blue sky archive   作:subnautica

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12 アビドスの敵と味方

12 アビドスの敵と味方

 

「というわけで便利屋と実践訓練を行うことになった。」

「何が”というわけで”ですか。ちゃんと説明してください。」

 

二人そろって”準備をする”のジェスチャーで自慢げに腕を組むホシノとコーストにアヤネが突っ込みを入れる。

 

「まあ、そんなにツンケンしないでよアヤネちゃん。実は……」

 

ホシノが対策委員会と先生に便利屋の現状について説明した。

 

「できれば私にも何か一言ほしかったかな……。」

「あいつら、無料でラーメン大盛にまでしたのに……あの恩知らずめ!」

「まあまあセリカちゃん。とりあえずは丸く収まりそうなんだからいいじゃないですか。」

「ん、なら便利屋の演技に付き合って取引を完了すれば、私たちを狙ってる相手がわかるの?」

「そういうことだ。」

 

その言葉にシロコはとりあえずは納得した表情を浮かべる。

アビドスに直接的な害を与える敵の正体を知るまたとないチャンスだ。逃すわけにはいかない。

 

「まあ、訓練という形になったとはいえ傭兵との実践になるわけだ。被害はある程度コントロールできるが、各自準備は怠らないように。俺も今から急いで防衛を固める。」

「ん。それで便利屋はいつ来るの?」

「ああ、今から大体三十分後だな。」

「「「「「三十分後!?」」」」」

 

思った以上の猶予のなさに対策委員会は悲鳴を上げる。

 

「いや、それが本来はもっと早い時間に襲撃するつもりだったのを遅らせてるみたいでな、そこが限界だったらしい。」

「ど、どうするのよ、もうすぐじゃない!」

「安心しろ、さすがにやつも後がない今の状態で取引を反故にするとは思えない。それに俺のほうも準備を進めておくから。」

「準備って、何するつもりなのよ?」

「まあ、それはみてからのお楽しみだ。」

 

便利屋襲来までの三十分対策委員会はできる限りの防衛強化を行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三十分後、便利屋68の社長、アルはアビドスの校門の前で白目をむいていた。

否、そこにあったのは校門ではなく城門とでも呼ぶべき代物である。

 

「な、何よこれ、アビドスって廃校寸前の高校なんじゃないの!何なのよこの要塞は!!」

「5メートル近い鉄の壁……これを破るのはさすがに大変そうだね。」

「……さすがにこれは予想外。社長、これは普通に攻め込んでも勝ち目なかったんじゃない?」

「うぐぐ……。」

 

アルがアビドスの前でうなっていると城門の上から対策委員会の面々が顔を出した。

 

「おお、やってきたか。よく来たな襲撃者諸君。」

「よく来たな、じゃないわよ。何なのこの防衛力の高さは!」

「いやなに、取引を交わしたとはいえ襲撃が来るってわかってるのに何も準備しないのはどうかと思ってな。今さっき作らせてもらった。……というかもっと前からこうしとくべきだったか。」

「そうだねぇ、これだけ威圧感ある外観だったらヘルメット団も手を出してこなかったかもね~。」

「ちょっと!大したことなさげに言うけど今さっき作ったって言った!?ほんとにどうなってるのよ……。」

 

アビドスが数十分で要塞と化したのは、言わずもがなマルチツールのビルダー機能によるものである。

細かい装飾をつけてたらさすがに間に合わなかったが、金属の壁を並べるだけであればそう時間はかからなかった。

 

「ん、それにしても本当に便利屋なんてやってたんだね、あなたたち。」

「そうですよ!学生ならもっと健全なアルバイトがあるでしょう!それなのに便利屋なんて!」

「ちょ、アルバイトなんかじゃないわよ!れっきとしたビジネスなの!肩書だってあるんだから!私は社長!あっちは室長で、こっちは課長……」

「……はぁ。社長、ここでその言い方は余計に薄っぺらさが増すから……。」

 

アルがムツキとカヨコを順番に指さし自慢げに話す。

子供が自慢するような話し方にカヨコはため息をついた。

 

「まあ、世間話はその辺にして……さあ、俺たちを襲撃するんだろう?やれるものならやってみるがいいさ。」

「ぐ……や、やってやろうじゃないのよ!総員、攻撃開始!」

 

まともにやり合っていたらどうなってしまっていたのかという恐怖を胸に攻撃を行うアル。

異星の謎技術で補強された合金の壁がそう簡単に崩れるはずもなく、結局便利屋+傭兵はアビドス高校に一つも傷をつけぬまま定時が訪れて襲撃はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

「まさかまったくダメージを与えられずに終わるなんて……。」

 

襲撃という名の半分茶番を終えた便利屋と対策委員会は取引の履行を行うために集まっていた。

 

「ははは、もしこの取引がなければお前たちがぼろ雑巾になるまでこちらの攻撃はやまなかっただろう。命拾いしたな。」

「恐ろしいこと言わないで頂戴……。」

 

もう片方の選択の先の自分の姿を想像し、アルは震え上がった。

 

「さて、とりあえずお前が最悪の事態に向かうのを避ける手助けはしたわけだ。今度はお前の番だぞ、陸八魔アル?」

「ええ、わかってるわよ。私たちにあなたたちの高校を襲撃するように依頼した相手。それは――」

 

 

 

 

 

 

 

これ以上長居したくないと言わんばかりに足早に便利屋が退却していった後、対策委員会は得られた情報について話し合いを行っていた。

 

「カイザーローン……まさか私たちの借金相手が学校襲撃を指示していたなんてね……。」

「ああ、ただ、この学校を力づくで奪って何がしたいんだ?アビドスがつぶれれば借金の回収もできなくなるというのに……。」

 

アルの口からクライアントとして出たのはカイザーローン。現在アビドスが借金をしている相手である。

 

「そうですね。こういっては何ですが、今のアビドス高校に借金をどうにかできるだけの価値はないです。それなら、滞りなく返済が進んでいるうちは静観しておくものだと思うのですが……。」

「まさか、あの便利屋、私たちに嘘ついた?」

「あいつにあの場で嘘がつけるような度胸があるとは思えないが……確かに盲目的になってもいけない。色々調べる必要があるだろう。アヤネ、セリカ半泣き事件の時の違法戦車の破片があるだろう。あれの出所を探るのはどうだ?」

「はい、そうですね。あれの出所は私も気になっていたところです。」

「ちょっと!なにその呼び名は!なんでアヤネも当たり前のように反応してるわけ!」

 

セリカの突っ込みを無視して、戦車の出所をどう探るかの話し合いを始めた。

 

「前にも少し触れたが、探るならブラックマーケットの中だろう。」

「ブラックマーケット……とっても危険な場所じゃないですか。」

 

ブラックマーケットはキヴォトスでも最大級の非正規市場であり、様々な理由で学校をやめた生徒が徒党を組んで非認化の活動を行っているという。その中には当然、違法物品の取引も含まれる。

コーストも賞金首を追う関係上何度か立ち入ったことがあった。

 

「便利屋68……あいつらもブラックマーケットで何度か騒ぎを起こしてるみたいだからな。依頼人が誰にしろ、何かしら手掛かりは得られるだろう。」

「はい。……それに、もし本当にカイザーローンが相手だとすると、私たちはかなり不利です。しっかり確かめないといけません。」

「決まりだねー。じゃあ、今日はもう遅いから明日、ブラックマーケットを調べてみよう。」

 

こうして対策委員会のブラックマーケットの調査が計画された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ブラックマーケットに行く前に借金の回収に来たカイザーローンの現金輸送車に立ち会っていた。

 

「……はい、確認しました、全て現金でお支払い頂きましたので、今月は以上となります。カイザーローンとお取引頂き、毎度ありがとうございます。来月も宜しくお願いいたします。」

 

銀行員ロボットは先月と同じ定型文を吐き、輸送車に乗って去っていった。

 

「今月も何とか乗り切ったね~。」

「はあ……借金、減ってはいるけど、私たちが学生の間にはまず返済できないでしょうね。」

「……カイザーローンが私たちを襲撃するよう指示した依頼人だとしたら、本当にまっとうに借金を返済させる気があるのでしょうか?」

 

アヤネの言葉に全員の心が沈む。借金は減っているはずなのに、ここ最近は心労のほうが増えていた。

 

「そのあたりを確認するために今日調査するんだろう。今は、あまり深く考えるな。」

「そう、ですね……。今は、調査のほうに集中しましょう。」

 

そして、対策委員会は真にアビドスの敵となるものを見極めるべくブラックマーケットへと乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここが、ブラックマーケット。」

「わあ☆すっごくにぎわってますね?」

「本当に。もっと小さな市場を予想してたけど、町一つ分くらいの規模があるなんて。」

「うへ~。私たちは普段学外に出ないからね、外には意外とこういう変な場所も多いんだよ。」

 

数十分後、対策委員会一行はブラックマーケットに到着した。皆、想像以上の市場の規模に驚いているようである。

 

「ホシノ先輩は、もしかしてここに来たことあるの?」

「いんや~でも、アビドスの外にはこういうへんちくりんな場所がたくさんあるっていうのは聞いたことあるよ。ちょーデッカイ水族館もあるんだって!アクアリウムっていうの!行ってみたいな……魚……お刺身……うへへ。」

「何だホシノ、そんなに魚が好きだったのか?今度海洋惑星にでも連れて行ってやろうか?魚なんて見放題だぞ。」

「え、ホントに!行きたい行きたい!」

 

違法市場のブラックマーケットとは思えないほどほのぼのした会話である。

アクアリウムの感想としてそれは正しいのかとセリカは疑問に思ったが、笑顔のホシノを見てとりあえず水を差さないことにした。

 

「皆さん警戒を怠らないでください!そこは違法な武器や兵器が取引される場所です。何が起きるかわからないんですよ。何かあれば私が……きゃあ!」

 

タタタタタタタタタタ!!

 

狭い路地に銃声が響き渡る。

銃声の出所では、トリニティの制服を着た一人の少女が不良集団から逃げ回っていた。

 

「おらっ!待ちやがれ!」

「うわっ、ま、まずいですー!!ついてこないでくださあい!」

「そうはいくか!」

 

不良に追われブラックマーケットを駆けていたトリニティの少女――阿慈谷ヒフミは、よく前を見ておらず気づけば目の前に人がいるのに気づいた。

 

「わ!そこの人、危ないのでどいて下さいー!」

 

ドン!

 

ヒフミの注意もむなしく、たまたま目の前にいたシロコとヒフミは正面からぶつかった。

 

「いたた……ご、ごめんなさい!」

「ん、私は大丈夫。あなたは……なんか追われてるみたいだね。」

「そ……それは、その~。」

 

ヒフミがしどろもどろになっていると、追手の不良たちが追い付いてきた。

 

「何だおめえらは!私たちが用があるのはそこのトリニティの生徒だ!」

「あうう……私のほうは特に要はないのですけど……。」

 

その時、アヤネはヒフミの着ている制服に合点がいった。

 

「思い出しました。彼女のその制服、キヴォトス三大校の一角、トリニティ総合学園の制服です!」

「そうだ!そして、キヴォトスで最も金を持っている学校でもある。だからそこの生徒を拉致って身代金をたんまりせしめようってわけだ!」

「拉致って交渉!なかなかの財テクだろう?くくく……。お前らも興味があるなら計画に乗せてやってもいいぜ。分け前は……」

 

ガガガガガガガ!!

 

話してる不良の頭をコーストがボルトキャスターで撃ち抜き、あっさりと沈黙させた。

 

「こいつらの話は聞くだけ無駄だ。とっとと制圧するぞ。」

 

その声を皮切りにホシノたちも動き出し、ものの数秒で全員を黙らせることに成功した。

 

「悪人は懲らしめないとです☆」

「ん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わわ、ありがとうございます!捕まれば学園に迷惑をかけてしまうところでした。それも、学園をこっそり抜け出してきてしまったので、ばれたらどうなるか……。」

 

状況はよく呑み込めてないが、助けられたヒフミが感謝の言葉を投げかける。

 

「うんうん。キミが助かってよかったよ。ところで、ヒフミちゃんだっけ?トリニティのお嬢様がなんでこんなところにいるのか、教えてもらえるかな?」

「あはは……それがですね、実は探し物がありまして……。もう販売されてない代物なのですがブラックマーケットでなら取引があると聞いて……。」

「もしかして、戦車?」

「それとも、違法な火器?」

「それとも、化学兵器とかですか?」

 

場所が場所なため、ホシノたちはこの少女がブラックマーケットに何かしらの兵器を求めてきたのだろうと思い込んでいた。

 

「え!い、いやそんな物騒なものではなく……ペロロ様の限定グッズを求めてきたんです。」

「ペロロ?何それ。」

 

セリカが聞きなじみのないそれに疑問の声を上げる。

何だろうか、わざわざブラックマーケットまで買いに来る当たり、何かの隠語だったりするのか?

 

「はい、これです!ペロロ様とアイスクリーム屋さんがコラボした限定ぬいぐるみ、限定で百体しか生産されていないグッズなんですよ!かわいいでしょう?」

 

全然違った。何だろうこの、見ているだけでどこか不安になるデザインのぬいぐるみは。

端的に言い表すならば何かキメ多様な目をした鳥の口にアイスがねじ込まれているといった感じだろうか。

 

「なあホシノ、あれはこの星の原生生物だったりするのか?今までの旅でもあんなものは見たことないが……。」

「そんなわけないでしょ。でも確かに、あれがかわいいっていうのはおじさんちょっとわからないかな……。」

 

先生のほうにも顔を向けてみたが、シロコとアヤネと顔を見合わせ微妙な表情をしているのを見て、自分がおかしいというわけではないとわかり、少し安心した。

 

「わあ☆モモフレンズ、私も大好きです!私はミスター・ニコライさんが好きなんですよ!」

「わかります!ニコライさんも哲学的なところがかっこよくて……。」

 

どうやらノノミはあちら側のようだ。よくわからないもののよくわからない話が続いている。

 

「とまあそんなわけでグッズを買いに来たわけですが途中で絡まれてしまって……皆さんがいなければどうなっていたことか……ところで、アビドスの皆さんはなぜここに?」

「まあ、ヒフミちゃんと似たようなもんだよ。」

「ん、私たちも今は生産されていないものを探しに来た。」

「ほえ~皆さんも似たような感じなんですね。」

 

 

〈脅威を検知//敵性武装集団〉

 

そうして話を膨らませていると、エクソスーツの索敵に反応があった。

 

「皆さん、大変です!四方から武装した集団が迫ってきています!」

「ちっ、さっきの不良集団の仲間か。」

 

道の先からさっき眠らせてその辺に放置したはずの顔が走ってきている。

衝撃が足りなかったようだ。こんなに早く起きるとは。

 

「ん、望むところ。」

「まったく、何でこんなのばかり絡んでくるのかしら。」

「私もみんなをサポートするよ。ヒフミ、ごめんけど戦えるかい?」

「もちろんです!皆さんにだけ戦わせるわけにはいきません!」

 

どうやら、全員戦意は十分のようである。

 

「よし、寄せ集まっても所詮はただの不良だ。お前ら、やれるな?」

「もちろんです☆」

「ん、叩きのめす。」

「やってやろうじゃないの!」

「うへー……蜂の巣にしようか。」

 

全員が武器を構える。

アビドス+ヒフミによるブラックマーケットでの初戦闘が始まった。

 




subnauticaです。

ついにペロロ狂が参戦。この先もアビドスの心強い味方となってくれることでしょう。

次回はシロコ待望の銀行強盗の時間となる予定です。

それでは、また次回お会いしましょう。
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