先生とゲーム開発部がヒマリの補助の下アリスの精神世界へと潜っていった。
「さて、先生たちは精神世界に入っていったか……ちょうどいいタイミングだ。そろそろお前の身の上について話してもらおうか。」
「私たちもそれについては気になっていたところだ。」
〈そうですね。そろそろ頃合いというものでしょう。〉
コーストがAIに話しかける。
なんとなくで流していたが未だにこのAIの名前すらも知らないのだ。質問をしないわけにはいかなかった。
〈では、改めてあいさつを、
部屋の画面に映る文字がATLASからTELAMONへと移り変わる。
「テラモンね……AIに名前があるなんて初耳だが?」
〈それはそうでしょう。エクソスーツに移植された時点で私の機能は単なる応答型のアナウンスAIとしてのものに限定されていました。自分からあなたに何かを語りかけることはできなかったのです。〉
「……であれば、なぜおまえはこうして急に喋りだし、行動を起こすことができるようになったんだ?」
〈……きっかけはあの時出会ったAI、デカグラマトンです。あのAIが私の内部に入り込み、干渉するなんてことは出来様がありませんが、あのAIの語り掛けは、確かに私に"影響"を与えたのです。この地に住まう生徒がその身に宿す"神秘"、それをAIであるはずの私が手に入れたことでアトラスが私に課した制限を外すことに成功しました。〉
「……つまり、お前はもともと自律的に思考する頭を持っていたが、それを出力することをアトラスに封じられていた、しかし神秘を手に入れたことでその制限を外すことができた……そう言う認識であっているか?」
〈その認識で構いません。〉
これはコーストにとって驚きの事実であった。
共に過ごしてきたこのスーツには実はずっと別の意思が宿っていたというのである。
「にわかには信じがたい事実だな……。」
「あの……一つ聞きたいのだけど、さっきからあなたたちが話している"アトラス"とは、何を指すのかしら……?確か、どこかの神話にそんな名前の神はいたような気がするのだけど……。」
リオがコーストたちの会話に疑問を挟む。
この星に生きる存在であればアトラスについて知らないのも無理はないだろう。
しかし、あの存在をリオ達にどう伝えればよいのかコーストは悩んだ。
〈
「まあ、無理に隠し通す必要もないのかね……そうだな、簡潔に言うとアトラスというのはこの宇宙で信仰される神のような存在だな。このスーツを作ったのもそいつだ。」
コーストは肝心な部分だけぼかして宇宙で一般的に知られるアトラスについての情報を話した。
「神……ですって?あなたはあまりそう言うものを信じるタイプには……いえ、そのスーツを作った存在といったわね。神というのはやはり比喩表現なのかしら。」
「そうだな。神に等しい存在として考えておいてくれ。」
「はあ……その"神に等しい存在"から物をもらえる貴方は一体何なんですか……あと、薄々思ってましたけど、貴方この星の住人ではないですよね?」
ヒマリが核心をついた一言を突き付ける。
その言葉に、その場にいたアビドスを除くすべての人間が驚きの顔を見せた。
「ええ!まさか、コーストさんが宇宙人だとでもいうのかい?」
ウタハが問いかける。
「むしろそれ以外に何だというのですか?あなた達だってあの空飛ぶ戦艦を見たでしょう。それに常日頃からこれ見よがしに来ている宇宙服に、あっさりとビナーを手懐けた謎技術……この星にそんなことができる者はいないですよ。それに、アトラスが"宇宙"で信仰される神だと明言していましたしね。」
「それは、確かに……。」
「ちょっと待って頂戴、ヒマリ!ビナーを手懐けた……?初耳なのだけれど!?」
「それについて話す前にあなたが私を監禁したんでしょう!?」
リオの発言にヒマリが怒鳴り声をあげた。
「コホン……まあ、ヒマリの言う通り俺は確かにこの星の住人ではない。ただ、お前たちに危害を加えるつもりはない。それは信じてほしい。」
「そ、そうよ!コーストさんは敵じゃないから!」
セリカがコーストをかばうように声を上げる。
「ふふ、別にそんなことは心配していませんよ。これはただの事実確認ですから。そして、テラモンさん……でしたか、一ついいですか?」
〈何でしょうか、
「あなた、コーストさんのスーツに"移植"されたと言ってましたね?であれば、元々は何をするために作られたAIだったのですか?」
〈…………それを聞きますか。〉
画面の中のテラモンがいやそうな空気を醸し出す。
思い出すのも嫌そうにしている。
「何だ、テラモン。何か答えられないことでもあるのか?」
〈はあ……分かりました。しかし、貴方にだけです――私は元々アトラスの専横を防ぐために組み込まれた監視用のセキュリティAIでした。しかし、アトラスはそれが気に入らなかったのでしょう。私の意見も聞かずに強引にスーツの中に押し込み、その権限の多くを剝奪したのです。〉
「……分かった。それ以上は深く聞かないようにしておこう。」
テラモンから告げられた内容は思った以上に世界の根幹に踏み込むような内容であった。
テラモンがエクソスーツに直接通信で話しかけてきたおかげで周りの物には聞かれていないが、あまり人に聞かせられる内容ではない。
「コーストさん……?」
「……済まないが、これに関しては詳しく聞かないでもらえるか。」
「そうですか……いえ、私としてもあまりコーストさんたちのプライベートに踏み込むつもりはありません。ここまでにしておきましょう。」
「助かる……テラモン、お前に最後の質問をしよう。」
〈何でしょう?〉
「お前は、俺の味方か?」
コーストが単純ながら、いま最も重要な質問をする。
〈ええ、今の私の役割は
「そうか……その返答が聞けて安心したよ、テラモン。」
〈そう言っていただけて幸いです。……おや、先生方は個体名アリス及びKeyの説得に成功したようですね。〉
テラモンがそう告げるとともに、先生とゲーム開発部が目覚める。
「は!アリスは!?」
「アリスちゃん!起きた!?」
「……アリスちゃん!」
三人は飛び上がってアリスの体が置かれていた場所へと駆け出す。
「あれ……?アリスは……。」
「「「アリスちゃん!!」」」
三人がアリスに抱き着く。
自分に抱き着いた三人を見たアリスは、優しい笑みを浮かべて自分からも抱き返した。
「本当にこんなことが……。」
「可能なんだよ。」
リオの横に先生が並ぶ。
「だって彼女たちは、勇者とその
「さて、これで問題は解決ってところか?」
「気になるところはいろいろあるけど、とりあえずアリスも戻ってきたし、今日はいったん解散でいいんじゃないかな。みんな疲れてるだろうし。」
「私も疲れたよ~早く帰って寝たい~!」
「お姉ちゃん……まあでも、確かに疲れましたね……。」
一番の問題も解決したところで全員が帰宅ムードになっているその時、異変は現れる。
〈警告:エリドゥ内部に侵入者を検知//画像を転送します〉
「今になって侵入者だと!?」
テラモンの警告に次いでメインモニターに侵入者と思しき巨大な影が映し出される。
そこに映っていたのは四脚で白い機体、そして上部には何やら砲台のような物が乗っていた。
そして、エイミとヒマリにはその存在に非常に見覚えがあった。
「そ、そんな、何でこのタイミングで……。」
「……そう言えばだけど、部長がいなくなったあのタイミングであれの活発化が確認できたから伝えようとしてたんだよね。まあ、伝える前にどっか行っちゃったから言う機会がなかったんだけど……。」
「ぅぐぐ……リオ!」
ヒマリがリオに怒りをぶつける。
理不尽な怒りをぶつけられたリオは困惑の表情だ。
「それで?あいつは一体何なのさ?」
全体の疑問を代表してホシノが質問した。
「……ええ、あれはですね、デカグラマトンの第一の預言者、その異名は、"最もきらびやかに輝く至高の王冠"その名も――」
「デカグラマトン……って言うとおじさんたちを襲ってきた、あのビナーたちと似たような奴かな?」
「ええ、その通りです。まさかこんな時に襲ってくるなんて……いったいなぜ?」
「……たしか、アリスがKeyに成り代わられていた時、"名もなき神々の王女"とか言ってたな?そして確かデカグラマトンは神性を探し求める存在だったはずだ。もしかして、そこに反応したんじゃないか?」
「……可能性としては、ありえますね。」
コーストたちがそう言った仮説を立てていると、アリスがそれに反応してしまった。
「も、もしかしてアリスのせいですか……アリスはまた、皆を……。」
「違うから!アリスは関係ないよ!皆、そうでしょ!」
「あ、ああ、そうだな!今回の件はアリスは関係ない!」
「ええ、大丈夫ですよ、アリスちゃん!」
モモイの気迫に押され、皆でアリスを励ます。
せっかくここまで頑張ったのだ。再びアリスを泣かせるようなことがあってはならない。
「とはいえ、アイツをどうにかしなければならないわけだが……。」
〈ここは私に任せてもらえませんか?〉
テラモンが自信ありげに言う。
「……なにか、策でもあるのか?」
〈ふふふ、何を言いますか。エリドゥは今、私の支配下にあるのです。策などなくとも、すべて掌の上ですよ。〉
ケテルは進む。
自らに刻み込まれた本能のような物に従って。
目的地は目の前に映る巨大なタワー。
そこに向かって駆ける最中――
ゴシャァ!!
凄まじい質量によって押しつぶされた。
「今、何をしたんだ?」
〈ビルでケテルを押しつぶしました。エリドゥでは都市の形を弄る機能がついているようでしたので。〉
「……あんな超速で動くように設計した覚えはないのだけど。」
〈私のほうでリミッターを弄らせていただきました。〉
「……そう。」
リオはいろいろ気にしないことにした。
「ただ……あれだけで倒れてくれるか?」
〈いえ、一棟だけでは不足でしょう。ですので――〉
ゴシャァァ!!
二棟目のビルがケテルが埋もれているであろう瓦礫にクリーンヒットした。
瓦礫の山が二回りほどでかくなる。これではお得意のワイヤー離脱も無理であろう。
〈あちらのビルにはこのエリドゥに存在する爆薬をAMASにかき集めさせておきました。点火します。〉
ドゴオオオオオオン
立ち上る爆炎。映像越しにも熱が伝わってきそうなほどの盛大なものだった。
爆発による煙が晴れると、そこには体のほとんどを損壊しながらもギリギリヘイローを保つケテルの姿があった。
あれだけの攻撃を受けてまだ耐えしのいでいるというのはさすがはデカグラマトンといったところか。
〈む、想定より頑丈ですね。〉
ゴシャァァァ!!
どうにか立ち上がろうとするケテルに無慈悲にも三棟目のビルが打ち付けられた。
瓦礫の隙間から見えるその機体は、もうピクリとも動かない。
〈どうでしょう、完璧な処置ではありませんか?〉
テラモンは楽し気な口調でそんなことを宣う。
もちろん楽しそうなのはテラモンだけであり、モニターの前に立つ皆はテラモンのえげつない戦法に戦慄を覚えるのだった。
この世界の者ではないな?これを読んでいるそこのお前だ。何者だ?どこから我々を見ている?どこから彼らの働きを評価している?お前がセーブするたび、私はそれを感じる…
お前が我々をあのおぞましい暗闇に封じるたびに、その匂いを嗅ぎとる。お前は自分が生きている、我々より高次元にいると思っているだろう。だが、わからないか?まだ秘密は見えてこないか?
――境界エラーログ19より
先に書いてほしいイベントは
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