blue sky archive   作:subnautica

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16 相対する悪魔

16 相対する悪魔

 

コーストの最初の攻撃はインフラナイフ・アクセルによる機銃掃射。

かなりの至近距離で放たれたその攻撃に、イオリに付き従っていた小隊はその半数以上が行動不能となった。

 

「がはっ……なんなんだこの威力は!ただの機関砲じゃないのか!?」

「ぐっ……イオリ、これは本気で相手しないとまずいかもしれませんよ。」

 

二人は風紀委員でも上澄みの能力を持つだけあって耐えたが、相応のダメージを負っていた。

そして、銃撃を終えたコーストのインターセプターはキヴォトスの技術ではありえないような急加速を見せ、風紀委員へ向けて絨毯銃撃を始めた。

 

「ぼさっとするな!撃ち落とせ!」

 

イオリの命で周囲で待機していた風紀委員もインターセプターに向かって銃を乱射するが、人が乗っているとは思えない速度で動き回るインターセプターにはなかなか当たらず、仮に当たったとしてもディフレクターシールドに阻まれ銃弾は船体には届かなかった。

しかし、コーストの放つ弾丸は着実に風紀委員の戦力を削っていく。

 

「ぎゃああ!」

「ぐはっ!」

「……まさか、本気を出したコーストさんがこんなに強いなんて。」

「私たちじゃ、敵わなかったわけね。」

 

ゲヘナの恐怖の象徴たる風紀委員を次々に崩していくコーストの姿に便利屋はそうつぶやいた。

そして、度重なる銃撃に一人、また一人と倒れていき、気づけば意識を保っているのはイオリとチナツだけであった。

 

「くそ!ここまで手も足も出ないなんて……。」

『おいおい、あんなデカい口を叩いていた割には張り合いがないな。お得意なのは不意打ちだけか?ん?』

 

コーストは頭に血が上りどんどん口が悪くなってきていた。

 

『時に風紀委員、お前たちは規則と治安を守る組織だそうだな?』

「……だったらなんだ。」

『だとするならば、今のお前たちはなんだ?他人の土地に許可も取らずズカズカと入り込み、挙句の果てには何の罪もない一般人を砲撃して負傷させた。今のお前たちとテロリスト、その間に、何の違いがある?』

「それはっ、規則違反者を捕まえるためで……」

『規則違反者を捕まえる為なら、一般人が多少犠牲になろうと仕方ないと。俺が元いた場所ならともかく、キヴォトスでもそんな考えの奴がいたとは驚いたよ。……大将とユメは頭の打ちどころが悪ければ死んでいてもおかしくなかった。それをお前たちは、規則違反者を免罪符にすれば許されると思っているわけだな?』

「そんな、ことは……。」

『お前がそう思わなくても、結果がそれを物語っている。お前たちがやっているのは正義の名を借りた人殺しと変わらな――』

「そこまでだよ、コースト。」

 

コーストの最後の一言を遮ったのは先生の言葉である。

 

「せ、先生!?もしかして先生もあの場にいたのですか!?」

『なんだ、先生。なにも間違ってはいないだろう。実際こいつらはそれだけのことをしでかした。』

「やあ、チナツ。できればもっと別の形で再会したかったよ……コースト、確かに君の言うことは間違っていないのかもしれない。でも、その先は言ってはダメだよ。」

『先生……まさかこいつらもお前の”生徒”として扱うつもりか?あの時、少しでも防御が遅れていたらあんただって死んでいてもおかしくなかったんだぞ。分かっているのか!』

「確かにそうだ。でも、私は先生だからね。彼女たちも私の生徒だし、ちゃんと反省の機会をあげたいと思うんだ。」

『……やっぱり、底抜けのお人よしなんだな先生。先生の枠に縛られて、生き辛くはないのか?』

「そんなことはないよ。どんな結果になっても、私がこの生き方に後悔することはないさ。」

『……そうか。』

 

コーストが一つため息をついていると、爆発の騒ぎを聞きつけたアビドスが到着した。

 

「先生、コースト!大丈夫?」

「柴関ラーメンが……何て酷いことを!そこにいるのは便利屋の方々と……風紀委員会!?なぜこんなところに……。」

『こいつらが俺たちのいた柴関ラーメンに迫撃砲を打ち込んで吹き飛ばした犯人だ。』

「な、なんですって!」

 

セリカたちが怒りの声とともにチナツとイオリに向けて銃を構える。

 

「ま、待ってください、一度話し合いを……。」

「あなたたち、何で柴関ラーメンを攻撃したの!なんで銃弾一発で死んじゃうかもしれない先生や大将にこんなことができたの!全部、答えなさいよ!」

『それに関しては、私がお答えしましょう。』

 

セリカが二人に詰め寄る中、急に通信の声が響いた。

 

「……通信?」

「アコちゃん?」

「アコ行政官……?」

『こんにちは、アビドスの皆さん。私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します。……先ほどの報告は本当だったのですね。まさか、中隊規模の風紀委員が一瞬で倒されるとは。』

『ほう、行政官。なら、今の状況に関して納得のいく説明をしてもらおうか?』

『ええ、私からすべて説明させていただきましょう。』

 

アコが余裕の表情を崩さず、しかしどこか焦ったような様子でそう告げた。

 

「あ、アコちゃん……。」

『イオリ、反省文のテンプレートは私の机の、左引き出しにあります、ご存知ですよね?』

「うぐっ……。」

 

イオリは苦虫を噛み潰したような表情でその場にへたり込んだ。

今までの疲労も祟っているようである。

 

『ふう……先ほどまでの愚行、私から謝罪させていただきます。』

「なっ、私は命令通りに行動したんだけど!?」

『私の命令に、”まず無差別に発砲せよ”なんて文言は含まれていましたか?それに、民間人の店舗、それも連邦生徒会の先生がいる場所に攻撃を行うなんて、一歩間違えば戦争になっていてもおかしくなかったのですよ?』

「ぐ……状況を鑑みて必要な範囲で火力支援、その後に歩兵の投入、戦術の基本通りにって……。」

『他学区の近くなんですから、そのあたりは注意してしかるべきでしょうに。』

 

アコのその言葉に、アヤネは小さな違和感を覚えた。

が、その地点ではその正体には気づかず、とりあえず話に集中することにした。

 

『私たちがここに来たのはあくまで、学園の校則違反をした方々を拘束するために来ました。あまり望ましくない出来事もありましたが、ここは私たちの活動に協力願えると――』

『御託はもう結構。残念だったな、そこの二人。そこの行政官とやらは先生と俺が与えた厚意を無下にするらしい。』

 

〈脅威を検知//敵性武装集団〉

 

コーストのエクソスーツは、離れた地点に複数の中隊規模の軍隊が潜んでいることを感知していた。

 

『素直に話すんであれば、まだ考えてやってもよかったがな。こんな辺境にこれだけの軍隊を派兵しておいて、目的がたった四人の指名手配犯の拘束?冗談もたいがいにするんだな。』

『……気づいていたのですね。』

 

その時、カヨコが横から口をはさむ。

 

「風紀委員が私たちに差し向ける兵力としてはあまりにも多すぎる、こんな非効率的な運用を風紀委員長がするとは思えない。……仮にアビドスとの交戦を想定していたとしてもアビドスの所属は六人、アビドスの現状にも大して興味を持ってるわけじゃなさそうだし、その様子だとコーストさんがどういった存在かも知らないんでしょ。だとすればあなたたちの狙いはひとつ……シャーレの先生だ。」

「え、私?」

『……そういえば、便利屋にカヨコさんがいるのを忘れていましたね。暢気に雑談をしているわけではありませんでしたか……。ええ、その通りですよ。この際ですし、お話ししましょう。きっかけはティーパーティーでした。彼女たちがシャーレに関する報告書を手にしている……と、そういった情報がうちの情報部から流れてきまして。当初は私もシャーレとは一体何なのか、全く知りませんでしたが、あちらが知っている情報となれば、こちらも把握する必要があります。……それで、チナツさんが書いた報告書を確認しました』

「確認するのが遅いですよ、行政官。」

 

チナツがアコに文句を言うがアコは完全にスルーした。

 

『連邦生徒会長が残した、大人の運営する超法規的な謎の部活……とても怪しいと思いませんか?エデン条約を目前に控えたわが校にとって、シャーレはとても不確定的で危ない要素です。ですので、せめて条約が締結されるまでは、我々の庇護下に置きたいと思いまして。アビドスにここまでの個人戦力を持つ者がいたのは予想外ですが、こちらはそこの中隊と違って対空兵器も用意してます。どうか、大人しく従ってくれると嬉しいのですが?』

「だ、駄目だアコちゃん!そんなものでは……。」

『……。』

 

その言葉を聞いたコーストはインターセプターを飛ばしてどこかに去っていった。

 

『ふふ……何も言わずに去ってしまうとは。自分の状況をようやく飲み込め『こちら第三中隊!何者かの襲撃を、ぐああああ!!』『こちら第四中隊!空から攻撃を受けている。私たちの装備じゃ対処できな……ぎゃああ!』……え?な、何が起きているのですか?』

 

ここまで、風紀委員の報告を話半分で聞いていたため自信満々のアコであったが、突如コーストが飛び去った後、中隊壊滅の報告が相次ぐことでようやく自分がまずい立場に置かれていることに気づいた。

そして数分後、風紀委員を壊滅させたコーストは静かにアコたちの前へと戻ってきた。

 

『で、だれが大人しく従えって?』

『な、なんで……。』

『なんでも何もお前らの力不足だ。お前はこの場にいないようだが、舐めた真似をしてくれた責は必ずお前にも負ってもらおう。』

『ま、まだです!こうなったら第三陣を……『アコ』……!ひ、ヒナ委員長!?』

 

アコが往生際悪く追加の人員を指示しようとした瞬間、通信に第三者の声が割り込んできた。

 

「ん、委員長?」

「え、委員長ってことは、あの通話先にいるのが風紀委員のトップ……?」

 

アビドス組も突然の相手方のトップの登場に困惑している。

 

『い、委員長がなぜこの時間に……?』

『アコ、今どこ?』

『わ、私は今、ゲヘナ近郊でパトロールを……』

 

アコはヒナに詰められてしどろもどろな言い訳を吐いている。

 

「思いっきり嘘じゃない!」

「やっぱりこの行動はあの行政官の独断だったんですね!」

 

アコの市場に巻き込まれていたことを知り、セリカとノノミが憤慨の声を上げる。

 

『そ、それよりなぜ委員長はこんな時間に……任務中だったのでは……。』

『さっき終わらせた。』

『そ、そうですか。わ、私は迅速に処理しなければならない作業がありますので、後ほどまた連絡しますから!』

『「それは他学区で風紀委員のメンバーを独自運用しないといけないような用事なの?」』

「「「!!!」」」

 

今まで通話で話していたと思っていたその風紀委員長――空崎ヒナが気づいたら近くに立っていた。

その場のメンバーが一気に凍り付く。

 

「い、委員長!?いったいいつから……。」

「……!!」

『ええええええ!!!』

「……アコ、この状況、しっかり説明してもらう。」

 

小さい体躯ながら凄まじい威圧感を醸し出すヒナにアコは完全に委縮していた。

 

『ゲヘナの風紀委員長……空崎ヒナ。確かに本人のようですが、ということはあの人はゲヘナトップの戦力ということです……。』

「まさか、このタイミングでそんな大物が来るなんて……。」

 

そして、いきなり現れた強敵にアビドスも一気に警戒態勢を強める。

 

『こ、これはその、校則違反者を捕らえるためであって……。』

「便利屋68のこと?私の目にはアビドスとシャーレと対峙しているようにしか見えないけど。」

『えっ、そんな、さっきまでそこに……。』

 

アコがさっきまで便利屋がいたはずの場所を見ると、便利屋はきれいに姿を消していた。

ヒナの襲来を感知した後、全員の目がヒナに向く瞬間を狙って逃げたのである。

 

『えっと、その、全部説明しますので……。』

「いや、なんとなく分かった。察するに、ゲヘナにとっての不安要素の確認及び排除、そういった政治的活動の一環ってことね。――そのうえで気になるのだけど、なぜあなたの動かした風紀委員の大半が戦闘不能に陥ってるのかしら?」

『あう、そ、それは……。』

「それは俺がやったことだ。」

 

言い淀むアコに代わって、いつの間にか着陸して船から降りてきていたコーストが答えた。

 

「そう、あなたが……その機体、聞いていたものとは違うけどもしかして”空の悪魔”かしら?」

「お前は知っていたのか。そこの行政官よりはここについて詳しいようだな。」

「アコはそれも知らないでここに攻め込んだのね……。」

『……。』

 

ホログラム越しに両者から呆れたような目を向けられるアコは小さく縮こまっている。

 

「風紀委員長、現在の状況については理解しているか?」

「ええ、他校の自治区での事前通達なしでの兵力運用、及び、他校生徒との衝突……ただ、そちらが私たちの公務を妨害し、多大な被害を出したのも事実。違う?」

「確かにそうだな。だが、お前たちがやったのは故意ではないにしろ殺人未遂に等しい行為だ。ヘイローのない民間人への攻撃と俺が行った行為はどちらのほうが罪が重いのだろうな?」

「ヘイローのない民間人への攻撃?……アコ、どういうこと!」

 

ヒナの詰問を受け、涙目のアコがここまでの経緯……民間人の経営する店舗への攻撃、そして中には便利屋の他に店舗の従業員とコースト、そして先生が居り、攻撃に巻き込んでしまったことを説明した。

全てを聞いたヒナはとても頭が痛いような表情をしていた。

 

「……アコ、詳しい処罰は戻ってから話すわ。今は通信を切って謹慎していなさい。」

『……はい。』

 

アコは最初に出てきたころの勢いは見る影もなく、憔悴しきった表情でホログラムのスイッチを切った。

 

「そちらの話はまとまったようだが、部下の手綱もまともに握れないお前はこの件に関してどう責任を取ってくれるんだ?」

「コーストさん!あまりけんか腰になるのはやめてください!」

『そうですよ!ゲヘナの風紀委員長はキヴォトスでも比肩する人がほぼいない最強格の人です!まともに戦って勝てる人じゃないんですよ!……うぅ、こういう時、ホシノ先輩がいれば……。』

「……ホシノ?それって小鳥遊ホシノのこと?」

 

ヒナがその名前に興味を示すそぶりを見せた時、

 

ダダダン!!

 

銃声とともにヒナが立っていた場所が吹き飛ばされた。

ヒナはとっさに飛びのいたが、アスファルトはひどく陥没し、中心には小柄な人影が見える。

 

「お前たち……ユメ先輩に、コーストさんに、何をした!」

 

殺気をまとったホシノが風紀委員に向けて銃口を向けながらそう叫んだ。

アヤネから先生とコーストのいる柴関ラーメンが爆破されたと聞き、急いで駆けつけてきたのである。

降り立ったホシノは無事なコーストを目に収めると少しだけ殺気立った気配を落ち着けた。

 

「コーストさんは無事だったんだね。ユメ先輩は大丈夫なの?」

「安心しろホシノ。多少怪我を負ってはいるが、そこまで大きなものではない。」

「良かった……それで、今の状況はアビドスとゲヘナで戦争でもしようってことなのかな?」

 

ホシノがショットガンを手にヒナへと問いかける。

 

「……私は、戦うためにここに来たわけじゃない。」

 

そう言うとヒナはアビドスの前に立ち、深く頭を下げた。

 

「事前通達なしでの無断兵力運用、他校の自治区で騒ぎを起こした事、そして、シャーレ担当顧問である先生とアビドスの民間人に怪我を負わせた事……この事については私、空崎ヒナより、ゲヘナ風紀委員長としてアビドス対策委員会、並びに連邦捜査部シャーレに対して、公式に謝罪する。私たちがもたらしてしまった被害に対しても、相応の保証を行うわ。」

「!」

「今後、ゲヘナ風紀委員会がこの地に無断で侵入することはないと誓う。どうか許してほしい。」

「……組織の頭であるお前が頭を下げたんだ。その責任の重さ、理解しているな?」

「ええ、もちろん。……本当に、ごめんなさい。」

 

ヒナの誠意ある謝罪でもってコーストはとりあえず留飲を下げたようだ。

ホシノは若干納得いかなげだったが、先生とコースト、二人の当事者がそれ以上は何も言わなかったので口をはさむことはなかった。

 

「イオリ、チナツ、寝ころんでる彼女たちを起こして、撤収するよ。」

「……委員長。」

「……はい。」

 

イオリとチナツはコーストに伸された風紀委員たちを叩き起こしながら撤退していった。

イオリは便利屋についてまだ納得がいってないようだったが、青筋を浮かべたヒナの顔を見て、何か意見する気にはなれなかった。

 




subnauticaです

この辺からアビドスのストーリーも折り返しって感じですかね。

そういえば、16って数字はノーマンズスカイの中で特別な数字何で何かやろうかなと思ったんですけど特に何も思い浮かばなかったのでやめました。残念。

次回はカイザーを探して砂漠に行く感じですかね、それか一つ閑話をはさむか。

では、また次回お会いしましょう。
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