そう言えば今更ですが会話文の文末にはやっぱり"。"は入れないほうがいいんですかね?
49 プロローグ:夢の中で
声が聞こえる。
誰かが自分の傍で何かを話しているようだ。
コーストはその声に耳をそばだてる。
「……つまるところエデン条約というのは"憎しみ合うのはもうやめよう"という約束。トリニティとゲヘナの間で、長きに渡って存在してきた敵対関係。それに終止符を打たんとするもの」
声の主は淡々と何かを喋り続ける。
エデン条約……トリニティとゲヘナがそのような条約を結ぶとはラジオでも耳にしたが、それに関する話か?
「互いが互いを信じられないがゆえに、久遠に集積していくしかなかった憎悪を解消するため、それに代わって新たに信頼を築き始めようとするプロセス。……より簡単に言おうか。つまりはゲヘナとトリニティの平和条約だ。ただ、連邦生徒会長の失踪をきっかけに、この条約は何の意味も持たなくなってしまった。"エデン"……それは太古の経典に出てくる楽園の名。そこにどんな意味が込められていたのかはわからないけど、まあ連邦生徒会長のいつもの悪趣味だろうね」
声の主は一つため息を吐く。
「……キヴォトスの、"七つの古則"はご存じかい?その五つ目は、まさに"楽園"に関する質問だったね。
"楽園にたどり着きし者の真実を、証明することは出来るのか"
……他の古則もそうであるように、少々理解に困る言葉の羅列だ。ただ、一つの解釈としては、これを"楽園の存在証明に対するパラドックス"であるとみることができる。」
度々出てくる"楽園"の二文字。
コーストが思い浮かべるのは二つ……一つは楽園の惑星、これはただ単に生命が過ごしやすい環境の星というだけで今回の件とは少し違う。
二つ目は……アルテミスの眠るシミュレーション世界だ。アルテミスの魂はあの世界で幸福な暮らしを送っている。
あれも見方によっては楽園と呼べるだろう。
既に亡くなっている者を、こうして現世に縛り付けるような真似をしてしまっているのは我々のエゴとも呼べるのかもしれないが。
「もし楽園というものが存在するのならば、そこにたどり着いたものは、市場の満足と喜びを抱くがゆえに、永遠に楽園の外に出ることはない。……もし楽園の外に出たのであれば、つまりそこは真の悦楽を得られるような"本当の楽園"ではなかったということだ。であるならば、楽園に到達したものが、楽園の外で観測されることはない。存在を捕捉されうるはずがない。"存在しないものの真実を証明できるのか"……つまるところ、これは初めから証明することができないことに関する"不可解な問い"なのだよ」
声の主はカップを取って紅茶を一口含み、そしてソーサーにカップを戻す。
「しかしここで同時に思うことがある。証明できない真実は無価値だろうか?この冷笑にも近い文章を通じて、何か真に問いたいことがあるのではないだろうか?エデン……経典に出てくる
声の主が席を立つ。
「先生……」
「先生?」
声の主に反応してコーストは声を出してしまった。
「……コー、スト?」
「おや……?先生の他にも客人がいたのかな?」
そう呼びかけられたコーストはこれ以上身を隠す必要もないかと考え、身を隠していた壁から姿を現す。
そこには金髪のどこか気品を感じる少女と先生の姿があった。
ただ、先生のほうはどこか心ここにあらずというか、精神が安定していないようにも見える。
「……すまないな。意図してここに入ったわけではないんだが」
「構わないとも。もしかしたら君をここに招いたのは私かもしれないからね」
「……どういうことだ?」
セイアの言い回しの意味がいまいちわからず、コーストはそう聞き返した。
「ここは須臾の夢の中。ただ、私はそんな夢の中で他人の意識とつながることがあるんだ。……今回は君と先生というわけだね。」
「そんな力が……」
「ああ、私としても自由に扱える力というわけではないのだけれどね……おや、残念だけれどそろそろ時間みたいだ。」
少女のそんな声と共に自分の意識が薄れていくのが感じられた。
「おい、これは……!」
「先生、そして天外からの来訪者である君……これから始まる物語は悲しくて、苦しくて、憂鬱になるような……それでいて、ただただ後味だけが苦い……そんな物語だ。しかし同時に、まぎれもない真実の話でもある。だから……どうか最後まで背を向けず、目を背けず、その時までしっかりと見ていてほしい。」
意識が薄れ、少女の声もどんどん遠ざかっていくように感じる。
「それが、このキヴォトスの変数たる君たちの義務だ。」
その声と共に、意識が途切れた。
アビドス高校――
「ちょっとコーストさん!いつまで寝てるの!」
校庭に建てられたコーストの自宅前で響くセリカの怒鳴り声でコーストは目を覚ました。
「なにか、夢を見ていたような……!?」
コーストがそんなことを言いながら時計を見ると普段起きる時間より二時間近くも遅かった。
同時にセリカが下で怒っている理由も悟る。
今日はリゾートから連れ帰ったジャブジャブヘルメット団についての話し合いをする予定だったのだ。
急いで玄関に出るとそこにはアビドスの面々が勢ぞろいしていた。
「遅い!何時間待たせるつもりよ!」
「あー……その、すまんな」
「まあまあセリカちゃん、ちょっと落ち着いて……」
「ホシノ先輩だって一時間遅刻してきたんだから口挟まないで!」
「……うへ~」
ホシノがフォローを入れようとするもセリカに一瞬で切って捨てられた。
「……今度からは気を付けるから、許してくれないか?」
「はあ……まあ、そこのおじさんと違って初犯だから今日の所は許してあげるわ。今度からはちゃんと気を付けてよね」
「ははは……ところで、確かに登校の時間は過ぎてるが話し合いを始める時間まではまだ時間があるように思うんだが?」
「何言ってるのよ。部室で待つより、こっちの家の中のほうが涼しいじゃない。」
「それが目的か……」
コーストはセリカの言い分に理不尽を感じつつも、特に何も言わず皆を居間に入れた。
「では、第1回目のアビドス砂祭り実行委員会会議を始めます」
「なあ、これ本当にあたしもいて大丈夫なのか?」
アビドスのメンバーで集まって砂祭りについての話し合いを始めたのだが、今回の会議にはジャブジャブヘルメット団のリーダーであるラブも参加していた。
「何言ってるんだ。今回の祭りではお前達にも馬車馬の如く働いてもらうつもりでいるからな。会議にも参加してもらわないと困る。」
「ば、馬車馬の如くって……依頼受けたのはやっぱり間違いだったか……?」
「給料はこんなもんでどうだ?」
「誠心誠意やらせてもらうぜ!」
ニンジンをぶら下げられたラブはとてもやる気になったようだ。
ただ、ラブは大金につられてまだ気づいていない。給金が高いということはその分仕事もきついということに……。
「……ラブさんたちの協力は私たちにとってもとても嬉しい事です。しかし、それでも彼女たちを加えて数十人、祭りを開くには全く足りていません」
「そうだねぇ、この人数だと町内会のお祭りレベルが関の山かな~」
「ん、それだと地元の人しか来てくれない」
「外からの人が来ないんじゃ意味ないじゃない……」
アビドス砂祭りはかつての祭りの規模が大きすぎたせいでそのハードルも相応に高くなっているのだ。
それ以前に開催予定地も砂漠のど真ん中。よほど規模が大きくなければ外の人はおろかそれこそ地元の人すら来てくれないかもしれない。
「となるとやっぱりまだ人材集めが必要か……。建物とか、箱だけなら俺だけでどうにかなるんだが、ままならないものだな」
現状解決している問題は開催地の設営……これはコーストが頑張れば数日でかなり立派なものができる。もう一つは警備……これはミレニアムが貸し出してくれる予定のガードロボがどうにかしてくれる。
というわけでやはり必要になるのは設備の運営を行う人材だ。
アビドス自治区がもう少し活発だったらそこの店の人に出店してもらうこともできたのだろうが、おそらく今協力を頼んできてくれそうなのは柴関ラーメン位のものである。
「そういえば、今度百鬼夜行で文化祭があるみたいです。参考にするために皆で行ってみませんか?」
「そうだな。実際の祭りがどんなものなのか知っておいたほうが俺たちとしてもやりやすいだろう」
「いいじゃない!みんなでお祭り見に行きましょ!」
そんな感じでそのうち百鬼夜行の文化祭に行くということだけが決まった。
「あ、ラブのほうは他のヘルメット団で手伝ってくれそうなやつを探してみてくれないか?もちろん他人ともめ事を起こさず、まじめに仕事をやる奴で頼むぞ。」
「……探しては見るけど、自分で言うのもなんだけどそんな奴ヘルメット団にはほとんどいないと思うぞ?」
ラブはコーストの依頼に少しいやそうな顔をする。
コーストも自分で口に出してから少し無茶なお願いだったかもしれないと思い始めた。
「さて、他に決められることは……」
〈受信したメッセージ//登録名:先生の周波数〉
コーストが喋ろうとした瞬間、先生からメッセージが届いた。
「ん、どうしたのコーストさん?」
「……先生から通知だ。厄介ごとじゃないといいんだが……どうしたんだ、先生?」
発言からコーストから先生への評価がうかがえる。
『あ、久しぶりコースト!』
「リゾートの一件からそんなに日にちは経ってない気がするが……とりあえず要件を聞かせてくれ、ただ世間話をするために通信をよこしたわけじゃないんだろう?」
コーストが言うと先生は息を詰まらせるような声を出す。
相変わらず反応がわかりやすい。
『あー……それなんだけど……。コースト、私と一緒にトリニティまで来てくれない?』
「トリニティ?なんでまたそんなところへ?」
『トリニティのティーパーティーのナギサって子に呼び出されてね。その時にコーストも連れてきてくれないかって頼まれたんだ』
ナギサ……聞き覚えがある。トリニティの生徒会にあたるティーパーティー……そこのホストの生徒だったはずだ。
確かヒフミも何度か口にしていたはずである。
そして……ティーパーティには助けてもらった恩がある。
「……そうか。さすがに顔を出さないわけにはいかないか……分かった、同行しよう。ちなみにそれはいつだ?」
『今日だよ』
コーストの体から怒気が吹き上がる。
「おい、なぜそんな重要なことを今日まで黙っていたんだ?今日呼び出しを食らったわけじゃないだろう?」
『あ、あはは……仕事が多すぎて連絡するの忘れちゃってたんだよね……』
「……この前お前の部屋で見つけた領収書の束のこと、あのセミナーの会計に教えてやろうか?」
『ごめんなさい!許してください!』
先生は電話口に向かって土下座をかました。
「はあ……何分かしたら迎えに行くから準備しておけ」
『!……ありがとうコースト!!』
先生の返事を聞きながらコーストは通信を切る。
「あ~……、聞いてたかもしれないが俺はちょっと出てくるぞ」
「はい、ただ、コーストさんだけで大丈夫ですか?アビドスの人間として私たちも誰かついていったほうが……」
「いや、先生の口ぶりからして動向を許されてるのは俺だけだろうからな。今回は一人で行ってくる」
「そうですか……ティーパーティー、あのトリニティのトップですか……」
ノノミは心配そうな声を出す。
「安心しろ。取って食われるわけじゃない。向こうが何を求めてるかは知らないが、穏便に済ませてくるさ」
「そうですか……では、気を付けて行ってきてくださいね!」
「いってらっしゃ~い」
「ん、ヒフミに会ったらよろしく言っておいて」
見送られながらアビドスを出た後、シャーレで先生を拾ってトリニティへと向かった。
トリニティのとある建物に着いた後、コーストと先生はかなり広々としたテラス席へと案内された。
そこには白い制服に身を包んだ二人の少女が待っていた。
「こんにちは、先生、そしてコーストさん。こうしてお会いするのは初めまして、ですね。ティーパーティのホスト、桐藤ナギサと申します」
「やっほー☆ 同じくティーパーティのメンバー、聖園ミカだよー!!」
トリニティで最高権力を持つ二人とのお茶会が始まった。
subnauticaです
第三章開幕です!
エデン条約はどのような結末を迎えるのか、どうぞお楽しみに。
それと本日はノーマンズスカイの推定十周年アプデの日ですね。
私はまだアプデ内容を見ることは出来てないですが、何が追加されるのかとても楽しみです!
では、また次回お会いしましょう。
先に書いてほしいイベントは
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桜花爛漫
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アビドスリゾート
-
4546B