blue sky archive   作:subnautica

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20 責任と代償

 

圧倒的兵力でもってPMCを殲滅したアビドスとコースト、先生は対策委員会の部室に戻ってきた。

 

「ひとまず危機は脱したが、問題は山積みだ。」

「そうですね。いつまたPMCが襲ってくるとも限らないですし、何よりホシノ先輩がどこにいるのかが見当もつきません。」

「あいつらは一線を越えた。いっそ、あの基地に殴り込みをかけるのも一つの手か……」

 

そんなことを話していると、部室にメールの着信音が響いた。

先生の端末からだ。

 

「ん?いったい誰から……こ、これは!」

 

先生がメールの内容を確認すると驚いたような声を上げた。

そして食い入るようにメール内容を確認している。

 

「先生、一体何が書かれてあったんだ?」

「……詳しい内容はここでは話せない。ただ、ホシノの居場所につながるかもしれない内容だよ。」

「っ!それは本当か、先生!」

「ええ。それでコーストさんにはこのメールの座標の場所に一緒に来てもらいたいんだ。」

「それはもちろんだ。だが……」

 

コーストがノノミ、シロコ、セリカ、アヤネを振り返る。

 

「……今回はみんなは連れていけない。」

「ど、どうしてですか先生!私たちもホシノ先輩を助けに……」

「今回のこれは"大人の話し合い"になる。皆にはまだ荷が重いよ。」

「で、でも……」

「アヤネ、先生と同じで俺も今回はみんなはついてこないほうがいいと思っている。」

「コーストさんも、ですか……」

「ああ。だが安心してほしい。ホシノを助け出したいのは俺も同じだ。必ずアイツの情報を持ち帰ってくる。」

「……分かりました。コーストさんと先生を信じます。」

「ん、私も二人を信じる。」

「ここまで先生がい言うのも珍しいですからね。お願いしますよ!」

「ホシノ先輩のこと頼むわよ!」

 

コーストの力強い言葉にアビドス組は安心したようだ。

 

「ああ。……行こうか先生。」

「うん。みんなの期待に応えなきゃね。」

 

そうしてコーストと先生はメールに記された場所へと向かった。

大人の戦いを始めるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――キヴォトス某所

 

「……お待ちしておりました。連邦捜査部シャーレの先生。そして天外からの来訪者、コーストさん。」

 

部屋に踏み入った二人を出迎えたのは黒いスーツを身にまとった黒くひび割れた頭部を持つ謎の生命体。

ひび割れからは白い光が漏れ出し、不気味な笑顔を見せていた。

 

「分析バイザーが正常に機能しない……お前は生き物なのか?」

 

分析バイザーの解析ではスキャンを行っても???という表示がなされるだけであり、目の前の存在の生命体としての情報は一切得られなかった。

 

「いきなり失礼なことを言いますね。これでも一応人間を自認しているのですよ?……まあいいでしょう。本題に入りましょうか。」

 

そう言って"それ"は机の上で手を組んだ。

 

「……あなたたちのことは知っています。

連邦生徒会長が呼び出した不可解な存在。オーパーツ"シッテムの箱"の主であり、連邦捜査部"シャーレ"の先生。

そして、突如としてキヴォトスの空から現れた、謎のオーバーテクノロジーを操る天外の存在。

あなた方を過小評価する方もいるようですが、私は違います。……最も、コーストさんに関しては先の戦いで過小評価する方などいなくなったと思いますがね。」

「それはお褒めにあずかり光栄なことだな。で?お前は一体何が言いたいんだ。」

「ククク……そう焦らないでください。私たちにはあなた方と敵対する意思はない。むしろ協力したいと思っている。そう言いたいのですよ。」

「……何だって?」

「……何?」

「私たちの計画において一番の障害になるのはあなた方だと思っているのです。アビドスなんて小さな学校は私たちにとって大した問題ではありませんが、そこにいる先生とコーストさん、あなたたち二人と敵対することは避けたいのですよ。」

「……自分のことは一切話さず一方的にしゃべっているが、自分の名ぐらい名乗ったらどうなんだ?」

 

その言葉に、目の前の存在はおどけたように自己紹介をする。

 

「……おっと、これは失礼いたしました。私たちはあなた方と同じくキヴォトスの外の者……ですがあなたたちとはまた違った領域の者です。

適切な名前がありましたので、今はそれを拝借して使っております。私たちの事は"ゲマトリア"とお呼びください。

そして私のことは"黒服"とでも。この名が気に入っていましてね。」

「ゲマトリア……ね。」

私たち(ゲマトリア)は観察者であり、探究者であり、研究者です。あなた方と同じく、"不可解な存在"だと考えていただいて問題ございません。一応お聞きしますが、私たちと協力する気はございますか?」

「これだけのことをしておいて、まだ協力できると思っているのか?随分と楽観的な頭をしているな。」

「あなたたちと協力なんてする気は微塵もないよ。」

「……左様ですか。それは残念です。真理と秘儀を手に入れられるこの提案を断ってまで、あなた方はこのキヴォトスで何を追求するおつもりなので?」

「俺たちはただホシノの行方を聞き出しに来ただけだ。それ以外の物には興味がない。」

「クックック……先生も同じ意見のようですが、あなた方は一体何の権利があってそんな要求をされているのでしょう?」

 

黒服は低い声で笑う。

 

「小鳥遊ホシノはもうアビドスの生徒ではないのですよ?届け出を確認されませんでしたか?」

「……まだだよ。」

「……ほう?それはどういうことで?」

 

黒服が先生に尋ねる。

 

「"担当顧問"である私が、まだサインをしていないからね。だから、ホシノはまだ対策委員会で、アビドスの生徒会長で、私の生徒だから。」

「…なるほど。あなたが"先生"である以上、担当生徒の去就にはあなたのサインが必要…そういうことですか。ふむ……学校の先生に、生徒。なかなかに厄介な概念ですね。」

「あなたたちはあの子たちを騙し、心を踏みにじり、その苦しみを利用した。」

「……とった行動にはそれ相応の代償を支払ってもらうぞ。」

「ええ。あなた方の言う通り、私たちは他人の不幸より自分の利を優先しました。ですが、それがなんだというのです?私が行ったのはすべてルールの範疇の中の行動。そこだけは誤解なさらぬようお願いします……

アビドスを襲った災害は私たちのせいではありません。あの砂嵐は確率こそ低いものの一定の確率で起こり得るものです。誰が悪いわけでもない。天変地異とはそういうものでしょう?私たちはただそれを利用しただけです。

砂漠で水を求めて死にゆくものに水を与える……ただし、一生奴隷として働いても返済できないような額で。ただそれだけのことです。世の中では、ありふれたことですよ。

持つものが、持たざる者から搾取する……大人なら誰もが知っている厳然たる社会のルールではありませんか?」

 

黒服は言葉を続ける。

 

「ですので、小鳥遊ホシノは諦めていただけませんでしょうか?そうしてさえもらえれば、あの学校は守って差し上げましょう。

カイザーがらみの問題も此方でどうにか致しますし、残された子たちも安心して学校に通うことができます。

そしてこれこそがホシノさんが望んでいることなのではありませんか?」

「……そう言えば、諦めるとでも思っているのか?」

「なぜです?どうあっても私たちと敵対するおつもりですか?」

「ホシノは俺にとって家族も同然の存在だ。お前が何を言おうと諦めるつもりはない。居場所を言わないというのであれば、力づくで探し当てるまでだ。」

「……あなたの力であれば、可能なのかもしれませんね。ですが、あなたも理解しているはずです。あなたの持つ力だけでは解決できる問題ではないと。」

「そのために、私がいるんだよ。」

 

先生が答えた。

 

「あなたがですか?彼ならともかく、あなたに何ができるというので?」

「私にはこれがあるさ。」

 

そう言いつつ先生が懐から取り出したのは薄っすらと光り輝くクレジットカードのような物体。

[大人のカード]である。

 

〈高エネルギー反応を検知〉

 

「先生、一体それは……」

「……確かにそれはあなただけの武器となるでしょう。ですが、私はそのリスクも薄っすらとではありますが知っています。」

 

黒服はここでそのカードを取り出すとは思っていなかったようで、かなり驚いているようだ。

 

「使えば使うだけ削られていくはずです。あなたの生が、時間が。」

「……何だって?そうなのか、先生?」

「ええ。ですからそのカードはしまっておいてください先生。あなたにもこれからの生活があるでしょう?

放っておいてもよいではありませんか。もとよりあなたの与り知るところではないのですから。」

「断る。」

 

先生は毅然とした態度でそう告げた。

 

「なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?

……理解できません。なぜ断るのですか?」

「あの子の苦しみに対し、責任を取る大人が誰もいなかった。」

「……何が言いたいのです?だからあなたが責任を取るとでもいうのですか?彼女はあなたの家族でも保護者でもないというのに。

あなたは偶然アビドスに呼ばれ、偶然出会っただけの他人だ。どうしてとる必要のない責任を取ろうとするのですか?」

「それが、大人のやるべきことだからだよ。」

「……そうですか。大人とは"責任を負うもの"あなたはそう言いたいのですね。

ですが、その考えは間違っていますよ。大人とは、望む通りに社会を改造し、法則を決めて、規則を決め、常識と非常識を決め、平凡と非凡とを決めるものです。

権力によって権力のないものを、知識によって知識のないもの、力によって力のないものを支配する。それが大人です。

……あなたはこのキヴォトスの支配者にもなりえた存在です。この広大なキヴォトスの全権が一時的に確かにあなたの手の上にあった。

ですが、あなたはそれを迷いもせず手放した。なぜです?真理と秘儀、地位、金、力……そのすべてを投げ出すような決断を、そんな無意味な決断を何故!?」

「……言ったところで、あなたには理解できないだろうね。」

 

その答えに、黒服は説得をあきらめたようだ。

 

「……良いでしょう。交渉は決裂です、先生。私はあなたのことが気に入っていたのですが、仕方ありませんね。――先生、コーストさん、彼女を助けたいですか?」

「……ああ。」

「勿論だ。」

「彼女はアビドス砂漠のカイザーPMC基地中央実験室にいます。"ミメシス"で観測した神秘の裏側、恐怖を生きている生徒にも転用できるのか。そんな実験を始めるつもりでした。

ええ、彼女を実験体として。彼女がだめなら狼の神を代わりに、と思っていたのですが……どうやら前提から崩れてしまったようですね。

せいぜい頑張って生徒を助けるとよいでしょう。微力ながら幸運を祈っています。」

「そうかい。……なあ、黒服。お前はこの世の真理と秘儀を追い求めているといったな?」

「ええ、その通りです。もしかして、興味がおありで?」

「いや?すでに知っているものに対して興味など湧きようもないな。」

 

その瞬間、黒服は急に立ち上がりコーストに詰め寄ってきた。

 

「知っているのですか!この世の真理を!真実を!天外のあなたはすでに手にしているというのですか!」

「落ち着けよ黒服。喋れるものもしゃべれないだろう。……先生、少し耳をふさいでおいてくれ。」

 

そしてコーストはヘルメットの中で満面の笑みを浮かべこう告げる。

 

「なあ黒服……」

 

 

 

 

"16"*1この数字に聞き覚えはあるか?」

 

 

 

 

「16?その数字がなんだというので……ぐ……な、なんですか、あ、ああああああ!!!!」

 

コーストの質問に対し、黒服は急に頭を抱えだし、蹲ってしまった。

 

あ、ああ……16/16/16/16/16/16……ktwfs……afmkek……

 

黒服は床に蹲まったまま意味をなさない言葉をつぶやき続けている。

完全にパニックになってしまっているようだ。

 

「こ、コースト、一体何をしたの?」

「先生は知らなくていい。ただ、こいつはこの世界の真理を知るには値しない器だったというだけだ。……行くぞ。今はホシノが最優先だ。」

「あ……うん。」

 

床に蹲る黒服を置いて、先生とコーストは部屋を後にした。

 

 

 

 

 

――アビドス廃校対策委員会部室

 

「先生、コーストさん!戻ったんですね!」

「ん、何かつかんだって顔してる。」

「ああ。これ以上ない情報をつかんできた。」

「それじゃ、改めて……」

 

「「「「「「ホシノを助けに行こう!!」」」」」」

 

*1
ノーマンズスカイにおいて非常に重要な意味を持つ数字。理由はここでは省略するがアトラスの管理下にある存在は意味を持つこの数字を聞いた際激しい恐怖を覚える。第0話参照




subnauticaです

黒服は雑に沈められましたが、まあこんな扱いで大丈夫でしょう。
あ、別に再起不能とかではないのでご心配なく。

それと、アンケート結果は次話に反映されます。皆さん奮ってご投票ください。

次回、妖怪足舐め舐め?

では、また次回お会いしましょう。

先生による足舐めシーンはつける?

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