに連れて行く気なのよ……。」
その時、荷台の扉の隙間から外の景色が見えることに気づく。
「外が見える……!ここって、アビドス郊外の砂漠!?こんなところじゃ助けなんて届かない……。どうしよう……みんな、心配してるだろうな……。」
「このまま私どうなるんだろう……。連絡も取らないまま勝手に消えたら、私もアビドスを捨てて逃げた……なんて思われちゃうのかな。」
みんなに何の弁解もできず、裏切られたと思われて自分が死んでしまう未来を想像するとセリカの瞳から涙があふれてきた。
「そんなの……いやだよ……。ぅ……ううっ……。」
ドゴオオオオオオン!!!
「うわあああああ!なに、何なの!」
セリカが己の行く末を案じているとトラックの外から凄まじい破壊音が響いてきた。
砲撃のような破壊音は幾たびも鳴り響き、ついにはセリカのいるトラックもひっくり返った。
「ケホッ……。いったい何なのよ…………え!」
外に転がり出たセリカが目にしたのは、空を暴れまわる戦艦とそのうえで銃撃を行う先輩たちの姿であった。
「先生発見したぞ!あの集団だな!」
セリカの位置情報を追って砂漠まで飛んで来た対策委員会一行はものの数分でセリカたちを連れ去ったであろうヘルメット団の集団に追いついていた。
「ノノミ!シロコ!ホシノ!これから降下して奴らを攻撃する。先生とアヤネは戦闘指揮を頼む。準備はいいか!」
「「「「おー!!!」」」」
その声を皮切りにコースト操る戦艦型コルベットは降下を開始し、トラック集団への攻撃を始めた。
攻撃に気づいたヘルメット団たちも戦車で応戦するが、
「あいつらの攻撃は全部ディフレクターシールドが防いでくれる!お前たちは気にせず攻撃を続行しろ!」
「ん、全部吹き飛ばす。」
「わあ☆ほんとに弾が飛んでこないですね!これなら、攻撃に専念できます!」
「うへぇ~、これは敵ながらかわいそうに思えるねぇ……でも、容赦はしない。」
コルベットに搭載した武装とホシノたちの弾幕によってヘルメット団たちはどんどん瓦解していった。
「車両はほとんど処理できたな、コルベットを地面に寄せるから降りてセリカを探してくれ!」
吹き飛んだ車両を探していると一つのトラックの荷台近くにへたり込んでいるセリカを発見した。
「あ!あそこにセリカちゃんを発見しました。」
「あ、アヤネ!?」
「ん、こちらも半泣きのセリカを発見!」
「なにぃ~!うちのかわいいセリカちゃんがないてただと~!さみしかったんだね~、セリカちゃんごめんね~!」
「う、うるさああい!泣いてないし!」
みんなのからかうような声にセリカが爆発してしまった。でも、その姿はとてもうれしそうである。
「大丈夫ですよセリカちゃん!私たちがその涙、拭いてあげますからね~!」
「だから違うから!」
うがー!と吠えるセリカにコルベットを降りた先生が声をかける。
「いやあ、無事で何よりだよ、セリカ。」
「え、先生も来たの!?」
「伊達にストーカーじゃないからね!」
セリカの言葉に先生がそう返す。先生としてその返しはどうなのだろうか。
「な、何言ってんのよ、この変態教師!」
案の定先生はセリカに怒鳴られていた。
〈脅威を検知:敵性戦闘車両〉
「ん、油断は禁物。ここはまだ敵の勢力圏内。」
「後方に、多数のヘルメット団を確認。巨大な重火器に戦車も多数存在しています!」
「包囲を固めてきたか……。全員コルベットに戻れ!上からまとめて吹き飛ばすぞ!」
「「「「「了解!!」」」」」
コルベットに乗って再び上空に戻った対策委員会は各々の武器を振り回し、ヘルメット団の戦車集団を蹴散らしていった。
包囲網を吹き飛ばした後、対策委員会は部室に戻ってきていた。
「皆さんお疲れ様です!セリカちゃん、ケガはないですか?」
「私は大丈夫よ。見て、こんなにピンピン……」
ドサッ
疲労が祟ったのかセリカは床に倒れこんでしまった。
「セリカちゃん!」
「いろいろ精神的にも肉体的にも疲れがたまってたんだろう……シロコ、医療ポッドまでセリカを運んできてくれないか?」
「ん。わかった。」
シロコがセリカを抱え校庭に停めたコルベットへ運んでいく。
「それにしても今回はかなり危なかった。俺たちだけだとセリカの位置がわからずどうすることもできなかっただろう。先生、本当に感謝する。」
「そうですね。先生がいなかったらどうなっていたことか……。」
「先生の言う通り、ただのストーカーじゃなかったわけだ。」
もし先生がいなければセリカを人質に取られどんな要求をされたかわかったものではない。今回は本当に首の皮一枚でつながったようなものである。
「皆さん、これを見てください。さっきの戦闘で出た戦車の破片を調べたところ、キヴォトスでは使用の禁じられている違法機種ということがわかりました。……まだ何とも言えませんが、ヘルメット団は自分たちで入手できないはずの装備まで所持している可能性があります。」
以前ヘルメット団の前哨基地を潰した時にも感じた違和感だが、どうやらヘルメット団にバックがついている可能性がだいぶ上がってきた。
「要するにこいつは禁制品ということか……となるとどこから流れてきたかはなんとなく想像ができるな……。」
「というと?」
先生が聞いてくる。
「方々から非合法な物品が集まる闇市、ブラックマーケット……まあ、はみ出し者が考えることはどこに行っても変わらないといったところか。」
海賊星系のブラックマーケット*1を思い出しつつ、コーストはそう答えた
「……あれだけの兵力を渡したというのにほとんど破壊されたというのか。あいつがアビドスに来てから何もかもうまくいかん……。」
高層ビルの上階でスーツを着たロボットがいらいらした様子で言う。
「うまくいくかはわからないが、生徒を相手にするのだ。こちらも生徒をぶつけるべきだろう。」
ロボットはそう言ってどこかに電話を掛けた。
prrr……
『はい、どんなことでも解決します。便利屋68です。』
「仕事の依頼だ、便利屋。」
カタカタヘルメット団アジト
すでにコーストたちによってほとんどの兵力を失った彼女たちの拠点は別勢力によって制圧されかけていた。
「あーあー、こっちは終わったよー。」
「こっちも制圧完了だ、ボス。」
「わ、私も終わりました……。」
ヘルメット団のリーダーと思しき少女の背を足蹴にするボスと呼ばれるコートを着た少女に続々と人が集まってくる。
「くそっ、お前らアビドスか!よくも私たちを……!」
「アビドス?そんなわけないでしょう。このアジトもなんか不潔で変なにおいするし、頭の中もこんな感じで冴えないのかしら。……まあいいわ。あなたたちを労働から解放してあげる。」
背中に乗せる足の力を強めながら彼女はそう言う。
「な、何だと!」
「言ってることがわからないの?要はクビってことよ。アビドスの件は今をもって私たちが引き継ぐから。」
「ふざけるな!何者だおま……ガッ!」
瞬間彼女の足がヘルメット団の顎を蹴り飛ばした。脳をゆすられ、意識を失う。
「私たちは便利屋68……金さえもらえれば何でもする……」
制圧されたヘルメット団のアジトの中、月明かりが彼女だけを照らす
「何でも屋よ。」
subnauticaです。
ついに便利屋が登場です。いい感じでストーリーが進んでますね。
次回の話も便利屋関連になるかと思います
では、また次回お会いしましょう。