突如として現れたヘルメット団たちを適当にボコした後、コーストたちは順調にリゾート地の修復を続け、さびれてボロボロだった建物は見違えるほどにキレイになった。
「最初はあんなだったけど、片づけたら案外きれいになったじゃない。」
セリカもその変貌っぷりにご満悦の様だ。
「ええ、確かにきれいにはなりましたけど……コーストさん、あれは何ですか?」
アヤネがそう言って指さす先には、下手すればもとからあった建物よりも大きい建造物がそびえたっていた。
「ん?ああ、あれか。内部の修復が終わって時間が余ったんでな。宿泊施設を増築したんだ。どうだ?なかなかいい出来だろう?」
「増築というかむしろあっちがメインと言えるほど存在感がありますけど……まあ、いいですか。ここは私たちだけのリゾートですし。」
「私も建物自体はとてもいいものだと思うんですけど……あの、コーストさん、あの周りに生えてる植物はどこから持ってきたんですか?この辺りの植物ではないですよね?」
ノノミが指さす先には確かにこの辺りの植生とは違う植物が生えていた。
「あれは単純に炭素で作った装飾用の植物だが?」
「え~と……あ、造花みたいに作り物ってことですか?」
「いや、普通に植物だが。」
「……えっと、それはつまり生命を炭素から作り出したということですか?」
「動物となるとさすがに無理だが……植物は別にそう難しい事でもないだろう?」
「……それ、外では出さないでくださいね。」
「?」
ノノミは疲れたような顔をしていた。
「中の整備は大体終わったけど、後はどうしようか?」
「そうですね……。」
「ん……食料を集めるべき。」
シロコが手を上げて発言した。
どことなく目が輝いているようにも見える。
「食料……ですか?」
「うん、食料。無人島で次に気にしなきゃいけないのは生存のための食糧の問題。」
「生存って……別にそこまで切羽詰まった状況じゃないと思うけど……ここはスマホの電波が飛んでるし、何かあればコーストさんのコルベットでいつでも帰れるし……。」
「こういうところでは魚でたんぱく質を補給するのが最善。」
「シロコ先輩?話聞いてる?」
「……ん、必ず取るよ、"生存"のために。」
シロコは聞く耳も持たずつらつらとしゃべり続ける。
完全に自分の世界に入っているようだ。
「なんと、ここに釣りの道具が。」
皆が見つめる中、シロコは自分のバッグから釣り竿を取りだす。
「……準備は出来てる、行こう。」
「……完全に準備してきてるじゃない。」
「シロコちゃん、生き生きしてるね~。」
「でも、いいんじゃないか、釣り。俺も暇なときは良くやるからな。ホシノ、前に渡したマルチツールにも釣り竿のアタッチメントが入ってるはずだ。シロコと一緒に行かないか?」
コーストはマルチツールを釣り竿に変化させてそう言った。
「うへ!?おじさんも?」
「ん!ホシノ先輩も釣りをするべき!」
「……しょうがないな~。カワイイ後輩の頼みだからね~。」
シロコの輝く目にホシノが折れた。
「じゃ、おじさんたちはシロコちゃんとコーストさんと一緒に釣りしてくるから、先生はそっちよろしくね~。」
「分かったよ。ホシノたちも釣り、楽しんできてね!」
「せっかくなら大物を釣ってきてよ!」
「私たちも楽しみにしてますね☆」
「ん、任せて。」
ワクワクのシロコに続いて、コーストとホシノは海岸線に向かった。
「この辺がいいか?」
「……ん、ここで大丈夫。」
「うへ~、おじさんには良く分からないな~。」
良さげな海岸線に立ち、各自釣竿を海に向ける。
「ん?コーストさん、何そのエサ?」
シロコがコーストの釣り竿についているピカピカ光る餌に興味を示した。
「これは生体光学ルアーってやつだな。より大きく、希少な魚が釣れるようになっている。せっかくだし、二人にも渡しておこう。」
「へ~、そんなエサもあるんだね。」
「ちなみにだが、二人は釣りをしたことはあるのか?」
エサを手渡しながらコーストが聞いた。
「ん、ない!」
「おじさんもないね~。」
「……まあ、アビドスに釣りができそうな場所はないからな。というかシロコはやったことないのにあんなに自信満々だったのか……。」
そんなことを喋りながら、釣りのセッティングを完了させた。
「え~と、おじさんはここからどうすればいいのかな?」
「なに、そんなに難しい事じゃない。釣り糸を海に垂らして、魚が食いついた感覚があったら糸が切れない程度に引き上げればいい。ある程度はマルチツールが補正してくれる。」
「釣った魚はどうしよう?」
「スキャンして食用になりそうなら回収、でなければリリースでいいんじゃないか?」
「ん、わかった。」
そこからはのんびりと釣りを続けた。
のんびりが過ぎてホシノが眠りかけたりもしたが、まあそれもいい思い出になるだろう。
そんな感じで釣りに集中していると何やら大人数の気配が近づいてきた。
〈警告:脅威を検知//敵性武装集団〉
「ここにいたのか!」
「ん?なんだ?」
コーストたちが横に目を向けると、少し前に散々ボコしたはずのヘルメット団が立っていた。
「ん、誰?」
「あれがコーストさんが言ってた子たちかな?」
シロコとホシノがひそひそ話し合う。
「あれ、さっき戦った連中と違う……。」
「ほかにも仲間がいたのかよ……でも、あのヘルメットは!」
「なんだ、まだ懲りてなかったのか。戦ってやっても構わんが、多分結果は同じだぞ?」
「うるさい!今回はこっちにも応援部隊がいるんだ!……さあ、出番よ。給料分は働きなさい……ワカモ!!」
「……何だと?」
ラブの声とともに、ヘルメットの集団を割るように狐面の少女が現れる。
七囚人が一人――ワカモである。
「正直がっかりです……たったこれっぽっちの人数に苦戦されていたのですか?それでどうやってこのリゾートを制圧するというのですか……って、あら。」
コーストとワカモの目が合う。
「……ワカモ、お前こんなところで何してるんだ?」
「……それはこちらのセリフですよ。まさかこんなところで会うとは思いませんでした。」
コーストがマルチツールを釣り竿からブレイズジャベリンに切りかえ、トリガーに手をかける。
ワカモも肩に担いだその銃を手に構えた。
「一応聞いておくが、どうしても俺とやり合うというんだな?」
「……私も先生のご友人に手を出すのは本意ではないのですが、一応これも依頼ですので。殺しはしませんから大人しく制圧されてくださいな。」
お互いの緊張が限界まで高まったその時――
「あ、待って、おじさんの竿に何かかかった。」
ホシノが釣り竿を巻き上げる。緊張感が死んだ。
キュルキュルキュル……ザパンッ!
「おお~、きれいなクラゲだね~。」
ホシノが釣り上げたのは透き通るように美しい体を持つクラゲだった。
ちなみにコーストはワカモから目を離せず、そのクラゲの正体に気づくのが遅れた。
「……ホシノ、ちょっと状況考えてくれ。」
「うへ~、分かったよ。この子はいったん海に戻して……じゃ、キミたちやろうか。」
ホシノがヘルメット団のほうを向いて銃を構えた時、その場の全員に悪寒が走った。
そう、まるで恐ろしいものを呼び出してしまったかのような……。
「な、なんですか、この気配は……。」
「ん、なんかまずい気がする……。」
「うへ~……おじさん、もしかして何かしちゃったかな?」
ホシノたちは緊張の面持ちで周囲を見回すものの、コーストはその気配に覚えがあった。
「な、なぜこのタイミングで……ん、待て、クラゲ……ホシノ!さっき釣ったクラゲはどんな見た目だった!」
「え!?どんなって……青く手透き通るようなきれいなクラゲだったけど……。」
返答を聞いたコーストは天を仰ぐ。
「……あなた、この気配の正体に覚えがあるのですね。」
ワカモが聞く。
「ああ、まさかこんなところで出会うことになるとは思わなかったがな。ワカモ、ここは一先ず休戦にしてくれ。お前たちも武器を構えろ、出てくるぞ。」
そして奴は現れる。
それは怒れる深海の化身――
「わあああああ!?」
「なんだあれ!?」
突如として海から現れた巨大なクラゲ――深海のガーディアンにヘルメット団たちが悲鳴を上げる。
そして恐怖に震えるヘルメット団たちを尻目にガーディアンはその体を震わせ、周囲に分体――境界の脅威を召喚する。
凄まじい量のそれは付与付与と漂いながらこちらへと攻撃を仕掛けてくる。
「お前達!そこで縮こまってないであれを撃ち落とせ!触れたら爆発するぞ!」
コーストはパルススピッターで弾幕を張り、境界の脅威たちを撃ち落としていく。
シロコとホシノも状況は呑み込めてないが、放置するわけにはいかないと銃を手に持ちガーディアンに攻撃を続ける。
「私も負けていられませんわね。」
ワカモも己の神秘を生かし、高火力の弾丸で境界の脅威を駆逐する。
"災厄のワカモ"の名は伊達ではない。
「……おい、お前達!へたり込んでないでうちらも戦うぞ!」
「隊長……でもあんな化け物……。」
「敵のアイツらは戦ってるんだぞ!ここであれと戦えないようであいつらに勝てると思ってんのか!」
「チィッ!なら……ウチだけでも行く!」
「あっ……隊長!」
ラブはヘルメット団の集団を抜け出し、戦乱へと混じっていった。
「うう……あたしも行く!」
「おい!本当に大丈夫なのか?」
「なら、隊長だけに行かせるのか!そんなことさせられるか!うちらは、隊長についていくためにジャブジャブヘルメット団に入ったんだろう!」
その言葉にヘルメット団員たちはハッとなる。
「そうだ……あたしたちは隊長についていくって決めたんだ。」
「隊長が戦うなら、あたしたちも戦わないと!」
ヘルメット団の士気が高まる。
「みんな、隊長に続けーー!」
「「「おーー!!」」」
「コーストさん、これキリがないよ!?」
「……境界の脅威は無尽蔵に湧いて出てくる。しかもこっちの人数が多いせいか湧き出る数も異常に多い。このままじゃいつまでたっても本体が削れないぞ……。」
コーストたちは異常に湧き出る境界の脅威の対処に追われて肝心の深海のガーディアン本体のほうへの攻撃ができずにいた。
「(このまま行くとジリ貧だ。何か策は……。)」
その時コーストは思い出した。ポーロにもらった新しい武装のことを。
「……こいつならいけるか?」
コーストはマルチツールをイオンエクセキュータ―に換装し、実質弾薬となるイオン電池を入れる。
〈テクノロジーをリチャージしました。エネルギー収束まで30s〉
「長い!」
しかしチャージを始めてしまった以上後には引けない。
マルチツールの武装が使用できず、境界の脅威に対処できる人数が減ったことでさっきより状況は悪くなってしまった。
だが、そこに援軍が現れた。
「うちらを忘れるなよ!」
後ろから現れたヘルメット団とラブたちが一斉に銃撃を始める。
ホシノやワカモと比べれば戦闘能力は低いが、今は個の戦力より数が求められる状況。
状況はかなり好転した。
「……助かるぞお前達。そのまま後三十秒持ちこたえてくれ!そしたらあいつを殺れるかもしれん!」
「ああ、うちらの力見せてやる!」
「ええ、わたくしたちにお任せください。」
「ん、問題ない。」
「良く分からないけど、コーストさんを信じるよ~。」
境界の脅威はすでに空に広がるほどに増殖しているが、各々が銃撃で必死に退けていく。
ヘルメット団とホシノとシロコの奮闘の末、ついにその時が訪れた。
〈収束完了//トリガーを引いて発射してください〉
コーストは砲口をガーディアンに定め、そのトリガーを引いた。
「死に晒せ!!」
ドゴオオオオオオン!!
小型の隔離執行装置とも呼べるその光は、境界の脅威に阻まれた深海のガーディアンをあっさりと貫き、空のかなたへと消えていく。
体の中心に巨大な穴をあけられた深海のガーディアンはその身を境界に溶かしてどこかへと消えていった。
「や、やった、倒したぞ!」
「やったー!……ぶべっ!?」
深海のガーディアン撃破に浮かれたヘルメット団員たちは境界の脅威の接近に気づかず、その爆破をもろに食らってしまう。
「……境界の脅威はあいつを倒しても消えない。こいつらを駆除するまでは戦いは終わらないぞ。」
「先に言え!」
その後は共同で大量に生み出された境界の脅威を駆除していった。
とはいえ増殖の元はいなくなっていたのでそこまでの時間はかからなかったが。
「これでおしまいかな。」
バンッ!
ホシノが最後の境界の脅威を駆除した。
「ああ、よく頑張ってくれた。ヘルメット団たちも、巻き込んで悪かったな。まあ、お前たちも俺たちを襲おうとしてたわけだし、ここはお互いさまってことで……。」
「納得できるか!」
ラブが叫ぶ。
「ほう、納得できないか。なら……ここからまた戦うか?」
コーストが深海のガーディアンを吹き飛ばしたその方向をヘルメット団へとむける。
ラブ達の顔に明確な焦りが見えた。
「……いいか!今日はここで帰ってやるが、次はこうはいかないからな!覚えておけ!」
ラブはそれだけ言い残してヘルメット団員たちと共にどこかへと走り去っていった。
「あ、おい……また来るつもりなのか?」
「うへ、思ったより愉快な子たちだったね。」
「ん、今は見逃すけど、次来たら潰す。」
走り去るヘルメット団たちの背中を眺めながらコーストたちはそんな言葉を漏らす。
いい時間になってしまったので拠点に戻ることにしたのだが、途中でヘルメット団が来てしまったので最終的な釣果は微妙だった。
subnauticaです
災厄がやってきました。海の下から……
深海のガーディアンはもう出せそうな場所がここぐらいしかなかったので強引に出してしまいました。ノーマンズスカイの数少ないネームドボスなんでね。
次回は……まだあまり決まってないです。なるようになる。
では、また次回お会いしましょう。
先に書いてほしいイベントは
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桜花爛漫
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アビドスリゾート
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