「(さて、来たは良いものの、そもそもなぜ呼び出されたのか……)」
コーストは椅子に座りながら思案した。
確かにティーパーティーとはアビドスの一件で多少関わりはあるが、今回呼び出された理由には特に心当たりはない。
「へー、これが噂の先生かー。あんまり私たちと変わらない感じなんだね?」
コーストがそんなことを考えているとミカが先生の顔を覗き込みながらそんなことを話し始める。
「それで、こっちがナギちゃんの呼んだコーストさん……えっと、なんかすごい服着てるね?宇宙服?」
ミカはコーストの服装を見て少し困惑したような表情を見せた。
まあ、コーストの宇宙服はトリニティのどこか神聖な雰囲気漂うテラスとは全く似合わないSFチックなデザインなのでその反応も当然である。
「それはそうでしょうミカさん。そちらのコーストさんは正真正銘この星の外……宇宙から来た存在なのですから」
ナギサの発言にミカは目を見開く。
「うぇえ!?何言ってるのナギちゃん?それってこの人が宇宙人って事!?」
「なるほど……ヒフミから聞いたのか?」
コーストの疑問にナギサが答える。
「ええ、その通りです。……ああ、ヒフミさんを攻めないでくださいね。私があの戦いについて詳しく教えてほしいと頼んだのですから」
「それはもちろん、ヒフミには世話になったからな。攻めるようなことはしないさ。ただ、よくその話を信じる気になれたな?正直、この星から出たことない者たちにとっては信じがたい話だったんじゃないか?」
「ええ、私も最初にヒフミさんから話を聞いた時は自分の耳を疑ったものですが……同行したトリニティの生徒が撮影したあの大量の宇宙船が虚空から現れる姿……あれを見れば、あなたが宇宙人であるということのほうが納得できるというものです」
「ああ……」
どうやらあの日の
まあ特に隠すこともなく行ったので当たり前ではあるのだろうが。
「え、じゃあじゃあ、もしかして自由にこの星の外に出られるって事!?」
ミカのテンションがやたら高い。
「ん?まあ確かにできるが……」
「本当!?なら、私も宇宙行ってみたい!!」
「……ミカさん、初対面なんですからもう少し慎みをもって……」
「うっ……確かにそうだね……ごめんね、コーストさん」
「構わないさ。機会があれば連れて行ってやろう」
「いいの?やったー!!」
「ミカさん……」
はしゃぐミカを見てナギサは頭の痛そうな顔を見せていた。
「こほん……では、改めてよろしくお願いします、先生、コーストさん」
「こちらこそ、よろしくね!」
「ああ、よろしく頼む」
先生とコーストは二人と軽く会釈を交わした。
「……トリニティの外の方が、このティーパーティーの場に招待されたのは、私の記憶では先生が初めてです。普段はトリニティの一般のせいとも簡単には招待されない席でして……」
「ちょっとナギちゃーん、なんかそれ恩着せがましくていやらしい感じじゃない?」
「……ミカさん?」
ナギサの顔に影が差す。怒りゲージの上昇を感じる。
「あー……ごめん、大人しくしてるね、できるだけ。」
「……こうしてお二人をお招きしたのは、少々お願いしたいことがありまして。」
「お願い?」
「先生だけでなく、俺にもか?」
「おおっナギちゃんいきなりだね!?もうちょっとこう、アイスブレイクとか入れないの?小粋な雑談とか、ほら、ティーパーティーって、基本的には社交界なんだしさ!」
ミカの発言にナギサのストレスがどんどん溜まってるのが感じられる。
口は一応微笑んでいるが、目は睨んでいる。
「そんな奇麗な目で睨んでも、これはティーパーティーの在り方の問題なんだからダメ―!きちんとしないと!」
「ミカさん、そう言ったことはあなたがホストになった時に追求してください。今は一応私がホストですので、私の方法に従ってくださいな。……ふう、お客様の前でこういった論争は無粋ですね。少し話の方向性を変えるとしましょうか」
ナギサがそう口にしたところで先生が今まで疑問に思っていたことを口にした。
「貴方たちが、トリニティの生徒会長なんだよね?」
「おお、先生のほうから空気を読んでくれた!ほら、ナギちゃん見た!?これが大人の話術だよ!自然な会話への誘導!」
「……はい。おっしゃる通り、私たちがトリニティ総合学園の生徒会長です。……結論から申しますと、トリニティの生徒会長は代々複数人でになっているものなのですよ。」
ミカが笑顔で余計な口を挟むが、ナギサは無視を決め込む。
「あれ、ナギちゃん無視?もしかして無視かなー?おーい?」
「……その昔、トリニティ総合学園が生まれる前、各分派の代表たちが紛争を解決するために"ティーパーティー"を開いたことから、この歴史は始まりました。」
「え、ひどっ……くすん、私ちょっと傷ついた……」
ミカがナギサのすぐ横で鳴きまねを披露するが、ナギサは意にも介さない。
……いや、意にも介さないは語弊があったかも知れない。頬がひくついている。
「パテル、フィリウス、サンクトゥス……それら三つの学園の代表を筆頭にティーパーティを開き、和解への流れが生み出されたのです。」
「ナギちゃんが本当に無視したぁ……嫌がらせだぁ……ひどくない?私たちこれでも十年来の幼馴染なのに……こんな事今まで……結構あったかもだけど……」
「…………その後から、トリニティの生徒会は"ティーパーティ"という通称で呼ばれるようになり、各分派の代表が順番にホストを――」
そこまで喋ったところで、ついに堪忍袋の緒が切れたようだ。
「ああもう五月蠅いですね!?」
「ひぇっ……。」
ナギサの口から淑女が出すべきでない声が溢れる。
「今、私が説明をしているんですよ!?それなのにさっきからずっと!横でぶつぶつぶつぶつと……!!」
「な、ナギちゃん、ちょっと落ち着いて……」
「どうしても黙れないというのでしたら、その小さな口に……」
ナギサがロールケーキの乗った皿を持ち上げる。
「ロールケーキをぶち込みますよっ!?」
「……」
「……」
「……」
「……」
無言の時間が続く。
「……あら、私ったら、何という言葉遣いを……」
失礼しました、お二方。なんて言ってごまかしているが、おそらく先ほどまでの印象が拭われることはないだろう。
「いやー、怖い怖い……」
「……なあ、さすがにそろそろ俺たちを呼び出した理由について話してもらいたいところなんだが……」
コーストの発言にナギサがハッとしたような表情をする。
「……そうですね、そろそろ本題に入りましょうか。まず先生のほうですが、この度新しく設立されることになった新しい部活、補習授業部の新しい顧問になっていただきたいのです」
「補習授業部?」
先生は疑問の表情を浮かべる。
「はい。つまり落第の危機に瀕している生徒たちを先生のお力で救っていただきたいのです。部という体ではありますが、形としては担任の先生というほうが近いかもしれませんね……トリニティ総合学園は、昔からキヴォトスにおいて"文武両道"を掲げる、歴史と伝統が息づく学園です。だというのに、よりによってこの時期に成績の振るわない方がなんと四名もいらっしゃいまして……」
「私たちとしてはちょっと困ったタイミングでっていうか……"エデン条約"の件で、みんなちょっとバタついてるんだよね。ちゃんと解決しなきゃいけないんだけど、人手も時間も足りなくって……でも、そんなときに新聞でシャーレの活躍ぶりを見つけたんだ!ホントに何でもやって感じの活躍で、ここにならきっと面倒ごとを任せられそうだなって思って!」
「……」
面倒ごとを押し付けられようとしている先生は何とも言えない顔を浮かべている。
「……面倒ごとなんて言ってはいけませんよ、ミカさん。」
「あはは……まあでも、ある意味本当のことではあるし……。それに、"先生"なんでしょ?今は皆BDで学習しているし、学校の教員とか教授ならまだしも、"先生"って概念は珍しいんだよね。先の道を生きると書いて先生……つまり、生徒を導いてくれる存在ってわけでしょ?尊敬の対象、あるいはみんなの生きる指針として、手を差し伸べて、導く……"補習授業部"の顧問としてピッタリだなって!」
「まあ、巷では尊敬の対象になるかどうかは意見が割れているようですが……。」
「……あー確かに、報告書によって内容が全然違うんだよね。中身に関しては……先生の名誉のために言わないようにしとくね!」
「(い、一体どんな噂話が……)」
どうにも不名誉なうわさが流れているらしい先生は冷や汗を流す。
まあ、噂の内容に関しては自業自得なものも多いが……。
「それで……どうかな、先生?この話、引き受けてくれる?」
「うん、もちろん!生徒の手助けが私の仕事だからね。私にできることなら喜んで引き受けるよ!」
先生は胸を張ってその依頼を快諾した。
「やった!ありがとー先生!!」
「……きっと断らないでしょうと思ってはいましたが、ありがとうございます。では、こちらの名簿をお渡ししておきますね。」
ナギサはそう言って補習授業部のメンバー一覧が乗った名簿を先生に差し出した。
「どれどれ……って、あれ?」
「どうしたんだ先生……ヒフミ?あいつ何やってるんだ?」
名簿にはアビドスを共に救ってくれたはずのヒフミの名前が記載されていた。
「ん?どうしたの?誰か気になる子でもいた?」
「ううん。何でもないよ。」
愛想笑いでごまかす先生。
「そうですか。ほかに何か気になることはありますでしょうか?」
「そうだね……そういえば、エデン条約って何?」
「……」
「……」
二人が固まる。
「うーん、それは、何ていえばいいのか……。」
「でもそうですね……コーストさんへのお願いにも関することなので、話しておきましょうか。」
「そう言えば、結局俺が呼ばれた理由については聞いてなかったな。何だ?」
今まで話していたのは先生が呼ばれた理由だ。言ってしまえばコーストとは特にかかわりのない話である。
「はい。今日コーストさんをお呼びした理由ですが……来るエデン条約の締結日、第三者として会場の警護をお願いしたいのです。」
「……何だと?」
コーストは困惑した。
何故エデン条約とは一切関係のない自分が警護を行うことになるのかと。
「私はエデン条約締結においてあらゆる不安要素を排除したいと考えています。そんな中見たあなたが持つ兵力……あなたが警備をしてくださるのであれば、不測の事態が起きてもある程度抑えられることでしょう。」
「だからと言って無関係な人間を警護なんて重要なポジションにつけるか?言っちゃ悪いが俺とお前たちの間には特に信頼関係も何もない。俺が裏切るリスクというものは考えないのか?」
「……確かにそう言うリスクも存在するでしょう。ですが、そちらの先生と、賞金稼ぎを通したヴァルキューレ公安局長との関係、そして今までのあなたの報告書を見るにその可能性は低いと考えました。」
「……報告書ねぇ、ずいぶんとはっきり言うんだな。」
「隠しても無駄だろうと思いましたので。どうでしょう、相応の報酬をお支払いする用意はあります。この依頼、受けてはいただけないでしょうか?」
ナギサの提案に、コーストは少し考えこんだ後にこう返答した。
「……いくつか条件を出したい」
「何でしょうか?」
「まず一つ目だが、俺はあくまでアビドスの味方として動く。ゆえにこの依頼は俺の一存で受けることは出来ない。あくまでうちの生徒会長が許可を出したら受けるという形になる。二つ目に、この条約において俺は片一方の学園に肩入れするつもりはない。やるにしても相手……ゲヘナとの話し合いで話をまとめたうえでやることになるだろう。……この条件が飲めるのなら、その依頼は考えよう。」
「……ええ、それで構いませんよ。」
「……ちょっとナギちゃん、ゲヘナとも話し合うって、本当に大丈夫なの?」
ミカはその顔にかなりの嫌悪感を浮かべている。
「……私たちが一方的に頼んだ警備など、向こうも受け入れはしないでしょう。仕方のない事ですよ。」
「むう……。」
「……では、お二人ともこれからよろしくお願いしますね。私もティーパーティーのホストとして精一杯エスコートをいたしますので」
「うん、こちらこそ」
「俺に関しては本当に協力できるかは分からないが、まあ、よろしく頼もう」
この話し合いからキヴォトス全体を揺るがす大事件に巻き込まれることになろうとはこの時は、まだ考えてはいなかった。
subnauticaです
遂に来ました10周年アプデCOSMOS!
皆さんも楽しんでおられるでしょうか?
宇宙ステーションの所有に同盟……規模感が大きすぎてびっくりしています。
そして本編に関してはとりあえずコーストをエデン条約に絡めることに成功しました。
この先は……どうしようか……
では、また次回お会いしましょう。
先に書いてほしいイベントは
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桜花爛漫
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アビドスリゾート
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