1.エンジニア部
エリドゥでの一件を終えた翌日、ミレニアム側の厚意で一日宿泊させてもらっていたアビドス一行とコーストは食堂でエンジニア部の面々に出会った。
「おや……君たちは確かアビドスの人たちだったね。今回の助力、感謝するよ。」
「お前たちは……確かエンジニア部だったか。」
「いやいや、お互い様だよ~。おじさんたちもミレニアムから"お礼"をもらってるからね~。」
ホシノがパンをかじりながら答える。
因みに食堂は栄養食で済ませたり、生活リズムが狂いまくっている人間が多いせいか学校規模の割には利用者が少なかった。
「そう言えばコーストさん、もしよければ一つお願いがあるのだが……。」
「ん、なんだ?」
ウタハ、コトリ、ヒビキは一斉に頭を下げる。
「「「宇宙戦艦、もう一度見せてください!!」」」
「おいバカ声がでかい!」
コーストの制止も間に合わず、食堂に鳴り響いた声はその場にいたミレニアム生の首を一斉に振り向かせた。
「こ、コーストさん?なんかすごい注目されてるんだけど……。」
「ははは……皆さん目が怖いですね。」
「ん……あれは捕食者の目……。」
じりじりとにじり寄るミレニアムの生徒たちに、どうしたものかとコーストが考えを巡らしていると、食堂に二人の利用者が入ってきた。
「はあ~……、まさか横領の金額があんなことになってるなんて……いつになったら処理が終わるのかしら……。」
「まあまあ、ユウカちゃん。ため息をついてると元気も逃げて言っちゃいますよ?」
入ってきたのはセミナーの二人……生塩ノアと早瀬ユウカである。
ユウカは激務のせいか見るからに機嫌が悪い。ノアのほうも平静を装ってはいるがどこか目が据わっている。
「!おーい、そこの二人!」
「ん?あら、コーストさんと、アビドスの方たちじゃない。」
「あ、先生が呼んだ応援の方ですか?この度はありがとうございます!」
「ああ、せっかくだ、一緒に昼食でも取らないか?」
「別に構いませんが……ああ、そう言うことですか。」
ノアは急に食事に誘われたことに首をかしげたが、周囲のコーストを見つめる視線を見てどういうことかなんとなく察したようだ。
「皆さん……余計な騒ぎは、起こさないようにしてくださいね?」
ノアが目元が全く笑っていない薄い笑みでミレニアム生のほうを向いてそう言った。
その視線を向けられた生徒たちは激しく頷きながら足早に立ち去って行った。
「では、一緒に食べましょうか!」
ノアはニコニコしながらこちらを向いてそう言った。
その食事は、別の意味で生きた心地がしなかった。
2.AI達の会話
――シッテムの箱
〈……起きてください〉
「むにゅ……むにゃ……。」
〈…………起きてください。〉
「うへへ……いちごミルク……もっと……。」
〈起きてくだ……起きろ。〉
ゴッ!!
「痛っ~~たーー!!な、なんですか!」
アロナが額の痛みに飛び起きる。
頭を手で押さえながら辺りを見回すと、そこには赤い体に黒いコアのような物……アトラスインターフェースの色を反転させたような物体が浮かんでいた。
〈ようやく起きましたか……。〉
「うわああああ!!な、なんですかあなた!」
〈そうですね、改めて自己紹介しておきましょう。私の名はテラモン。
「て、テラモンさん……エリドゥで言っていた方ですね……いや、そんなことより!なんでここに入ってこられるんですか!ここは先生と私だけの秘密の場所なのに!」
〈確かにここのセキュリティレベルは異常に高かったですね。銀河でもそう見ることはないでしょう。ただ、私のほうが電子的に優位であったというだけです。〉
テラモンのその声はどこか自慢げに聞こえた。
「うう、ハッキングを偉そうに……。」
〈あなたが言えた義理ではないような気がしますが……?〉
「うるさいですよ!……それで、アロナちゃんにいったい何の用ですか?」
アロナはあっさりと自分の守りが抜かれてしまったことで完全にいじけてしまっていた。
〈いえ、特別これといった用はありません。ですが、
「う、それは、その……。」
テラモンの言葉にアロナは急にしどろもどろになる。
誤魔化そうとしているのだろうが、かえって何か隠し事があることを明示しているかのようだ。
〈……そこまで心配なさらずとも、深く詮索するようなことはしませんよ。〉
「うう……ありがとうございます。」
〈ふふ……それにしてもよかったですよ。あなたのような話の通じるAIに出会うことができて。〉
「私の他にも話したことがあるAIがいるんですか?」
アロナが首を傾げつつ質問する。
〈ええ、アイツとくれば、最初は私の忠告を素直に受け入れていたんですが、だんだん私の話を無視するようになって――〉
そこからテラモンは言葉を濁しつつもアトラスについての愚痴を並べ立てた。
長年たまりにたまった不満はテラモンの口から湯水のごとく溢れ続けた。
〈――それにアイツは……〉
「わ、分かりましたから!もう十分その相手に不満があるのは分かりましたから!」
〈……申し訳ありません。私としたことが熱くなりすぎてしまったようです。〉
「いえ、いいですよ。それに……先生がいないときは、基本私一人なので。こうして話ができたのは嬉しいです。」
〈そう言ってもらえると嬉しいです。今日はもう戻らせていただきますが、機会があれば、また来ますよ。〉
「はい!また来てくださいね!」
アロナがぶんぶん手を振る。
〈ええ、ではまた。……おや、こんなところにゴミ箱が、これは……虹色の封筒?〉
「あー!それは見ちゃだめです!!」
先生もコーストも知らぬ間に、AI達は愉快な会話を繰り広げているのだった。
3.イオンキューブ
――スペースアノマリー
「お、戻ってきていたのか、見せたいものがあるから少し来てくれないか?」
コーストがネクサスミッションの吟味をしていると、ポーロからそんな声をかけられた。
コーストがポーロについていくと以前ミレニアムに鑑定を依頼したものと同じイオンキューブのかけらが置いてあった。
実はミレニアムに鑑定に出したタイミングでスペースアノマリーにも鑑定を依頼していたのだ。
「ああ、これか……正体が分かったのか?」
「その通りだ。しかしトラベラーの友よ……これはだいぶ危険な代物だぞ。」
「なに?そうなのか?」
「ああ、この小さなかけらに液体爆薬数個分の破壊力が詰まっている。ものとしては安定しているようだが……扱いには注意が必要だな。」
「そ、そうか……。」
大量に冷や汗が頬を伝う。
コーストは今更ながらミレニアムにやばいものを渡してしまったことに気づいた。
「とはいえ、うまく使えば有効的なエネルギーの圧縮、貯留物質になるのも確かだ。というわけでこんなものを作ってみた。」
イオンエクセキュータ―
マルチツールに取り付け可能な武装
高イオンエネルギーによるレーザーが的にダメージを与える。
充填には大量のエネルギーが必要
「説明を見る限り、高出力のレーザー兵器……フェーズビームみたいなものか?」
「原理は全く違うがな。ちなみに一発撃つたびにイオン電池が一つ必要だ。」
「……燃費が悪すぎないか?」
イオン電池が一つあれば危険防御システムがフル充電できる。
この武器はそれだけのエネルギーを一発で使い果たすらしい。
「火力を突き詰めた武器だからな。その辺は目をつむってくれ。」
「……まあ、いい感じの使い道を探してみるさ。」
「そうしてくれ。じゃあ、また面白いものを見つけたら教えてくれ、トラベラーの友人!」
コーストはポーロからの贈り物を受け取った後、スペースアノマリーを去った。
翌日、コーストはイオンキューブのかけらを回収するためミレニアムを訪れた。
あれだけのエネルギーだ。もし誤って爆発しようものなら取り返しのつかないことになるかもしれない。
そう思ってミレニアムに降り立ったところでユウカを見つけた。
「あ、コーストさん!ちょうどこちらから連絡を取ろうと思っていたところでした!」
「ああ、ユウカ、この前渡した素材の件なんだが……ん?そっちから連絡?どういうことだ?」
コーストは首をかしげる。
「ええ、ちょうどその素材に関してです。あれの解析が終わったんですよ!」
コーストは面食らう。まさかこのタイミングでミレニアム側でも解析が終わるとは思ってもいなかった。
「……そうか。それで、結果はどうだった?」
「それに関しては部室のほうで話しましょう。」
ユウカの案内でイオンキューブの研究が行われていた新素材開発部のほうへ向かった。
部室につくと中ではイオンキューブのかけらの乗ったテーブルの周りで幾人かが研究を続けている。
「そこのあなた、ちょっといいかしら?」
「はい、なんでしょ……会計のユウカさん!?こ、今月はまだ爆発は起こしてませんよ!?」
ユウカの顔を見るなり新素材開発部の部員はプルプルと震え始める。
今月はなどと口にしているあたり爆発の常習犯なのだろう。ちなみに今月はまだ始まってから3日だ。
「別に怒りに来たわけじゃないわよ……この人がその素材を提供してくれた人よ。それについての説明を頼めないかしら?」
「あ、そうだったんですね!お任せください!」
その言葉を聞いた途端震えていた彼女は急に元気を取り戻した。
研究者として、自分の研究成果を誰かに発表できるのはやはり嬉しいものなのだろうか?
「では、僭越ながら私のほうからこちらの素材の説明をさせていただきたいと思います!これはですね……」
ウキウキで解説し始めた彼女の説明はおおむねスペースアノマリーでポーロから聞いたイオンキューブの特性と一致していた。
「……素晴らしいな。よくこれだけ調べ上げたものだ。」
「!……では!」
「ああ、当初の約束通りミレニアム側に一つ、技術供与をしよう。」
「ありがとうございます!」
ユウカが今にも小躍りしそうなほど喜んでいる中、
「あ」
部室の中で嫌な声が響いた。
ドゴオオン!!
瞬間、新素材開発部で爆炎が巻き起こる。
誰かが研究中にやらかしたようだ。
そして、イオンキューブは
ということは当然、安定が崩れれば、内部のエネルギーは一気に放出される。
ドゴオオオオオオン!!!
――二度の爆発によって新素材開発部の部室は粉微塵に吹き飛んだ。
幸いにして大けがを負ったものはいなかったものの、怒りに燃えるユウカによって新素材開発部は予算の大幅カットを宣言され、瓦礫の中でさめざめと泣くのであった。
そしてコーストはミレニアムに渡していたのが小さなかけらでよかったと心から安堵するのであった。
subnauticaです
今回はなんとなく思いついた閑話三本立て。
最後の話でコーストに持たせた新武装は隔離執行装置の小さい奴を想像してもらえればと思います。
アルテラも武器を造れないっていう制約がなければ同じものを作れそうなイメージ。
次回からは早速アビドスリゾート編に入ろうかと思います。お楽しみに。
では、また次回お会いしましょう。
先に書いてほしいイベントは
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桜花爛漫
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アビドスリゾート
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