blue sky archive   作:subnautica

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海(洋惑星)に行こう


サブミッション そうだ、海に行こう 前編

 

ある日の昼下がり、ホシノは屋上でしかめっ面をしながら昼寝していた。

考えるのはあの時、コーストに向けて書き残した手紙の一文のことである。

 

『コーストさんは、私が一番信頼できる大人で、大好きな人だから。』

 

「(あの一文をコーストさんは目にしているはず……何なら助け出されたときは抱き着いちゃったし。なのに……。)」

 

ホシノが不満げなのはそれ以降のコーストの反応が今までと何一つ変わっていないためである。

自分はあれから話すときにちょっと緊張しているのに、向こうは何も気にしていなさそうなのが気に食わなかった。

 

「コーストさんは私をどう思ってるのかな……。」

 

ホシノがそうつぶやいたその時、

 

「ん、そんなホシノ先輩に残念なお知らせ。」

「!?」

 

突如として思考に割り込んできたその声にホシノは飛び起きる。

周囲を見回すとそこにはシロコ含むアビドスメンバーが勢ぞろいしていた。

 

「……みんな、もしかして今の聞いてた?」

「ん、ばっちり。」

「ええ、ホシノ先輩のカワイイつぶやき、しっかり聞こえましたよ☆」

「その、なんかごめん、先輩。」

「あはは……すいません。」

 

ホシノが顔を赤くしながら青筋を浮かべるという器用なことをしながら聞くと全員がどことなく嬉しそうにそう返してきた。

 

「はあ……まあいいや、どうせ手紙にも書いたことだしね。それでシロコちゃん、残念なお知らせってなんなのさ?」

 

ホシノが諦めたようにため息をつきつつシロコにそう尋ねる。

 

「ん……このまえ宇宙船でコーストさんの話を盗み聞きして感じたことだけど、コーストさんの中で私たちの立ち位置はおそらく娘的な存在。ホシノ先輩の手紙での告白もパパ大好きみたいな感じで受け止められている可能性が高い。」

 

コーストがその認識になったのは以前のシロコの発言が割と大きいが、もとよりコーストから見たホシノたちの立ち位置が保護しなければならない相手なのは確かである。

 

「あ~……。ま、確かにそんな感じはしてたよ。コーストさんが私たちを守らなきゃいけない存在だと思っているってことはね。」

「ついでに言うとコーストさんは私と同じで過去の記憶がないうえにこの星に来るまで自分と同じような種族にもあったことがないらしい。だから、多分恋愛の概念を知らない。」

「……。」

「あ、ホシノ先輩が項垂れてしまいました。」

 

明かされた衝撃の事実に、そして、一番長く一緒にいたはずの自分よりシロコのほうがコーストに詳しいという事実にホシノが両手を床について項垂れた。

 

「これは、前途多難になりそうですね~。」

「あの、大丈夫ですか、ホシノ先輩……。」

 

そろってホシノを囲んで慰めの言葉を投げかけていると、屋上のドアが開いて件の人物が乱入してくる。

 

「お前らこんなところで……って本当に何してるんだ?」

 

コーストが扉を開けて最初に飛び込んできたのは撃沈したホシノとそれを囲むアビドスメンバーたち。

不思議に思うのも無理はない。

 

「あははは……何でもないですよ。それで、コーストさんは私たちに何か用でしょうか?」

 

ノノミがとりあえず話題をそらした。

 

「ああ、いつだったかホシノが魚が見たいと言っていたろう。だから、比較的平和になった今連れて行こうかと思ってな。」

「「「「「!!」」」」」

 

その時、全員の頭に電流が走った。

即座にホシノを囲んで話し合いが始まる。

 

「ホシノ先輩、チャンスですよ!」

「そうですよ!二人きりで海に行くなんて、とてもいいシチュエーションじゃないですか!!」

「み、みんな、ちょっと落ち着いて……。」

 

自らを囲んで盛り上がる後輩の姿にホシノは少し引いた。

しかし、男性がほぼ存在しないキヴォトスにおいて恋愛話はかなりレアなものである。

ホシノとコーストを除くアビドスは今、過去最高に盛り上がっていた。

 

「コーストさん!ホシノ先輩、海行きたいそうです!」

「お、おう、そうか。あ、そうだ、お前たちも一緒に来るか――」

「何言ってるんですか!先輩と一緒に行くんでしょ!」

「コーストさん、何考えてるんですか!」

「ん!ホシノ先輩の気持ちも考えて!」

「何でそこまで言われなきゃいけないんだ……。」

 

凄まじい勢いでキレられたコーストは煤けた表情になる。ヘルメットをかぶっているので顔は見えなかったが。

 

「じゃあ、今から行くか、ホシノ?」

「えっと、一日時間をもらえないかなって……。」

「そうか。なら、準備ができたら声をかけてくれ。」

 

そういうとコーストは屋上から去っていった。

 

「ごめん、みんな。ちょっと協力してほしいことがあるんだけど……。」

「水着選びですね!お任せください!皆で買いに行きましょう!」

 

おーー!!という声がアビドスの屋上に響く。

こんな時間が流れるのも、アビドスが平和になったおかげだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

一日後、アビドス高校校庭にて――

 

「じゃあ、一泊はしてくるだろうから、その間よろしくな。」

「うへ~、行ってくるね。」

 

数日分の着替えを持ったホシノとコーストがコルベットに乗り込む。

ホシノは平静を装っていたが、その顔はワクワクを隠しきれていなかった。

 

「いってらっしゃーい!」

「ん、いってらっしゃい。」

「せんぱーい!楽しんできてねー!」

「帰ってきたら、色々話聞かせてくださいねー!」

 

後輩たちに見守られつつ、二人は宇宙へと繰り出した。

――――――――――――

――――――――

――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでコーストさんはどんなところに連れて行ってくれるのかな?」

 

運転するコーストのわきに座るホシノがワクワクを隠しもしない笑顔で訪ねてくる。

 

「そうだな、ひとまずは前に話した海洋惑星に行ってみるか。」

「お~ほとんど海の惑星だっけ。どんな魚がいるんだろ?」

「それはついてからのお楽しみってやつだな。ホシノ、掴まれそうな場所にしっかり掴まっておいてくれ。星系外にジャンプする。」

 

コーストがそう言うとコックピット前方に立体のギャラクシーマップが展開される。

 

「おお!コーストさん、これは……」

「そういえばホシノは見たことがないか。これはギャラクシーマップといってな、付近の星系の記録された情報を映し出してくれる星図だ。」

「うへ~こうしてみるとほんとに私の住んでた世界ってちっぽけなんだね……。」

 

思わぬところで宇宙の広さを実感したホシノだった。

 

「う~ん……この星系がちょうどいいか。しっかり掴まれ、跳ぶぞ!」

 

その声とともにコーストは操縦桿を押し倒し、ハイパードライブを起動した。

ホシノはあまり気にしていなかったが、この瞬間ホシノは地球生命の中で初めて太陽系を脱した存在となった。

 

 

 

 

 

 

アインスタ 星系

Eissentam ❘ 新しいディスカバリー

 

―――――――――――――――――――――

天体:5惑星

主要な生命体:ヴァイキーン

経済状況:金属加工//中程度供給(中5)

紛争状況:非常に危険(高5)

―――――――――――――――――――――

 

「これが太陽系の外の世界か~」

「ああ。そういえば星系の外にまで出たのはホシノが初めてかもな。」

「うへ~そうか~。」

 

ホシノがフロントガラスから外を見回していると完全に水で覆われている一つの惑星を発見した。

 

「あ!もしかしてあの星?」

「ああ。今回の目的地だな。だが、その前にホシノのためのエクソスーツを整えないとな。」

「え?私のスーツ?」

 

ホシノはキョトンとした顔で聞き返す。

 

「海洋惑星は基本的に人間が生身で耐えれる環境ではないからな。魚の観察自体はノーティロンという小型の潜水艇で行うが、乗り込むためには一度コルベットの外に出る必要があるからな……。」

「え、そんなに怖い場所なの?水着とか持ってきたんだけど……」

「……水着で泳げる星なんか数えるほどしか見たことないな。というかむしろキヴォトスのある地球のような住みやすい環境の星のほうが珍しい。こういう星のほうが一般的なんだよ。だから、俺が来ているような環境防御を持つエクソスーツが必要なんだ。」

「でも、わたし宇宙で使えるお金なんて持ってないよ?」

「安心しろ。それ位は俺が払う。さすがに俺が過去に来てたやつを着せるわけにもいかないし――」

「それがいい。」

 

ホシノが真顔で言い放つ。

 

「え?」

「コーストさんが着てたやつでいい。」

「いやでも、新しいのを買ったほうが――」

「コーストさんが着てたやつでいい。」

「……分かったよ」

 

コーストが折れるとホシノはにへらと笑った。

「うへへ、コーストさんとお揃い……」とつぶやくホシノはもういろいろとだめなのかもしれない。

 

//着陸プロセスを開始//

 

 

ドッキングを開始

アインスタ ステーション

♢宇宙ステーション

 

コーストとホシノは星系の宇宙ステーションに降り立ち、外見変更モジュールへと向かった。

宇宙にほとんど存在しない人間種は珍しい存在だが、アノマリーなど、見慣れない種族を見かけることは多々あるので、ステーションにいる者はさして気には止めていなかった。

ただ、ホシノはいくらヘイローの守りがあるとはいえ、得体のしれない宇宙人相手に対し少しばかり恐怖を感じていた。

 

「ここが外見変更モジュールだ。中に入れば格納されてるデータからスーツの形成ができる。まあ、新しく物は買ってないからプリセットのスーツから色を変えるくらいしかできないが……」

「おっけー。問題ないよ。」

 

プリセットからエクソスーツを装着するとホシノの頭に機械的な女性の音声が流れる。

 

〈アトラスシステムスーツの起動を開始しています〉

〈スーツの生命維持システム、起動〉

〈シールドキネティックシステム、稼働中〉

〈空中推進ジェットパック、使用可能〉

〈ユーザーを変更……メインユーザーからの承認を確認。ゲストモードでの運用を行います〉

 

「おお~なんだか近未来的だね~。」

スーツから頭に響く音声に少しホシノのテンションが上がった。

 

そして、ホシノがモジュールに入ってから数分……

己の髪色であるピンクのスーツに身を包んだホシノが出てきた。

 

「うへへ~どう、カッコいいかな?」

「ああ。よく似合ってるんじゃないか?」

 

その言葉にホシノはうへへ、とにやける。最も、その顔はヘルメットに阻まれ見えなかったが。

 

「それじゃ、これもついでにプレゼントだ。」

「うへ?これは……」

 

コーストがホシノに渡したのはエキゾチックマルチツール〈エレイエボのクオンタム オーディタ―〉

 

「俺が昔使ってたマルチツールだな。いままで死蔵してたが……ただ置いておくよりは使ってもらったほうがいいと思ってな。俺が最も信頼するお前への、プレゼントだよ。」

「最も信頼……うへへ、ありがとう。大事にするね。」

 

ホシノは受け取ったマルチツールを胸に抱きかかえた。

女性へのプレゼントとしては些か無骨ではあるが、信頼の表れとして渡されたことがホシノは何よりうれしかった。

 

〈マルチツールとマインビームのアタッチメント、使用可能〉

 

「よし、じゃあそろそろ本題の海洋惑星に行くとするか。」

「お~!」

 

 

 

 

 

 

宇宙ステーションを出た後、コーストはパルスジャンプを起動して目の前に映る海洋惑星へと向かった。

 

パルスドライブ停止//弾道飛行を開始

 

イスツム アルファ

Eissentam ❘ 新しいディスカバリー

 

 

■■惑星 ――潮の土地――

気候         沿岸の嵐

センチネル      散在

植物         生命レベル 低2

動物         生命レベル 高1

 

「よし着いた。」

「外、なんかすごい音してるけど……」

「嵐が来てるみたいだな。まあ、水の中なら関係ない。ノーティロンをその辺に呼び出すからついてきてくれ。」

 

そう言ってコーストは船外に出て水中でノーティロンを呼び出して乗り込む。

ホシノもコーストの後を追って乗り込んだ。

 

「一人用でちょっと狭いが我慢してくれ。」

「大丈夫だよ。私は小さいからね~。」

 

口ではそういうものの、ホシノはここぞとばかりにコーストにくっついていた。

そんな二人を乗せ、ノーティロンは深海へと潜っていく。

水深が1000mを超えたころ、目の前にゲーミングに輝くアンモナイトのような生物が現れた。

 

「わ、何あれ?」

「さあ、深海の生物に関しては俺もほとんど知らない。まあ、宇宙は広い。どんな生物がいても不思議じゃないさ。」

 

二人して深海でやたら目立つそのアンモナイトもどきを見送り、さらに深く潜っていくと、そこには多種多様な深海の構造物の間を泳ぐタツノオトシゴのような生物や巨大なエイのような生物、また金色に光る魚や巨大なイカが泳いでいるのを見つけた。

 

「わあぁ!!」

 

ホシノは目をキラキラさせてその光景を見つめる。

ブラックマーケットのアクアリウムでもまず見ることのできないであろう異星の深海の生命にホシノは完全に目を奪われていた。

 

「ん?あ、ホシノ、ちょっと中で待っていてくれ。」

「ほわあ~、え、ちょ、コーストさん!?」

 

いきなりハッチを開けて深海へと出て行ったコーストに静止が間に合わなかったホシノは驚きの声を上げる。

暗い海の中一人取り残されてホシノが言い知れない恐怖を感じていると後ろのハッチがあいてコーストが戻ってきた。

 

「ちょっとコーストさん!あまり心配するようなことしないでよ!」

 

ホシノがコーストに抱き着き半泣きでそう言う。

いきなり暗い深海で一人ぼっちになったら誰でも恐怖を覚えるだろう。

 

「悪い悪い。ただ、ちょっと珍しいものを見つけたんでな。」

 

そう言ってコーストがインベントリから取り出したのは深海でしか見つからない貴重資源、シーグラスである。

 

「こんなものまでおちてるんだね~。でも、何かするときは一言言ってからにして。」

「ははは、すまんな。お詫びと言っちゃなんだがそれはお前にあげよう。」

 

コーストはそう言って今しがたとってきたシーグラスをコーストに差し出した。

 

「え、もらっちゃっていいの?」

「もとよりそのために取りに行ったわけだし……この星に来た記念になるだろ?」

「そっか。そういうことならもらっておこうかな。部室にでも飾っておくよ。」

「そうしてくれ……それじゃ、そろそろ次の惑星に行くか?せっかくみんなから時間をもらったんだから色々見て回ったほうがいいだろう?」

「え、いいの!やったー!」

 

ホシノの賛同を受け、コーストは海面まで上がり、再びコルベットに乗り込んで宇宙に出た。

コーストはギャラクシーマップを開きホシノと談笑しながら次なる目的地を定める。

 

「それじゃ、またジャンプするから掴まっておいてくれ。」

「うへ~い。」

 

ホシノがしっかり席に捕まったのを確認して、コーストはハイパードライブを起動した。

この時はまだ、次に行く惑星であんな波瀾に巻き込まれるとは思いもしていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイパードライブで目的の星系へジャンプした途端、コックピットの中に警報音が響く。

 

〈警告:敵の宇宙船が接近中//正体不明の戦闘艦〉

 

「うへ!?な、何なの一体?」

「わからん!多分野良の海賊船だ!伏せていろ!」

 

コーストの声に従い、ホシノはその場で頭を伏せる。

コーストの視線の先にはまっすぐこちらに向かってくる複数の小型宇宙船。

その場では気づくことがなかったが、その船体には『ALTERRA』の文字が記載されていた。

 

 




subnauticaです

今回はホシノとお魚を見に行く話……で済めばよかったんですがね。
次回の舞台がどこになるかはわかる人にはわかるでしょう。

あ、ちなみにゲーム内で詳しく描写されていない部分については基本都合のいい解釈で書き進めていますのでその辺はご了承ください。

これからも応援よろしくお願いします。
では、また次回お会いしましょう。

今後もアンケートはやったほうがいい?

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