リゾートを存分に楽しんだ翌日、コーストは浜辺に置いたソファの上で目が覚めた。
ちなみに腹の上にはホシノが頭を乗せて眠っている。
「いつの間に眠っていたのか……。酒も飲んでいないというのに騒ぎすぎたな。」
そんなことをひとり呟いていると、コーストの覚醒を悟ったのかホシノも腹の上で身じろぎをする。
「ううん……コーストさん?」
寝ぼけているホシノはそう言いながら長時間日の光にさらされていたエクソスーツの金属パーツに触れてしまった。
「あっっっつい!?」
指先に感じた高温に飛び上がったホシノはそのままソファから砂浜に落下してしまった。
「大丈夫か、ホシノ?」
「うへぇ……寝起きから散々だよ~。」
経緯はあれだがホシノの目は覚めたようだ。
その騒ぎが耳に入ったのかほかの皆も続々と目を覚まし始めた。
「ふぁ~……もう朝ですか……。」
「私たち、完全に寝落ちしちゃってたわね。」
「ん、首が痛い……。」
「あはは、シロコ先輩寝違えちゃいましたか?」
「か、顔に砂が……。」
皆三者三様の反応を示している。
ちなみにユメは浜辺の上でうつ伏せで眠っていたようだ。よくそんな体勢で眠っていられたものである。
「とりあえずみんな目は覚めたか?この辺のゴミを片付けていくぞ。」
「「「「「は~い」」」」」
まだ微妙に眠そうな皆を動かしながら浜辺の掃除を始めた。
数分後――
「まあ、こんなものだろう。」
バーベキューやら花火大会やらをしていた浜辺はすっかりきれいになった。
とはいえ家具の類はすべてビルダーで分解できたので本当にごみを拾うだけではあったが。
後処理を終え、一度建物のほうに戻ろうかというその時、エクソスーツに警報が届いた。
〈警告:脅威を検知//敵の船が接近中〉
「なんだと!?」
コーストは焦りと驚きの声を上げた。
船が近づいてきているということはコーストの常識であれば宇宙船による襲撃を意味する。
しかしここは浜辺、ここでいう船はそのまま文字通りの意味だ。
「いったいどこから……ああ、なるほど、朝から元気なものだな。」
コーストの視線の先には一隻のホバークラフト。そして船首にはワカモの姿が。
「コーストさん、なんか来てるけどあれは大丈夫なの?」
「問題ない。こういう時のための防衛機構だ。」
コーストの言葉通り島の各所に設けられたフェーズビームやロケットランチャーの砲台が稼働し、ホバークラフトへと一斉射撃が始まる。
正直この時点で決着はついたものだと思っていたのだが、ホバークラフトは思いのほか沈まない。
どうなっているのかとホバークラフトを拡大してみると、その光景にコーストは少し引いた。
「ええ……。」
「え、コーストさんには今何が見えてるの?」
セリカの声にコーストは自分の視界をスマホに映す。
そこには……自分の体を盾にしてホバークラフトを銃撃から守るジャブジャブヘルメット団の姿があった。
一般人がやれば一瞬でぼろ雑巾になるだけだろうが、彼女たちもキヴォトス人。しっかりと楯の役割を果たして船を守り切っている。
これは別にワカモから命じられてやっているわけではなく、自分たちの家を守るべくヘルメット団が自主的にやっているものである。
ワカモは都合がいい程度にしか思っていないが。
「肉楯か?酷いことをするもんだな。」
「集中攻撃をしておいて何を言ってるのよ……。」
コーストがそんなことを暢気につぶやいていると、エクソスーツに追加の警告が届く。
〈警告:防衛システムの電力設備がオーバーヒート//至急シャットダウンを推奨〉
「何!?」
コーストは再び驚きの声を上げる。
〈コルベット用兵器パッケージの消費電力が本来使用されるタレットのそれを大きく上回っているため、電力供給に無理が生じています〉
「うぐぐ……完全に忘れていた。」
そんなやり取りをしている間に防衛システムは停止してしまい、ホバークラフトの接近を許してしまった。
「さあ、コースト!私が直々に相手を……って、え、そのお姿……まさか、先生?」
「やあ、ワカモ。」
動きが止まる。
ワカモ、ここにきてようやく先生の存在に気づいた。
「おい、何してるんだあんた!うちらにここまでやらせたんだからちゃんとや、ぐはっ!?」
ワカモが話しかけてきたヘルメット団の一員を蹴り飛ばして思案にふける。
「(ここはリゾートの所有権を手にするために様々な派閥が争い合っている場所のはず、先生がそのような下劣な争いに参加為されるはずがありません……だとすれば何故?)」
「……なんか急に動きが止まったな。」
たっぷり十秒は悩んだ結果、ワカモの頭は明後日の方向の結論を出した。
「コースト……あなた先生の友人という立場を利用して、先生をこんな争いに巻き込むなんて……許しません!」
「あいつは何を言っているんだ?」
いきなり訳の分からない罪で問い詰められて困惑のコースト。
しかし、ワカモの勘違いはそうしている間にも加速していく。
「ああ、先生、こんな所に連れてこられて争いに無理やり加担させられてしまうなんて……このワカモが傍にいればこのようなことにはならなかったというのに……ですがご安心をわたくしが、あなた様をお救い致しますね♡」
「これ、もしかして私たちが先生を誘拐したって勘違いされてるんじゃない?」
「はい!実は私たち、誘拐犯なんです☆」
「……あまりバカなこと言わないでくれ。……はぁ、さっさと制圧してしまおう。」
コーストは上空にコルベットを召喚し、テレポーターでコックピットへと移動する。
「それがあなたが乗り回していると噂の乗り物ですか……あなた達、攻撃しなさい!」
ワカモの号令で銃撃が始まるも、当然銃弾はディフレクターシールドに防がれる。
「なっ……わたくしの銃弾でも傷一つつかないなんて!?」
『……逆に単なる弾丸でここまでシールドが削れていることが驚きだがな。まあいい、お返しだ。』
ワカモたちの銃撃の返報としてコーストはインフラナイフ・アクセルをホバークラフトに浴びせかける。
ガガガガガガガ!!
「ひいっ!?うちらの船が!!」
「ワカモさん!?船がえぐり取られたんですけど!?」
『ほれ、どうするんだ?今のうちに投降するんであれば、これ以上の攻撃は加えないが?』
沈まない程度にホバークラフトを破壊し、コーストが投降を呼びかけた。
「投降します!投降しますか――へぶぅっ!?」
「諦めません……!あなた様、このワカモが、必ずお迎えを……!」
『やはり話が通じないな……なら、多少手荒だが、。』
コーストがコルベットを操作して、ホバークラフトと対面する位置に移動させた。
「……正面勝負でもするというのですか?」
『いや?そんなつもりはさらさらない。後、死にたくなければ船から飛び降りることをお勧めするぞ。』
それだけ忠告をしてコーストは操縦桿を引き、エンジンをフルスロットルに回す。
コルベットの背後からキオストリームエンジンの眩い光があふれた。
「あの……あの船、ものすごい勢いでこっちに迫ってきてるんですけど!?」
「い、急いで海に飛び降りろ!!」
ジャブジャブヘルメット団たちが我先にと海へと飛び降りていく。
最後の一人が海に入った次の瞬間、
バゴオオオオオオン!!!
コースト操るコルベットがホバークラフトに正面から突っ込む。
二回りほど大きいうえにディフレクターシールドまで纏っているコルベットの衝突にただのホバークラフトが耐えられるはずもなく、海に浮かぶジャブジャブヘルメット団たちの目の前でホバークラフトは真っ二つに引き裂かれて海の藻屑となった。
「う、うちらの家がぁーー!!」
リゾートのきれいな海にジャブジャブヘルメット団たちの悲痛な叫びが響いた。
コルベットでホバークラフトを破壊した後、海に浮かんでいたジャブジャブヘルメット団たちをコルベットとノーマッドで回収した。
目の前で家が木っ端みじんになったのが相当堪えたのか、回収してもかなり大人しくしていた。
「うっ……うっ……」
「さて、大人しくこちらの質問に答えてもらおうか?」
「あの~コーストさん?だいぶ精神的にダメージが深そうだけど、本当に大丈夫かな?」
「……そうだな。ただ負けただけって感じには見えないような……。」
その後話を聞いたことで最後は半ばワカモに脅されてホバークラフトを持ち出したこと、ホバークラフトを家のように扱っていたことなどを聞き出すことができた。
「あ~……それはすまないことをしたな。」
「すまないで済むか!うちらの……うちらの家が……」
浜辺に座り込んでさめざめと泣くラブ。
敵ながらもさすがにかわいそうに見えてくる。
ちなみに今回の元凶となったワカモのほうだが……
「はわ、はわわ、あなた様、その……あの……」
「大丈夫だよ、ワカモ。その水着もとても似合ってるね。」
先生が頭を撫で続けることで動きを止めることに成功していた。
一人だけとても幸せそうである。
「それで、ラブといったか?結局俺たちを襲ってきたのは何故なんだ?というかなぜこんな辺境にいる?」
「あ、何言ってるんだ?お前たちもリゾートハンターとしてここに来たんだろ?」
「いや、違うが。」
その返答にラブの顔が固まる。
「あんた達リゾートハンターですらないのか?こんなのに私たちは負けて、船まで壊されて……うう……。」
「だ、大丈夫ですよ隊長!船はまた探せば何とかなりますから!」
ラブの余りの憔悴っぷりに周りのヘルメット団も必死に慰めている。
「……結局そのリゾートハンターってのは何なんだ?」
「はあ、いいよ。何も知らないみたいだし教えてあげる。まず、このリゾート群島にいる限り、あんた達がリゾート狩りをする気がなくてもずっとうちらみたいなのに狙われるわよ。」
「……リゾート狩り?」
「……群島?」
「何言ってるのよ!私たちにはちゃんとこのリゾートの利用券があるんだけど!?」
セリカが怒り心頭といった様子で叫ぶ。
「リゾート使用権ならうちらも持ってるわよ。」
ほら、と言ってラブは自分が持っているリゾート使用権を見せた。
そのチケットはセリカが持ってきたものと瓜二つであった。
「これは……」
「ど、どういうこと!?」
「……あんた達も何かの景品にあたってここに来たんでじゃない?」
「え!」
「ど、どうしてそれを……?」
「はあ、此処にいる連中は皆、何らかの手段でこのチケットを手に入れたからこの群島に来てるんだよ。このリゾートを使用する権利を持った奴はうちらの他にもごまんといるのよ!」
「「「「「えーーーー!!??」」」」」
アビドスの面々はみな一様に驚いたような声を上げた。
「……地形スキャンで近くの島にも人がいることは分かっていたが、まさかそんなことになっていたとはな……。」
「何よそれ!!ちょっと、契約書何処!?」
「あ、ありました!……あの人の言う通り下の約款の所にびっしりと書かれています。」
アヤネが懐から契約書の束を出す。
その約款の部分にはこのような文章が書かれていた。
"……本契約書の当選者(以下契約者)は、『ロストパラダイスリゾート』の『使用権限』を得る。
上記の『使用権限』とはリゾート内すべての土地、物品および設備全てに対する権限と、それによって生み出されたすべての収益と資源を所有できるものとして……"
「まさか、使用権限ってそう言うことなの!?」
「……やっとわかりました。これは明白な毒素条項ですね。いわゆる地震が不利益になる条項のことです。一見すると島それぞれを契約したように見えるから公正な取引のようにも見えますが……この契約書が指している"ロストパラダイスリゾート"はこの群島全体、つまりみんな同じ権限を持っているわけです。そして、この契約の穴を理解した人たちが、他の群島を攻撃し始めているわけですね?」
アヤネが今回の事件をすべてまとめてくれた。
「そう言うこと。だからうちらもリゾート狩りをしてたってわけ。」
「なるほどねぇ……これは、裏で引っ張っている人間がいそうな気がしてならないな。」
「みなさん……この島は危険です。変なことに巻き込まれる前に早くアビドスに戻ったほうが……。」
「なあ、陸に戻るんだったらうちらも乗せてってくれないか?うちら、もう海を渡る手段がないから……。」
ラブが沈んだ顔でそう告げる。
「ああ、その程度は構わない……そうだ、償いと言っては何だが、一つ俺たちの仕事を受ける気はないか?」
「……仕事?」
「ああ、今度俺たちの学校で祭りをやるんだが、その作業を手伝ってもらいたいと思ってな。勿論相応の謝礼も出そう。何なら新しいホバークラフトを用意してやってもいい。」
「本当か!?」
ラブが目を輝かせる。
その提案の様子を見ていたセリカがコーストを引っ張った。
「ちょ、あいつらに手伝わせるってそれ大丈夫なの!?」
「アビドスだと金を出しただけだと作業に来てくれる奴は少ない、あいつらならきちんと報酬を支払えば状況的にちゃんと働いてくれそうだと思ってな。」
「でも、あいつらヘルメット団なのよ!?」
「それも含めてだ。砂漠の住人にヘルメット団はかなりの数がいる。同じヘルメット団の連中がいれば、いくらか影響を抑えられるんじゃないかとも思ってな。ホシノはどう思う?」
コーストがホシノに目を見やる。
「う~ん……まあ、ぱっと見あの子たちもそこまで悪そうな感じじゃないし、おじさんは別にいいんじゃないかと思うよ。それに、コーストさんもそう思ったからあの子たちに言ったんでしょ?」
「そうなの?」
「……まあな。」
コーストの脳裏に浮かんだのは便利屋の面々。
あのどことなく悪になり切れなさそうな感じが似ていると感じた。
まあアルとはだいぶ方向性が違う感じではあるが。
「とりあえずアイツの返事を聞こうか……どうだ、ラブ?仕事を引き受ける気はあるか?」
「……なあ、お前たちはどうしたい?」
ラブが周囲にいるジャブジャブヘルメット団のメンバーに聞く。
「うちらは、隊長についていくだけです。」
「隊長の決断を信じますよ!」
「……そうか。決めたぜ。その仕事、うちらジャブジャブヘルメット団が引き受ける!」
「いい返事だ。期待しているぞ。」
コーストとラブはその場で握手を交わした。
「ところで、ワカモの奴はどこ行ったんだ?」
「ん?ああ、ワカモなら頭を撫で続けてたらどこかに走っていったよ。」
「……そうか。」
「そう言えば、そろそろシャーレに戻らないとな……すでにデスクの上が大変なことになっちゃってるかもしれないし……。」
「……ここ数日もだいぶ忙しかったと思うが、このまま仕事に行って大丈夫なのか?」
「そこはまあ、気合で……。」
コーストとしてもバカンスに来たはずなのにかえって疲労がたまったような気がしてならない。
もちろんバカンスそのものはとても楽しむことは出来たのだが。
「じゃあ、いったんアビドスに帰るとしよう。ここにも基地コンピューターとテレポーターは置いたからアビドスまではノータイムで帰れる。そこから先生をシャーレまで送るとしよう。」
「ここからアビドスまで一瞬で行けるのか……。そんな便利アイテムも持ってたんだね。」
「テレポーターを置いた場所にしか行けないが……まあ確かにかなり便利な道具であることには変わりないな。」
「それじゃ、ささっと片付けておじさんたちも帰るか。」
「そうですね。私たちも十分リフレッシュできましたし。」
「私も初めての海だったけどとっても楽しかったよ!」
「ん、それじゃ、荷物を取りに建物まで戻ろう。」
皆で歩き出した時、アヤネの手からリゾート券が落ち、ノノミが拾った。
「あ、チケットが。」
「ノノミ、それはもういらないんじゃない?」
「ふふ、記念に持ち帰ろうかと……あれ?」
ノノミが拾い上げたリゾート券を手に立ち止まる。
「おーい、どうしたんだノノミ?」
「いえ、契約書の端っこのほうにリゾート使用権の最終権利者の名前を見つけまして……。」
「……それはつまり、今回の件の元凶って事か?」
「このリゾート券をばらまいて争いを引き起こした張本人って事よね!いったい誰なの!?」
「……ちょっとおじさんにも見せてくれる?」
「はい、どうぞホシノ先輩。」
ホシノがノノミから契約書を受け取った。
「どれどれ……え~っと、これは……?」
ホシノが眺めるその契約書の端には……百鬼夜行のお祭り運営委員会、その印鑑が押印されていた。
〈閑章 アビドスリゾート復旧対策委員会編:完了〉
subnauticaです
アビドスリゾート編終了です!
ラブ達は今後も使いたいなと思ってこんな感じになりました。
次回からはエデン条約編に入っていこうかなと思っています。
ただ、補習授業部のあたりはコーストが絡みずらいのですっ飛ばすかもしれませんが……。
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では、また次回お会いしましょう。
先に書いてほしいイベントは
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桜花爛漫
-
アビドスリゾート
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4546B