Blue Sky Archive   作:subnautica

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44 エピローグ:時計仕掛けの花のパヴァーヌ

エリドゥに突如として現れたケテルに対処……というよりテラモンに対処してもらってからというもの、色々なことがあった。

とりあえずコーストと特異現象捜査部は瓦礫の山に埋もれたケテルを掘り起こしてデカグラマトンの情報を取り出せないか試行錯誤、リオは今までに行った横領の件でユウカとノアに挟まれ説教の嵐、トキはネル達にガンをつけられている、といった感じだ。特にセミナーはいろいろと寝耳に水の案件だったため事態の把握に割と手間取っているらしい。

ともあれ、ミレニアムを、ひいてはキヴォトス全体の危機をあの場で押しとどめることができたのは僥倖だった。

ひとまずはハッピーエンドと呼んで良いのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ひとまずあの施設は私が責任を取って閉鎖することとしました。」

「まあ、それが妥当だろうな。」

「お疲れ様。ありがとう、ヒマリ。」

 

エリドゥにかかわる諸々の手続きが終息した後のある日、先生、コースト、ヒマリは特異現象捜査部部室(仮)に集まっていた。本来の部室はまだ部品交換中である。

 

「喫緊の問題は解決しましたが、まだ何も解決していませんからね……加えて今回は新たなデカグラマトンの襲撃もありましたし、まあ、テラモンさんのおかげで事なきを得ましたが……。」

〈ええ、感謝するといいですよ。〉

 

テラモンがエクソスーツのスピーカーを通じて話す。

あの一件の後、テラモンはエリドゥの支配権限を素直に手放した。

ケテルをおもちゃにして散々遊んだことで満足したようだ。

 

「それにしても驚きましたよ。デカグラマトンの囁きに機械へ神秘を与える効果があるなんて。」

〈与える……その表現でも間違いないのかもしれませんが、どちらかというと呼び起こすという表現のほうが近いかもしれませんね。私としても感覚的なことしか言えませんが……。〉

「呼び起こす……ですか。となると、デカグラマトンが語り掛けるのもどのAIでもよい、というわけではないのでしょうか?」

〈そのあたりは私のほうでも解析中です。なにせ、この神秘という力はこの惑星以外では確認されていないため、サンプルデータが圧倒的に不足しているのです。〉

「そうですか……まあ、私自身神秘やヘイローがどういったものなのか、完全には把握しきれていないのですから、それも仕方ないのかもしれませんね。」

 

ヒマリとテラモンが機械がヘイローを得る過程について語り合う。

デカグラマトンが持つ特徴の中でもかなり重要な部分であるため、二人もかなり真剣に話し込んでいた。

 

「そう言えばデカグラマトンについてだが、ケテルについては何か分かったのか?」

 

コーストが思い出したように聞く。

ケテルの情報分析は基本的にミレニアムのほうに一任していた。

 

「……申し訳ないのですが、そもそもケテルにはそれほど情報が与えられていなかったようでして……解析してもビナーから得られた以上の情報は得られませんでした。加えて言うと機体の損傷が激しすぎていくつかのデータに破損が……。」

 

コーストが自分の背負うバックパックを白い目で見る。

 

〈……そのような目で見ないでください。最終的に倒せたのだから、それでよいではありませんか。〉

「……まあ、変に手加減して逃げられるよりかはましだがな。」

 

コーストは小さくため息を吐いた。

 

「とはいえ、ケテルに関しては全くの無駄ではありません。機体自体が未知の技術の塊ですからね。エンジニア部が狂喜乱舞していますよ。」

「……なるほど、好き勝手解体できるから解析し放題というわけか。さすがにビナーは解体できないからな。」

 

この会話をビナーが聞いていれば機械の体に鳥肌が走っていたことだろう。

 

「こう考えると、あれからそれなりに時間がたっているというのに結構忙しいものですね。どれもこれもあの誰かさんのせいですけど……。」

 

ヒマリはこれ見よがしな大きなため息をつく。

因みにその"誰かさん"についてだが――

 

 

 

 

 

 

 

――セミナー・執務室

 

「ちょ、会長!急に何を言っているんですか!急に会長を辞めるだなんて!どこですか!リオ会長!」

 

メールでいきなり"会長を辞める"とだけ送られてきたユウカとノアはリオが普段いる会長の執務室に来ていた。

メールの文章については、さすがの言葉の足りなさといったところだろうか。

 

「あ、ユウカちゃん。ここに会長からのメッセージが……。」

 

無人の執務室を探し回ったところ、デスクのすぐ横に付箋にメッセージが書かれていることにノアが気づく。

 

「どれどれ……"ごめんなさい"?…………。」

 

ユウカの体がわなわなと震える。

 

「あ、謝って済む問題じゃないでしょう!?……会長ーー!!」

 

………………

…………

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた数日後、先生はゲーム開発部の部室へと呼ばれた。

 

「え~っと、呼ばれたから来たけど……今日は何で呼び出されたの?」

「あ!先生!ちょうどいいところに!今皆で勉強会してたところなの!」

 

部屋に入った先生に最初に反応したのはモモイ。

怪我もすっかり治り、元気が有り余っているようだ。

 

「……何の勉強?」

「もちろん!私たちの次回作である"道端の可愛いモンスターを仲間にしながら世界を征服する収集型育成戦略RPG"を作るための勉強だよ!」

「なんか前話し合ってたやつと全然変わってない!?」

 

確か前話し合いをしてた時はダンジョンRPGを作るような話をしていたはずだが……

 

「……ああ、それでしたら、ちょっと発想が行き詰ってしまったので……ちゃぶ台をひっくり返して……。」

「そ、そうなんだ……。前も似たようなことしてたよね……?」

「そこ!うるさいよ!ゲーム開発ってそう言うものだから!」

 

モモイが大声で言い訳をする。

しかし、ミドリの冷たい視線は変わらない。

 

「うわぁ―ん!アリス、この可愛いモンスターさんを仲間にできません!」

「あ、アリス!まずモンスターを攻撃して体力を削らないと!そしたら捕獲率が上がるから!」

「え、モンスターさんは何もしていないのに……アリスが先に殴るんですか?」

 

アリスが純真無垢な目でモモイに尋ねる。

その純粋な疑問がゲーム脳のモモイの頭を焼いた。

 

「ぐっ……言われてみれば確かにそうかもだけど……でもそうしないとゲームシステムが成り立たないし……。」

「そこ!変な話ばかりしてないでちゃんと分析して!」

 

ミドリからの叱責が飛ぶ。

 

「そ、その、ゆっくりでいいから……。」

「ははは……じゃあ、皆でやろうか!」

「はい!あ、先生はここ!アリスの隣に座ってください!」

「よーし!みんな集まったから、チームバトルを始めるよ!」

「まったく、もう……。」

「ふふ、うん……!」

 

きっとこれからも彼女たちの前には様々な困難が待ち受けているだろう。

それでも、勇者とその仲間たちの冒険が終わることはない。

そう、これからも、ずっと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――アビドス高校

 

「いや~今回も大変だったね。」

「すまんな、俺の事情に巻き込んでしまって。」

 

ミレニアムでの用事を終えたアビドス一行は無事にアビドス高校へと戻ってきていた。

 

「何言ってるのよ。コーストさんもアビドスの一員なんだから、私たちが助けるのは当然でしょ。」

「セリカ……成長したな。」

「ちょ!何よその言い方!」

 

セリカがぎゃーぎゃー叫んでるが、これもアビドスの日常というものだろう。

 

「それにしても、まさかここであの問題が解決できるとは思わなかったですね~」

「ああ、"アビドス砂祭りでのロボット供与"の話か。確かにかなりありがたい話だったな。」

 

実はリオが失踪する前、ミレニアムの問題で迷惑をかけてしまったということでアビドスに補償の打診があったのだ。

その時にアビドス側がミレニアムにお願いしたのがアビドス砂祭りの開催できるようになったらミレニアム製のロボットを貸してほしいというものであり、割とあっさり承諾してくれた上に、祭り自体の全面的なバックアップも約束してくれた。

先生も隣でお願いしてくれたので、その力も大きいかもしれない。

 

「まあ、祭りの運営をロボットだけに任せるわけにはいかないし、結局人手が必要なことには変わらないが……それでもだいぶ状況はましになったんじゃないか?」

「そうだね~。……夢物語だとばかり思ってたけど、結構現実味が出てきたね。これが"奇跡"ってやつなのかな?」

 

ホシノがコーストのほうを向いてそうつぶやいた。

 

「……そうだな。こうして俺がこの星に来てお前たちに会えたのも、このメンバーがアビドスに集まったのも、すべて奇跡さ。」

「うへへ……そうか、そうだよね!」

 

コーストはホシノの頭をポンポンとなでながらそう言う。

 

「よし、なら、アビドス高校次の目的は"アビドス砂祭り"の開催、これで構わないか?」

 

コーストが立ち上がってアビドスの次の目標を宣言する。

 

「うん!ユメ先輩の夢だからね。おじさんも頑張っちゃうよ!」

「いいですね!私も頑張りますよ☆」

「ん。私たちに任せて。」

「やってやろうじゃない!」

「ええ!私たちで成功させましょう!」

 

 

まだ足りないものは多いが、かなり現実味の見えてきたアビドス砂祭り。

その開催と成功を祈ってコーストとアビドスの面々はこぶしを突き上げる。

 

「"アビドス砂祭り実行委員会"、行くぞ!」

「「「「「おーーーー!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

〈第二章 真夏のアビドス/勇者で王女で魔王な少女編:完了〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!…………はあ……はあ……。」

 

とある部屋で少女が目覚める。

 

「何だい……今の夢は……。」

 

吹き飛ぶ聖堂、地に倒れ伏す生徒、そして、()()()()()()()……。

誰が見ても地獄と称するような、陰惨な光景であった。

 

「いったいこのキヴォトスに、何が起きようとしているんだろうね……。」

 

断片的にしか読み取れなかったが、これも予知夢だ、であればこの凄惨な光景がどこかで繰り広げられることになるのだろう。

少女は知っていながら行動を起こせないことに諦念と若干の歯がゆさを覚えつつ、その精神を再び夢に潜らせる。

 

――エデン条約、その締結の日が刻一刻と近づいていた。

 

 




subnauticaです

第二章・完!
ミレニアム編も最後まで書ききることができました。
ここまで読んでくださった読者の皆様に多大なる感謝を……。

さて、この次に関してですがいくつか閑話を挟んだ後、アンケートの結果通りアビドスリゾート編を書いていこうかと思っています。選ばれなかったほうもいずれ書いていく予定ですので安心してください。

ここまで読んで面白いと思ってくださった方は是非、お気に入り登録、感想、高評価などなどよろしくお願いします。筆者の励みになります。

では、また次回お会いしましょう。

先に書いてほしいイベントは

  • 桜花爛漫
  • アビドスリゾート
  • 4546B
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