11 武力衝突
「そうか、なら……物理的に襲撃ができない体にするしかないな。」
そう言ってマルチツールを構えたコーストに対し、便利屋も各々の武器を構える
「それ、本気?私たち相手に一人で勝てるなんて、舐めすぎじゃない~?それに、あなたヘイローもない一般人じゃん。あなたこそ、今引くなら、ここでは見逃してあげるよ?」
コーストに対し、ムツキがからかうようにそう言う。実際ヘイローの有無は戦闘において大きな差だ。それも自分たちが多勢であれば負けることなどないと思うのも道理だろう。
「言いたいことはそれだけか?なら、こちらから始めさせてもらおう。」
そう言うとコーストは忽然とその場から姿を消した。比喩ではなく突然その場からパッと姿を消したのである。
「え、一体どういうこと――」
「アル様、危ない!」
ハルカがアルを突き飛ばすと、さっきまでアルが立っていたその空間を大量のエネルギー弾が通り過ぎて行った。
「一体、どうなってるのよ!」
「……まずいよ社長。アイツ、多分姿を消して潜みながら私たちを攻撃してる。」
「何ですって!もしかしてミレニアムが開発してる光学迷彩ってやつ?でもあれ、まだ一般には出回ってないんじゃ……。」
カヨコの推測は半分正しく、コーストはクローキング装置*1を使って便利屋の目を逃れつつ攻撃をしている。
「私にもわからないよ。でも――!避けて!」
ドゴオオン!!
姿の見えないコーストのからくりを探りながら周囲を警戒していると上空から青色の球体が降ってきて、大爆発を起こした。
カヨコがいち早く気づいたが、完全には逃げきれずダメージを負う。
「うぐっ!何なのよこれぇ……。」
「……手榴弾ではないけど、すごい爆発。直撃したら私たちでも危ないかも。」
カモフラージュに紛れてコーストが撃ち出したのはプラズマランチャー、内部に大量のエネルギーを内包し、時限式で爆発する砲弾である。
正直、自身を完全に舐め切っていた便利屋相手ならプラズマランチャーの奇襲で沈むのではないかとも考えていたが、さすがに考えが甘かったようだ。
自らも相手を侮っていたと自分を戒め、隠密から火力重視に切り替えることにした。
元々、クローキング装置は相手から逃げるためのものであり、急激な運動や、マルチツールで別の機能を使うと解けてしまう。
さらには燃費がかなり悪く、長時間の使用もできないのだ。
コーストは武装をパルススピッター*2に切りかえ、便利屋のほうへ乱射し始めた。
「ちっ!うっとおしいんだけど!」
「少し相手を舐めすぎていたわね……。でも、居場所はわかったわ!そこね――あだっ!」
「社長!?」
「アル様!?」
アルがクローキングを解いて近隣の屋根の上から銃撃を行うコーストに自らの狙撃銃を打ち込もうとしたその時、避けたはずの弾が後頭部にヒットした。
パルススピッターにはバウンスショットモジュールが取り付けられており、着弾点から障害物に何度か跳弾する。
広くもない路地で戦闘を始めたためそこはさながら銃弾の檻のようになっていた。
便利屋は何とかして障害物に潜りこんだが、状況は芳しくない。
「うぐぐ……何これ、弾が当たったところが熱い……。」
「……着弾した場所が少し燃え上がってる。どうやら向こうはかなり厄介な武器を持ってるみたいだね。」
パルススピッターは着弾点火装置というアタッチメントによって、着弾部への点火効果を持っている。
ここまでコーストが優勢に思えたが、大切なアルを傷つけられたハルカは、強硬手段に出た。
「よくもアル様を……死んでください!!」
「あ、ちょっとハルカそれは!」
ハルカは狂気的な目になりかばんに入っていたC4爆弾を複数投げ込んだ。
さすがに外の人間に対して爆弾はまずいと思ったが、制止は間に合わず、C4は遺憾なくその威力を発揮した。
ドガアン!
コーストが乗っていた屋根は建物ごと爆風で吹き飛んだ。
「やった!やりましたよアル様!」
「やりすぎよハルカ!大丈夫かしら……。死んじゃったりしてないわよね?」
爆破の煙で先が見えない中、アルが心配の言葉を口にする。
「くそが……シールドを半分以上持っていくか……。」
爆発が晴れた後には建物の残骸の上に乗るコーストがいた。
「死んでないようで何よりよ。さて、おとなしく投降する気はあるかしら?」
倒れるコーストに便利屋が一斉に銃口を向ける。
「……これで勝った気だというなら、それは考えがが甘いな!」
コーストがそう言うと、空から3mはあろうかという鋼鉄の巨人が降ってきた。
自律式のAIを積んだ人型のエクソクラフト――ミノタウロス*3である。
「な……なにこれ、どこから落ちてきたの!?」
空には何も見当たらないのに急に降ってきたミノタウロスにムツキは驚愕の声を上げる。
「……あなた、本当に何者なの?」
「それを今お前に話す必要はない。聞きたければ俺に勝ってからにすることだ。」
ミノタウロスが右腕を構え、コーストはマルチツールを構える。
「さあ、第二ラウンドだ!」
ミノタウロスはその右腕から大量の炎を吹き出した。
「……!火炎放射器、みんな散開して!あのロボット、そんなに動きは俊敏じゃないはず、多方面から同時にたた――ってええ!」
歩行速度から鈍重な兵器だと思っていたアルは、背面からジェットを吹き出して追ってくるミノタウロスの姿に再び驚愕した。
ギリギリでよけられたが、気づくのが遅れれば上空からのミノタウロスのたたきつけをもろに食らっていたことだろう。
「……あのロボット意外と動きがいいんだ、なら、死角から――」
「おら、敵は一人じゃないぞ!」
「!!」
背面からミノタウロスを狙おうとしてたカヨコは横合いからジェットパックで飛んで来たコーストのタックルを受けて吹き飛んだ。
「カヨコちゃん!」
「この……よくもうちの社員を!!」
アルが狙撃銃をコーストに向かって打ち込むが、前面に分厚く展開されたシールドによって防がれる。
マルチツールのアタッチメント――パーソナルフォースフィールド*4である。
「この……何で弾が届く前に止まってしまうの!?……くっ弾切れ……。」
「まずは一人――ちっ!」
「アルちゃんはやらせないよ!」
「死んでください!死んでください!!」
弾倉の弾を使い切ったアルを集中砲火で落とそうとしたが、ムツキとハルカの銃撃に中断された。
「さすがにキヴォトスの住人、一筋縄ではいかないな。」
「当り前よ!そう簡単にこの便利屋68を破れるとは思わないことね!」
「アルちゃーん。そうはいっても今一番ピンチだったのアルちゃんだよ~?」
「うるさいわよ!……さあ、あなたと私、どちらかが倒れるのが先か、試してみようじゃ――」
パン!パン!パン!
便利屋の背後から銃声が鳴り響き、本日二度目のヘッドショットを連射で食らったアルは地面に倒れ伏した。
便利屋はコーストに全ての注意を向けていたため背後からの奇襲に気づかなかった。
「社長!?」
「アルちゃん!?」
「アル様!?」
「うへ~まったく恩をあだで返されるとはこのことだよね~キミたち?」
そこに現れたのは先に帰っていたはずのホシノだった。
「ホ、ホシノ?どうしてここに……?」
「へへ~コーストさんが考えることなんてなんとなくわかるよ~。」
他のみんなを先に帰らせるのを見て何やら予感が働いたホシノは便利屋を追うコーストをその後ろからつけてきていた。
「さて、おとなしくするならこれ以上は手を出さないし、その子の治療だってしてあげる。拒否するなら……どうなるかな?」
殺気を滲ませイイ笑顔で笑うホシノを前に、頭を真っ先に潰された便利屋は逆らうことができなかった。
頭部にホシノの弾丸を何発も食らったアルは意外と重症らしく、コルベットを呼び出して医療ポッドで治療することになった。
コルベットを呼び出したタイミングでカヨコとムツキはコーストの正体に感づいたようだが、今となっては後の祭りだった。
「それで、こんな状態になってもまだアビドスへの侵攻をやめる気はないのかな?」
「……そりゃ、一応さっきはお世話になったわけだし、積極的に攻めたいわけじゃないけど依頼主を裏切るような真似をすれば、今度はこっちが裏社会で干される。今回の襲撃のためにお金も使い切っちゃったし、私たちにももう後がないのよ。」
医療ポッドで寝るアルに代わり、カヨコが便利屋代表としてホシノと会話する。
「そういわれてもね~アビドスは私たちの学校なわけで、はいそうですかと受け入れるわけにはいかないんだよ。」
「……それはもちろんわかってる。今回、私たちはすでに負けてしまってる。さっきはああいったけど、もうあなたたちを攻めることができるとは思ってないよ。それに、そこのコーストって人、確か『空の悪魔』とか呼ばれてる有名な賞金稼ぎでしょ。あなたみたいなのがいるってわかってたら、私たちだって最初からこんな依頼受けなかった。」
「なんだ、気づいていたのか。」
「気づいたのはこの乗り物を見た時だけどね。……はあ、まさかこんなことになるなんて。」
カヨコが眠るアルの顔を見ながらため息をついたところ、ちょうどアルの目が覚めた。
「ううん……ハッ!私は一体何を!」
「……おはよう、社長。」
「おはようアルちゃん。思ったより元気そうだね~。」
「だ、大丈夫ですか、アル様……。」
起き抜けに周りをきょろきょろと見まわすアルに便利屋メンバーが呆れと心配半々で声をかける。
「ようやく目が覚めたか、具合はどうだ。」
「悪くはないけど……ってあなたさっきまで戦ってた人じゃない!」
「私もいるよ~。」
「あ、あなたはアビドスの……こうなってるってことは、私たち負けたのね……。」
「ああ、その通りだ。だが、そうだな。ここはひとつ、取引をしないか?」
「取引?」
アルが不思議そうな顔で聞き返す。
「ああ、そうだ。お前たちは便利屋としての信頼を失わず、報酬を手に入れたい。そして俺たちはアビドスに害をなそうとした依頼主を知りたい。そこでどうだ、お前たちがアビドスを契約通り襲った風に偽装するのを俺たちが手伝う代わりに、お前たちに依頼をしたやつの情報を吐くというのは?」
「だ、駄目よ!
「お前はそういうがな、そもそも今回の依頼、お前たちにとってまっとうな依頼だったのか?」
「どういうことよ?」
「そもそも気になるのがな、アビドスに攻め入ろうというのに俺の存在も、先生の存在もろくに知らないというのがおかしいだろう。依頼主からそこら辺の情報は渡されてないのか?」
「なんであなたの存在を知らないとおかしいのよ。それに先生って?」
何もわかってなさげなアルにカヨコが解説を入れる。
「……社長。そこにいるのは最近話題になってる賞金稼ぎで、先生ってのは連邦捜査部のシャーレの先生のことだよ。」
「ああ、先生は言わずもがな連邦生徒会にかかわる重要人物、それに俺は自分で言うのもなんだがこの辺りじゃそれなりに有名な賞金稼ぎだ。それに、アビドスに攻め込んでくる集団も何度も排除しているわけだし、アビドスを攻めるように依頼を出すならお先生と俺の存在を知らないというのはまずありえない。お前たち、はめられたんじゃないか?」
「う、嘘、そんなこと依頼人は一言も……。」
アルが頭を抱えて蹲る。思ったよりまずい状況にいることにようやく気付いたようだ。
「今の俺の提案を飲めば、負けたことで依頼人にいろいろ言われるくらいで、お前たちが被るダメージはかなり減るだろう。さあ、どうする?」
「ぐぐ…………少し考えさせて頂戴。」
そう言ってアルは便利屋の輪に戻って話し合いを始める。
「ど、どうしましょう。私たち、もう後がないわよ!」
「アルちゃんが後先考えないで依頼受けちゃうからでしょー?」
「仕方ないじゃない!この依頼を受ければ便利屋として飛躍できると思ったのよ!」
「……正直、今の最善の策が向こうの取引に乗ることだと思うけど。」
「わ、私はアル様の命に従います……!」
全員の話を聞き終えた後、アルはひきつりそうになる顔を必死に抑えながら、はじけ飛んだ威厳をギリギリでつなぎ合わせてこう言った。
「その取引、乗ったわ!」
subnauticaです
戦闘描写ってこんな感じでいいんですかね?
それはともかく、今回は結構難産でした。
特にプロットなんかも作らないで話を書いてるんで話がどう着地するかは今のところ私にもわからないです。
次回はアビドスvs便利屋(笑)
では、また次回お会いしましょう。