blue sky archive   作:subnautica

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26 ゲーム開発部

 

「あ~……それであんなに焦ったようにこの部屋に入ってきたんだね。ごめんね。無理に呼びこんじゃって。」

「いや……言い出したのも俺だし、ミレニアムの連中がここまでだとは予測できなかった俺も悪い。気にしないでくれ。」

 

ユズにロッカーを追い出されたコーストはゲーム開発部の部室で先生に今までの経緯を語っていた。

 

「あの……ミレニアムの生徒全員があんなだとは思ってほしくないんだけど……。」

「なんだ、あいつら以外はあんな風に追ってこないとでもいうのか?」

「いや~……ゴメンナサイ。」

 

一緒にされたくないとモモイが声を上げるがろくでもないのが多いことは否定できないのでそれ以上は口を挟まないことにした。

 

「ところで、結局その人は誰なの、先生?」

 

ミドリが先生に問う。

 

「ああ、この人はコースト。え~っと、この人も技術者でね。アリスに関して何か知ってることはないかと思って私が呼んだんだ。」

 

宇宙から来た、という枕詞を伏せて先生が簡単にコーストの紹介を行う。

 

「よろしくな。ところで、お前たちの名前も聞いても構わないか?」

「もちろん!私の名前は才羽モモイ!こっちは妹のミドリ!」

「才羽ミドリです。よろしくお願いします。」

「アリスはアリスです!」

「そんで、さっきコーストさんが入ったロッカーの中にいたのがゲーム開発部部長のユズだよ!」

 

コーストが先ほどのロッカーに目を向ける少しだけ隙間が空いてこちらを見ているのが目に入ったが、こちらと目が合うとサッとロッカーの扉を閉めてしまった。

 

「人見知りなのか……?まあそれは置いておいて……先生が言っていたのはお前か?」

「何のことでしょうか?」

 

コーストはアリスの前に立ち分析バイザーによる解析を行う。

 

「……確かにこいつは無機生命体だ。とはいえコーバックスやオートファジー*1とは根本からして異なる存在。そして、他の生徒も持っているエネルギー……神秘とやらも保持しているな。」

「何か分かりそうかい?」

「いや、すまないがまったく俺が持つ技術体系とは一致しない。義体のスペックから戦闘に特化したものだろうということ以外に特に何も言えないな……それ以外に強いて言うなら先生が最初に結論付けた通り、宇宙由来ではなく、この星で誰かが作ったものだろうということだ。今のこの星の技術レベルからは些か逸脱しているのが気になるところだがな。」

 

コーストはお手上げという風に首を振る。

ちなみにコーストの正体が知れるとまずいので途中からは先生のそばで小声で話している。

 

「そう……戦闘用……うん、でもそれが知れただけでも収穫だよ。ありがとう!」

「そうか。……そういえば、ここは部室といっていたが、何をしているんだ?俺は対策委員会のことしか知らないから良く分からなくてな。」

「お、私たちの活動内容が知りたい感じ?私たちゲーム開発部は文字通りゲームの開発をやっているよ!」

「最近は遊んでばっかでまともにゲーム開発なんかできてないけどね……。」

「しっ!ミドリ、余計なこと言わないで!」

 

モモイとしてはカッコつけたかったのだろうが、ミドリの言葉でいろいろ台無しだった。

 

「そういえば、コーストが元居た場所にはどんなゲームがあったの?」

 

先生が純粋な疑問を口に出す。宇宙のゲームがどれほど進化しているのかが気になったのだ。

 

「ゲームねえ……あまり興味を持ったことはないが、今はこれが流行っているな。」

 

コーストはそう言って虚空からホロアリーナ*2を設置する。

 

「うわ!?どっからだしたのそれ!」

 

部室のど真ん中に突如として現れたどでかい台にモモイたちは面食らう。

 

「細かいことは気にするな。とにかくこれがホロアリーナというゲームだな。」

「へ~どんなゲームなの?」

「簡単に言えば三匹のコンパニオンに技を指示して戦わせるターン制の対戦ゲームといったところか。やってみるか?」

「いいの!」

「ああ。コンパニオンのデータは貸してやろう。」

「よ~し、負けないよ!あ、おじさんも本気でやってね!手加減とかいらないから!」

 

簡単にルール説明を済ませた後、お互いが台の対面に立ってモモイvsコーストの試合が始まる。

お互いが出場するコンパニオンを決定すると台の上に立体ホログラムが現れ、指示を受けた技を繰り出し始める。

 

「おお!立体ホログラムでゲームができるなんて!これは新感覚だね!」

「キヴォトスにはこういったものはないのか?」

「そうだね~ホログラムは通信に使うくらいで、ゲームで使ってるのを見たのはこれが初めてかも!これどこで売ってるの?」

「あ~……これはキヴォトスの外の物でな。ここでは手に入らないだろう。」

「そっか~……。」

 

さすがに銀河ではやってるゲームとはいいがたいのでコーストは適当にごまかすことにした。

その後勝負はモモイ優勢に傾いたように見えたものの、歴が長いコーストが補助技を多用し、モモイをがんじがらめにして完封して勝利した。

 

「がぁー!負けた!くやしいい!」

「うわぁ……お姉ちゃんボコボコ……。」

「アリス知ってます!これは害悪戦法というやつですね!」

「コースト、本気でやってとは言われてたけど、結構えげつない戦法使うんだね……。」

「……あまり言わないでくれ。自分でもどうかと思ったところだ。」

 

ちなみにコーストが利用したのは相手の精度(技の命中確率)を下げる技を多用して相手の攻撃を封じるもので、デバフを解けるコンパニオンがいなければ何もできなくなるといったものである。

モモイもそれには途中で気づいたのだが、デバフ解除に反応して大ダメージを与える技もセットで使われていたため、為す術なくボコボコにされていた。

 

「もう一回!もう一回だよ!」

「すまないが、だいぶ長居してしまっているからそろそろ戻りたいんだが……。」

「勝ち逃げする気!?」

「ちょっとお姉ちゃん、向こうにもいろいろあるんだろうし、引き留めちゃ悪いよ。」

「また相手してやるから。それじゃあな。」

 

そう言ってコーストが部室のドアを開けて去ろうとしたその瞬間、外からドアが開かれた。

また来やがったのかと思いながらコーストはとっさにクローキングを作動させてしまう。

 

「モモイ、この前の件だけど……え、誰、って!?きゅ、急に人が消えた?」

「あ、コースト、その子は大丈夫だから。私の知り合いだよ。」

「そうか……ならよかった。」

 

コーストは安堵の声とともにクローキングを解いた。

 

「あ、先生もいらしたんですね。って、さっきのは何ですか!もしかして光学迷彩?それにしてはこんな至近距離でも全く違和感がないなんて精度が高すぎるし……ど、どこで作ったものなんですかそれは!?」

「おい、先生!どこが大丈夫なんだ!」

 

ユウカに詰め寄られたコーストが先生に文句を言う。

 

「ユ、ユウカ、少し落ち着いて……。」

「あ、し、失礼しました。つい取り乱してしまって……。」

 

ユウカが素直に頭を下げた。さすがに客人への態度ではないと思いなおしたようだ。

 

「ところで、あなたはどちら様でしょうか?」

「あ~……俺の名はコースト。まあ、先生の友人とでも思っておいてくれ。」

「その名前、聞いたことがあります……確かアビドス近郊でかなり有名な賞金稼ぎが同じ名を名乗っていたような……もしかして、先生がこの前アビドスに行かれている時に出会った方ですか?」

「その通りだよ。良く分かったね、ユウカ。」

「ふふん。これでも私、セミナーですからね。」

 

ユウカが先生に向かって得意げな表情になる。

三大校の上層部としてその辺の情報はつかんでいたようだ。

 

「じゃあ、俺は帰っていいか?」

「あ、うん。引き留めて悪かったね。」

「う~……その光学迷彩はとても気になりますが……先生のご友人を引き留めるのも……。」

 

ユウカが何やらぶつぶつ言っていたが、コーストは無視してドアを開く。

が、ここで油断したのが悪かった。

 

「あー!見つけました!」

「!?」

 

廊下の少し先に、先ほどまで自分を負っていた生徒の姿が見える。

新技術に飢えた連中に餌が見つかった。

 

「クソが!また鬼ごっこか!!」

 

コーストは持ちうる技術を駆使してどうにかミレニアムの生徒を振り切ることに成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――アビドス高校コースト宅

 

「あ~疲れた……。」

「そんなに大変だったのコーストさん?」

 

コーストがソファでだれるホシノの隣で同じくぐでーとなっている。

 

「あいつらしつこいんだよ。ドローンも併用してどこまでも追ってきやがる……。外に出た後はピルグリムで強引に引き離したが、新しいものを見せてしまった以上、ミレニアムにはしばらく立ち入らないほうがいいだろうな……。」

「うへ、私もスーツ着てミレニアムに乗り込んだら同じような扱いを受けるのかな?」

「……絶対にやめてくれよ。店売りの物とは違って俺たちが使ってるエクソスーツは少し特殊なんだ。解析されるとかなりまずいことになる。」

「う、うん。良く分からないけど、分かったよ。」

 

コーストが真剣な声で忠告してきたため、ホシノは素直に頷いた。

ちなみにコーストたちの使うエクソスーツはその辺の宇宙人が利用しているものとは違ってアトラスが直々にシステムを組んだものであり、性能が他の物よりいくらか優れているほか他者からの解析に対して強い攻撃性能を持つ。

キヴォトスの技術で解析を行おうとしたら逆にコンピューターがぶっ壊れるのがオチであろう。

 

「それで、先生からは何の用事で呼び出されたの?」

「まあ、簡潔に言えば遺跡から発掘されたオーバーテクノロジーに関する調査といったところか?宇宙に何かしらのつながりがあるかもしれないといったことでな。結局のところ、特に何かあったわけではないが。」

「そっか。じゃあ、特に問題はなかったんだね。」

「結果だけ見ればそうなんだが……どうにもきな臭いんだよな……。」

 

銀河を巡って鍛えられた直感は敏感に嫌な予感を察知する。

しばらくした後、その勘が間違いではなかったということをコーストは知ることになる。

 

「そういえば、みんなはどこに行ったんだ?」

「セリカちゃんはバイトで、他は花火を買いに行ってるらしいね。夏だからかな?」

「ホシノはいかなかったのか?」

「いや~お昼寝してる間に皆行っちゃったみたいでね。花火を買いに行ったらしいってのもそこに書置きがあったから分かったわけで……。」

「……ホシノお前、それでいいのか?」

「……うへ~。」

 

ホシノはいつも通りうへうへしてるがその顔はどこか悲しげであった。

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、アビドス対策委員会全員とコーストが暗くなった校庭に集合していた。

傍らには袋入りの手持ち花火がいくつか用意されていた。

 

「それじゃ、アビドス花火大会始めますよ☆」

「……いきなりね。というか、いつの間にこんな花火買ってきたの?」

「ん、セリカがバイト中に買ってきた。」

「おじさんは置いてかれちゃったけどね~。」

「起こすのも悪いと思ったので……ごめんなさいホシノ先輩。」

 

各々が喋りながら手持ち花火を用意する。

 

「……俺が知っている花火とはいろいろ違うな。」

「ん?宇宙には手持ち花火はないんですか?」

「ああ。これはどうするんだ?」

「この花火はですね、こうするんですよ☆」

 

ノノミが手に持ったライターでみんなの花火に火をつけ始める。

それぞれの手から、赤、青、緑……とカラフルな光があふれ始める。

 

「いや~こういうのもたまにはいいよね。」

「そうね。花火とか、いつぶりかしら。」

 

今まで借金であまり余裕のなかった皆はこういった余暇がとても楽しく感じられるようだ。

 

「おお、こんな感じか。確かにこういうのも悪くないかもな。」

「ん、コーストさん、宇宙の花火って持ってたりしないの?」

 

シロコが花火を両手にもってコーストに聞く。

 

「持ってるぞ。こんなんでいいか?」

 

そう言ってコーストが取り出したのは購入に水銀*3が必要な地味に高コストなアイテムであるリボン花火やタイタン花火、クロム花火を取り出す。

 

「ん、ホントに入ってるなんて……。」

「わあ!もしかして打ち上げ花火ですか!」

「そんなものもそのバッグに入ってるんですね……。」

「ほんとに何でも入ってるわね、コーストさんのバッグ。」

 

皆の期待に満ちた視線を受けてコーストは花火を並べていく。

 

「空も暗いし、この花火もだいぶ映えるだろう。それじゃ……点火だ!」

 

その声とともに発射装置から花火が打ちあがり、光のほとんどない夜の砂漠の空を彩っていく。

 

「きれいですね~!」

「いや~アビドス高校でこんなものが見られるなんて、おじさん感動だよ~。」

「ん、打ち上げ花火もいい。」

「ええ、それもこんな特等席で見れるなんてね。」

「本当に、きれいです……。」

 

完全にインベントリの肥やしとなってしまっていた花火たちだが、こんなにも喜んでもらえるのであればまた買ってこようと思うコーストであった。

 

*1
コーバックスとはまた別の無機生命体。独自の社会を持ち、外部からは視覚的に隠された集落で暮らす。

*2
惑星で捕獲したコンパニオン同士を戦わせるジェネリックポケモンのようなゲームを行えるゲーム台。

*3
ノーマンズスカイにおける特殊な通貨。水銀統合コンパニオンで使うことができ、エキゾチックコレクションと呼ばれる特殊な家具や装飾、アイテムが購入できる。




subnauticaです

コーストは何とかミレニアムを脱することができましたが……まあ、また何回か足を運ぶことになるでしょう。
コーストさんには頑張ってもらって。


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では、また次回お会いしましょう。

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