風紀委員関連の問題が片付いた翌日のこと、アビドス廃校対策委員会の面々はいつになく真剣な表情をして部室に集合していた。
着席した委員会の傍らにはコーストと呼び出された先生もいる。
「えっと、話したいことがあるって言ってたけど何かあったの?」
「何かあったというよりは、先生にお話しておきたいことがありまして……。」
ノノミのその言葉に先生は少し身構える。あれだけのことがあったのだ。また何か問題が見つかったのかもしれない。
「その、何があっても私はみんなの助けになるから――」
「実は!コーストさんは宇宙人なのです!」
心配の声をかけようとした先生は突然予想外の言葉を掛けられ思考が止まる。
部室が静寂に包まれた。
「あれ、もう少し反応があると思ったんですけどね。『なな、なんですってー!?』みたいな。」
「どこの社長だ。というか正体を明かすにしても直接的過ぎるだろう。……先生、一回戻ってきてくれ。」
コーストの言葉に思考が飛んでいた先生が戻ってきた。
「……ああ、ごめん。えっとノノミ、その宇宙人っていうのはどういう意味なのかな?」
「どういう意味も何も言葉通りの意味ですよ?」
「え?」
「?」
二人そろって首をかしげている。話が一向に進まない。
見かねたコーストが口をはさむ。
「あ~先生。いまいち信じがたいというのはわかっているんだが、一応俺がこの星の外から来た存在っていうのは事実だ。」
「ええ、でも、キヴォトスの外の技術者だって……」
「だからキヴォトスの"外"だ。なにも間違っちゃいないだろう?」
その言葉に先生が部室にいるみんなの顔を見回すと全員がうんうんと頷いていた。
「……まあ、コーストさんの技術を見る限り只者じゃないっていうのは分かってたし、宇宙人って言われればかえって納得がいくかもね。」
「ん、私たちも最初に言われたときはびっくりした。」
「まあ、なかなか信じ難いわよね。」
「そうですね。……"証拠"をこの身をもって体験するまでは私たちもなかなか信じられませんでしたから。」
「そうなんだ……ん?証拠?この身をもって?」
先生がアヤネの言葉に少し引っ掛かりを感じた。
「いい着眼点だな先生。そうだ。その身で宇宙を体感したら信じざるを得なくなるだろう。」
「え?え?」
そこからは早かった。
先生は戸惑っている間に外に連れ出され、コーストはコルベットを呼び出し……
「じゃあ、ちょっと行ってくるから。」
「「「「いってらっしゃ~い」」」」
先生は宇宙に連れていかれた。
「ん、侵入成功。」
「うん……こんなものを見せられたら信じざるを得ないね……けど、もうちょっと説明が欲しかったかな。」
「口でいろいろ言われるよりこうしてみたほうが早いだろう?まあ、大気圏突破で叫びまくっていた先生はなかなか面白かったがな。」
「うっ……あまり思い出さないでいてくれると嬉しいかな。」
先生を乗せ宇宙に飛び立ったコルベットは地球周辺を周回していた。
流れゆく青い星の景色とともに静かな時間が流れる。
コーストはコルベットを自動操縦に切りかえ、ほろ苦ココアを飲みながら先生と二人で話していた。
「今回、先生に俺の正体を話そうかって提案してきたのは実は俺からじゃなくてアビドスのみんなからなんだ。」
「そうなの?てっきり君のことだから自分から提案したんだと思ってたけど。」
「もともと先生が信頼できる大人だってわかったら話そうっていうのは決めてたんだ。だから、今回のこれは生徒からの信頼の表れってやつだな。」
「それは嬉しい、けどやっぱり最初は信頼されてなかったんだね……。」
「まあ、それは自分でも分かってただろう?連邦生徒会長が失踪した後に設立されたやたらと権限が強い組織。
今でこそあんたがただのお人よしだってのがわかるが、俺だって最初は無理やり権限を簒奪したヤバい奴なんじゃないのかぐらいには思ってたんだぞ?」
「そんなこと思ってたの!?」
実際宇宙でも実力の伴わない艦長が下から突き上げ食らって権力を奪取されるなんてざらにある。
というかそんな感じになって最終的に指揮系統がめちゃくちゃになって滅んだ遺棄船なんかも見てきた。
コーストも最初はキヴォトスもそうなってしまったのではないかと考えていたのである。
「ま、今は生徒思いのいいやつだと思ってるさ。」
「ならよかったよ……。」
「……先生、一つ頼みたいことがあるんだが、聞いてくれるか?」
先生は空気感が変わったコーストを見て真剣な顔になる。
「……なんだい?」
「身構えなくていいさ、そんなに重い話でもない。先生、俺はいつもアビドスの面倒を見れるわけじゃない。俺はこの星以外でもやらなきゃいけないことがあるからな。でも、アビドスをつけ狙う存在がいるってのも明らかになってきた以上、やっぱりいろいろと不安なんだ。だから、先生にはあいつらを気にかけて、導いてやってほしい。」
「それはもちろん、私は先生だからね。彼女たちも私の生徒だから、それが仕事だよ。」
先生はそう言って自信ありげに胸を叩く。
「はは、それは頼もしいな。……俺は先生みたいにあいつらに何か教えたりってのはできない。倫理観の死んだ宇宙で生きてきた俺はどうしても野蛮な方法が板についてしまってるからな。でも、あいつらにはあまり殺伐とした世界では生きてほしくないと思うんだ。だから、俺がアイツらに与えられなかったものを、先生が与えてやってほしい。」
「ふふ、なんだか親みたいなことを言うね、コースト。」
「笑うことはないだろう……しかし親か、自分の親の記憶もない俺にそんなものが務まるとは思えないがな。」
「ん、そんなことない。」
「「!!」」
予想だにしない第三者の声にコーストと先生は!マークを頭の上に出して声のほうに顔を向けた。
「し、シロコ?どうやって乗り込んだんだ?」
「ん、発射前に上のハッチから乗り込んだ。」
どうやらコルベット発射のタイミングで上部についてる勝手口扱いのハッチから乗り込んだらしい。
普通に危ない。
「……あまり危ないことはしないでくれ。」
「コーストさんはいつも私たちのことを気にかけてくれている。あってからまだ1年ぐらいだけど、コーストさんは親代わりみたいな人。」
「そうか?俺がお前たちに教えてあげられたことなんてあまりないと思うが。」
「そんなことない。気に入らない奴の脅迫の仕方も、建物の制圧の仕方も、全部コーストさんが教えてくれた。」
「コーストさん?」
にっこりこちらを見る先生から目をそらす。何を教えてくれてるんだと言わんばかりだ。
ちなみに、今のシロコのギャング的な気質のうち何割かは確実にコーストの影響を受けている。
元々素質があったのは間違いないだろうが。
「コーストさん。あなたは私たちにとってとても大事な人。だから、あまり自分を卑下するようなことは言わないで。」
「別にそんなつもりはなかったんだが……ありがとな、シロコ。」
そういってコーストはシロコの頭をなでる。
「そうしてるとほんとに親子みたいだよ、コーストさん。」
「やかましいぞ先生……そろそろアビドスに戻るぞ。」
「ん、照れてる?」
「やかましいと言っている。」
最後にシロコの頬をむにーと引っ張ってコーストはコックピットに戻り、アビドスへとコルベットを向かわせた。
「うへ~シロコちゃん。何か言わなければいけないことがあるんじゃない?」
「心配したんですからね、シロコちゃん。」
「……ご、ごめんなさい。」
ちなみに誰にも言わずにコーストについてきたシロコは戻ってきた後心配したホシノたちにしっかりと締められていた。
subnauticaです
リアルで私を苦しめていた事情がひと段落したのでこれから更新頻度を少しづつ戻していこうかと思います。
今回はどこかに入れなきゃなと思って結局入れてなかった先生へのカミングアウト回
これで先生の前でも遠慮なく動けるようになりますね。
次回は多分アビドス砂漠編ですかね
では、また次回お会いしましょう。