blue sky archive   作:subnautica

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30 コンパニオン:ビナー

 

動きを止めたビナーの前でホシノたちは警戒を続ける。

 

「コーストさんが何かしたみたいだけど……大丈夫なの?」

「ああ、こいつはもう俺たちに危害を与えてくることはないはずだ。」

 

上空からジェットパックを使って降りてきたコーストがそう答えた。

 

「コーストさん、一体何をしたの?」

「まあ、簡単に言えばエサを使ってあいつを手懐けたってところだな。」

「え、そんなことできる物なの?どう見てもあいつ機械なんだけど……。」

「説明は難しいんだが……まあ、そういうものだと思っておいてくれ。」

「ええ……まあ、実際攻撃してこないし……いいのかな?」

「コーストさんのやることですし……。」

「ん、何をやっても不思議じゃない。」

「あまり気にしないほうがいいよ~。」

 

ホシノは達観したような目をしている。

コーストに振り回された歴が一番長いこともあってだいぶ慣れたようだ。

 

「さて、落ち着いたはいいものの、こいつはどうしたものか……。」

 

BINAH:-{{スーツの人間、聞こえているか?}}-

 

「!!」

 

コーストがバイザーの端に映るそのメッセージに気づく。

 

「どうしたの、コーストさん?」

「ああ、いや、ビナーからチャットが送られてきてな……。」

「うそ、こいつって話せたの!?」

 

セリカが見たことないような顔をしている。

 

「確かに、コンパニオンはメッセージを送ってくることもあるが……こいつの場合はどうなんだ?」

 

コーストはとりあえず返信を返してみることにした。

 

coast:やあ、ビナー。とりあえずは鉾を収める気になってくれたということでいいか?

BINAH:-{{ああ。急速に戦意が消えたというか……争いを続ける意思はない。}}-

coast:そうか。それは良かった。早速だが、お前が何者なのか、教えてくれる気はあるか?

BINAH:-{{私は……デカグラマトン、第三預言者(セフィラ)ビナー、そう言った存在であったはずだ。}}-

coast:デカグラマトン?なんだそれは?

BINAH:-{{奇跡を預言する十体の預言者……そんな役割を与えられたことは記録している。}}-

coast:良く分からないな……。お前が誰に作られたとか、何を目的に生み出されたとか、そういうことは覚えていないのか?

BINAH:-{{分からない……なぜ、この砂漠をさまよっていたのか、何のために生み出されたのか、そう言った記録は一切残っていない……ただ、砂漠をさまよう中、デカグラマトンと通信がつながり、その役割を与えられたことは覚えられている。}}-

coast:デカグラマトン……先生なら知っていたりするのか?まあいい、一つ聞こう。このアビドスで度々砂嵐を起こしていたのはお前か?

BINAH:ああ、おそらくその通りだろう……。

coast:……何でさっきから煮え切らない回答ばかりなんだ?

BINAH:コースト、お前からあの大量のエネルギー源を投与されたと同時に思考回路を支配していた破壊衝動が一気に鎮静化された……私自身、なぜあのような行動を行っていたのか、分からないのだ……。

 

クリーチャーペレットやイオン電池*1は動物に与えることで強制的に対象の精神を鎮静化する効力がある。ビナーもその影響を受けたのだろう。

そして、その言葉を聞いてコーストはこれ以上はあまり有益な情報は得られなさそうだと感じた。

 

coast:聞きたいことはとりあえず聞けた。砂嵐を起こさなければ砂漠で好きにしてもらって構わない。一度、自分のことをしっかり見つめ返してみたらどうだ?

BINAH:……そうさせてもらおう。

 

ビナーはチャットでそう告げるとゆっくりと砂の中へと戻っていった。

その姿を見てコーストも一息つく。

ちなみにここまで全部文面でのやり取りのため、ホシノたちは何があったのか何一つ理解できなかった。

 

「えっと……結局なんだって?」

「……ビナーはデカグラマトンの第三預言者(セフィラ)で、砂嵐を起こした理由は覚えてないらしい。」

「話を聞いて余計にわからなくなったんだけど?」

 

ホシノがジト目を向けてくる。そんな目をされても分からないものは分からない。

 

「気になることはいろいろあるが……いったんアビドスに戻るか。お前たちも疲れただろう?」

「確かに大戦闘で気を張りましたけど……せっかくですし、ちょっと遊んでから帰りませんか☆」

 

ノノミが背後に広がる水の張られた大オアシスを背に宣言する。

 

「そういえば水が噴き出してたわね。これが、アビドス大オアシス……」

「ん、とても奇麗。」

「そうだね~。まさか、おじさんが生きてるうちにこんな光景が見れるなんて……。」

 

その時、上空からアヤネ操るコルベットも降りてきた。

 

「皆さん、ビナーはどこかへ消えていったようですが、大丈夫ですか!」

「安心してよアヤネちゃん。この通り、みんなピンピンしてるからさ。」

「ホシノぢゃ~ん!!」

 

アヤネの背後から緑色の髪がホシノに突進していく。

 

「無事でよかったよぉ~!」

「ちょ、先輩くっつきすぎですって……。」

 

ホシノは口では抵抗するが、がっつり抱き着かれ胸に溺れるその顔はだいぶ幸せそうであった。

そしてユメはホシノを抱きしめながら背後に広がるオアシスを目に収める。

 

「わあ……。オアシスが!」

 

ユメが腕の力を強める。

 

「あの、ユメ先輩?ちょっと力がつよ――」

「ホシノちゃん!オアシスが復活してるよ!やったー!!」

「……ユメ、一度ホシノを放してやれ。」

 

半ばグロッキーになっているホシノを見てコーストがユメに言う。

 

「あ、ごめんねホシノちゃん!嬉しくなっちゃって……。」

「うへ~……。だ、大丈夫ですよユメ先輩……。」

「まあ、喜ぶのもわかるぞ?オアシスが復活するなんて俺も予想外だったしな。」

「そうですよ!もしかしたら、また、アビドス砂祭りが開けるかも……!」

「それは無理じゃないでしょうか。だって、ここって名義上はカイザーの土地でしょうし……。」

 

その言葉に、忘れていたとばかりにユメが絶望したような表情になる。

 

「ひぃん……。」

「ああ、その点は安心してくれ。」

 

コーストの言葉に全員が振り返る。

 

「コーストさん?何か解決策があるんですか?」

「ああ。今、ここは俺の土地だからな。」

「うぇ!?ど、どういうことですか!?」

「実はな、この前砂祭りの話をした後にカイザーから俺の名義でいくつかアビドスの土地を買い戻していたんだ。……まあ、向こうはだいぶ吹っ掛けてきて法外な値段で断らせようとしてきたが、こっちには大量の金があるからな。即金で購入してきた。」

 

コーストの言う通りカイザーの不動産屋はは土地の販売を渋って相場の数倍の価格の契約書を持ち出し、"これだけ払えるなら売ってもいいですよ"なんて言って断らせようとしていたのだが、ストックしてた大量の貴金属を売っぱらった余剰分の金で一括で支払って、すべてではないもののいくつかのアビドスの土地の買戻しを行っていたのである。

 

「いつの間にそんなことを……ということは!」

「とはいえ、砂祭りをやるには人員も物資もいろいろ足りていないが……ま、お前たちの頑張り次第ってところだな。」

「そうですか……なら、頑張らないといけませんね!」

「ああ。アビドスを立て直すチャンスだからな。気張ってやってくれ。俺も手伝いはするさ。」

「よおし、みんな、アビドス対策委員会の次の目標は"アビドス砂祭りの復活!"頑張るよ~!」

「「「「「お~!!」」」」」

 

全員で気合を入れた後、少しオアシスで遊んでから高校へと戻った。

新たな希望を手に入れた彼女たちはとても輝いて見えた。

 

 

 

 

 

数時間後……

 

「アビドスの問題はとりあえずいいだろう。問題は……。」

 

オアシスからの帰り道、疲れからか眠ってしまった皆の乗るコルベットを運転するコーストの頭の中にあるのは、ビナーの口から出た"デカグラマトン"について。

 

「"奇跡を預言する十体の預言者"ね、あんなのが後九体もいるのか?どうなってるんだキヴォトスは……。」

 

自らの持つイカれた技術のことを棚に上げてコーストはそんなことをつぶやく。

そして、ため息をつきながらコルベットの通信機能を起動した。

通信の相手は"先生"だ。

 

「先生?少し聞きたいことがあるんだが……。」

 

暗くなった砂漠を進むコルベットの中で、コーストは通話をしながら一人嫌な予感を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クックックッ……まさかあの知恵の蛇を懐柔してしまうとは……あなたは私にいつも面白いものを見せてくれますね。ああ、ベアトリーチェ、彼が協力するであろう先生と敵対するあなたが、気の毒でなりませんよ。クックックッ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――翌日、アビドス高校

 

栄養プロセッサでアノマラスドーナツを量産しているコーストの下に先生からの連絡が入った。

 

『ちょっといいかな、コースト。』

『ああ、先生か。別に問題ないが……もしかして、昨日話した件について、何か分かったのか?』

『うん。そのことなんだけど……実は特異現象捜査部ってところで君が話していたのと同じ存在を耳にしたことがあってね。彼女たちにその話をしたところ、ぜひ直接会って話をしたいって言われて……』

『待て、直接会って?またミレニアムに行かなければならないのか!?』

 

前回訪問したときは散々な目にあった。

またあの魔窟に入っていかなければならないのかと思うとコーストはげんなりした顔になる。

 

『あ~そういえば前来たときはすごい追いかけられてたっけ……それなら、入口の所に迎えの人を出してくれるようにお願いしてみるよ。そしたらいくらか抑えられるかもしれないし……。』

『そんなんで本当に大丈夫なのか?』

『一応彼女はミレニアムでそれなりの立ち位置にいる娘だからね。表立って手を出す娘は減るんじゃないかな?』

『……頼むぞ。』

 

コーストは通信を切って出発の準備を始める。

 

「あれ、コーストさんどこかに出かけるんですか?」

「またミレニアムに行かなくちゃならなくてな。……はあ、気が滅入る。」

「あはは……その、頑張ってくださいね。」

 

廊下を掃除していたノノミに苦笑いで見送られつつ、コーストはミレニアムへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ミレニアム学園、校門

 

「お久しぶりです。前回はご迷惑をおかけしてすみません……。」

 

校門前に立っていたのは先日もゲーム開発部で見かけたセミナーの会計――早瀬ユウカである。

 

「まあ、あんたが俺に直接迷惑をかけたわけでもないからいいさ……ただ、先生がいるところまではなるべくトラブルがないように頼むぞ。」

「ええ、それはもちろんで「あ!野生のコーストさんに遭遇しました!!」」

 

いざ行こうとしたその時、横から出てきたアリスとエンカウントした。

コーストは微妙に頭が痛そうな表情になる。

 

「あれ、アリスちゃんじゃない。何してるの?」

「モモイからのお使いクエストを受けていました!二人は何をしているのですか?」

「ああ、先生のところまでなるべく騒ぎを起こさず移動したくてな……お願いだから俺がここにいることはあまり言いふらさないでくれるか?」

「う~ん……つまり、ユウカはコーストさんの護衛クエストを受けているわけですね!」

「ま、まあ、あながち間違いではないのかしら?」

「決めました!アリスもコーストさんの護衛になります!今だけ傭兵にジョブチェンジです!」

 

突然変なことを言い出したアリスにコーストが焦る。

 

「(おい!どうするんだ!早速面倒なことになったぞ!)」

「(わ、私もここでアリスちゃんと会うのは想定外で……。)」

 

「ダメ、ですか?」

 

アリスの上目遣いにコーストより先にユウカが折れた。

 

「コーストさんの迷惑にならないようにするのよ。」

「おい。」

「わあ!ありがとうございます!」

「はあ……とりあえずあの追っかけ共が来なければそれでいいか。」

 

こうしてアリスとユウカ同伴の下特異現象捜査部までの旅が始まった。

 

*1
クリーチャーペレットは通常の生物、イオン電池は機械生物に与えると一時的に有効状態になることができ、騎乗したり、ミルクをとったり、コンパニオンに迎え入れたりすることが可能になる。




subnauticaです

ビナーとやり合ったことで特異現象捜査部から呼び出しを食らいました。
魔窟に再び踏み入るコーストはどうなるのか……


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この話が面白いと感じていただけたなら、お気に入り登録、高評価、感想などいただけたら幸いです。作者のモチベが非常に上がります。

では、また次回お会いしましょう。

ノーマンズスカイをやったことが

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