ある日、先生がアビドスに遊びに来ていた。
「……コースト、なんかアビドス高校の見た目が来るたびにいかつくなっている気がするのは気のせいかい?」
先生の目に映るのは当初より城塞感の増したアビドス高校。
校舎そのものへの改造は少ないが、物見櫓みたいな塔が立っていたりと、籠城の準備でもしているかのような外観になっていた。
「あ~、なんか作ってるとつい楽しくなってしまってな。まあ、防御力が強くなる分にはいい事だろう?」
「まあ、安全性の面で言うならいいのかもしれないけど。」
先生が差し出されたほろ苦ココアを啜りながらそうつぶやく。
「そういえば先生の家ってどこにあるんだ?どっかの学園の自治区に置くわけにもいかないだろうし、やっぱりDUのどこかに?」
「家……確かにリンちゃんが用意してくれたマンションはあることにはあるんだけど、初日に泊まってからほとんど帰ってないかな……。」
先生からさらっと衝撃の事実が挙げられる。
「え、なぜ?」
「いや~それがシャーレの仕事量がちょっと多すぎてね。基本的に仕事に疲れたら机で寝て夜を過ごすみたいな生活をしてるからうちに帰る暇が全くなくてね……。」
「おい……さすがに不健康が過ぎないか?というかそうでもしないと仕事が回らないって、組織としてどうなんだ?」
「あはは……だから、シャーレに入ってくれる人がほかにもいればいいんだけどなー。」
先生が仲間になってほしそうにこちらをチラチラとみている。
「うへ~先生、引き抜きはダメだよ~。コーストさんは私たちの物なんだから。」
ホシノたちアビドス組が外の仕事から帰ってきた。
「ごめんごめん。みんなからコーストを取り上げるようなことはしないよ。」
「まあ、でも確かに大変そうではあるな。そうだ、先生。ちょっとシャーレの様子を見に行かせてもらっても大丈夫か?」
「え!もしかして本当に手伝いに……。」
先生がキラキラした目でコーストを見つめる。
「いや、先生がシャーレの部屋でも快適に過ごせるように改装してやろうかと思ってな。」
「そっちの心配かぁ……。」
先生は項垂れた。
「……でも確かにコーストをシャーレの部屋に呼んだことはなかったね。今からきてみるかい?」
「なら、お邪魔させてもらおうか。あ、お前たちはどうする?ついてくるか?」
「う~ん……私たちはまだ仕事が完全には終わってないので遠慮しておきますね。」
「そうだねぇ。今回は二人で楽しんできなよ。」
「別に観光に行くわけではないが……なら、留守番頼むぞ。」
「うへ~い。」
そしてコーストは宇宙船を呼び出し、先生とともにDU地区へと向かった。
「あそこのヘリポートは使って大丈夫か?」
「うん。そこに停めて。」
コーストは宇宙船を近場のヘリポートに停めた。
「ここがシャーレのあるビルか……デカいな。」
「そうだね。シャーレの部室以外にも射撃場だったり、カフェだったり、体育館だったりいろんなものが置いてあるから……。」
「複合施設って感じなわけだな。」
先生と話しながらビルの中を歩いていたら、前方に"連邦捜査部S.C.H.A.L.E"の看板がついた部屋が見えてきた。
「ここが普段私が仕事をしている部屋だよ。さ、入って。」
「ああ、お邪魔するぞ――」
「せ・ん・せ・い!何ですかこの領収書の束は!趣味に関する出費はほどほどにとあれほど言ったじゃないですか!」
扉の向こうにはなぜか見覚えのあるふと……ミレニアムのセミナーであるユウカがいた。
「先生?なぜこいつがここにいるんだ?」
「あ~、シャーレには当番制があって、生徒が交代で私の手伝いに来てくれているんだよ。」
「あら、コーストさんも来ていらしたんですね。あなたからも言ってください!先生の金銭管理について!」
「ええ……。」
コーストは何と言って返せばいいのかわからず、そんな言葉しか返せなかった。
「ま、まあまあ、そのあたりは今度からちゃんと気を付けるから、ね?」
「前回も同じこと言ってたじゃないですか!」
「……ちなみに先生、そこまで言われるって、一体何を買ってるんだ?」
「え~っと、それは……。」
「これです!」
「ア!待ってユウカ!」
ユウカが手に持った領収書をコーストの前に突きつける。
「カイテンジャーロボDX、ゲームの課金、タイツ……タイツ?」
「あ~それは、チナツにプレゼントしようかと……。」
「お前は何を考えているんだ……。」
コーストが引いた目を向けた。
「そ、そんな目で見ないで……ほ、ほら!シャーレの内装を整えてくれるんでしょ!どんな風にカスタマイズしてくれるんだい?」
「露骨な話題転換だな。」
「そうですよ先生。まだ私の話は終わってません。」
「ひぃん……。」
先生はユメのような鳴き声を漏らすが、当然逃がしてはもらえず、しばらくユウカによる先生への説教が続いた。
「で、結局先生はこの部屋に何が欲しいんだ?」
「はい、そうですね……。」
先生はすっかり憔悴してしまっているが、とりあえず本題に戻って部屋の改装を始めることにした。
「もうちょっと収納が欲しいかな。生徒からの贈り物だったりも結構あるしね。」
「あの床にあふれてるやつか?」
「いや、あれは私の趣味で……。」
二人から先生にしら~っとした視線が飛ぶ。
「まあ、その辺はとりあえず置いておこう。この辺にロッカーと収納をいくつか置いておくか。」
コーストは建築モードを呼び出し、収納を形成した。
「え、今のどうやったんですか!?」
当たり前だがミレニアムの生徒であるユウカは食いつく。
「何って……元素を構造物の形にプリントしただけだが?」
「そんな当たり前みたいに言わないでくださいよ!いったいどんな原理で……。」
ユウカが思考の海にはまっている間に建築を進めていく。
「椅子って、もっといい感じのあったりしない?」
「これならどうだ?」
「おお、これすごい快適だね!」
「仮眠室のベッドはどう?」
「ほれ。」
「おお、柔らかい!これならいつもより短い睡眠時間でも疲れが減るかも!」
「寝ろよ。」
「コースト!これはどう!」
「はいはい……。」
……
しばらくした後、先生好みの部屋に改装が完了し、部屋の中はいくらかすっきりした印象になった。
「いや~リフォームって、楽しいものだね!」
「私が知るリフォームとはだいぶ違いますけど……というか、何度見てもその装置の原理が全く分かりません。……あの、技術提供とかって……」
ユウカが懇願するような目でこちらを見てくる。
「あんまりそういうことはしたくないが……まあ、俺の知識も結局は誰かから教えてもらったものだしな。一つ、交換条件としてなら構わない。」
「え!本当ですか!ですが、条件とはいったい……。」
「そうだな、こいつの解析を頼みたい。」
コーストがユウカに見せたのは以前4546Bで拾った緑色の物体、イオンキューブ――その破片である。
「これは……いったい何でしょう。」
「俺からしても正体不明の物体でな。これを解析できるだけの腕があるなら、見返りとして何か技術提供をしてやろう。」
「……分かりました。やって見せます。」
ユウカはその物体を大事に持ってシャーレを後にした。
「コースト、あれは何なの?」
「この前ホシノと遊びに行った惑星で偶然見つけたものでな。何かのエネルギー源になりそうという以外は特に調べていない。」
「そう……でも、技術提供って……」
「宇宙でもあまり危険な用途に使われない技術はいろいろとあるからな。そのうちの何かを渡せばいいかなって感じだ。」
今しがた渡した物体が一番の危険要素ということにはコーストはまだ気づいていなかった。
「じゃあ、ここでの用は大体果たしたし、アビドスに戻るかな。」
「あ、待ってコースト。一つ君に見てもらいたいものがあるんだ。」
そう言って先生がコーストを連れて行ったのはシャーレビルの地下室。
そこに鎮座するクラフトチェンバーである。
「これなんだけど……」
「なんだ、これは?」
「これはクラフトチェンバーと言ってね。簡単に言ってしまえば3Dプリンターみたいなものなんだけど、来歴をだれも知らない、オーパーツみたいなものなんだよね。コーストは見覚えとかあったりしないかな?」
「う~ん……。」
コーストはクラフトチェンバーを見つめる。
「これそのものには見覚えはないが……材質は異星人のモノリスと似ているな……」
「何か分かるかい?」
「俺の知る構造物と関連があるかもしれないが……先生、こいつはどうやって使うんだ?」
「ああ、これはね……」
先生がクラフトチェンバーの仕様を軽く説明する。
「……なるほど。素材を突っ込んだらランダムで何かが生成されると……」
「何を突っ込んでもいいわけじゃなくてこのキーストーンってのが必要みたいだけどね。」
「ちなみにこれで行けたりはしないか?」
コーストは先生にアトランティディウム*1を差し出す。
透明な脳*2も試してみたかったが、さすがに危ない気がしたのでやめておいた。
「これは?」
「もしかしたら使えるかもしれないかなと思ってな。ちょっと使ってみてくれないか?」
先生がアトランティディウムをクラフトチェンバーに突っ込む。
すると、クラフトチェンバーが紫色の光を放ち、バチバチと放電するかのようなエフェクトを出した。
先生が今まで見たことのないクラフトチェンバーの様子に戸惑っていると、しばらくして家具のパッケージが排出された。
New! アトランティディウム精製機x1
「なんか出てきたけど……」
「それは……家具だな。」
「え、この見た目で?」
「ああ、家具だ。」
後日、先生が試しにカフェに置いてみたところ、なんか不気味という生徒たちの声でですぐに撤去されることになった。
「とりあえず分かったのが、この装置は多分異星人の技術を流用しているものだな。それ以上のことは良く分からないし、どういう因果でこの星にたどり着いたのかはわからないが……。」
「なるほど……でも、得体のしれないこれについて少しでもわかることがあってよかったよ。」
「そうか。では、俺はそろそろアビドスに戻r……」
「あなたが、"先生の友人"を名乗るお方ですか?」
コーストは不意に殺意を感じとっさにその場から下がってマルチツールを構えた。
気づけば目の前には狐面を被った正体不明の生徒がいる。
「誰だお前は。どうやってここに侵入を……」
「あれ、ワカモ!どうしてここに?」
「あなた様!」
殺意が消える。
どうやら二人は知り合いのようだ。
「なんだ、知り合いなのか。なら問題ないか……」
「いえ、問題大ありです。あなたが先生に悪影響をもたらす存在でないか。それを見極めるために来たのですから。」
再びコーストに絶大な殺意が向けられる。とんだとばっちりだ。
「……さっきお前自身が口にしたろう。俺と先生は友人だ。危害を与える気なんて毛頭ない。というかお前は先生とどういう関係にあるんだ。……いや待て、ワカモという名、聞き覚えがある。それにその狐面、"七囚人"か!」
コーストが改めて警戒心をあらわにした。
このタイミングで七囚人が一人と相対するとは微塵も想定していなかった。
二人そろって殺気立って相手を警戒していると、先生が二人を見て口を挟んだ。
「お、落ち着いて二人とも……コーストは良い人だし、ワカモもほんとはいい子なんだよ!」
「脱獄犯がいい子っていうのは無理があるんじゃないか、先生?」
「いやまあ、それはそうなんだけど、根はいい子だから!」
「そんなに褒められると照れてしまいますわ、先生♡」
ワカモが先生の言葉にクネクネし始めるのを見て、コーストはなんだか気が白けてしまった。
先生とのかかわりが気になったコーストは、先生からワカモとの出会いについて説明を受けた。
「……なんだ、つまりお前は先生が心配だったから俺の真意が知りたかったと、そう言うことか?」
「その解釈で構いませんわ。先生の障害となりうる一切を排除するのがわたくしの役目ですもの!」
「……そうなのか?」
「いや、初耳だけど……。」
向こうとこちらで幾らか認識の齟齬があるようだ。
「まあ、いいでしょう。見たところあなたは先生に危害を与えるような人物ではない様子。あなたのことは認めて差し上げましょう。」
「いったい何の認可なんだ……。」
「あ、ワカモ。遊びたくなったらいつでもうちに来てもいいからね。」
「はい♡」
ワカモは先生の言葉にそう返事を返して去っていった。
「……今日一日で大分イベントが多かったな。先生と行動しているといつも大ごとになるような気がするぞ。」
「それはコーストも同じじゃないかい?」
「……否定はできないな。」
ワカモが去ったシャーレの地下室で、二人して自らのトラブル体質にため息をついた。
subnauticaです。
今回は閑話、シャーレを改装する話ですね。
実際先生は家にどれくらい帰れているのだろうか……。
次回は本編でまたアビドスに戻るかなって感じです。
では、また次回お会いしましょう。
ノーマンズスカイをやったことが
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ある
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ない