45 リゾートへ行こう
ある日のこと、アビドスは特に用事もなく平和な日々を送っていた。
コーストがいつもの如く眠りこけるホシノを膝の上に乗っけてのんびりしていたところ、対策委員会の部室の中にセリカが蹴破るようにして入ってきた。
「うへっ!?」
「どうしたんだセリカ?勢いよく入ってきて……ホシノが起きちまったじゃないか……。」
「そんなことはどうでもいいのよ!それよりみんなこれ見て!」
セリカはそう言って何かのチケットのような物を掲げる。
「私、ビンゴ大会で当たったの!しかも一等!!」
「……というわけで先生をお呼びしたんです。」
アヤネが先生にかいつまんで説明した。
「へえ、ビンゴ大会で一等が……。」
先生も目を丸くして驚いている。
「ああ、正直セリカが当ててきたっていうからあまり信用してなかったんだが、ぱっと見はちゃんと"リゾートの使用権"だったからな。ありがたく使わせてもらおうと思ったわけだ。」
「ん、先生は対策委員会の顧問だから呼ばないとと思って。」
「私たちのバカンス、先生もついてきてくれますよね?」
「もちろん!喜んで参加させてもらうよ!」
「よ~し!じゃ、早速準備しよっか!」
おーー!、という掛け声とともに各自リゾート出発に向けて準備を始める。
数分後、先生とアビドス一行はコルベットに乗って地図に記されたリゾートへと向かった。
「えへへ、まさか私もみんなと一緒にリゾートにいけるなんて……。」
そう後部座席でつぶやくのはユメだ。
今日はどうやら休みだったらしく、リゾートに向かう途中で拾ってきたのである。
「ユメ先輩とはこうして遊ぶ機会はほとんどなかったですからね。こういうのもいいかなと思って。」
「でも、砂漠では水着になって一緒に遊んだよね?」
「だ、だからあれは忘れてくださいよ!」
相変わらずユメの前では昔の口調に戻ってしまうホシノ、でも、楽しそうなので何よりだ。
「さて、地図の座標を見る限りだと……この辺か。」
コーストが適当な浜辺にコルベットを着陸させる。
「……着いたわね、リゾート!」
「……パンフレットによると、すごいリッチなリゾートらしいですね。楽しみです☆」
「ん……そうだね。」
「あ、あはは……そうですね……。」
砂浜に降り立った皆だが、どことなく反応がおかしい。
まあ、それもそのはず……
「なあ、現実逃避してるとこ悪いんだが……地図を見た感じ、目的のリゾートとやらは……あれだぞ?」
コーストの指さす先には、薄汚れ、全体的にさびれた雰囲気のリゾートの残骸とでも呼ぶべき建造物が建っていた。
「うう……なによあれっ!リゾートでも何でもない、ただの廃墟じゃないの!人っ子一人いないし!」
「そうだね~……これはおじさんも予想外……。」
「ねえ、本当にこの島なの?地図の読み間違いとかじゃなくて?」
〈私のナビゲーションを疑うというのですか?〉
「……そう怒るなテラモン。セリカの気持ちも汲んでやれ……。とはいえ、テラモンの言う通り件の場所はここで間違いない。」
「あ……皆さんこれ……。」
その時、チケットとパンフレットを確認していたアヤネが何か気付いたようだ。
「セリカちゃんが当てたこのチケットですが……リゾートの使用権ではなく、この"土地"の利用権だそうです……ほら、ここに小さく"チケットを保有するものに、リゾート地を利用する権利を与えるものとする。当該地の状態については保証しかねます"って……。」
「うへ~……なるほどね~……。」
「これって、つまり……。」
「簡潔に言って、詐欺だな。」
コーストの言葉にセリカが崩れ落ちる。
「そんな……せっかく今まで頑張ってきた分、みんなでゆっくりする時間が作れたと思ったのに……それなのに、どうしてこんな……。私たちが、何したっていうのよ……。」
「セリカちゃん……。」
「………………。」
セリカの頬を一筋の涙が伝った。
しかし、全員が悲しみの空気に飲まれる中に一人、とても楽し気な雰囲気の男がいた。
「ははは!セリカ、確かにこれは詐欺だ。…………だが、これは俺たちにとって最高のプレゼントじゃないか!」
「くすん……いったい何のことよ、コーストさん。」
セリカが涙目でコーストに聞く。
「ホシノ、ユメ、お前たちも覚えているだろう。あの校庭に一晩で家を建てたのは誰か、そして、アビドス高校を半分面影が消えるほどに改造したのは誰なのかを。」
「それだけ改造してるって自覚はあったんだね……でも、そうだね。」
「そうですねぇ……コーストさんなら問題ないですね!」
「え?どういうこと?」
セリカは一人だけ状況がよく呑み込めていないようだ。
「セリカ、今お前の前にいるのは数多の星を巡った
「っ!っていうことは!」
「ああ、俺達で過ごしやすいアビドスリゾートを造ろうじゃないか!」
「……!うん!」
笑顔で頷くセリカ。どうやら元気を取り戻してくれたようだ。
「お~、セリカちゃんはやっぱり笑顔じゃないとね~。」
「元気を取り戻してくれてよかったです☆」
「せりかちゃん……良かったです。」
元気を取り戻したセリカに皆も嬉しそうだ。
「よし、それじゃリゾートの復活、お前たちも手伝ってくれよ?」
「「「「「「おーーーー!!!」」」」」」
今ここに、アビドス高校によるリゾート復旧活動が始まった。
「ん?今、何かものすごいスピードで何かが空を飛んでいったような……。」
「え、なんかいた?」
密林の中、ヘルメットをかぶった集団が哨戒をしている。
「エンジンみたいな音が聞こえたわ。明らかな人工物……つまり、この島に新しく人が来たって事ね。」
「……!ラブ隊長!」
彼女たちの背後から出てきたのは同じくヘルメットをかぶる不良……河駒風ラブだ。
「うふふ……面白い流れになってきたわね。まだ誰も見つけてないポイントだと思ってたのに、すでに人がいるなんて。……今回のリゾート狩りは面白くなりそう。」
ラブは獲物のショットガンを担ぎ、正面に鋭い目を向ける。
「うちらジャブジャブヘルメット団のターゲットに近づくネズミは文字通り……ひどい目に合わせてやるわよ!」
コーストたちは一先ず建物の一室に入りリゾート復旧の方針を固めていた。
「さて、一から作るとは言ったが……見たところ建物自体の損壊は大したことないな?この分なら損壊個所を補修していったほうが早いか。それが終わったら増築をしよう。」
スキャナーによる損害レポートを眺めながらそんなことをつぶやくコースト。
特に必要がなくても何か付け足したくなるのは
「お前たちはとりあえず中を軽く清掃してきてもらえるか?俺は内部インフラの破損個所を修復してくる。」
「あ、私も行きます。」
「アヤネはこっちか。ほかは大丈夫か?」
「はい!大丈夫ですよ☆」
「ええ、私も問題ないわ!……ほら、行くわよホシノ先輩!今日はさぼらせないんだからね!」
「うへ~、さすがにおじさんも今日はさぼらないよ~……。」
セリカがホシノを引っ張って部屋を出ていく
その信頼のなさは日ごろの行いというものだろう。
「ははは……じゃあ先生、あいつらの様子を見ておいてくれ。」
「任せて。今日の私は引率の先生だからね。」
「ふふん、私もお姉さんですからね!ちゃんと皆を見ておきますよ!」
そう言って先生もシロコやノノミ、ユメと一緒に掃除場所へと向かった。
ユメはあんなことを言っていたが、コースト的には一番不安なのはユメであった。
「さて、それじゃ俺たちも仕事をするか……まずは水道関係か?」
「そうですね。水は大事です。」
そう言ってふたりが建物を出て外の水道のほうへと向かおうとすると、影から出てきたヘルメットと目が合う。
〈警告:脅威を検知//敵性戦闘集団〉
「え?なんだ、人……?」
「へ……?うわあ!だ、誰ですかあなた――」
ズガン!
「ギャンっ!?」
アヤネの悲鳴も鳴りやまぬ間にコーストがヘルメットをスキャターブラスターで吹き飛ばす。
「あれは……ヘルメット団?なぜこんなところに……。」
「あ!見つけました隊長!……っておい!おまえ、大丈夫か!?」
もう一人のヘルメットが影から出てきて吹き飛ばされたヘルメットに駆け寄る。
そしてその裏からはさらに続々と大量のヘルメットが出てきた。
その中から、正面にいた隊長格と思しきヘルメット……ラブが前に出てくる。
「うちの団員を吹き飛ばしたのはお前か?よくもやってくれたな。」
「不審者がいれば吹き飛ばすのは当たり前だろう。お前たちこそ、そんなにお仲間を引き連れて何の用だ?」
コーストがマルチツールをヘルメット団に突き付けたまま答える。
「はん!答えなくてもわかるだろう、"リゾートハンター"だよ。あんた達もそうだろ?目つきを見りゃわかるさ。」
「……フルフェイスのヘルメットに目つきもくそもないと思うが。」
「細かいことは良いんだよ。……それにしてもあんたのヘルメット結構イカしてるな。どうだ、仲間にならないか?」
どうやらコーストのエクソスーツのヘルメットが気に入ったようだ。
「すまないが、それは無理な相談だ。」
「そりゃ残念……じゃ、ここの掟通り、力で奪い取ってやる!お前達!武器を持て!!」
「……え、どういうことですか?」
「俺にも良く分からんが、数だけ集めた烏合の衆で俺たちに勝てると思うなよ……ミノタウロス!」
コーストの声に従ってミノタウロスが空から降ってくる。
「アヤネ、ミノタウロスに入って操作してくれ。」
「私がですか!?」
「アヤネは肉弾戦に向いてないだろう?あとテラモン、神秘でエクソスーツを強化だ。」
〈了解しました。〉
アヤネがミノタウロスに乗り込み、コーストのエクソスーツに神秘が流れ込んで一時的にキヴォトス生徒と同程度の耐久力と身体能力を得る。
「じゃあ、やろうか!」
コーストが強化されたスプリントとジェットパックでヘルメット団の中に飛び込む。
「あいつ、突っ込んできたぞ!」
「撃て撃て!」
コーストに向け大量の銃弾が撃ち込まれるが、前面にパーソナルフォースフィールドを展開しているうえ、シールド自体に神秘のバフが乗っているためコーストにはほとんどダメージは入らない。
そしてヘルメット団の集団の中心に入り込んだコーストは周囲の敵に適当にボルトキャスターで銃撃を加えた後、ジェットパックで飛び上がって下に向かってジオロジーキャノンを連発し始めた。
その姿はさながら爆撃機である。
「ぎゃあああ!!」
「何だあの銃!?威力高すぎだろ!」
ジオロジーキャノンの高火力に加えてその地形操作によって地面がボコボコになり、ヘルメット団はまともに身動きも取れなくなっていた。
一方アヤネのほうと言えば……
ドカッ!バキッ!ゴオオオオオォォ!!
「あ、アイツヤバいぞ!」
「逃げろ逃げろ!」
「ふ、服が焼けるぅ!!」
「ふふ……これ、ちょっと楽しいかもです……。」
その膂力と武装を生かして鬼神のような戦い方をしていた。
ジェットパックからのたたきつけでヘルメットを吹き飛ばし、火炎放射器で焼く。
普段自分ではできない力任せの制圧にアヤネは少し酔いしれていた。
かのアルテラが使うプローンスーツの使用にあたっては搭乗時の全能感に酔いしれないように特別な講習が組まれるというが、こういうことなのかもしれない。
「こいつらめっちゃ強いじゃん!総員退却!」
「うぐぐ……うちらジャブジャブヘルメット団が負けるなんて……くそー!覚えてなさい!」
かくして人数差を覆す圧倒的な戦力を見せつけられたジャブジャブヘルメット団はそんな捨て台詞を吐きながら去っていった。
「……結局アイツらは何がしたかったんだ?」
「リゾートハンター、と言ってましたけど……。」
「おーい!こっちですごい音がしたけど二人とも大丈夫?」
二人で首をかしげていると、戦いの音を聞きつけたのか建物のほうから先生たちが出てきた。
「ああ、襲撃があったが特に問題はない。」
「襲撃!?いったい誰が何のために……。」
「……いきなり来たもんで俺にも良く分からんが……今回は、ただのバカンスってわけにはいかなそうだな。」
全員なんとなく自分たちがトラブル体質だという自覚のあるアビドス一行は、その言葉を聞いて天を仰ぐのだった。
「ぅぅ、なんだよアイツら。強すぎだろ……。」
「髪がチリチリ……最悪……。」
「どうする、隊長?もう他の島にいくとか……?」
「……今、なんて?」
ラブがヘルメット団員を睨みつける。
「ひ、ひいっ……な、なにも……。」
「で、でもしょうがないじゃん!あいつら、まだ仲間がいそうな感じだったし、このままじゃ勝てないよ!」
ヘルメット団員が悲痛な叫びをあげた。
「それもそうだな……なら、少し気は進まないが……。」
ラブは通信機を手に取る。
「うちらも援軍を呼ぶとすっかぁ。」
subnauticaです
今回からアビドスリゾート編です。
ちなみにヘリのくだりは完全に削りました。コルベットあるし、ええかなと思って。
次回は災厄、登場
では、また次回お会いしましょう。
先に書いてほしいイベントは
-
桜花爛漫
-
アビドスリゾート
-
4546B