「ここが、要塞都市、エリドゥ……。」
「まさか、本当にセミナーの目をかいくぐってこんなものを作っていたなんてね……。」
物流輸送用無人列車から顔を出したのはエンジニア部、ゲーム開発部、そして先生だ。
リオによるアリスの誘拐をみすみす許してしまった先生たちはコーストに連絡を取った後、C&Cやリオ以外の他のセミナーのメンバーと連絡を取り、現在のアリスとリオの位置を探った。
結果、ユウカが過去に削除されたデータから此処、エリドゥに関するものを発掘し、二人の現在の大まかな位置を推定、こうして大規模な救出作戦を立てることとなったのだ。
現在C&Cの面々は先にエリドゥに侵入を果たし、ゲーム開発部とエンジニア部の侵入を補助するために陽動を起こしていた。
とはいえ向こうには既にばれているだろうが……。
『アリスがいるのはおそらく中央にいるあのタワーだろう。』
『現在地からルートを算出しました。左手にある大通りをまっすぐ北に向かえば辿り着けます。』
「サポートありがとう……それじゃ皆、行くよ、アリスを助けに!」
「「「「「おーーー!!!」」」」」
勢いよく全員で道を駆けだしていく。
当然行く先にはリオの操るAMASが立ちはだかるが、こちらも全員インドア派とは言え腐ってもキヴォトス人だ。
「どいたどいたー!!」
「邪魔しないで!」
それぞれの膂力と銃器を生かし、強引に道を切り開いていく。
因みにそのどちらも持ち合わせていない先生は後方で指揮をしながら早くも息が切れかけていた。
「ぜーっ、はーっ……」
「だ、大丈夫かい先生?よかったら、私のタレットに乗るかい?」
「……はは、申し訳ないけどそうさせてもらおうかな……。」
先生はウタハの呼び出したタレットの上に乗り指揮を再開した。
『……道はこっちでナビするから。』
『どんどん行っちゃおー!GOGO!』
ゲーム開発部とエンジニア部は士気高く中央のタワーを目指して進軍を始めた。
一方その頃陽動を行うC&Cは……
「ははは~面白いように爆発していくね~!」
「しかし、これではキリがない……」
群がるAMASの殲滅を続けていると、その背後に影が降り立つ。
「お待ちしておりました。先輩方。」
「おや、あなたは……随分と早い登場ですね。」
「私たちがここに現れるということは最初からすべてお見通しだったというわけだ。」
「はい。リオ様はすべて把握されておいでです。C&Cの動きも、先生の狙いも。ですので僭越ながら申し上げます。……これ以上の抵抗は無意味です。大人しく投降してください。」
「それは難しい相談ですね。」
アカネはそう言いながら何かのスイッチを押し込む。
瞬間、トキの周囲で爆炎が舞い上がった。
トキは驚きの(とはいえほとんど無表情ではあるが)顔を浮かべとっさに後方へ下がる。
「わ、びっくりした!」
「あら、この程度では相手にもなりませんか。」
「あ、アカネ……?」
「ふふふ、初めましてですね後輩さん。トキさんでしたか。先日は部長が大変お世話になったと聞きました。……それにしても、ご丁寧に投降を勧告するなんて、リオ会長のボディガードとは聞いていましたが……あまりC&Cを舐めないでいただきたいものですね。」
アカネの放つ言葉に急に言い知れない圧がこもった。
「目には目を、歯には歯を。私たちは今日、そのために来たのですから。……それとも、ここで投降なされるならここまでのことは水に流してしまっても構いませんよ?」
「……いいえ、それはできません。私はリオ様から"命令に背いているC&Cを制圧せよ"と命令を受けていますので。」
「ふ~ん……真面目ちゃんなんだね、トキちゃんは♪」
「想定通りの反応だな。」
「C&C……隠密や諜報を中心とした組織だと思っていましたが、よもや正面突破を試みるとは……少し想定外でした。しかし、私がここにいるのもあなた方の作戦のうちなのでは?」
「……そうなのか?」
カリンが良く分かっていない顔でそうつぶやいた。
「いえ、私たちとしても想定外ですよ。」
「ごまかしても無駄です。この場にネル先輩がいないのが何よりの証拠。私をここに足止めして最高戦力であるネル先輩をフリーにする……そう言う思惑なのでしょう?」
「ほう?残念だがその予想は点で的外れだな。」
背後からトキに向かってサブマシンガンの弾丸が向かう。
トキは間一髪で避けたものの、背後にあったビルの壁は一瞬で蜂の巣になって崩れ落ちた。
弾が飛んで来た方向を見やれば、両手にサブマシンガンを構えたネルがいる。
「っ!ネル先輩、何でここに……。」
「あら、ずいぶんと遅かったですね部長。」
「あはは!遅かったじゃん!」
「ふん、何で来たかって……んなの決まってんだろ、リベンジマッチだよ。」
「リベンジ……?」
今度はトキのほうが何を言っているのかわからないというような顔をしている。
「面倒くさいのは嫌いなんだ。あたしが別行動してたらお前は必ず止めに来る。なら、最初にてめえを倒してからあいつらを倒しに行っても、問題ないだろ……なあ、後輩、あんときは良くもやってくれたな。先輩に楯突くとどうなるか、その身に叩き込んでやるよ。」
「っ!対応、開始!」
ネルは銃を構え、トキも装備を換装する。
エージェントたちの戦いが始まった。
「ハレ、次はどっちの道?」
『次は……こ……ちを……。』
「今、通信が……」
タワーへと向かう道の最中、ヴェリタスとの通信の間にノイズが入った。
『ま、まずい!通信の状態が……』
マキたちの焦るような声を最後にヴェリタスとの通信が途絶えてしまった。
「そ、そんな……。」
「ヴェリタスとの通信が、切れちゃった……。」
『やはりここまで来ていたのね、先生。』
先ほどまでヴェリタスとの通信に使っていた回線に声が割り込んできた。
その声はまさしくいま目材している目標のリオの声だった。
「リオ、キミを止めに来たよ。」
『そう、やはりあの時の言葉だけではあなた達を説得しきることはできなかったようね……。』
リオはカメラ越しにエリドゥに乗り込んできたメンバーを眺めながらそうつぶやいた。
『……先生、トロッコ問題というものをご存じかしら。』
「……ああ、知っているとも。そして、キミが言いたいこともなんとなくわかるよ。」
『ならば話は簡単なはずよ。一人を犠牲にするか、大勢を犠牲にするか、誰かがそのレバーを引かなければならない……私はただ、その役を買って出ただけよ。別に悪意や敵意をもってあなたたちと接しているわけじゃない。私はただ――』
「もう!分かんないよ!!難しい話は良いから、アリスを返して!!」
モモイが通信機に向かって怒鳴り声をあげた。
『あら、あなたは確か……今の状況は、実際に"名もなき神々の王女"に襲撃され、負傷を負ったあなたが一番わかっているのではなくて?』
「分かんないよ!……私はただ、会長の下からアリスを取り戻したいだけ。」
「お姉ちゃん……。」
「モモイ……。」
モモイの理論も何もない主張にリオは一瞬驚きの目を向けるが、それも一瞬のことだった。
『ええ、そうね……今貴方たちを説得しきるのは難しいのでしょうね。分かっていたことよ。』
リオはそう言うと何かのボタンを押した。
『――アバンギャルド君、発進。』
リオのその声とともにモモイたちの前の道路が開き、その中から……なんというか、名状しがたい絶妙な見た目のロボットがせり出てきた。
「うわ!?ダサ……。」
「お、お姉ちゃん、確かにあまりかわいい見た目ではないけど……。」
モモイが全員の心の中を代弁した言葉を口にしてしまった。
場の空気が微妙にしらける。
「……見た目は関係ないわ。」
リオは何でもない風を装ってはいるが、目じりには若干涙が浮かんでいた。
「……本音がちょっと見えてるよ、リオ。」
『うるさいです。理解されないのなら、それでもいいわ。行きなさい。』
リオの宣言とともにアバンギャルド君の目に光が灯る。
「皆、来るよ!」
アバンギャルド君が多数のミサイルを放ち、その腕から機銃掃射を始めた。
「うわあああ!!」
「お姉ちゃん!そこ危ない!」
「ぐっ!見た目があれとはいえ、その造りは本物か……。」
セミナーの会長、調月リオ。
技術に重きを置くミレニアムサイエンススクールの長である以上、その技術力は本物の様だ。
『先生!攻撃がかなり苛烈です!安全圏に避難を!』
激しさを増す攻撃にアロナからも警告が飛ぶ。
しかしここは大通りの中心、身を隠せそうな場所がほとんどなかった。
「これは……結構まずいかも……。」
ゲーム開発部もエンジニア部も頑張ってくれてはいるが、携行してきた武器ではどうにも火力が足りておらず、黄金比を模したのであろう変わった形の盾を破れずにいる。
一方、相手はこの都市に潜む大量のAMASと無限に等しい弾薬を備えている。
形勢は圧倒的にこちらが不利であった。
「み、見た目からは想像のつかない火力をしているね……。」
「ぐう……あいつ、見た目だっさいのに滅茶苦茶強いよ!」
「ど、どうすれば……。」
見た目のわりに圧倒的な強さを持つアバンギャルド君にどう対抗しようかと考えていたその時――
空から飛来したロケットランチャーがアバンギャルド君を吹き飛ばした。
『さて、先生……なんかデカいロボットと相対していたみたいだから吹き飛ばしたが……こいつは壊して大丈夫なやつなんだよな?』
「は、はは、それは壊す前に言ってほしかったかな!」
先生たちの視線の先にはエリドゥにの上空に悠々と浮かぶ戦艦型コルベット。
コーストが援軍としてやってきたのだ。
「やあやあ先生、おじさんたちも助けに来たよ!」
「はい!今度は私たちが先生を助ける番です!」
「ん、敵は私たちが潰す。」
「私も、やってやるわ!」
『私もオペレーターとしてできる限り協力します!』
「ホシノ!それに皆も来てくれたんだね!」
先生が久々の再会に目を輝かせている時、エンジニア部の面々は別の意味で目を輝かせていた。
そう、目の前に浮かぶのはレールガンだけ作って諦めてしまったエンジニア部の夢そのもの……
「「「宇宙戦艦だああああ!!!」」」
「うわ!びっくりした……急に叫ばないでよ。」
「これが落ち着いていられるかい!私たちが作りたくても予算のせいで作れなかった夢が、目の前に浮かんでいるんだ!なんと素晴らしい……!!」
『先生?なんかトリップしてるやつがいるが、大丈夫なのか?』
「ははは……でも、今はそれより向こうを優先しないとね。」
先生は吹き飛ばされたアバンギャルド君に目を向ける。
アバンギャルド君はあの一撃では破壊され切らなかったらしく、四つの手を使って起き上がろうとしている。
『何なの……その空に浮かぶ船は、私の知る技術ではそんなものは……いえ、それは今は問題じゃない。アバンギャルド君、今すぐ排除を……。』
『そんなことを許すわけがないだろう。……ヒマリ、やれるか?』
『当然でしょう。この超天才清楚系病弱美少女に不可能はありません。』
『!ヒマリ、あなたは拘束しているはずじゃ……』
その言葉を最後にリオは通信から追い出され、アバンギャルド君も活動を停止した。
『あ!通信が戻った!』
『あれ?まだ"鏡"は動かしていないはずなのに……』
ヒマリの手によってヴェリタスとの通信が復旧した。
そしてそのタイミングで"鏡"を使ってエリドゥのシステムをハッキングしようとしていたチヒロとも通信がつながった。
『あ、ちーちゃんもいたんですね。』
『部長!?今までどこで何をしていたんですか!!というか、部長がエリドゥのシステムを"鏡"も使わずにハッキングしたんですか!?』
しばらく音信不通だったヒマリの登場にチヒロは驚きの声を上げた。
『当たり前でしょう、そもそも"鏡"のプログラムを組んだのは誰だと思ってるんですか。……それより、そこの悪趣味……ほんとに悪趣味ですね、なんですかこの顔……コホン、そのロボット、ファイヤウォールが作動していますよ。』
「え!やばいじゃん!」
「さすがに会長の力作というわけか……行くよ皆!」
『ん?ああ、それなら別に問題はない。この場でさっさと破壊しきってしまえばいいんだろう?』
コーストはそう言うと船首をアバンギャルド君へと向けフェーズビームをたっぷりと照射。
アバンギャルド君は一瞬抵抗らしきものを見せたものの、ディフレクターシールドが一切を防御して船体は無傷だ。
数秒フェーズビームを浴びせかければ、そこに残るのはただの融けた金属塊であった。
「こ、こんなにあっさり……。」
「なんだか、会長がかわいそうになるほどあっさりした幕引きだね……。」
強敵が一瞬で消え去ってしまったことで、その場には何とも言えない空気が流れたのだった。
「おじさん達、出番なかったね……。」
「ま、まあ、多分この先ありますから!」
そして、挨拶だけして結局何も手出ししなかったホシノは遠い目をしていた。
subnauticaです
要塞都市、突入!
やっとコーストに活躍の場面が……。
次回はヒマリ救出の場面とここの続きを書いていきます。
では、また次回お会いしましょう。
ノーマンズスカイをやったことが
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ある
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ない