モモイたちとゲームで遊んでから数日後のこと、先生は今度はヴェリタスに呼び出しをもらっていた。
「今日はどうしたの?」
「先生聞いて!"世紀の大発見"があって!それも、キヴォトスを揺るがす大発見かもしれないの!」
マキが興奮した口調で通信越しにそう語る。
「歴史的な発見?いったい何を見つけたの?」
「マキ、さすがにその言い方は大袈裟です。変わったものなのは認めますが……。」
「ハレの言う通りです。正体がわからないからと言って大発見は少し言いすぎです。」
「も~!皆もう少しロマンを持ったほうがいいんじゃないの?いろんな人に聞いても見たことないって言ってたんだしさ。」
「マキの言い分も一理ありますが……。」
どうやら見つけたものの詳細は発見したヴェリタス自身良く分かっていないようだ。
「結局、何が見つかったの?」
「う~ん……言葉だと説明しづらい。」
「今まで見たことないような正体不明の物体で……私たちにも判断がつけづらいので先生にも見てもらいたいと思って。」
「皆が見てもわからないものを私が見て、何か役に立てるかな?」
先生自身、歴史系も機械工学系の知識も全く自信がなかった。
「いや、心当たりがないか見に来てくれるだけでいいんだよ。ダメかな?」
「そう言うことなら、大丈夫だよ。」
先生はヴェリタスの招待を受け入れた。
「じゃあ、私たちは部室で待ってるから。」
「やったー!先生来るならパーティーしようよ!」
「はい。ピザを注文しましょう。あ、それと先生、私から先生に個人的にプレゼントが――」
ピッ
コタマが何か言い切る前に先生は通信を切った。
プレゼントがどうとか言っていたが盗聴器が入っているのは目に見えている。
コタマの悪癖はどうにかならないものかと考えつつ、先生は準備をしてミレニアムへと向かった。
――ミレニアム・ヴェリタス部室前
「あ、アリス、先生を発見しました!」
部室前に到着した先生が最初に遭遇したのはまさかのアリスであった。
そのそばにはモモイ、ミドリ、ユズとゲーム開発部のメンバーが勢ぞろいしている。
「あれ、先生も来たの?」
「こ、こんにちは……。」
「やっほー!先生!……どうしてここに?」
「やほ。ヴェリタスの皆に呼ばれてね。もしかして、ゲーム開発部も呼ばれたの?」
ゲーム開発部の面々を見回しながら先生はそう聞いた。
正直、今回の件にあまり関わりがあるようには思えなかったからだ。
「そうなんだよ!マキがなんか面白いものがあるから見に来ない?って!」
「うん。もしかしたら何かインスピレーションがもらえるかもしれないし。」
「重要なイベントの予感がするので今日はユズもいます!」
「はい……いいアイデアにつながるなら……でも、ここまで来るのは、ちょっと……。」
「(確かに、ユズが部室の外に出てることってほとんどないもんな……。)」
出不精を極めているユズがここまで来ているのはだいぶ勇気を振り絞った結果なのだろう。
「ほら、あとちょっとだから頑張って、ユズ!」
「うん、頑張って!」
「ユズが倒れないように、アリスがしっかり支えておきます!」
「あ、ありがとう、みんな……。」
皆で腰が抜けそうなユズを支えてヴェリタスの部室の中に入った。
「お、ちょうど間に合ったみたいだね。」
中に入るとハレ含むヴェリタスの面々が出迎えてくれた。
「それで、ハレ先輩、例のブツって?」
「ああ、それなら……これだよ。」
そう言ってハレが持ってきたのは球体に紐が生えたような奇妙な形をしたロボットだった。
ぱっと見では何のために使うロボットなのかも良く分からず、これは確かに言葉では説明しづらいと言われたのも納得である。
「これはどこで見つけたの?」
先生は部室に転がる計五体の奇妙なロボットを眺めて質問した。
「全部ミレニアムの学区の郊外で発見されたものです。」
「ほんとはこれだけじゃなくてほかにも二十体以上いたんだけどね。」
「ロボットではあるのだろうけど……でもミレニアムで運用されてるドローンにこんな形状の物は無いし、ちょっと変だよね。」
「そうだね……時間があるときにコーストにも聞いてみようかな?」
「コーストって言うと、セミナーが通知を出してた?」
コーストの名前にハレが反応する。
「ああ、そう言えばそんなことを言ってたっけ。」
「セミナーが外部の人間にここまで気を遣うのはそれこそ先生位なものだ。そのコーストという人物は一体何者なんだ?」
「あ~……、まあ、すごい技術を持ってる人?っていう感じに捉えててもらえたらいいかな。」
ハレの質問に、先生はいまいちどう答えたらよいのかわからず、適当な返ししかすることができなかった。
「……表立って口に出しづらい人物なんだね。まあいい。今はあまり深く聞かないようにしよう。今日の本題はこっちのロボットのほうだからね。」
ハレがそう言って机の上のロボットに目を向けるとアリスがそのロボットをじっと見つめているのが目についた。
「あ……。」
アリスがロボットを見つめて息を漏らす。
「ん?アリス、どしたの?何かあった?」
「アリス……見たことあります。」
「アリスちゃん……?」
「これ、は……。」
瞬間、今まで何をどう弄っても起動しなかったはずのロボットが起動し、その機体に光が灯った。
「うぇっ!?」
「え!なになに!?」
同時に、ミドリがかすかな音を感じた。
「ん?この音……お姉ちゃん、ゲームの音が鳴ってるよ。」
「え?」
ミドリの声にモモイはG.Bibleを持ち出す際にデータが吹っ飛ばされたはずのゲーム機が起動していることに気づく。
「あれ、今まで起動しなかったのに……。」
「ま、まって……なんだかアリスちゃんの様子が、おかしい。」
ユズの声でアリスに目を向けると、アリスは目を閉じて心ここにあらずという感じで立っていた。
しかし、今のアリスからは、得体のしれない雰囲気が漂っていた。
「アリスちゃん……?」
〈私の……私の大切な…………〉
「……起動開始。」
アリスがであったころのような機械的な口調でそうつぶやくと、機能を停止していたはずのロボットがアリスに付き従い始めた。
「わわっ!何で急に動き出すの!コタマ先輩、何かした!?」
「ち、違います、私は何も……。」
「気を付けて。……何か様子がおかしい。」
ハレが警戒の色をあらわにする。
全員がアリスとその周りのロボットの動きに警戒を向ける中、アリスはゆっくりと閉じていた瞳を開く。
その瞳は、いつものようなスカイブルーではなく、深いマゼンタに染まっていた。
「……コードネーム"AL-1S"起動完了。プロトコル"ATRAHASIS"を実行します」
その言葉とともにアリスは背負っていたスーパーノヴァを構え、後ろのロボットとともに攻撃を始めた。
「皆!伏せて!」
「攻撃を開始。」
ドゴオオオオオン!!
スーパーノヴァは遺憾なくその威力を発揮し、ヴェリタスの部室を破壊する。
「な、なんで、どうしてアリスちゃんが私たちを……!」
「……それだけじゃない、停止していたはずのロボットも起動して私たちに攻撃している。早く制圧しないと取り返しのつかないことになるよ!」
ハレが武器を片手にそう告げた。
実際、アリスとそれに付き従うロボットは猛攻を繰り返しており、とても危険な状態だった。
「うう~……ごめん、アリス!」
「ごめんね、アリスちゃん!」
モモイとミドリが瓦礫から飛び出しアリスに攻撃を加える。
しかし、機械の体であるアリスは多少の銃弾は気にも留めていないのか構わずレールガンのチャージを続ける。
「モモイ、ミドリ、次の攻撃が来るよ!」
先生もシッテムの箱の戦闘補助を起動して戦闘指揮を行っていた。
しかし、攻撃の対象がアリスということもあってその顔は苦しげである。
その後も戦闘は続き……ヴェリタスとゲーム開発部は満身創痍になっていた。
もとよりどちらもあまり体を動かすタイプではない部活だ。
機動力でも体力でも完全に後手に回ってしまっていた。
「……有機生命体の生存を確認。プロトコルを再実行します。」
既に部室はボロボロで隠れられる場所もほとんどなくなっている。
ほとんど遮蔽物のない中、アリスのレールガンの砲口は……先生へとむけられた。
「……チャージ完了。」
「ま、待って、アリスちゃんダメ!」
ミドリが慌ててアリスの動きを止めようとするも、確実に間に合わない。
先生も逃げようにも逃げられるような場所が周囲に残っておらず、死を覚悟したその瞬間――
「おい、チビ。そこまでだ。」
超速で何者かの影がアリスに迫り、その体を吹き飛ばした。
そこにいたのはC&Cのリーダーである美甘ネルである。
吹き飛ばされたアリスは瓦礫の上でぐったりとしており、意識を失っているようだ。
「……大人しく寝てろ。」
しかし、アリスを倒してもロボットの動きは止まらず、ネルの周囲にも大量に集まってきていた。
「チッ、こいつら、ここにもいたのか。……おい、行くぞ!」
「はーい!部長!」
「支援する。」
「後方支援はお任せください。」
ネルが声をかけると後ろからC&Cのメンバーが現れ、溢れるロボットをあっという間に殲滅してしまった。
「ふう……大丈夫か、先生?」
「ありがとう、ネル!それに皆も!」
「それだけデカい声が出るなら大丈夫そうだな。……んで、何があったんだ?デカい爆発音がしたから来てみれば、部室もボロボロだし……。」
「それについては――」
「お姉ちゃん……お姉ちゃん!」
「あ、ああ、モ、モモイ……。」
その言葉に先生が振り返る。
「ミドリ、ユズ!どうしたの!」
「先生……お姉ちゃんが……お姉ちゃんが!」
そこには、意識を失い倒れ伏すモモイの姿があった。
アリスの暴走から数日……モモイはあの日急いでシャーレの医務室に連れて行ったものの、いまだ意識が目覚めていない。
ミレニアムの戦力でもかなりの上澄みであるアスナが体を動かせなくなるほどのダメージを与えるアリスのレールガン、それをまともに食らってしまったのだから無理もないだろう。
幸い命のほうには別状はなかったが、いつ目覚めるのかはまだ分からないそうだ。
そして、そんな暴走を起こしてしまったアリスのほうだが……。
「あ……先生……。」
先生はゲーム開発部の部室の前に来ていた。
部室の前にはミドリとユズもいる。
「……アリスはどうしたの?」
「その、アリスちゃんは、まだ……。」
「……部室から、出てきません。」
「……そっか。」
アリスは確かにあの後元に戻ったものの、自分がしでかしてしまったこと、モモイの現状を知ってしまったことで完全に塞ぎ込んでしまっていた。
ゲーム開発部の間に入ってしまった罅はいまだ元には戻っていない。
「あれから何度も呼び掛けてみてはいるんですが……どうにも……。」
「こんな時、どうしたらいいのかわからなくて……うう……。」
「……大丈夫。」
「先生……?」
「ここは、私に任せて。」
先生がゲーム開発部の扉の前に立つ。
一つ息をついてから、扉の向こうに向かって声をかけた。
「アリス、ちょっと入っても大丈夫?」
「……」
返事はない。
「……入るよ。」
先生は扉を開けて中に入る。
そこには薄暗い部屋の中、隅に座るアリスがいた。
「……アリス、大丈夫?ご飯も食べないでずっとこもってるって聞いたよ。」
その声にアリスがこちらに顔を向けた。
その顔には、もう何度も泣きはらしたであろう跡が残っていた。
「せ、先生……。」
「みんな心配してるよ?いこう……?」
「アリスには……できません。」
アリスは顔を伏せて、ぽつりぽつりと話し出す。
「アリスの……アリスのせいでモモイが、皆が怪我をしました……。全部、アリスが……やったことです。なんであんなことをしてしまったのか……アリスにもわかりません。まるで……まるでアリスの知らない"セーブデータ"がアリスの中にあるような……」
その言葉に先生はG.Bibleのあった廃墟でのアリスの言葉を思い出した。
アリスはあの時も"自分の中に知らないセーブデータがあるようだと言っていた"
「……アリスの体が、反応しました。動きました。アリスがあの時、何をしたのか……それは思い出せませんが、一つ確かなのは……アリスが……アリスが……モモイを!」
「落ち着いて、アリス!」
「先生、でも、アリスはどうすれば……!」
先生がどう声をかけようかとしていると……不意に、部室の扉が開く。
「そう、あなたが怪我をさせた。――それは逃れられない真実。」
「……!誰だ!」
先生が振り返っていた時、そこに立っていたのは、
「ああ、やはり――危惧していた通りになってしまったようね。」
ミレニアムを束ねるセミナーの会長――ビッグシスター、調月リオであった。
subnauticaです
ここはちょっとコーストを挟みづらくて大体原作通りの展開になっちゃいましたね。
次回からはちゃんと登場するので安心してください。
それと、ブルーアーカイブ5.5周年おめでとうございます!
ノーマンズスカイもそろそろ10周年が近いので私としては好きなゲーム二つが良い節目を迎えられそうでとてもうれしいです。
これから先も両ゲームに感謝を……。
では、また次回お会いしましょう。
ノーマンズスカイをやったことが
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ある
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ない