blue sky archive   作:subnautica

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19 落星

 

カイザーの理事と対面した翌日のこと。

アビドスは喫緊の問題について話し合っていた。

 

「もう、何なのよ!」

「カイザーはあの砂漠で一体何を企んでいるの?」

「カイザーは宝物を探していると言っていましたが……」

「あの砂漠には何もなかったはずです。でたらめを言っているのでは?」

 

コーストの分析バイザーには電磁気、鉱石、ガス資源のホットスポットを調査することができる機能も付いており、アビドス近辺で資源の回収できる場所はないかと探したことがあったが、あの砂漠では特に何も見つからなかった。

 

「確かにあの砂漠には特別宝物と呼べるような物はなかった。ただ、それならあそこまで大規模な基地を建設する必要はないはずだ。おそらくこちらが把握していないだけで何かしらあの砂漠に眠っているのは確かなんだろう。」

「あんな砂漠にいったい何が……」

「いや、今はそんなことより借金のほうでしょ!一週間後までに三億円だなんて、どうしたらいいのよ……。」

 

セリカが悲痛な叫びをあげる。今まで精力的に借金返済をしてきたが、一週間で三億円など到底用意できる金額ではない。

ただ、それを支払うことができなければアビドスが代わりに支払うことができるのはただ一つ――この学校そのものだ。

 

「保証金もそうだが、問題は金利のほうだ。3000%ともなると利子が数千万単位に膨れ上がる。とてもじゃないが継続的な返済など不可能だ。」

「……ん、私行ってくる。カイザーが何をしているのか確かめないと。」

「シロコ先輩、行くって一体どこに……。」

「まさか、単独でまたPMCに戻るとか言わないよな。……次補足されたら今度こそ終わりだぞ。」

「う……でも、どうしたら……。」

「まあまあ、みんな落ち着いて。頭から湯気が出てるよ~。」

 

各々がヒートアップする中、ホシノが戻ってきた。

 

「シロコちゃん。あまり短絡的になっちゃだめだよ。衝動的に動いたらそれこそ向こうの思うつぼだからね。」

「そうだよシロコ。もしかしたら向こうはアビドスがそういう行動を起こすように誘導してるかもしれないからね。」

 

一緒に戻ってきた先生がそう口をはさんだ。

 

「……どういうこと、先生?」

「短い期限で区切って相手に冷静な判断をさせる暇を与えない……詐欺師もよく使う手だよ。冷静な判断力を失ったまま下した決断は大抵向こうの望むものになってしまう。もしここで犯罪行為になんて走ったら、それを大義名分にカイザーは一気にアビドスを呑み込もうとするかもね。」

 

自分の行動が全員を危険にさらしかねない行為と知ってシロコは顔を青くした。

 

「……ごめん皆。確かに短絡的だった。」

「大丈夫だよシロコ。……それ位まずい状況だっていうのは確かだしね。」

「まあ、こんなに熱くなってたら出る結論も出なくなっちゃうよ~。今日はいったんお開きにして、明日また話し合おう!皆もそれで大丈夫?」

 

ホシノがみんなにそう呼びかけ、その日の話し合いはいったん解散となった。

 

 

 

 

 

その日の夜、校庭に建てられたコーストの家をホシノが訪ねてきた。

 

「うへ、コーストさん。ちょっといいかな?」

「ホシノ?こんな時間に来るとは珍しいな。何かあったのか?」

「いや、ちょっとお話ししたくなっただけ。」

 

そう言ってホシノは家の中に入り、中にあるソファに腰かけた。

 

「いや~この家も最初に見たときはびっくりしたよね。ちょっと寝てる間にこんな立派な家ができちゃうなんてさ。」

「ああ、俺がこの星に来た初日の話だな。思えばもう二年近くこの星にいるんだな。」

「そうだねえ。気づけばもうこんなにアビドスに馴染んじゃって。これはもうキヴォトスでのコーストさんは私が育てたといっても過言じゃないんじゃないかな?」

「ホシノがキヴォトスの常識人かと言ったら議論の余地があると思うがな。」

「なんだと~」

 

そんな感じで和気あいあいと話していたが、コーストが不意に真剣な口調で切り出す。

 

「……こうして話しているのも楽しいが、本題はこれじゃないだろう?」

「うへ、やっぱりわかっちゃう?」

「お前をずっと見てきたからな。」

 

コーストがそう言うとホシノは少し顔を赤らめるも、すぐに真剣な顔になった。

 

「……コーストさんはいつまでアビドスにいてくれるのかな。あの子たちをいつまで見守っててあげられる?」

「何で、急にそんなことを?」

「うへへ、それは秘密。」

「……シロコが喋ったな。まったく……」

 

コーストは先生にアビドスを守ってくれるよう頼んだことをシロコに聞かれていたことを思い出した。

ちゃんと口止めしておくべきだったのかもしれない。今思っても詮無いことだが。

 

「何、俺も今の生活は気に入ってるからな。すぐにどっか行ってしまうなんてことはないさ。」

「そっか。ならいいんだ。私がいなくてもあの子たちを守ってあげられる人がいるなら安心だからね。」

「……それは、お前が卒業後の話でもしているのか?別にユメみたいにちょくちょく様子でも見に来ればいいだろう。」

 

コーストの言葉にホシノは少し体を震わせたが、すぐに何でもないように笑顔を見せた。

 

「……そう、だね。うん!私がいなくなってダメダメになってないか、ちゃんと様子を見に来るからね~。」

「ははは……それは怖い。しっかりしておかないとな。」

 

その後もホシノとコーストは今までの生活を振り返るようにいくつか思い出話をした。

最近は立て続けにトラブルが続いたことでホシノも大変そうにしていたが、話している間は久しぶりに心から笑っているように見えた。

 

「うへ~、いっぱいお話しできたし、私はそろそろ帰ろうかな。」

「ああ、久しぶりにいろいろ話せて楽しかった。また何かあれば遠慮なく来てくれていいからな。」

「うん、そうさせてもらうよ。」

「それじゃホシノ、また明日。」

「……うん、また明日、コーストさん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さようなら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――翌日、対策委員会部室

 

朝早くに部室に到着したアヤネが、見慣れない書類が机の上に並んでいるのを発見する。

 

「?なんでしょう…………嘘、なんでっ、どうして!!?」

 

そこに並んでいたのはホシノの退部、退会届、そしてホシノが対策委員会のメンバーに向けて残した手紙だった。

 

『アビドス廃校対策員会のみんなへ

 まずはこうして手紙でお別れの挨拶をすること、許してほしい。

 おじさんはこうした古いやり方が性に合ってるんだ。

 実はみんなにはずっと話してなかったことがあってね、

 おじさん実は、カイザーPMCで傭兵として働く代わりに借金を肩代わりするっていうスカウトにあっててさ。

 ……うへ、結構いい条件だと思わない?おじさん実は能力を結構買われててさ。

 膨れ上がった借金もこれでとりあえずはどうにかなると思う。

 今すぐに全部どうにかなるってわけじゃないけど、負担は減るはずだよ。

 ブラックマーケットでは説教臭いこと言っちゃたけど、あの言葉を私が守れなくてごめんね。

 私はアビドス高校からも、キヴォトスからも離れることになるけど、気にしないで。

 勝手なことしてごめんね。

 でも、これは私が責任を取るべきこと――私がアビドス最後の生徒会だから。

 だから、私はここでお別れ。――じゃあね。』

 

『先生へ

 実はね、私は大人のことが嫌いだった。

 シロコちゃんがあなたを連れてきたときもなんか怪しい人が来たなってくらいにしか思てなかった。

 でも、先生は私たちを助けるためにこんなにも頑張ってくれた。だから――

 いや、照れ臭い言葉はもういいかな。

 お願い。アビドスのみんなはいい子だけど、だれか支えてくれる人がいないとだめだから。

 これからもみんなを助けてくれたらうれしいな。』

 

『コーストさんへ

 まずは、今までのお礼を言わせてほしいな。

 コーストさんがいなければユメ先輩は助からなかったかもしれないし、

 アビドスだってもっと早くに無くなっちゃってたかもしれない。

 今の私たちがあるのはコーストさんのおかげだよ。

 アビドスの皆のことを良く分かってるあなたになら、あとのことも安心して任せられる。

 コーストさんは、私が一番信頼できる大人で、大好きな人だから。

 さようなら、コーストさん。

 ――また明日って約束、守れなくてごめんね。』

 

『シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん

 お願い、私たちの学校を守ってほしい。

 砂だらけのこんな場所だけど、私にとって唯一の、意味のある場所だから。

 そして、もしこの先どこかで、敵として相対することがあったら――

 その時は、私のヘイローを"壊して"。

 よろしくね。』

 

 

 

 

「……ふざけるなよ、こんなことが、認められるか。」

 

コーストがその声に怒りを滲ませて拳を握り締める。

その怒りは、自己犠牲で解決を図ろうとしたホシノに対してと、そんな状況を許してしまった自分自身への不甲斐なさに対しての両方である。

 

「ホシノ先輩……!あれだけ偉そうなこと言っておいて、切羽詰まったら人は何でもしちゃうって、自分でも分かってたはずなのに!こんな、こんなの……。」

「早く助けに行かないと……!」

「待ってください!まずは足並みをそろえないと!」

 

いきなり告げられた情報をアビドスが消化しきれずにいると、

 

 

〈警告//脅威を検知:敵性戦闘集団及び航空戦力〉

 

 

不意に、コーストのスーツが警告を発した。

 

「何!?」

 

ドガアアアン!!

 

アビドスを覆う合金の壁に対して激しい爆発がたたきつけられた。

 

「うわあっ!」

「爆発音……敵襲!?」

「近いです……!場所は、あ、アビドス市街地!?」

 

 

 

 

 

 

 

「この自治区には退去命令が下った!直ちに立ち去らない場合攻撃を行う!」

「ふふふふ、はははははは!!ついに、ついに条件をすべてクリアした。最後の生徒会がアビドス高校を退学……これで実質的にアビドス高校は消滅した!!」

 

カイザーPMC理事が手を広げ愉快で仕方ないといった様子で高笑いする。

 

「さあ、アビドス高校を占拠せよ!はははははは!!!」

 

 

 

 

 

 

「こちらに向かって、数百近いPMCの兵力が進行中!同時にアビドス市街地に無差別攻撃を繰り返しています!!」

「PMC!?なんでこのタイミングで……。」

「考えてる時間が惜しい。今すぐ応戦する。」

「そうですね。アビドスが襲われているなら、私たちが戦わないわけにもいきません。そうですよねコーストさん!……コーストさん?」

「……行儀のいい振りは、もうやめだ。」

 

そう言いつつコーストが呼び出したのはセリカ奪還戦の際にも見せた戦艦型コルベット。

しかし今回は前回は手加減のために外していたアップグレードの類をすべて装着した完全体である。

次いでコーストは自律戦闘状態にしたミノタウロス、そして巨大な機械タイプのコンパニオン*1を数体召喚した。

 

「わ、なんか色々出てきたんだけど!!」

「こ、コーストさん?」

 

一言も発さないコーストにノノミが声をかける。

 

「ははは……随分と舐めた真似をしてくれる。……やるぞお前たち、全員纏めてスクラップだ。」

 

話を聞いていない様子のコーストはそう言ってコルベットのコックピットへと転送されていった。

 

「あの、ちょっとコーストさん!?」

「ん、私たちも行く」

「そうね、私たちもアビドスを守るわよ!」

「シロコちゃん!セリカちゃん!ま、まってくださ~い!」

「あはは……先生、指揮をお願いしてもよろしいですか?」

「うん、任せて。行くよ、アロナ!」

『はい!アロナちゃんに任せてください!』

 

アビドスとカイザーPMCの戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

カイザーコーポレーションのある一室にて――

「これでいいのか、黒服。」

「……はい。確かに。これでホシノさんがお持ちの生徒としての全権は私に移譲されました。

これで正式にアビドス高校の背負っている借金の大半は、私が請け負うことといたしましょう。では、少し場所を移動しましょうか。」

「移動?どこに。」

「アビドス砂漠ですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

数分後、アビドス市街地は地獄の様相を呈していた

 

「ぎゃあああああ!!何なんだアイツは!」

「おい、やめ――」

 

ドゴォォォォン

 

本気を出したコーストの魚雷とフェーズビームがカイザーPMCに降り注ぐ。

数々の戦線を生き抜いてきた宇宙戦艦から見ればPMCの兵士など案山子のようなものだ。

加えて数々のアップグレードモジュールで強化された兵装はPMCをまとめて消し去っていく。

コーストが通った後には焼けたアスファルト以外には何も残っていなかった。

 

また、コーストがカバーできない部分はミノタウロスと野に放たれた巨大機械生命体が蹂躙を行っていた。

 

「何だあの化け物は!!」

「撃て、撃てええええ!!」

 

PMC兵士が半狂乱になってコンパニオンに向かって銃を乱射するがコンパニオンの張ったシールド――自己暗号化によって銃弾が反射され、加えてコンパニオン自身からもビーム攻撃を受け、あっさり撃沈された。

逃げようとしたものも巨体に見合わぬ俊敏さですぐに追いつかれ、数トンはあろうかというその体重で踏みつぶされ金属塊となった。

 

一方シロコたちはというと……

 

「……もう半分以上が倒されてるわね。」

「ん、私たちの分が残ってない。」

 

コーストによってほとんどの敵が倒されてしまっていたため、手持無沙汰となっていた。

 

「あ、あっちのほうに少し残ってますよ。あっちに倒される前に早く叩きに行きましょう。」

 

ストレスの発散先を求めて、獲物を見つけた三人は残党狩りを始めた。

 

 

 

 

「な、何なんだあの化け物たちは!」

「理事!もうすでに過半数のPMC兵士が撃退され、連絡が取れません!ここも時期に戦火に包まれます。急いで退避を!」

 

ドガアアアン!!!

 

「この、クソガキどもがああ!」

 

近づいてきた攻撃の音に、理事は背を向けて退却するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「おい!何で、何でアビドスを、町を攻撃するんだ!!」

「どうしてといわれましても……なにもおかしなことなどありませんよ、ホシノさん。私たちの間で交わされた契約はあくまで借金の大半を肩代わりすること。その契約に関してはきっちり守らせていただきます。

ですが……あなたがアビドス高校を退学してしまったことであの高校にはもう公的な生徒会メンバーが残っていないようですね。これでは学校としては成り立たないでしょう。」

「なん……だって。」

「なぜ、私たちがあんな詐欺師まがいのくだらない企業の手助けをしていたと思っているのですか?アビドス自治区の誰もいない土地なんて別に大した利用価値もありません。ただ、カイザーがアビドス高校を吸収し、企業主体の新たな学園を設立したら?その学園はキヴォトスにどんな影響を与えるのでしょうか?」

「……お前。」

「まあ、そんなものはただの余興です。私の目的は最初からあなたただ一人ですよ。キヴォトス最高の神秘を持つあなたを手に入れる……私の目的はそれだけです。何か勘違いされていたようですね。……誤解を招いたようであれば謝罪いたしましょう。……ククッ、あなたの神秘はどんな観測結果を見せてくれるのでしょうか。楽しみで仕方ありませんよ。ククッ、クックック……。」

 

黒服は喋るだけ喋って、縛られたホシノの前から姿を消した。

 

「ああ、私、また騙されたんだ。悪い大人に。……シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん、先生……」

 

 

 

 

 

 

「コーストさん……」

 

*1
ノーマンズスカイでは高さ数メートルある巨大な機械生命体を仲間にすることもできる




subanuticaです

アビドス編も残りわずか。書いてて楽しいですね。

それと前話を出したタイミングでアンケートを入れてみたんですが、皆さんは何に入れました?

次か次の次の話あたりで結果がわかることでしょう。

次回は、黒服と相対ってところですかね。

では、また次回お会いしましょう。

先生による足舐めシーンはつける?

  • つける
  • つけない
  • おお
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