「おりゃあーっ!先生覚悟して!今から、とっておきの必殺技……モモイスプラッシュを見せてあげるんだから!」
ここはゲーム開発部の部室。
殺人的な激務に追われる先生は珍しくできた休暇にゲーム開発部からの呼び出しをもらって部室に遊びに来ていた。
貴重な休日をも生徒のために使うというのは先生の鑑と言えるだろう。
バキッ!ドカッ!ズバンッ!!
WINNER prayer teacher!!
気づいたら攻めに入っていたはずのモモイは怒涛のコンボ返しでボコボコにされ、屍をさらしていた。
「うわーん!なんで。私のコンボが当たらないの!!」
モモイはコントローラーを片手にさめざめと泣く。
「モモイは焦るとすぐコントローラーをレバガチャするから……。」
「そ、そんなっ!もう私の攻撃パターンを見切ったというの……!」
「ふふ……フ〇ムゲーを愛する私に、そんなコンボは通じないよ!」
「というかお姉ちゃん……先生は今日そのゲームを始めたばかりの初心者って言ってなかった?」
「うっ!ミドリ、あまりそんなつらい現実を突きつけないでよ!」
先生とゲーム開発部たちでワイワイやっていると不意に部室の扉が開く。
「よう、ゲーム開発部……ん?先生、お前もいたのか。」
部室に入ってきたのはアビドスにいるはずのコーストだった。
「あれ、コースト、何でここに?」
「少し、ミレニアムで確かめたいことがあってな。ここに来たのはついでだ。」
「そうなんだ。でも、大丈夫なの?前みたいにまた襲われたりしたら……。」
「安心してくれ。あのセミナーの奴が学校全体に圧をかけてくれたみたいだからな。」
コーストがユウカに技術供与というエサをぶら下げたことで、ユウカがコーストの機嫌を損ねないようにと学校全体にコーストへの接触に対する圧力をかけたのだ。
ユウカはセミナーの会計……要するに学校全体の財布の紐を握っている存在に等しい。
そのため、いくら技術のためと言えども、来期の予算を天秤にかけてもコーストに襲い掛かってくる奴はいなくなったのである。
「ちなみに、先生は何でここに?ゲーム開発部の一件はあれで一区切りついたものだと思っていたが……。」
「ああ、これはただ遊びに来ただけだよ。偶には私も休まないとね。」
「まあ、それもそうだな。それで、ずっと格ゲーを?」
「いや、別に格ゲーのために先生を呼んだわけじゃないです。ほら、お姉ちゃん。」
「え……?あ、そうだった!」
明らかに何かを忘れていたという表情を見せるモモイ。
その反応を見てミドリの目が吊り上がる。
「お姉ちゃん……?」
「だ、大丈夫だから、ちゃんと覚えてるから!今日は、新しいゲームのアイデア山出しをしようと思って先生を呼んだの!」
モモイが両手を広げてそう叫んだ。
「私たちもそろそろ新作を作ろうかという話になりまして。いつまでもさぼっていると、また廃部なんて言われかねませんし……。」
「そう!しかも、普段全然捕まらない先生の手が空いたって聞いたから、これは!と思って呼んだの!」
「確かに、ちょうど手が空いたところだったよ。」
「あ、コーストさん!良ければ、先生と一緒に私たちのアイデア出し、手伝ってくれない?」
「まあ、用はひと段落したから、多少は構わないが……。」
「よし!キヴォトスの貴重な大人二人が協力してくれるなら、成功間違いなしだよ!!」
モモイがニコニコと笑顔を浮かべて喜んでいる。
大分期待が重いような気もするが、まあ楽しそうなのでいいだろう。
「でも、さっきから格ゲーしかしてなくない?」
「あ、それはお姉ちゃんのアイデアなんです。いろんな人気作をプレイして分析したうえでアイデア出しをしていこうってことで。」
「頭に何もない状態でぐるぐる考えたってなにも浮かんでこないでしょ。」
「確かに、一理あるかな。」
「ちなみに、うちの次回作は"まったりスローライフ系ダンジョン探索型RPG"です。」
「……それ、格ゲー要素関係あるの?」
先生がそう聞くと、モモイが何やら不敵な笑みを浮かべ始めた。
「ふっふっふ……見た目で判断しちゃだめだよ、先生!確かに、"まったりスローライフ系ダンジョン探索型RPG"と格ゲーの間には接点があるようには見えないけど……。」
「見えないけど?」
「次のミレニアムプライスを狙うなら、誰も経験をしたことのないようなゲーム体験が必須!つまり、先入観を捨て、あらゆる偏見を乗り越えてこそ、新しい地平線のかなたへと行けるというもの……!」
「まったく違うジャンルのゲームを組み合わせても、意外と面白いゲームになるかもしれませんし。」
「あ!ミドリ!私のセリフを奪わないでよ!」
モモイとミドリがじゃれ合い始める。
「ふふ、みんなゲーム開発に全力なんだね。」
「ん?当然だよ!今度こそちゃんとミレニアムプライスをとるって、みんなで約束したからね。それが、今の私たちに与えられた"クエスト"なんだよ!」
その時、再び部室の扉が勢いよく開けられる。
部室に飛び込んできたのはアリスだ。
「モモイ、ミドリ、先生!……あれ、コーストさんも?と、とにかく非常事態です!」
「あれ、こんにちは、アリス。何かあったの?」
「ユズが、ついにオンライン十連勝を超えました!」
「え、嘘!」
「あの、バランスが終わってるゲームで十連勝!?」
視線の先にはいつになく真剣な表情のユズ。
その周囲には誰も寄せ付けないような鬼気迫るオーラがにじみ出ている。
ロッカーの中で縮こまっていたのがウソみたいだ、とコーストは感じた。
そうこうしているうちにユズが操るキャラクターは相手のキャラクターをかちあげ、勝利のファンファーレが鳴り響いた。
「ふう……。」
「かっこよかったよ、ユズ!」
「ユズちゃんはすごいね!」
「おめでとう、ユズ!」
「アリスは感動しました!さすが伝説の勇者"UZQueen"です!」
アリスが何やら気になる単語を口にした。
「ん?なんだその"UZQueen"ってのは?」
「ふふん!説明しよう!"UZQueen"モードは、特定の状況下で発動するユズのバフスキルだよ!いつもよりちょっと大胆になって、頭の回転は普段の1.5倍、動体視力は2.8倍、弾丸効力は3.1倍に上昇するの!」
「そんな設定、いつの間につけたの?っていうか、その数値、絶対適当でしょ。」
ミドリが呆れた目でモモイを見やる。
「アリス知ってます!こういう時のユズはとっても強いです。アリスにも"UZQueen"モードみたいな……"AliceQueen"モードが欲しいです!」
「おお、私も"SenseiQueen"モードがあれば仕事がはかどるかな……いや、私は少なくともQueenではないか。」
「せ、先生まで……そ、その、あうぅ……!」
褒められなれないユズは部屋の隅で縮こまっている。
ゲームを終えたことで普通のメンタル状態に戻ってしまったようだ。
「ユズの活躍を見ていたら、アリスもやる気が出てきました!次は、アリスの番です!」
その声とともにアリスはコントローラーを握りモニターの前に座る。
皆に見守られながらアリスの格ゲーの挑戦が始まった。
「モモイ相手に鍛えた格ゲーの実力、見せてあげます!やあ!」
アリスは猛攻を繰り出すものの、その攻撃はすべて回避されてしまう。
最初はみんなも相手がかなりやり手のプレイヤーなのかと思っていたが、途中からその雲行きが怪しくなってきた。
「あ、相手のキャラクターが消えた!?」
「今度は後ろに!?」
以降も判定が消失したり、巨大化したりと通常ではありえない挙動を見せる相手の行動にアリスは翻弄され、最終的にアリスは倒されてしまった。
「あ、アリス、負けてしまいました……。」
「ちょ……これ絶対チート使ってるでしょ!卑怯者め!」
「ひどい……。こんな勝ち方して、楽しいのかな……。」
モモイとミドリが先の酷い戦いに憤慨していると相手から再戦の誘いが来た。
「再戦って……絶対またチート使う気でしょ!」
「……どうしましょう……。」
アリスはすでに泣きそうな表情になってしまっていた。
「相手がチートを使ってるとなると、勝つのは難しいかもね。」
「ああ、こういった手合いは無視するのが一番だろう。忘れてしまったほうがいい。」
「――まって。」
再戦を断ろうとしたとき、ユズが口を挟む。
「まだ、方法はあるよ。」
ユズが先ほどのような真剣な表情になってそう言った。
「何か策があるのか?」
「……うん。私に任せて。ら、乱入するね。」
アリスの代わりにユズがモニターの前に座る。
そして、チーターとの再戦が始まった。
対戦が始まるや否や、相手はまた透明化のチートを使い、姿をくらませる。
「あ!また透明になるチートを使ってる!」
「大丈夫。さっき見てた限りだと、姿は透明になるけど、影はそのままだったから……」
そう言ってユズはキャラクターを操作して透明になっているはずの相手に攻撃を当てていく。
しかし、何回か攻撃を当ててからは相手のキャラクターに一切ダメージが入らなくなってしまった。
「今度は攻撃を当てているのにダメージが入ってない……。」
「多分これは当たり判定を調整するチート。それなら、当たり判定の関係ない確定ダメージを与えればいい。」
ユズは操作キャラが持っているスキルを使って相手に確定ダメージを与え続ける。
先ほどの戦いとは明らかに動きが異なる相手に焦りを感じたのか、相手は先ほどとは打って変わって猛攻撃を始める。
見たところスキルのクールタイムを減らすようなチートも使っているようだ。
「相手が猛攻を……。」
「大丈夫。端でガードしたまま、フレームを読んで……」
ユズのキャラクターはガード状態のまま待機を続け、機械を待つ。
そして、相手の攻撃の瞬間に後ろへとジャンプして強キックを繰り出した。
すると、相手のキャラクターはダウン状態となって無防備な姿をさらす。
「相手がダウン状態になったよ!」
「そう、こうやって相手の弱点を一つ一つ突いていけば……勝てるよ!」
ユズはダウン状態の相手キャラに連撃を食らわせ、一息のうちに相手をノックアウトさせた。
WINNER prayer UZQueen!!
「ふう……これで勝った、よね?」
勝利画面を前に微笑むユズ。
そこにはどこか強者の余裕のような物が感じ取れた。
「すごい……これが"UZQueen"……。」
「ゲームにはあまり詳しくないが……これは確かにすごいな。」
「すごい!本当にすごいよユズ!」
「はい!アリスも夢中で見守っていました!」
「相手がいくらチートを使ってきても……私たちはハメ技がある、ってことだね。」
皆でユズのことを称賛する。
明らかなチート使いを己の技量だけでねじ伏せたユズの姿は皆の目にとってもカッコよく映った。
「う、うん……使いすぎるとゲームが楽しくなくなっちゃうし、友達同士でやるとケンカになっちゃったりするけど……今回は相手がチートを使ってたわけだし、いいかなって。……これも、ゲームの要素の一つなわけだし。」
「ハメ技もゲーム要素の一つ。アリス、理解しました!」
「……もしかしたら、再戦するときにはハメ技を無効化するようなチートを使ってくるかもしれないけど……でも、戦えば勝てるよ。うん、私たちは……ゲーマーだから。」
ユズは恥ずかしげではあったが、自信をもってそう告げた。
「ユズは本当にすごいよ。私には真似できないや。」
「先生まで、そんな……大したことではないですよ。」
「いや~それにしても、最後に勝ててすっきりした!」
「そうだね。じゃあ、分析もできたことだし、お姉ちゃん、企画会議を始めるよ。」
「ん?企画会議?何の?」
モモイはキョトンとした表情を見せる。
そして、その反応がミドリの怒りに再び火をつけた。
「おね~ちゃ~ん!!」
目を吊り上げ、怒りの声を上げるミドリ。
その後ろには炎が見えるかのようだ。
「あ、そ、そうだったね!企画会議!も、もちろんやるってば!」
怒るミドリをなだめつつ新作ゲームのアイデア出しを進める。
あれやこれやと話し合ったが、最終的にはモモイとミドリで意見の対立が平行線となり、対戦ゲームで白黒はっきりつけることにしたようだ。
「なんか、これ以上はしばらく話が進まなそうだな。じゃ、俺はそろそろアビドスに戻るとしよう。」
「あ。もう帰るの?またね、コースト。」
「はい!今日はありがとうございました、コーストさん!」
「その……あ、ありがとうございます!」
「俺は今日ほとんど何もしていない気がするが……まあいいや。またな。」
コーストはそう言ってゲーム開発部の部室を後にした。
ミレニアムからの帰り道……
「……少なくともミレニアムの校舎区域の広域スキャンではヒマリの反応はなかった。ヒマリはそこまで自由人というわけでもないし、後輩に何も言わずに勝手に姿を消すとも考えずらい。それもデカグラマトン関連で何かと大変な時期だ。いったいヒマリの身に何が……。」
コーストは過去のセリカの一件を思い出しつつ、これ以上手掛かりが出ないようなら先生に頼ることも視野に入れて、有事に備えて準備を進めることを決めた。
subnauticaです
遂に、私も先生に就任することになりました!
さすがにこれだけ話を書いておいてプレイしないのもどうなのかと思いまして……
これからはノマスカプレイヤーとブルアカプレイヤーの両方の視点からで話をかけるでしょう。
なんかアドバイスとかあれば感想と一緒にでも書いてくれると幸いです。
本編のほうについてですが、ノーマンズスカイの宇宙にはホロアリーナ以外に何かゲームとかあるんですかね?
娯楽の少なそうな宇宙と思っているのは自分だけなのか……。
ここまで読んで面白いと思ってくださった方は是非、お気に入り登録、感想、高評価などなどよろしくお願いします。筆者の励みになります。
では、また次回お会いしましょう。
ノーマンズスカイをやったことが
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ある
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ない