ミレニアムの騒動から数日、コーストは自宅のコンテナで荷物整理を行っていた。
同じ部屋では特にやることのないホシノが昼寝を、何やら気になることがあるらしいアヤネがソファで本を読み漁っている。
エアコンのいらない基地モジュールの快適さに完全に味を占めているようだ。
「アヤネ、さっきからずっと何か調べているようだが、何か気になることでもあるのか?」
「あ、コーストさん。それなんですが、カイザーのことで少し気になることがありまして……。」
「何?また何か問題があったのか?」
コーストが剣呑な雰囲気を醸し出す。
「いえいえそう言うことではなく……コーストさん、あのカイザーの理事長があそこに基地を建てた理由として話していたこと、覚えていますか?」
「基地を建てた理由……確か、宝探しと言っていたな。あの時は適当なごまかしだと思っていたが……。」
「はい。実際私もそう思っていたんですが、嘘をつくにしてもそれっぽい理由なら他にいくらでも建てられると思いますし、カイザーがアビドスの利権だけでなく土地そのものを買い集めていたのも事実です。もしかしたらあの砂漠には宝かどうかは知りませんが、何か埋まっているんじゃないかと思いまして……。」
アヤネのその言葉にコーストも共感を覚えた。
確かに宝探しと言うのはごまかしの言葉として出すには少し違和感がある。
最終的な目標は学校の乗っ取りだったのだろうが、コーストの影響を排して考えるのであればあの兵力はアビドスに対して過ぎたるものであるのも事実である。
カイザーはあの砂漠で何をするつもりだったのだろうか?
「カイザーの資料でも残ってれば何か分かったのかもしれんが、全部焼き払ってしまったからな……。」
艦隊による絨毯爆撃であの区域にはもはや消し炭しか残っていない。
「そうですよね……自分たちの土地のはずなのに何もわからないなんて……。」
「……それなら、俺達で実際に調べればいいんじゃないか?」
「え?でもあんな大企業があれだけの資材を投下して探してたものを私たちが見つけられるものなのでしょうか……。」
「普通にやればそれは無理だろうが、俺にはコルベットと広域スキャナーがあるからな。高速で砂漠を飛び回ってスキャナーを動かせば何かしら見つかるかもしれないぞ?」
「そうですね……やってみる価値はあるかもしれません!」
「お~、なんか楽しそうな話してるね~。」
その声に振り替えると昼寝をしていたホシノが起き上がってこちらを見ていた。
「昼寝はもういいのか?」
「今日はもうたっぷり寝たからね~。それに、二人がなんか面白そうな話してるから目が覚めちゃったよ。」
「そうか。なら、ホシノも賛成ということで言いな?」
「もちろん。カワイイ後輩のためにおじさん頑張っちゃうぞ~!」
ホシノが胸をポンと叩いてそう宣言する。
その後はほかのメンバーにも連絡を取り、アビドス砂漠で宝探しを行うことが決定されたのだった。
アビドス砂漠に向け、アビドスの皆を乗せたコルベットが航行を続ける。
「宝探しだなんて、昔を思い出すな~。」
今回はアビドス高校について詳しいものの一人としてユメも召集されていた。
「何?過去にも似たようなことをしたことがあるのか?」
「そうだよぉ。実はホシノちゃんが入ってきてすぐのころに砂漠で宝探しをしたことがあってね、水着になって鶴嘴をもって砂漠を掘り返して……」
「ちょっとユメ先輩!恥ずかしいからやめてくださいよ!」
ホシノが珍しく焦ったような声を出す。口調も過去のものに戻っていた。
「ホシノ先輩にもそんな時期があったんだね……。」
「砂漠で水着って……。」
「うぅ……みんな忘れてよ~!」
ぽわぽわしたユメとは対照的にホシノは顔を真っ赤にしていた。
「話を戻すが、実際どのあたりから探索を始めるか。砂漠も広いからいかにコルベットとはいえ、あたりもつけずにやるのはなかなかきついが……。」
「じゃあ、最初はアビドス高校の本館があった場所に行ってみない?」
復活したホシノがそんな主張をした。
「アビドス高校本館……カイザーの基地の中心地でホシノがつかまってた場所だったか……何でだ?」
「曲がりなりにも本館だから今の分館に移してない資料なんかも大量にあるし、砂漠について知るんだったらそこでいろいろ調べるのもいいんじゃないかなって。」
「そうですねぇ、あそこにはかつての生徒会室もありましたし、何か分かるかもしれません!」
「あそこはホシノがいるってことで砲撃の対象にもしてないから損傷も少ない……よし、まずはそこに行くとしよう。」
コーストは舵を切り、かつてのアビドス高校本館へとコルベットを進めた。
――アビドス高校本館前
焦土と化した砂漠のど真ん中、目の前に映るのは砂に半分埋もれた巨大な校舎と、粉砕されたオートマタとセンチネルの残骸のみである。
「改めてみると酷い有様だな……まあ、校舎には問題ないから探索を進めるとしよう。」
「もう、こんな風になっちゃったんですね……。」
かつての姿を知るユメは荒廃した本館を見て悲しそうな表情を浮かべた。
校舎の入口はもう砂に埋もれてしまっていたが、コーストが地形操作機で無理やり砂を排除し、中へと入っていった。
「いや~宇宙の技術様様だね。こんなに簡単に砂を退けられるなんて。」
「そうですね……校舎に一切傷をつけずに砂だけを排除できるなんて、どうなっているんでしょうか?」
技術に興味を持つアヤネだが、コーストとてマルチツールのアタッチメントの構造を一から十まで把握しているわけではないので、聞かれても答えることはできないだろう。
「あ、この教室……。」
砂をどかしながら一階の探索を進めると一つの教室がユメの目に入った。
「何だ、見覚えがあるのか?」
「はい!ここ、私の教室です!」
「そうか……なんか忘れ物でもあったりしないか?今なら回収できるぞ。」
「う~ん……確か文房具がいくつか置きっぱなしだったような気がしますけど、わざわざ回収したいものはないですかねぇ。あ、写真だけ撮ってもいいですか!」
そう言ってユメは懐からカメラを取り出し、若干砂で汚れた教室をカメラに収める。
「そうだ!コーストさん、ちょっとカメラ持ってください……ホシノちゃん!こっちこっち!」
「な、なんですかユメ先輩……。」
ユメがホシノの腕を引っ張って教室の黒板の前まで引っ張っていく。
「コーストさん、撮ってください!ほら、ホシノちゃんもピース!」
「わ、分かりましたよ……。」
コーストによってその光景がカメラに収められる。
「ふふ、私はもう学生じゃないけど、こうしてこの教室でホシノちゃんと一緒に写真が撮れてよかったな♪」
「何ですか、もう……。」
ユメはカメラの画面を眺めてニヤニヤしている。
ホシノは恥ずかしげであるがどこか嬉しそうだ。
そんな一幕もありながら引き続き探索を続けると、"資料室"の文字が目に入った。
「ん、見つけた。」
「ここが目的地ですね。」
「よし、見る限り結構広そうだし、手分けして探索しよう。」
全員で手分けしてアビドス砂漠に関する資料の捜索を始める。もとはキヴォトス有数のマンモス校だったということだけあって資料の数も膨大だったため捜索は大変そうに思えたが、ある程度整理はされていたので目的の資料を見つけることにはそこまで苦労はしなさそうだ。
目を通すとなるとまた別問題だろうが……。
「それっぽい資料は集まったが……。」
「これは、さすがに多すぎますね……。」
集まった資料は机の上に山のように積み重なっている。
読み切るにはどれだけの時間がかかるだろうか……。
「ここで読むには量が多すぎる。一度持ち帰ってみんなで見るとしよう。」
「でも、この量の書類、どうやって持ち帰るんですか?」
「忘れたのか?俺にはエクソスーツのインベントリがある。これぐらいの量なら持ち帰れるさ。」
そう言ってコーストは目の前の資料の山をインベントリにしまっていく。
アビドスの記録
歴史文書
20年くらい前のものだ
容器に丁寧に封入された文書は汚れないようにカバーで包まれている。カバーの中にはいくつかの紙の束がまとめられている。
「それじゃ、いったんアビドスに戻るとしようか。」
資料の探索にだいぶ時間を使ってしまったため、その日は砂漠での探索を一度打ち切って戻って文書に目を通すことに時間を使うことにした。
――アビドス高校
「う~ん、確かに貴重な資料ではあるのですが、私たちが求める情報はなかなか乗ってないですね……。」
回収した資料に目を通すものの、大半が単なる地理情報だったり、砂に埋もれてもうない市街地に関しての話だったりで特に有用な情報は出てこなかった。
単に歴史的資料として見るならばそれなりに貴重なものなのだろうが。
「ん?なにこれ?」
シロコが疑問の声を上げる。資料の中から何か見つけたようだ。
「何か見つけたんですか、シロコちゃん?」
「ん、これ見て。」
シロコが広げて見せたその資料は"アビドス砂漠実地調査記録"当時から存在した砂漠の現状把握のために作られた資料のようだ。
そしてそこに映っているのは激しい砂嵐の奥に映る何やら巨大な影のような物。
正体はその調査でもわからなかったらしく、"正体不明"として処理されている。
「これは何というか……巨大な蛇でしょうか?」
「この見た目……タイタンワームか?」
後ろからのぞいていたコーストがシロコが掲げるその資料を見てそんな感想を覚えた。
「何か知っているのですか?」
ノノミがコーストに問う。
「いや、確定というわけではないが……他の惑星で似たような奴を見たことがあってな。タイタンワームという体長が数十u……こちらの単位で言うなら数十メートルの巨大な生物だ。こいつと似たようなシルエットをしている。」
「そ、そんな化け物も宇宙には居るんですね……。」
「まあ、こちらから手を出さない限り向こうも手は出してこないからセンチネル共と比べれば大した脅威でもなかったがな。ただ、この星にいるらしいこいつもそうだとは限らん。この写真が本物かどうかはわからないが、砂漠にはこれがいるかもしれないと警戒をしておくに越したことはないだろう。」
「そうですね……。」
「ん、さすがにこれとは戦いたくない……。」
「それが一番だ。さて、他に何か発見はないか?」
「あ、コーストさん!それらしきものを発見しましたよ!」
アヤネが笑顔でそう叫ぶ。
「お、なんか見つけたか?」
「はい!かつての生徒会がアビドス砂祭りのためにかつての大オアシス近辺に希少鉱物を利用した花火の搬入を行ったと記述があります!これが本当なら、まさしくお宝ですよ!」
「あ、それは……。」
アヤネのその言葉にホシノとユメが反応する。
「あ、それ私たちが宝探しに行った奴だね!」
「え、知ってたのですか?」
「その資料のことは知らなかったけど……大オアシスに希少鉱物を使った花火があるかもしれないって話は聞いたことがあったんだ~。」
「……ユメ先輩、最初から資料室をちゃんと見てたら、あんなことする必要もなかったんじゃないですか?」
「ひぃん……ほ、ホシノちゃん、怒ってる?でも、ホシノちゃんも嬉しそうにしてたじゃん!」
「う……わ、分かってますよ!言わないでください!」
ホシノとユメがぎゃあぎゃあ言い合っている。
普段あまり見ないホシノの取り乱した姿にほかのアビドスメンバーは微笑ましい顔になっている。
「あ~……とりあえず明日は大オアシスのほうに行ってみるってことでいいかな?」
「そうですね!今も残ってるかはわかりませんが、資料で何となく位置は分かってますし探してみましょう!」
「ん、宝探し!」
「私も賛成です☆あ、何ならホシノ先輩たちに倣って私たちも水着で探しますか?」
「な、何言ってるのノノミ先輩!?するわけないでしょ!」
「いいねぇ~それも楽しそう!」
「……私はやりませんからね、ユメ先輩。」
各々やる気はたっぷりのようだ。
「じゃあ明日の朝、コルベットに乗って大オアシスのあった場所に向かうとしよう。みんなそれまでしっかり寝て体力を蓄えておいてくれ。」
「「「「「「はーい!」」」」」」
皆元気よく返事を返し、それぞれ自分の家へと帰宅していった。
その晩、コーストは例の巨大生物と思しきものが映っている資料を見返していた。
「できればないと信じたいが……用心はしておくとしよう。」
コーストは自分が持つ兵装の点検と発射弾の補充を行う。
この心配が杞憂で済むことを願って。
subnauticaです
少しの間またアビドス編が続きます。
資料に映る巨大な影……いったい何なのでしょうかね
そういえば最近は地震やら台風やらで大変ですね。
あまり大きい被害が起きなければいいのですが。
皆さんも身の回りには気を付けてください。
今後とも応援してくださると幸いです。
では、また次回お会いしましょう。
今後もアンケートはやったほうがいい?
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やってほしい
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自由に書いて