「ええ……その襲撃した奴ら、本当にまたやってきたの?」
そうつぶやくのはセリカだ。
ヘルメット団とともに深海のガーディアンを撃破した後、コーストたちはとりあえず釣れた魚をもってリゾート地へと戻ってきていた。
「ああ、まさかあんなに早くまたやってくるとは思わなかったな。」
「しかも、あの感じだとまたやってくるだろうね~。」
「ん。それにあのワカモとかいう狐、かなり厄介そうだった。」
「え、ワカモ?」
シロコの出した名前に先生が反応した。
まさかここで知ってる名前が出てくるとは思わなかったのだろう。
「ああ、あの時地下室で出会ったワカモで間違いない。」
「そ、そう……。でもなんでこんなところに?」
「雇われたとか何とか言ってたから傭兵として活動でもしてるんじゃないか?」
聞いたところ破壊活動が趣味らしく、ゆえにこうして暴れられるタイプの仕事を選んでいるのだろうが、まさかこんな人里離れた島で会うとは確かに驚きであった。
「まあアイツらについてはとりあえずどうにかなるだろう。少なくともこの建物周辺なら防衛機構が働くからな。」
コーストの言葉に皆が驚きの顔を見せた。
そんな話は初耳だったためである。
「え、防衛機構?いつの間にそんなもの仕込んだの?」
「いや、防衛機構そのものは元からこの島についていたものだったぞ。なあ、アヤネ。」
「はい。もとからこのリゾートには"リゾート防御システム"なるものがついていて、それの起動に成功したんです。まあ、起動した瞬間に私たちは襲われましたけどね。」
コーストたちは別にこのリゾート地に入館登録などをしてはいってきたわけではない、言わば不法侵入者である。
防御システムが働くのも当然と言えば当然であった。
「ええっ!大丈夫だったの!?」
「安心しろ。テラモンがすぐに鎮静化してくれたからな。」
〈ええ、感謝するといいですよ。〉
暴走を始めた直後にシステムに入り込んで防衛装置を掌握したテラモン。
最近はすっかり便利AIのようになってきている。
「……でもコーストさん、あの武装はちょっとやりすぎではありませんか?」
アヤネが少し不安そうな顔で聞く。
「別にやりすぎってことはないだろう。侵入者を排除するのが防衛の本分なんだからな。」
「え、一体何を置いたの、コースト?」
コーストのやりすぎる癖を良く知る先生はアヤネと同じく不安げな表情を見せる。
「防御用のタレットにコルベットの武装パッケージを接続できたからな。フェーズビームとかインフラナイフ・アクセル、ロケットランチャーなんかを設置したんだ。後、リゾートにあるスキャナーも改造してどこに何がいるかもわかりやすくしたな。」
「フェーズビームって確かあの宇宙船についてるビーム砲だよね……。」
いざとなれば各所からレーザービームが放たれるリゾート……まあ、ライトアップととらえればそう悪くないのかもしれない。
ドゴオオオオオオン!!
「ぎゃあああ!!」
「……どうやら、早速仕事をしているようだな。」
「まあ……これがあればしばらくは平穏にリゾートが楽しめるだろうし、いいんじゃないかしら?」
「コーストさん、私が学校にいたころと変わってないねぇ。」
リゾートを楽しむために、ひとまずはジャブジャブヘルメット団の被害は無視することにした。
「うう……隊長、全然近づけないです……。」
「あいつら、リゾートに変な武装を配置してて……。」
一方ジャブジャブヘルメット団たちと言えば、コーストが配置した武装に阻まれ、リゾート地に近づくことさえできずにいた。
「うぬぬぬ……ワカモ、こういう時のためにあんたを呼んだんだ!どうにかならないのか?」
ラブが叫ぶ。
「そう喚かないでくださいな。……あなたたちは知らないかもしれませんけれど、あのコーストという男、それなりに有名な賞金稼ぎなのですよ?詳しい情報は出回っていませんが、カイザーの基地を壊滅させたという噂が出ているくらいなのです。わたくしとしても無策で飛び込める相手ではありません。」
ワカモは裏社会でも最高位の戦力を持つ実力者としてそれなりに情報が入る立場にある。
そのためか、目撃者をほぼすべて屑鉄に変えたはずのカイザーの一件についてもどこからか聞き及んでいた。
「さて、それを踏まえてもらったうえで聞かせてもらうのですが……あなた方、まだ何か切り札を隠し持っておりますよね?」
ワカモの言葉にラブの息が詰まる。
「切り札……まさか、あれを!?ダメに決まってるだろ!あれがなくなったら、うちらこの島から出れなくなるんだぞ!?それに、あの船はうちらの家みたいなもんなんだ!いくらあんたでもあの船はダメだ!」
ラブは必死になって抵抗の言葉を吐き出すが、ワカモには微塵も響いていない。
「あら……?わたくしの言い方が悪かったでしょうか?」
ワカモは手に持った銃剣の先端をラブの喉元へと突きつける。
何なら先端は少しのどに刺さっていた。
「わたくしは別に許可を求めているのではありませんよ?」
「で、でもあれは……。」
グリグリ
「ひいっ……」
「切り札、まだ残ってますよね?」
ワカモによる丁寧なお願いの結果、ラブ達ジャブジャブヘルメット団は"家"の実質的な所有権をワカモに奪われた。
「先生の友人……妬ましい……でも傷つければ先生が悲しんでしまいます……ならば、私の実力だけでもあの男に思い知らせなければ……。」
「あ、コーストさんそこに椅子造って。」
「ああ、ここで大丈夫か?」
コーストたちは今バーベキューパーティに向けて会場設営を進めている。
本来こういったものをやろうと思えば折りたたみいすだったり、日よけのテントだったりといろいろ荷物がかさむものだが、ビルダーがあれば全部その場で建築ができるので設営はかなりスムーズに進んでいた。
何ならビルダーで作り出したものはいくら汚れても解体すればいいだけの話なので扱いに気を使わなくてもいいというのがいいポイントである。
当初は肉も栄養プロセッサで加工すればいいんじゃないかとも思っていたが、雰囲気がなくなるからやめてほしいと言われたので断念した。
「みなさ~ん☆お肉と野菜、持ってきましたよ!」
「こっちにはお魚が入ってるよぉ!」
ノノミとユメがクーラーボックスに入った食材を運んで来た。
コーストも食材としてインベントリを圧迫している"何か"のステーキ肉と"何か"のぶつ切り肉を提供しようと思ったのだが、こちらも全会一致で拒否されたため断念した。
「ん、こっちにも魚がある。」
そう言ってやってきたのはシロコだ。
あの後釣りに満足したシロコは今度は素潜りをはじめ、海底の貝やら魚やらを取り始めたのである。とんでもないバイタリティだ。
「……もしかして準備してる間、ずっと潜ってたのか?」
「ん、素潜りも楽しい。」
「うへ、すごい体力だね……。」
シロコは孤島のサバイバル気分を目いっぱい楽しんでるようだ。
「そう言えば、あいつらしばらく見てないわね。」
「ヘルメット団の連中か?最初のほうは防衛機構もかなり起動してたし、さすがに帰ったんじゃないか?単純な武装以外にも結構な数のガードロボも配備されていたはずだしな。」
「島の外に追い出されたのではないでしょうか?」
「だといいんだけど……。」
嫌な予感が拭えないのか、セリカが不安げな表情だ。
「そんな辛気臭い顔するなよ。せっかくの機会だ、楽しまないとだろ?」
「そうだよセリカ。もっと笑顔で!」
「う、うるさい!分かったわよ!」
相変わらずの態度だが、どうやら元気は出たようだ。
「ふふ、準備はあらかた整いましたね!これからは、バカンスの時間ですよ☆」
ノノミの音頭で、アビドスのひと夏の思い出が始まった。
一行は波打ち際に集まった。
どうやらみんなで集まって写真撮影をするらしい。
「うへ~……暑くて溶けそうだよ~……。」
「ほらホシノちゃん、記念撮影なんだからしっかりしないと!」
「うへ~……ユメ先輩に諭されるなんて……。」
「何でそんなにいやそうなの!?」
「ほらそこ、もう撮るからちゃんとしてくれ。」
そう言いながらコーストはドローンカメラを操作する。
これを利用すれば第三者視点で写真撮影が可能になるのだ。
「じゃあ、3,2,1」
パシャッ
「……こんな感じで問題ないか?」
「おお~よく取れてるじゃん!」
「そう言えばみんなで写真を撮る機会って今まであまりなかったわね。」
「これからはもっといっぱいとってもいいかもしれませんね!」
撮影を終えた後、皆は思い思いに遊び始める。
海の中ではシロコはまた素潜りをはじめ、浜辺ではセリカ、アヤネ、ノノミ、ユメがビーチボールをしている。
ちなみに先生はノノミの剛腕から放たれたスマッシュが顔面にクリーンヒットしてダウンしている。
「ホシノ、エクソスーツは着れたか?」
「オッケーだよ~。」
「じゃあ潜っていくか。」
コーストとホシノはエクソスーツを利用して魚を眺めるために、より深いところへの潜水を目指していた。
沖合に出たところからコーストとホシノ(エクソスーツ)は海の中へと潜っていく。
「わあ~、まだ結構浅いけどお魚さんがいっぱいいるね~。」
エクソスーツ越しでもホシノの瞳がキラキラと輝いていることがうかがえる。
コーストとしても連れてきた甲斐があるというものだ。
「この辺りは動物も植生もかなり豊かなようだな。」
「そうだねぇ……あ、見て見てコーストさん、あそこにでっかいヤドカリがいるよ。」
「どれどれ……ヘルメットヤドカリ?この星にもいたのか……。」
そこにいたのはヘルメットからヤドカリの体が飛び出た珍妙な生物。
ホシノは近づいてヘルメットの頭をなでている。
もしかしたらこのヤドカリがどこかのヤドカリバトルで活躍する日が……来るかもしれない。
遊びまわって日が暮れてきたころ、バーベキューパーティが始まった。
「……先生、大丈夫か?きれいに顔面に入っていたが……。」
「あはは……大丈夫だよ。まだ鼻の頭がちょっと痛いけどね……。」
コーストと先生は椅子に座ってはしゃぎまわるアビドスの面々を眺めていた。
「あ!コーストさんも先生も、ちゃんと食べてますか?」
「安心してくれ、ちゃんと自分の分は取ってるさ。……それよりこのステーキ肉なんだが本当に要らないのか?」
「……その肉はなんて生物のどこの肉なんですか?」
ノノミがにっこりと笑って聞く。目は笑ってない。
「……kemia-kemiaのどこかの肉です。」
「しまってください。」
「……はい。」
コーストは折れた。
「まあまあノノミちゃん、確かにコーストさんが持ってる食品って基本良く分からないものばっかりだけど、ちゃんと美味しいものもあるんだよ?私とホシノちゃんも食べたことあるし。」
項垂れるコーストのもとにユメがフォローに入る。
「……味が良ければいいってものじゃないんです。コーストさん、さっき言ったkemia-kemiaとやらの生物の画像、見せてくれませんか?」
「ああ……。」
そう言ってコーストが見せた画像には……緑と赤の体毛に覆われ、二足歩行で時折背中についた小さな羽で飛ぶ珍妙で何とも言えない生物が映っていた。
「これの肉を、食べたいと思いますか?」
「あ、あはは……ごめんね、コーストさん。私は力になれないかも……。」
ユメフォローはなんの力にもならずにどこかへと去っていった。
「まったく……そんなもの出さなくても食料はシロコ先輩がとってきたのも含めていっぱいあるんだから別にいいじゃない……。」
「……それもそうか。」
くだらない話をしながらも、時間は進む……
「花火は……これだけおけば十分か。」
「そうだね~、じゃ、点火よろしく~。」
コーストが大量に買ってきた花火に火をつけていく。
花火は以前アビドスでやったものと同じ統合水銀コンパニオン産のものだ。
点火から数秒後、以前よりも多く設置された花火がリゾートの空をカラフルに染め上げた。
みんな揃って、息をのむように夜空を見つめている。
「これが宇宙の花火か~、きれいだね!」
「そうですねぇ……。」
「そう言えば先生とユメには見せるの初めてだったか。気に入ってくれたようで良かったよ。」
「気に入りましたけど……どうして私が学校にいるときに見せてくれなかったんですか!」
「そ、それは……あの時は花火とかやるほどに余裕がなかったからな。」
コーストが少し申し訳なさそうにしていると、ユメがクスリと笑う。
「そんなに気にしなくてもいいですよ。あの時色々大変だったのは私自身良く分かってますし……でも、これからは毎年見せてくださいね?約束ですよ?」
「ああ……これから時間はたくさんあるからな。」
そこからは、次々に打ちあがる花火を眺めて夜を過ごした。
花火がうち止むころにはみんな疲れて眠ってしまっていた。
翌日――
「皆さん、分かっていますね。死力を尽くして戦いなさい。」
「うう……はい。」
「隊長、いいんですか、これで……。」
「……とにかく、今は言われたとおりにやるしかない。」
降り注ぐ日差しの下、死んだ顔のヘルメット団を乗せたホバークラフトが海を進む。
船首にいるのはもちろんワカモだ。
「待ってなさい……私の実力、しかとその身に刻み込んで差し上げます。」
目的地に先生がいることをワカモはまだ知らない……。
subnauticaです
今回は基本的にバカンスパート中心で行きました。
皆楽しそうでいいですね。
こういうの書いてると海に行きたくなってきます。
多分次でアビドスリゾート編は最後ですかね。
次回、災厄、再来。
では、また次回お会いしましょう。
先に書いてほしいイベントは
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桜花爛漫
-
アビドスリゾート
-
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