13 お嬢様と行く初めての銀行強盗
ガガガガガガガ!!
ブラックマーケットに大量の銃声が響き渡る。
アビドス+ヒフミと不良たちとの戦いは、おおむねアビドス有利に進んでいたものの、不良の波が止まず少しづつ物量に押されつつあった。
「さっきから倒しても倒してもどこからか湧いてきやがる、こいつら暇なのか!?」
「文句言ってもしょうがないですよコーストさん!そっちにも弾幕張ってください!」
アビドス側の布陣としては、ノノミのミニガンとコーストのパルススピッターで弾幕を張り、セリカが後方を狙撃、ホシノ、シロコ、ヒフミが遊撃といった感じである。
「まずいぞ……制圧に思ったより時間がかかっている。これ以上の騒ぎはここの治安組織が動く!」
「ここの治安組織?どういうことですか?」
「そこの人の言う通りです!これ以上はブラックマーケットの治安組織が動きます!急ぎここを離れないと……。」
「そうはいっても、向こうはまだやる気満々みたいだよ!」
「しょうがない……少し強引に突っ切るか。全員下がれ!」
その声にホシノたちが後方に下がるとコーストはプラズマランチャーで前方の不良たちを吹き飛ばし、エクソクラフト:コロッサスを召喚した。
コロッサスはジオベイでの改良で車輪を多脚構造に、後部を荷台に改造してある。
「わ!なにこれ!」
「た、多脚車両……カッコいい!」
「盛り上がってないで早く荷台に乗り込め!こいつで突っ切るぞ!……ヒフミ!この辺で奴らを撒けそうな場所はわかるか!」
「は、はい!私が案内します!」
キヴォトスでもあまり見ない多脚の車両にテンションを上げる先生に喝を飛ばし、コーストが運転席に乗り込む。
エンジンがうなりを上げ、コロッサスが不良集団に突っ込んでいった。
「轢かれたくなかったら退け!不良共!」
前方の不良は車体で無理やりどかし、後方の不良はホシノたちが銃撃で落として、無事に包囲網から抜け出すことに成功した。
無事に追いすがる不良たちから抜け出したアビドス一行はブラックマーケット内の歓楽街のような場所で一息ついていた。
「うへ~まさかあんなに不良がやってくるとはねー。」
「まったくだ……しかし、ヒフミといったか?賞金狩りで何回か来たことのある俺はともかく、さっきの道案内の件もそうだが、ずいぶんとここについて詳しいんだな。もしかしてよく来ているのか?」
「そ、そんなに何回も来ているわけではありませんよ?ただ、ここは連邦生徒会の手の及ばない場所なので、事前にいろいろ調べたってだけで……。特にここの治安機関は敵に回すとブラックマーケット全体を敵に回します。ここだけでも学園数個分の規模があるので、避けなければならないと思いまして……。」
思っていた以上の規模にノノミたちは驚く。
「スケールが桁違いですね~。」
「ん、さすがはキヴォトス有数の違法市場。」
「ふ~ん、ヒフミちゃんは個々の事情にかなり詳しいみたいだね。……よし、決めた。ヒフミちゃんには助けてあげたお礼に、私たちの探し物が見つかるまで手伝ってもらうね~。」
「え、ええ~!」
いきなり救助の返礼を求められたヒフミは驚きの声を上げた。
「わあ☆それはいいアイデアですね!」
「なるほど、誘拐だね!」
「はいっ!?」
「誘拐じゃなくて、案内をお願いしたいだけでしょ。勿論ヒフミさんが良ければだけど。」
「ま、まあ、アビドスの皆さんにはお世話になりましたし、私なんかでよければ喜んでお手伝いしますが……。」
「よーし。それなら少しの間お願いね、ヒフミちゃん。」
一方その頃、便利屋68事務所……
prrrrrr……prrrrrrrrr……
鳴り響く電話を見つめ、アルが苦い顔をしている。
「どうしたの、アルちゃん。ずっと電話なってるけど、出ないの?」
「もしかして、あの仕事のクライアント?」
「ああ……そりゃあんな顔にもなるよね。」
「アル様……。」
「ええい、こんなことで社長がビビってどうするのよ。こ、こうなったらしっかり問い詰めてやるんだから!」
とてもいやそうな顔だったが、意を決して受話器を取った。
「はい……便利屋68です。」
『……便利屋、件の件に関してはどうなった、まさか失敗とは言わんよな?』
カイザーの威圧感ある声に一瞬委縮するが、勇気を振り絞ってカイザーに問いかける。
「そ、その件に関して、私たちからも一つ伺いたいことがあるのですがよろしいですか?」
『ん、何だね。言ってみたまえ。』
「ええ、ならお聞きしますが、依頼の際に、連邦生徒会の先生、そして腕利きの賞金稼ぎがアビドスにいること、なぜ事前に通達してくださらなかったのですか?」
『なんだ、そんなことか。ヘイローもない人間二人、わざわざ教えるまでもないと思ったまでのことだが?』
「ヘイローもないただの人間……?何を言っているのですか?連邦生徒会から治外法権の如く権限を与えられている先生と、アビドスをものの数十分で鉄の城に変貌させ、見たこともないような技術を扱うあの人がただの人間であって脅威ではないと、あなたはそういうのですか?」
『あ、アビドスが鉄の城に……?お前は何を言っているんだ?』
「実際に見ればわかりますよ……それはともかく、あなたたちは攻撃の対象を明らかに過小評価して私たちに伝えました。これは取引の上で、あまり誠実とは言えないのではないですか?」
アルはカイザーとの取引を切る理由にコーストに言われたことを利用することにした。
『ほう……誠実ではないと、言ってくれるな。だったら、どうするというのだね?』
「ふん、簡単なことですよ……この仕事は放棄!二度とアビドスを襲撃するような依頼も受けない!いいわね!」
『おい!貴さ――』ガチャ
アルは言いたいことだけ言って電話を切った。
「……大丈夫なの、社長。最後のガチャ切りは余計だった気がしてならないのだけど……。」
「だ、大丈夫よ。何の問題もないわ!」
問題しかない。彼女も勢いで言い切っただけである。
「まあ、向こうも私たちを舐め切ってたわけだし、あまりいい関係は気づけそうじゃなかったからいいんじゃない。まあ、これで報酬は入らなくなったけど。」
「ぐふ……。」
その言葉にアルは思い出した。襲撃を行うまで、アルは今回の襲撃の報酬を前提に動いていた節がある。だが、今回便利屋は大量の金を失ったが、それと引き換えに何も得ていないのだ。
このままでは、この無駄に小綺麗なオフィスの家賃も払えない。
「このオフィスが一番の金食い虫じゃないの、もっと安いところにすれば――」
「う、うるさい!ちゃんとした会社なら、事務所は基本でしょ!そのほうが以来だって増えるんだから!」
「私は前みたいに公園にテントでも別にいいんだけどなー。」
「い、いいから黙りなさい!」
好き放題言われるアルはギャーギャー騒ぐが、金のない現実は変えられない。
実際問題、どうしても金が必要なのに金がないときはどうしたらよいのか?
答えは簡単、奪うか、借りるかである。
「……融資を受けるわ。」
「何言ってんの?アルちゃんはブラックリスト入りしてるでしょ。」
「違うわよ!私は指名手配されて口座が凍結されてるだけ!」
「そうだっけ?……あ、風紀委員にやられたんだっけ?」
「くっ……風紀委員め。……こうなったら、あそこしかないかしらね。」
「ちっ、切りやがったか。それにしてもアビドスが鉄の城?……おい、確か今日アビドスに利息の回収が行っただろう。その時の現金輸送車のカメラ画像をこっちに回せ。」
部下にそう連絡して送られてきたのは合金の壁で要塞と化したアビドスの姿である。
「な、なんだこれは……。」
「お困りのようですね?」
そう言って理事の後ろに現れたのはひび割れた顔を持つ黒スーツの何か……通称黒服である。
「お困りどこではない!どうなっているんだこれは!こんなことができるなんて私のアビドスのデータには一片たりとも存在していないぞ!」
「……まあ、確かにこれは私も少し予想外ですね。天外の技術とはここまでのものでしたか。」
コーストが天外のものと知る黒服であってもこの事象は予想外だったようだ。
「お前が言っているのはあの傭兵の話か。確かにあいつは賞金稼ぎとしての腕は高いが、大工ではなかったはずだぞ。」
「私のほうでも確認は取ってみます。ただ、アビドスに現れたあの二人、決して侮るべきではないかと……では、私はこれで……。」
「……。」
どこまでもうまくいかない現状に、理事は無い青筋を浮かばせ、拳を震わせた。
「はあ、しんど……。」
「もう数時間は歩いてますね~。」
「おじさんも、もうくたくたで、膝も腰も悲鳴を上げてるよー。コーストさんおぶってよ~。」
「こんなんでへばるほど軟じゃないだろう……。」
「うへー。」
「……あの、ホシノさんて今おいくつなんですか?」
「ほぼ同年代!」
休憩を終えたアビドス一行は引き続きブラックマーケットの調査を行っていた。
かなり長時間あちこちを探し回っているが、一向に例の戦車のパーツが見つからない。
「あら、あんなところにたい焼き屋さんが!」
「ほんとだー。こんなところに屋台が出てるなんてね~。」
「せっかくだし買っていきますか?私がご馳走しますよ!」
「えっ、ノノミ先輩、またカード使うの!?」
「先生の”大人のカード”もあるよ~?」
「ううん、私が食べたいから良いんですよ☆皆で食べましょう?ねっ?」
というわけで、一向に見つからないパーツのことは置いておいて、みんなでたい焼きを食べて休むことになった。
「まいど~。」
「むぐむぐ……美味しい!なんでこんなところに出店してるのかしら?」
「いや~甘いものが食べたいところだったし、ちょうどよかったね~。」
「あはは、いただきますね……。」
「ん、美味しい。ほら、先生も。」
「いただきます。……うん、美味しいたい焼きだ。」
道端に座ってみんなでたい焼きをつまむ。
「ごめんなさい、アヤネちゃん。私たちだけいただいちゃって……。後で、アヤネちゃんにもご馳走しますからね!」
「あはは……大丈夫ですよノノミ先輩。私はここでお菓子とかつまんでますから。」
「それにしても……皆さんが探しているというパーツの情報、こうも出てこないとなるとさすがにおかしいですね。」
「そんなにおかしなことなの?」
「ええ、ここでの活動は合法的なもののほうが少ないので、わざわざ隠ぺいしたりしないんですよ。そんなブラックマーケットで完全な情報統制を行うというのは大企業であっても難しいはずです。」
ヒフミがブラックマーケットの性質について説明する。ここは、連邦生徒会も外部の警察組織もそうそう手を出してこないので、違法取引が大っぴらに行われている。そんなブラックマーケットで、一切の情報が出てこないというのはおかしいという話だ。
「大企業でも、ねぇ。なあヒフミ、カイザーならどうだ。あの企業なら、ブラックマーケットでそれぐらいの強権を振りかざす力は持っているんじゃないか?」
「カイザーコーポレーションですか!?まあ、あそこならそれぐらいのことはやってのけそうですが……。」
そんなことを話していると、アヤネから通信が入った。
『気を付けてください皆さん!そちらに武装した集団が近づいています!』
「何?まさか、また不良じゃないだろうな。」
『いえ、見たところ違うようです。まだ気づかれていないようなので、とりあえず身を潜めてください。』
アヤネの指示に従い、とりあえず身近な身を隠せそうなところに隠れた。
「わわっ、あれはマーケットガードですよ!」
「マーケットガード?」
「ここの治安組織の中でも最上位の連中だな……。目をつけられたらかなり面倒なことになる。」
「ん、あれはパトロールというより、護送中……あれは、現金輸送車?」
「あ、闇銀行に入っていきましたね。」
「闇銀行?」
ヒフミから気になるワードが出てきたシロコはそう聞き返した。
「ええ、キヴォトスの犯罪による盗品の15%があの銀行に流れ込んでいるとされていて、強盗や誘拐などによる犯罪資金が闇銀行に入って、また闇銀行から出ていくといった負のスパイラルになっているんです。」
「なによそれ!銀行が犯罪をあおってるようなものじゃない!」
「ええ……まさにその通り、あの銀行も犯罪グループの一つといえます。」
ヒフミの話を聞いていると、観察していた現金輸送車から誰かが下りてきた。
それもアビドスからすれば目にしてから間もない人物である。
「あ、あれって毎月うちに来て返済金を受け取ってる銀行員じゃない!なんでここに……。」
『車もカイザーローンのもののようです。これは……。』
「ああ、あの便利屋の発言の信憑性がだいぶ増したな。」
犯罪都市の中枢へと入っていったカイザーローンの現金輸送車、少なくとも闇にどっぷりつかっている会社ということは確かなようだ。
「み、皆さん、先ほどまでの発言からまさかとは思いましたが、もしかして、カイザーローンから借金をしているんですか!?」
「ヒフミちゃん、知ってるの?」
「ええ……先ほど話題にも出たかの有名なカイザーコーポレーションが運営する高利金融業者です。」
「有名?何かまずいところでもあるの?」
「いえ……カイザーグループ自体は表立って犯罪をしているわけではないのですが、法の線引きの上で反復横跳びしてるようなグレーゾーンの企業ですので……。私たちトリニティの学区にもカイザーグループは進出しているのですが、生徒たちへの悪影響を懸念してティーパーティーでも目を光らせている企業でもあります。」
ヒフミは緊張した面持ちで言う。
三大校の一角のトップが目を光らせつつも、表立って手が出せない。カイザーはそれほどの大企業なのだ。
「トリニティのあのティーパーティーがねえ……アヤネちゃん、あの現金輸送車の走行ルート、調べられる?」
『少々お待ちください……だめですね、全データをオフラインで管理しているようで、外からは手出しができません。』
「ま、そんなに甘くないよねー。」
「そういえば、今まで返済が現金限定だったのも……」
「私たちの返済が、そのまま闇銀行に流れていた……?」
『あの現金輸送車の動線を追わない限りはっきりとしたことは言えませんが……』
その時、ヒフミが声を上げた。
「あ、さっきサインしてた集金確認の書類。あれは証拠にならないですか?」
「ん、さすが。」
「おお~ナイスアイデアだね、ヒフミちゃん!」
「まあ、証拠にはなるだろうが、あの書類はもう銀行の中に回収されちまったぞ、どうするつもりだ?」
コーストがそう口にした瞬間、ここ数日で最も目を輝かせたシロコが近寄ってきた。
「うん。もう他に方法はない。」
「ん?なんだシロコ、……まさか。」
「ん。そのまさか。」
「あ~、それしかないのか~……。」
「そうですね☆あの方法なら……!」
「なに?ま、まさか、私が思ってるあの方法で行くつもりなの!?」
「え?え?」
何も状況が呑み込めないヒフミとは対照的に、シロコのことをよくわかってるアビドス組はシロコが次に何を言うのかわかっているようだ。
「ん、銀行を襲う。」
シロコはいつだか見せてきた青色手作り覆面を被って自慢げに言った。
「ええっ!」
「事ここに至っては仕方ない、のか?」
「まあ、仕方ないよー。」
アビドス組はあっという間に覆面を被り終え、コーストもいつもかぶっているヘルメットを別のデザインに変更した。
「え、ちょっ、皆さん何を言ってるんですか!」
『はあ、こうなってはもう皆さん聞く耳持たないでしょうし……もう、とことんまでやりましょう!』
「アヤネさんもですか!」
愕然とするヒフミのもとにシロコがすり寄る。
「ごめんヒフミ。あなたの分の覆面は用意がない。」
「うへー。じゃあ、ばれたら全部トリニティのせいだね。」
「うぇ!な、なん、あう……。」
「それはかわいそうですよ。はい☆とりあえずこれどうぞ!」
そう言って差し出されたのは穴が二つ空いたさっきまで食べていたたい焼きの袋。焼きたてを入れていたこともあり、ほのかな温かみと粒あんの甘い香りが漂っている。
「ちょっと!さりげなく言ってますけど、私も参加するのは確定なんですか!?」
「だって、私たちの探し物に付き合ってもらう、って言ったとき、私は喜んで付き合います、って言ってたよね?ここまで来たらもう一蓮托生だよ~。」
「た、確かに言いましたけど……。あうう、ごめんなさい、ナギサ様……。」
「じゃあ、舐めた真似をしてくれた闇銀行に、一発デカいのを食らわせてやろうか。せっかくだし、先生、号令を頼む。」
「お、私でいいのかい?……じゃあ、みんな。銀行を襲うよ!」
「「「「「「おーーー!」」」」」」
「お、おー……。」
「お待たせいたしました。お客様。こちらの窓口で対応いたします。」
「何がお待たせしましたよ!ホントに待ったわよ!ここで!六時間も!」
「私共の事情ですので、ご理解ください。」
後に引けなくなったアルは、闇銀行に融資の要請に来ていた。
ただ、待合室で六時間待たされた便利屋はアルを除き全員寝てしまっていた。
「さて、御社の財政状況を確認させていただきましたが、この会社はペーパーカンパニーではございませんか?書類上の財政状況が破綻していますが?それに、会社の財政状況に対し、事務所の賃料が必要以上に高いです。もっと身の丈に合った物件を見つけていただくのがよろしいのではないでしょうか?」
「ぬ、ぐぐぐ……。」
立て続けに会社の問題点を列挙され、アルは何も言い返せなかった。現状の問題点はアルの見栄からくるものが大きかったからである。
「ともかく、こういった状況では融資は難しいです。もっと堅実な職から始めてみてはいかがでしょうか?日雇いや期間工など手軽に始められるものもありますよ。」
「そ、そんなぁー!」
その言葉にアルは苛立ちを覚えるが、正直この財政状況の会社にはどの銀行も融資しようとは思わないだろう。
「(ああ、イラつく!もういっそ、ここから金を奪って立ち去ってやろうかしら。……いや駄目ね、たとえ抜け出せたとしてもマーケットガードの目を抜いてブラックマーケットから金を持ち出すのは至難の業だわ。……情けないわね。キヴォトス一のアウトローになるって決めたのに、こんな有様なんて……。私が、私が望んでいるアウトローはこんなんじゃ……。)」
アルが銀行の窓口で項垂れたその時、
バツン!
銀行の電気が落ちた。
「な、何ですか!停電ですか!ああ、パソコンの電気も落ちてるじゃないですか!」
ダダダダダダダダ!!
ズガン!ズガン!
「きゃああ!」
「うわあ!」
複数の銃声が鳴り響き、次いでマーケットガードの悲鳴が上がって、再び銀行が静まり返った。
パッ!
銀行内の照明が元に戻った時、そこには覆面を被った七人組が立っていた。
「全員その場に伏せなさい!持っている武器は捨てて!」
「いうこと聞かないと、痛い目にあいますよ☆」
「ミンチになりたくなければ大人しくしていろ!!」
「あ、あはは~ケガするといけないのでおとなしくしていてくださいね……。」
「(ぎ、銀行強盗!?)」
アルはブラックマーケットのど真ん中の銀行で強盗するやつがいることに素直に驚いていた。
「外部への連絡手段はすべて絶たせてもらった。何をしようと無駄だ。……おっとそこの機械頭動くなといったはずだが?」
こっそり通信機器に触れようとしていたロボットを黒ヘルメット……コーストはグラビティーノコイルを使って空中に拘束する。
「な、なんだこれは!ぅ、浮いてる!?」
「別に俺はお前らを何人か吹き飛ばしてばらばらにしても構わないんだ。人質はこんなにいるんだからな。……スクラップになりたくなかったら、大人しくしていることだ。」
「ひ、ひい~!」
コーストの脅迫が妙に手馴れているがそれもそのはず、海賊ドレッドノートを制圧して金庫を空にさせたのは一度や二度の話ではない。もはや本職ともいえる。
ちなみに彼の倫理観の中では賊から盗むことは合法の範疇である。
「うへー。ここまでは計画通り、リーダーのファウストさん、指示をお願い!」
「へ!リーダーのファウストって、わ、私ですか!」
「そうだぞ、リーダー。指示してくれれば、ここの人間を半分ハチの巣にしたってかまわない。」
「そうだそうだ!リーダーを怒らせるとこのコー……ごほん。黒ヘルメットがそいつを蜂の巣にするぞ!」
ホシノの悪乗りにコーストが乗っかり、その上にさらにホシノが乗っかった。おかげで銀行内は阿鼻叫喚である。
「ええ、ボスです!リーダーです!ちなみに私は~……覆面水着団のクリスティーナだお♧」
「なにそれ、いつ覆面水着団何て名前になったの!」
「おい。俺もいるんだからどうせなら覆面水着海賊団にしてくれ!」
「突っ込むところそこじゃないでしょ!」
セリカはツッコミにいそしんでいる。覆面を被っても役割は変わらないようだ。
「あれ、あいつらって……」
「あ、アビドス?何してるのアイツら……。」
さすがに直接相対した便利屋メンバーはアビドスだとわかるようだ。
アルを除いて。
「ん、監視カメラの死角、警備員の動線、銀行の構造、全部頭に入ってる。無駄な抵抗はしないこと。分かったらそこの銀行員、このバッグにさっき到着した現金輸送車の……」
「お、お金ならいくらでもあげますから、い、命だけは……。」
「あ、いやそうじゃなくて、集金記録を……。」
「こ、これでもかと詰めましたので、ど、どうか……!」
「う、う~ん……。」
「(や、やば~い!なんて人たちなの!ブラックマーケットの銀行を襲うなんて、すごいアウトローじゃない!)」
さっきまで想像してあきらめていた銀行強盗を実際にやってのけるその精神性にアルはこの上ないアウトローを感じたらしい。
「(特にあの青い覆面の人や、黒いヘルメットの人!荒事に慣れている感じがして、すごくアウトローだわ!か、カッコいい!!)」
アルのお気に入りはシロコとコーストらしい。
シロコは今まで何回も銀行強盗のイメージトレーニングをしてきたこともあって立ち回りは完璧。コーストは海賊相手の強盗を実際にやっているので、慣れている感じがするというよりは本当に慣れているだけである。
「……社長、全然気づいてなさそうだね。」
「むしろ目なんて輝かせちゃって。」
「私たちはここで待機でしょうか?」
「変に目立つのもあれだからね。ここで大人しくしてよう。」
ムツキとカヨコは一向に気づかない社長の姿に呆れた目を向けていた。
「シロ……ブルー先輩!物は手に入った?」
「あ、うん。問題ない。」
「よーし。目的は達した!皆、撤収!」
ホシノの号令で全員が撤収を始める。
「……それじゃ撤収の前に少し保険をかけておくか。」
コーストはそう言うとマルチツールのアタッチメントを麻痺迫撃砲*1に切りかえ、窓口の職員に向かって撃ち放った。
「アババババババババ!!??」
「すまんな、俺たちが離れるまで、少し大人しくしといてくれ。」
そう言い残してコーストは銀行を離れて行った。
「アババババ!?」
「社長……。」
ちなみに窓口近くで隠れていたアルも巻き添えを食らって麻痺させられていた。
銀行出口にて……
「窓口の銀行員は一時的に寝かしてある!コロッサスで一気にこの場を離れるぞ!」
そう言ってコーストは本日二度目の活躍であるコロッサスを呼び出し、みんなを乗せて一気にエンジンをふかせて銀行前から走り去った。
「ぐ……う……ま、マーケットガードに告ぐ!銀行強盗だ!急いでひっ捕らえろ!」
しばしおいて目が覚めた銀行員は急いでブラックマーケット全域のマーケットガードに通達を出し、強盗をとらえるように指示を出した。
「わ、私たちも追うわよ!」
「はあ、こうなると思った。」
「まあ、いいじゃん!楽しそうだし。」
便利屋一行もコーストたちを追って銀行の外へと駆け出した。
〈脅威を検知//敵性武装車両〉
「コーストさん、集まってきたよ!」
「まあ、そんなに長時間は止められないからな。これぐらいが限界か……。総員、応戦頼むぞ!」
「「「「「「了解!」」」」」」
追いすがってきたマーケットガードに向かって、ホシノたちが銃撃で応戦する。
「追いつけるものなら追いついてみな~。」
「ほら!追ってくんじゃないわよ!」
応戦しながら道を走り抜けていると進路上の道にバリケードが張られていた。
『コーストさん!前方にバリケードが張られています!迂回路を……』
「心配するな!そのまま抜ける!」
「え!コーストさん、まさか……。」
「全員つかまれ!バリケードに突っ込むぞ!」
「ひゃあああ!!」
荷台の全員がコロッサスに強く捕まり、衝撃を覚悟したが、意外と強い衝撃は来なかった。
目を開けて周囲を見回すと、とっくにバリケードは抜けており、バリケードを見ればコロッサスが通ったであろう部分だけごっそりとえぐられたようになっている。
「ど、どういうこと?」
「コロッサスの前面に着けてる採掘ブレードは進行路上の障害物を全部分解して進める造りになってるからな。あれぐらいのバリケードならどうということもないさ。」
「……ほんとに、何でもありね。」
セリカの呆れたような声を頂戴しながら、覆面水着海賊団はマーケットガードの包囲網を脱することに成功したのだった。
subnauticaです
ついに一万字を超えてしまった……。
一話当たりの文字数がどんどん増えてきてる気がする。
いつも私の小説を読んでくださる方、お気に入りや評価、感想をくださる方、本当にありがとうございます。執筆において、とても励みになっております。
誤字報告なんかもとてもありがたいので、気になることがあればいろいろ送ってくださると嬉しいです。
では、また次回お会いしましょう。