翌日、コーストたちは資料に書かれた花火が設置されていたとされている座標を目指して再び砂漠の上を航行していた。
「ちなみにシャベルだったりの採掘道具はちゃんと準備できてるんだろうな?」
「うへ、もちろんばっちりだよ~。でも、コーストさんのマルチツールで掘るんじゃだめなの?」
「確かにある程度は地形操作機で掘ることもできるが、その花火の原材料が希少鉱物を利用したものって話だから場合によっては花火ごとまとめて抉り取ってしまう可能性がある。だから表層の砂だけ取り除いて、残りは手作業って感じになるだろうな。」
「そうか~。ちなみに、その花火ってどれくらいあるもんなの、アヤネちゃん?」
「資料を見る限りでは砂祭りの開催に合わせて約五万発の花火の搬入を行ったらしいです。まあ、準備段階でうまく動かないことが発覚して湖に沈めたとか書いてありますが……。」
「ご、五万発……!いくらなんでも多すぎない!?っていうかそれを捨てたの!?」
勿体ない……とセリカが小さくつぶやく。
セリカの金銭感覚からすればそれだけの金額をかけたものをすべて捨ててしまうなんて考えられないことだった。
現にセリカは今までつかまされた詐欺グッズを捨てきれずに一つの箱にまとめて保管してある。
「まあ、最盛期は運動マットに羽毛を使ってたぐらいにはお金があったらしいからねぇ。私も初めて聞いた時はびっくりしたよぉ。」
「うちの学校、昔はそんな感じだったのね……。」
「ん、栄枯盛衰。」
「あまり悲しいこと言わないでくださいよシロコ先輩……。」
そんなことを話しているうちに目的地であるかつてのアビドス大オアシスへと到着した。
「……実際こうしてみると資料との差が凄まじいな。」
コーストが資料に映る湖と目の前の砂漠を見比べてそうつぶやく。
「全部砂の下に沈んじゃったからね~。」
「目印がほとんどないのでわかりづらいですが……あのあたりでしょうか?」
アヤネが窓の外を指さし、辛うじて見えるオアシス湖の名残の外縁部を示す。
「じゃあ、とりあえずあの辺にコルベットを止めてみるか。」
//着陸プロセス開始//
コルベットのハッチが空き、そこからシャベルを手にしたホシノたちが出てくる。
「うへ~……あっつい、暑くて干からびそう……ベイクドホシノになっちゃうよ~。」
「……出てきて早々それか。もうちょいやる気を出してくれ。」
「……でも、砂漠の真ん中なだけあって高校のある辺りより暑いですねぇ……。」
「47度……まあ、快適とは言い難い気温だな……。」
「ふっふっふ……でしたらあれの出番ですね!」
ユメやホシノと話していると横からノノミが横からスッ……っと出てきた。
「あの……一応着てきましたけどほんとにやるんですか?」
「そ、そうよ!さすがにちょっと恥ずかし――」
「ん、分かった。」
シロコがそう言っていきなり制服を脱ぎだす。
いきなりの出来事にコーストが面食らっているとシロコが脱いだ制服の下から競泳水着が現れた。
「……シロコ、なぜ水着に?」
「ん、ノノミがみんなで水着で砂漠を掘ろうって言いだした。」
「本気だったのかあれ……というかさっきの反応的に……」
コーストがアヤネやセリカのほうを見ると顔をそらしている。
反応からして制服の下に着てはいるのだろう。
「……無理はするなよ?」
「ちょっと、何よその反応!分かったわよ、水着になるわよ!!」
その声を皮切りに全員が着替えはじめ、砂漠の中心に宇宙服1+水着6という珍集団が現れた。
「何でこんな格好で……。」
「まあ、みんなで盛り上がるって点ではいいのかもですが……。」
「皆とっても似合ってるよぉ!」
「ん、開放的。」
「ふふ、みんなとてもかわいいですよ☆では、早速掘りに行きましょう!」
ノノミ達がそう言ってシャベル片手に砂漠を駆けだしていく。
彼女の中では宝探しよりみんなでワイワイ楽しむのがメインなのだろう。
「まあ、いいか。じゃ、俺たちも行くか。」
「うへ~、そうだね。」
そう言ってホシノが自然とコーストの隣に並ぶ。
二人そろって駆け出して行った後輩たちを追いかけて行った。
「ふふ、ホシノちゃんもやっと素直になれたんだね。よかったよかった。」
ユメはそんな二人を後ろから見つめてほわほわと笑っていた。
最初ははしゃぎながら作業を続けていたが、それも数時間続くとさすがのキヴォトス人とはいえきつくなってくるものである。
熱中症対策に水や塩は大量に持ってきてはいたが、それでも体力の限界が近づいていた。
「うへ~おじさんもう限界……。」
「……そうですね、さすがに一度休憩を取りましょう……。」
「よくよく考えれば湖に捨てたとしか書かれていないし、この人数で探すのは少し無謀だったかもしれんな……。」
「……でも、ここまでやって諦めるのは癪。」
「それは確かにな。何か方法はないものか……」
コルベットの陰に座りしばし談笑をしていたところ、コーストのヘルメットに警報が鳴り響く。
〈気象情報:嵐が接近中//過熱した砂の大嵐〉
「何、嵐だと!?」
声を上げるコーストに全員の視線が集中する。
「え、コーストさん、嵐ってどういうこと?」
「スーツの気象観測システムが嵐の接近を捉えた。直にここに砂嵐が訪れる、早くコルベットの中に入れ!」
その声に全員がコルベットの内部に逃げ込む。
数十秒後、空が一気に暗くなりはじめ、巨大な砂嵐が近づいているのが見えた。
コーストは生き埋めの可能性を危惧してコルベットを空中に待機させることにした。
「うわぁ、これはすごい砂嵐だねぇ。ここが高校の近くじゃなくてよかったよ。」
「そうですね……でも、これは……。」
「?どうかしましたか、アヤネちゃん。」
「いえ、予報では快晴だったのに、何で急にこんな砂嵐が発生したんだろうと思いまして……これだけの規模であれば何かしら予報で触れられると思うのですが……。」
「誰もいない砂漠だから適当だったとか?」
「さすがにそんなことはないと思いますけど……。」
コーストが後部座席の会話に耳を傾けながら砂嵐の中コルベットを動かしていると砂嵐の奥に何やら巨大な影がうごめいているのが見えた。
最初は見間違いではないかと思ったがどうにもそうではなさそうだ。
その影は巨大な蛇のような影……アビドスの資料で見かけたそれとほとんど一致している。
変に刺激しないように一度離れようとしたが、その瞬間相手の頭と思しき部分がこちらに向くのが見えた。
コーストの背筋に悪寒が走り、急制動でコルベットを右にずらす。
ゴアアアアア!!
僅かにそれたコルベットのすぐ脇を極光が貫く。
「わああ!コーストさん、いきなりどうしたの!」
「敵襲だ!しっかり掴まってろ!」
セリカがいきなりの揺れに文句をつけるが、コーストにも余裕がない。
今しがた脇を突き抜けて行った光はいかにディフレクターシールドがあると言えど何度も受けられないようなエネルギーを感じた。
コーストは今、この星に来てから初めての明確な命の危機を感じていた。
「コーストさん、何が襲ってきているの!」
「おそらく資料にも乗っていたあの蛇型の怪物だ!あいつ、遠距離兵器まで搭載してやが……何!?」
〈航空魚雷を検知//着弾まで5.2秒〉
エクソスーツの警告が示すのは航空魚雷……ミサイルの接近である。
「こうなれば……一か八かだ!!」
コーストは機体性能の許す限りの旋回を行い、同時に船体武装のフェーズビームを起動する。
加えて分析バイザーに魚雷のマーキングをさせて、目に見える限りの魚雷をフェーズビームで薙ぎ払った。
しかし、喫緊の難所は乗り越えたものの、相手の接近を許してしまう。
「こここコーストさん!!なんかデカいのが近づいてきてるんだけど!?」
「分かっている!クソが、積載量重視で速度の出ないコルベットで来たのが仇になったか。あの巨体でこんなに速度が出るとは……!」
今回の目的は戦闘ではなくあくまで採掘。
そのため兵装自体はある程度火力の出るものを積んでいたものの、操縦性と速度は低いコルベットで来てしまっていた。
加えて追手の速度が想像の数倍速く、今乗っているコルベットでは出力不足であった。
「速度で完全に負けている……ここで迎え撃つぞ!」
「迎え撃つって、大丈夫なんですか!?」
「わからん!だが、少なくとも先ほどあてたフェーズビームはあいつにいくらか効果があった。やってやれないことはないはずだ!」
コーストにはフリゲート艦、あるいは主力艦を呼び出し地上を焼き払うという奥の手もあるためそこまで詰みに近い状態ではない。
それをしてしまえば宇宙の存在がキヴォトスに完全に露見するため本当に奥の手ではあるのだが。
「砂嵐で視界は最悪だが……これだけデカいと当てやすいな!」
コーストはコルベットの高度を上げつつ、上空から怪物にフェーズビームを浴びせていく。
破壊力を極限まで上げたフェーズビームに、蛇型の怪物も少なくないダメージを負っているようだ。
悶えるようにその身をのたうちまわせる怪物の頭に再び光が宿る。
「またあの光か……だが、頭の方向がわかれば――」
瞬間、極光が怪物の口から拡散するようにあふれ、空間を埋め尽くしていく。
ガガガガ!!
拡散して威力が落ちたとはいえ十分な破壊力を持つその光線がコルベットのディフレクターシールドに接触して引き攣ったような音とともに船内を揺らす。
「うぐぐ……あ、そうだコーストさん、この船で宇宙に逃げることってできないの?」
「それができれば一番良かったんだが……大気圏内ではパルスジャンプが使えないし、通常航行で惑星外に出ようにもあいつの攻撃に背を向けたまま飛ぶのはリスクが高すぎる。それに……」
「それに……何?」
「……確証はないが、アビドスの砂嵐、もしかしたらあいつが原因じゃないかと思っている。」
「!!」
その言葉に全員が驚きの表情を見せる。
「……コーストさんは、何でそう思ったの?」
「まず一つに、砂嵐の発生タイミングがアイツの出現と完全に被っていることだ。それだけなら因果関係が逆ならまだ納得できる話なんだが……二つ目に、気象情報を見る限り、砂嵐の中心がアイツを中心に全く動いていない。自然現象なら、多少なりともズレが出る物だろう。」
「そんな、でもそんなことって……。」
「……ここまでは全部推測でしかないし、仮にあいつが砂嵐を起こせるからと言ってその砂嵐がアビドスを襲ったという確証もない。だが、奴とここで戦う理由にはなるだろう?」
コーストの言葉に全員の目が据わった。
「コーストさん、何か、私たちにもできることはない?」
「……甲板から援護射撃を頼めるか?神秘を込めた銃撃ならおそらくアイツにも効果があるだろう。」
「ん、分かった。」
「ありがとう……しかし、それでも向こうとこちらでは耐久力に差がありすぎる。持久戦に持ち込まれるとだいぶ厳しい……何か決定打があればいいんだが……。」
「……コーストさん。私に一つ考えがあります。」
「アヤネ?何かいい案があるのか?」
「はい。作戦はひとつ。フェーズビームをひたすら地面に向けて照射することです。」
「何?……いや、なるほど。しかし、それは賭けにならないか?」
「でも、このままではどちらにしろジリ貧でしょう?」
「……そうだな。やるだけやってみよう。試す価値はある。」
コーストは高高度からフェーズビームを地面に照射させていく。
目標は今まさに怪物が陣取っている地面だ。
怪物の側面を通り抜けながら地面をえぐり、上方ハッチから顔を出すシロコやセリカが神秘を込めた銃弾で攻撃も並行して行う。
そうやって地表への攻撃を続けていると不意に地面が光ったのが見えた。
「気のせいか?……いや、高度を上げるぞ、掴まっていろ!」
高度を上げるコルベットに怪物はその頭を向け光線の射撃準備に入る。
しかし、自分で起こした砂嵐も相まって、自分の足元のことには気づくことができなかった。
ドゴオオオオォォン!!!
凄まじい破壊音と高熱が怪物の直下ではじける。
フェーズビームに引火した花火が一気にその火力を解き放ったのだ。
"グオオオォォォォン!!"
何かの叫び声が聞こえる。
それとともにコーストのヘルメットに通知が入る。
〈気象情報:嵐が去りました〉
その通知の通り、巻き上げられていた砂は徐々に薄まっていき、元の砂漠の光景に戻っていった。
「ん、やった?」
「シロコ先輩、余計なこと言わないで!」
シロコの発言が悪かったのか、視界が晴れた砂漠にうごめく姿が見える。
「あれだけの爆発にも耐えるのか……やはり化け物だな。」
「シロコ先輩が余計なこと言うから!」
「ん、ごめん……。」
シロコがシュンとしてしまっている。
これはシロコが悪いのかどうなのか。
「やっとその姿を見せたか……じゃあ、第二ラウンドってとこだな。」
"グオオオォォォォン!!"
コーストの言葉に呼応したのか、目の前の"それ"は再び雄たけびを上げる。
それは、機械の体の知恵の蛇、奇跡を預言する三番目の預言者――
subnauticaです
二章四話目でビナー……急展開すぎるか?
まあ、書いてて楽しいからいいか。
というわけで次回本格的ビナー戦。
では、また次回お会いしましょう。
ノーマンズスカイをやったことが
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ある
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ない